2012年05月27日

腹水や胸水にも有効なことがある補気建中湯にはなぜ保水力の強い人参が配合されているのだろうか?

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 ヒゲジジイのたっての要望により飲みやすい補気建中湯エキス製剤をコタロー(小太郎漢方製薬)さんが実現してくれ、発売されて既に数年近くが経った。

 そこでしばしば質問を受けるのが上記のような朝鮮人参の配合意義である。専門的な中医学用語を使わずにイメージ的にできるだけわかりやすい説明をこころみてみた。
 以下がその説明(苦笑。

 朝鮮人参単独で服用すると、体質によっては浮腫を生じる人が意外に多い。人参には体内に水分を保持させる作用があるからにほかならない。
 日本漢方でいう水毒体質者にその傾向が強いように思われる。

 このような「水毒」体質であっても、茯苓や白朮あるいは蒼朮・沢瀉など、弁証論治にもとずいた適切な配合を加えれば、人参の衰え切った内臓機能を賦活する作用という利点を発揮させて、単独で使用するときのような弊害は出にくい。

 とりわけ補気建中湯という各種の悪性腫瘍末期の腹水を軽減する可能性を持つ方剤の適応時期は、内臓の機能低下の極限に近いことからくる腹水であるから、朝鮮人参の内臓賦活作用が必須という状況である。

 茯苓や白朮あるいは蒼朮・沢瀉などの配合のお陰で、朝鮮人参の水分保持作用は大事な細胞内の水分保持のためだけに働き、溜まっては困る腹水の成分の一部は本来あるべき細胞内に再吸収させ、廃液部分は体外へ排出する作用を発揮する。

 人参 白朮 茯苓 陳皮 蒼朮 黄芩 厚朴 沢瀉 麦門冬

 という配合内容の補気建中湯。

 この処方に様々なキノコ類を併用してもらって、過去、たとえ一時的にでもずいぶんの窮地から脱してもらえたことが多い。

 しかしながら、昨今ではこのような重大な疾患でなくとも、浮腫傾向のある胃弱者の体質改善に使って喜ばれることが増えている。

関連ブログ:2010年03月05日 悪性リンパ腫の全身転移から腹水のみならず胸水まで溜まって

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