年齢 : 40歳〜49歳
ご職業 : 医療・福祉関係
具体的な御職業 : 薬剤師
簡単なご住所 : 関東地区
お問い合わせ内容 : 先生お得意のうつ病に関して質問させていただきます。
男性でスルピリド服用時に生じる高プロラクチン血症は中医学的にどの様に考えたらよいのでしょうか。
パキシルで代用出来ない場合パーロデルを西洋医学的には投与すると思うのですが東洋医学的にはどう考えるのでしょうか。よろしくお願いします。
お返事メール:拝復
小生は特別鬱病が得意なわけではありません。しばしばお寺などから紹介されて来るケースが多いというだけのことです。
女性でドグマチール(スルピリド)を服用している人は、しばしば遭遇するのですが、男性でこれを使用されているケースに遭遇したことは、いまだかつてありません。
ところで、弁証論治にはじまり弁証論治におわる中医漢方薬学の世界に、西洋医学における医薬品に対して、どのように思うも感じるも、返答不能です。
あくまで個人個人の特殊性に対処する融通無碍の世界が、中医学・薬学の世界です。
蛇足ながら、男性であれ、女性でアレ、一定レベル以上の鬱病患者さんの場合、四逆散や半夏厚朴湯などを主体に使用する機会が多いとは言え、これだけですべてが漢方薬で解決出来るはずもありません。
さらに強力にバックアップできる何種類かの高価な漢方系のれっきとした厚生労働省認可の医薬品類を併用してもらうことがしばしばという現実ですが、そこまで詳しく公開するつもりはありません。
中医学・薬学の世界の無限に近い可能性と真の実力は、ほんとうに経験した人でなければ、到底理解できない世界であろうと思います。
しかしながら、現実には西洋医学主体の医療現場なのですから、その足らざるを補助するのが漢方の立場であるとしても、すべては弁証論治にはじまり、弁証論治で終わるべきだと思います。
今回のように弁証論治とほとんど無縁の世界の御質問は、些か興ざめした次第です。
中西医結合的な考えは思ったほど成果上がっておらず、サーズ治療の時にも純粋中医学派の方はかなりな治癒例を出せたのに、中西医結合のほうでは、たいした成果が出なかったと聞いています。(本年の「漢方の臨床」誌1月号の新年のご挨拶中のS先生の御報告)
中国では中医学の再評価の動きが高まり「中西医結合」は中医学の発展にあまり芳しくないことから、今後の発展方向に議論が高まっているというS先生の記事は大変興味深い。
SARSが流行したときも「中西医結合」で育った若い世代よりも、中医学に長じた老中医が活躍したことなど、示唆に富むお話である。
以上、東亜医学協会発行『漢方の臨床』誌1月号で「新年のことば」特集からの引用。
頓首
村田漢方堂薬局 村田恭介
編集後記:上記の引用したブログ、どうせ執筆者はヒゲジジイであり、しかもその「新年のことば」にも参加していて、葛根湯問題を指摘しているのも張本人だから、ツイデに全文を引用しておこう!
主として漢方を専門とする医師・薬剤師の会員がほとんどを占める専門誌『漢方の臨床』の新年号が発行され、恒例の「新年のことば」特集が組まれている。
総勢150名近い医師・薬剤師等が「あいうえお」順に掲載されている。
各先生方がやや気楽に書ける雰囲気のもと、全体を概観すれば日本漢方の様々な問題点のほとんどが指摘されている。
目に付いたことを執筆者名を敢えて省略させて頂き、ホンの要点だけをピックアップする。
●まずは最初の方でアメリカ在住?らしいA先生が、アメリカの「伝統薬会議」において中国薬局方は採用されても、日本薬局方が採用されないことで、「漢方の国際化」とは何なのか、といたく嘆いておられる。
つまり今後も世界から中医学は重要視されても、日本漢方(漢方医学)はローカルのまま世界に置き去りにされるであろう将来を占うような事態かもしれない。
●次に、日本漢方出身の先生が、桂枝湯や麻黄湯などは、温めていながら表熱証と表現するのはおかしいじゃないか、と盛んに漢方医学における論理の矛盾に疑問を呈しておられる。
百尺竿頭一歩を進めば、すなわち中医学の世界に到達するのだが、きっとやがて目覚められることだろうと思われる。
●一方、中国国内の状況として、中国では中医学の再評価の動きが高まり「中西医結合」は中医学の発展にあまり芳しくないことから、今後の発展方向に議論が高まっているというS先生の記事は大変興味深い。
SARSが流行したときも「中西医結合」で育った若い世代よりも、中医学に長じた老中医が活躍したことなど、示唆に富むお話である。
●専門誌だけに医師が多数を占める中、地方の漢方専門薬局の薬剤師が、風邪やインフルエンザに対して病院で処方される医療用の葛根湯がいかに有効に使用されていないか、あるいは、いかに無効であるかを述べて、銀翹散製剤こそ有効である旨を述べている。
急性疾患に傷寒論医学を主体にする日本漢方(漢方医学)では、インフルエンザ一つすら理論的にも現実的にも、治すことは出来ないので、そろそろ根本的な基礎理論あたりから、中医学に学ぶべきときが来ているように思われるのである。
●Y先生は、エビデンスによる医療(EBM)に対する大いなる疑問を投げかけておられた。
病名治療に等しいエビデンスなるものは、普遍性を重視する西洋医学のみに有効な手法であり、個別性を重視する漢方医学や中医学に採用するには、根本的に問題があり過ぎると本ブログの筆者は思うものである。
●昨今、日本国内では漢方の原理・原則を無視した大建中湯の乱用が目立つ、第二の小柴胡湯事件が勃発しなければよいがと強い危惧の念を表明されるR先生。
●「新年のことば」特集全体を眺めていて、きっと誰もが感じることは、漢方医学の講義を各大学医学部で正式なカリュキュラムとして採用するところがかなり増えているということから、N先生のお言葉にもあるように「首尾一貫した総論を備えた教科書」はあるのだろうか?
基礎理論における不安はないのだろうか、という大きな疑問が湧いて来ざるを得ない印象を持つことだろう。
以上、本ブログの筆者の主観を交えながらの解説となっているので、月刊『漢方の臨床』誌に興味がおありであれば、
東亜医学協会のホームページまで!
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