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「温」がつく漢方処方は多いが、その代表的なものに温経湯(ウンケイトウ)と温胆湯(ウンタントウ)がある。
温経湯は衝任虚寒・瘀血阻滞の病機に対して温経補虚・活血行瘀の作用を発揮する。
一方、温胆湯は痰熱阻滞三焦の病機に対して清熱祛痰・疏暢三焦の作用を発揮する。
温経湯は手掌角皮症など掌の湿疹に多用して昔から著効を得ており、また女性のアトピー性皮膚炎の苔癬化したものに著効を得たこともある。
体外受精を繰り返して成功しない女性にこの温経湯であきらかに体調が向上して自然妊娠の可能性が見えて来ているのに、本人は体外受精に経費がかかるからと、このわずか1ヶ月分6〜7千円の経費を惜しんで、体外受精の合間の繋ぎにしか使わなかった馬鹿げた人もいた。
当方における不妊治療の実績では、過去、確率は相当高いのに、以来、この女性のことを教訓に、このような体外受精などを繰り返している途中の繋ぎに利用される人は、一切お断りすることにしている。
温胆湯は痰熱が上擾すると心神不安を引き起こしてパニック障害や不眠や動悸、清竅を上擾するとメマイやふらつきなどの症状が出やすくなる。
適応する不眠症に対しては朝昼は、最もシンプルな基本方剤の温胆湯製剤を服用し、三回目の夜だけ星火温胆湯(温胆湯+黄連・酸棗仁)を服用してもらうことで、重度の不眠症が1〜2年以上もかかってほとんど根治するに至った例もある。
慢性疾患の場合、いつも速効が出るとは限らず、やはり根気勝負になることがほとんどであるが、昨今、当方に来られる人は、頑固な病気でも、直ぐに速効が出るものと思い込んで来られる人が多いので、ちょっと困惑している。
たとえ速効が出ても、それで短期間で根治するはずもなく、速効が出たら出たで、直ぐに油断して、のちのち落胆を見るのが通常である。
しばしば見られるのが、自覚症状に明らかな速効が出ていても、病院の検査数値に反映する値が、わずかであるとその落胆は大きく、何年がかりになるのが当然の疾患でも、半年もしないうちに息切れする人もある。
ともあれ、温胆湯は脊髄小脳変性症などの難治性疾患にも、強力な補腎剤とともに併用してめまいやふらつきの改善補助に役立っているケースもあるが、いずれもかなり厳密な弁証論治を必要とする。
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