質問の趣旨は、タイトル通りの内容「秋の乾燥肌には湿熱を除去するインチンコウトウや黄連解毒湯・猪苓湯などは乾燥肌に悪影響しませんか?という御質問」である。
お返事メール:
湿熱を除去する漢方薬は、皮膚表面までは乾燥させません。
寒湿を除去する漢方薬の場合は、ときに肌まで乾燥させてしまう場合もあり得ます。
単にシナモンの入っている五苓散でさえそうですが、とくになどはその傾向があります。
ところが湿熱を除去するインチンコウトウや黄連解毒湯、膀胱炎の漢方薬、猪苓湯などは、肌の表面までは乾燥させません。むしろ体内の湿熱を解消しながらバランスを取って、乾燥肌を潤す作用を発揮することすら珍しくありません。
たとえば尋常性乾癬という難治性の皮膚病は、患部がひどく乾燥する病気でもありますが、
http://murata-kanpo.seesaa.net/article/24572671.html
このブログの後半に書いているように、膀胱系から湿熱を除去する猪苓湯とヨクイニン・板藍茶の併用10日足らずで八割以上、消えてしまいました。
ヨクイニンというのは、肌に潤いを与えるので一般にも有名ですが、実は中医学の世界では湿熱を除去する重要な生薬でもあるのです。
人間の身体は体表が乾燥しているからと言って、体内までが乾燥しているのではないのです。乾燥したでこぼこ状の発疹の直ぐ下は湿熱の膨らみなのです。
ですから、湿熱を除去する適切な漢方薬を使用すれば、膨らんだ発疹の湿熱が乾燥している表面と調和が取れて、発疹が消失すると同時に、その湿熱が体表に出てきて乾燥肌を潤してくれるのです。
人間の身体はこういう複雑さがあるので、短絡的に湿熱を除去する漢方薬は、肌を乾燥させると思いがちですが、逆なのですよ!!!
寒湿を除去する漢方薬の場合は、すべてではないですが、先にあげたようなでは、肌を乾燥させてしまう場合もあり、シナモンという辛温性の生薬が配合された利水剤の五苓散なども同様です。
ここが、寒湿と湿熱の大きな違いです。
漢方の世界は、世間的な常識の裏の裏を読めるヒネクレ者でないと理解しにくい複雑な理論体系で成り立っているようにも思われます。
とりわけ中医学の世界では、すべて実際上の現象を鋭く解明出来る指針となる基礎理論がしっかり構築されています。
人体で起こる現象は、世間で思っているのとは逆なケースが多々あります。体表がトテモ乾燥している人なのに、体内はむくみぼくて水分でだぶついている人も多いのですが、このような人は、体内の水分が体表に回ってくれてないだけです。体内の水分調節をしてやれば回復するのですが、このような人が潤い成分のサプリメントなどを服用すればするほど、体内ではますます湿熱毒邪を貯留停滞させてしまうために、体表では保湿機能がいよいよ阻害されて乾燥肌がますます悪化する場合すらあり得るのです。
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