2011年11月01日

冷えが原因の病気でも温めれば治るとは限らない

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FSC_8598 posted by (C)ボクチンの母

 中医学や漢方医学の最も重要な古典、傷寒論の名が示すように、急性疾患の病因として最も代表的な発病因子が寒邪の侵襲である。

 身体を過度に冷やし過ぎたり、冷気を浴び過ぎると人体は機能低下を生じて容易に寒邪に侵襲される。

 また暑い時期には寒邪よりも熱邪に侵襲されることが多いが、本日のブログでは寒邪の侵襲だけを論じる。・

 冷え込んだために生じた風邪や、しばしば見られる膀胱炎、風寒湿邪に犯されて生じる関節リウマチなど、これらは冷えが原因だからといって温めれば治るとは限らない。

 それどころか、温めれば温めるほど却って逆効果になる場合が意外に多いことを警告しておきたい。

 たとえば、冷え込んだために生じた膀胱炎に、しばしば猪苓湯や五淋散、あるいは竜胆瀉肝湯や清心蓮子飲などが使用されるのはなぜか?

 冷えが原因というのに、こられの方剤全体はいずれも、どちらかといえば多かれ少なかれ冷やす作用の方剤。

 どうして膀胱炎に対して漢方治療では多くの場合、こられの冷薬が投与されるのか?

 正邪相争により化熱するからに他ならない。

 つまり人体の病邪に抵抗する機能が働いて邪気と激しく戦うことで化熱するからである。

 風寒湿邪に侵襲されて生じる痺証、すなわに代表的な関節リウマチなどはやや複雑で、体内には風寒湿の邪がしっかりと固着しながらも、正邪分争によって化熱し、関節部分が赤く腫れて疼痛が激化するケースが多い。

 このようなケースでも、痺証は風寒湿邪が原因だからといって、桂枝加朮附湯や独活寄生湯、大防風湯などで却って次第に悪化して、村田漢方堂薬局に訪れる人が多いのはなぜか?

 熱化して腫れ上がった関節部の熱証を無視した投与を続けるからである。

 血液検査ではますますCRP値が上昇する。この場合は温熱薬だけでは対処しきれず、バランスの取れた清熱薬の配合も必須であることを知らない専門家があまりにも多過ぎる。
 シロウトとなんら変るところがない(苦笑。

 これらの例でも分かるように、病気の原因が冷えであっても、しっかり温めれば治るほど、人間様の病気はそれほど単純ではない。

 そろそろ秋から冬に向かうにつれ、寒邪に侵襲されて傷寒の風邪に罹患したはずが、いつの間にか化熱して温病条弁で提示された天津感冒片などの銀翹散が適応する風邪に転化してしまう。

 傷寒から早い段階で温病に転化するというのも、邪正闘争の経過中に生じることで、現代日本ではかなり普遍的な現象となりつつある。

ぼくぼく
ぼくぼく posted by (C)ボクチンの母


posted by ヒゲジジイ at 20:47| 山口 ☁| 中医漢方薬学 | 更新情報をチェックする