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傷寒論や金匱要略の古方、あるいは経方と呼ばれる方剤群は、的確に使用すれば時には信じられない速効が得られる。
だから古方派時代の青二才の分際でも、驚くべき著効を得て喜んでいたら、服用者が効いて当たり前と思う人もいれば、驚異的な効果に却って驚いて、合成医薬品のような副作用が出てきたら困るからと即、中止されるおめでたい人もいた。
現在も古方派であることに違いは無いが、日本古方派ではなく「中医漢方薬学派」であり、言い換えれば「中医古方派」でもある(苦笑。
それはともかく、速効が出る人ほど油断しやすく、長期間の慢性疾患では最初の速効や著効がいつまでも続くとは限らず、まだまだ見落としている証候が存在していることが多いので、補強する追加方剤が必要となることが多い。
しかしながら最初から速効や著効が出てしまうと、どんなに難病であっても喜びのあまりどうしても病人さん自身が油断してしまい、服薬がおろそかになったり、継続服用の根気がなくなったり、急に経費が惜しくなったり、様々な理由で突然無音となるケースがある。
あるいは初期の著効がだんだん薄らいで、症状が次第に戻り始めるケースでは、すかさず微調整が必要なのに、それが待てずに止める人や、微調整に納得しても直ぐに効果が戻らないと、やっぱり短期間で止めてしまう人。
その場合、いつの間にか無音となるのは自己責任の問題だから、お好きにどうぞで済まされるが、わざわざ電話やメールで様々な言い訳の弁を聞くほど歯がゆいものはない。
止めたくなったら黙って止めればよいので、自己責任の問題だから止めるための連絡は一切不要。
速効や著効が出ている人ほど、その後も真面目に継続しつつ四季折々の体質傾向に応じた微調整を行えば、大変見通しが明るいのに、ここでも人間心理のタナトスの仕業としか思えない。
長期間に亘る慢性疾患の場合、最初の著効や速効も一時的なものであるケースもあり、当然ながら更に補強する追加方剤が必要になったり、最初に使用した急性症状を抑える清熱剤を中止するなど、臨機応変の処置が必要なケースも多い。
一方では最初から、ゆるい効果しか発揮できずに互いに長期間に亘って苦労する「通常のパターンとは異なる病型の人達」では、弁証論治に苦労に苦労を重ねるが、それらの人達の方がむしろ頑張りがきいて、頑張りぬいてくれたお陰でしっかりと安定した寛解状態に持ち込めることが多い。
人間の深層心理のエロスとタナトスの問題が大きく関わっているように思われる。
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