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もっともありきたりな膀胱炎を例にあげよう。
数年前、急性膀胱炎に罹った七十歳台の女性達が、医療用のツムラ猪苓湯では効果がないといって複数続いたことがあった。
いずれも当方の猪苓湯で回復したが、製剤間の優劣の問題を論じることはさて置き、この女性達のお一人は、一年間に何度も膀胱炎を繰り返すという。
そのときはバス停でバスを待つ間、寒風に晒されてスカートの中に冷気が入り込んだのがきっかけで排尿痛と出渋り症状を生じている。
ご本人の判断でクリニックで投与されたツムラ猪苓湯を服用しながらカイロで温めるも改善せず。
カイロで温めるのは熱性炎症の火に油を注ぐ結果となっているようだから即刻中止してもらい、当方の猪苓湯製剤だけを服用することとしたら短期間に症状は消えた。
もしかしてカイロで温めることでツムラ猪苓湯の効果を完全に相殺していたのかもしれない?
その後、一年間、当方の猪苓湯製剤だけを常用することで、ほとんど膀胱炎を生じることがなくなった。
この女性は明らかに冷え込みが原因で膀胱炎を生じたのであるが、その治療薬としては火神派の人達が好みそうな附子剤や桂皮や乾姜のような辛燥大熱の生薬は一切使用せず、やや寒性の滋陰利水法を押し通すことで快癒している。
火神派を過信して附子や桂皮や乾姜のような辛燥大熱を主体にした方剤を渡していたら、ますます悪化し、激しい血尿さえ誘発しかねない。
あえて冷え込みや冷え症の体質を考慮した場合には、せいぜい猪苓湯合四物湯であろうが、膀胱炎の炎症自体が激しいときには、病状によっては温性の四物湯が邪魔になることがあり、しばらくは猪苓湯単方で押し通し、その後に猪苓湯合四物湯に切り替える方がよい場合も珍しくない。
常に情況に応じて臨機応変の配合変化が必要なことは中医学における常識中の常識である。
膀胱炎の原因が冷えであるからと言って、急性炎症期に附子剤や桂皮や乾姜のような辛燥大熱を使って温めてよいとは限らず、日本中に蔓延する温め療法を過信してはならない。
冷えが原因だからといって温め療法を行なうと却って逆効果になる時期もあるのだから、素人療法は禁物だが、昨今、玄人療法も危ない時代となっている(苦笑。

DSC_0275 posted by (C)ボクチンの母
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