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十数年前までは真武湯の適応者にしばしば遭遇し、潰瘍性大腸炎や眩暈やふらつき、脊髄小脳変性症などで使用する機会があった。
潰瘍性大腸炎では二十年経った数年前まで、ほぼ根治に至っていることを追跡調査で確認出来ている。(それもそのはずで、お嬢さんの漢方薬を折々に購入されていたので廃薬後の経過が確認できる情況にあった。)
しかしながら、日本も豊かになるにつれ、同時に温暖化が進むに連れて附子剤が適応するような舌質淡の人が漢方相談に訪れるケースが激減した。
(しかしながら、衰弱されたご高齢者などには現代社会でも附子剤の適応者が多く存在するであろうと想像されるが、当方のような市井の漢方薬局とは無縁である。)
ところで附子剤が適応するような陽虚体質者は決まって舌質が淡であったが、中国の火神派の治験例で確認したところ、やはり同様であった。
とすると、中国の火神派の先生方は、もともと舌質が淡であるような明らかな陽虚体質者が多い地区で診療されている可能性が高い。
日本国内では中医学の火神派が増えつつあるそうだが、火神派とは無縁な日本漢方でも、もともと附子剤を好んで使用される傾向が強い。
それゆえ、各地の病院や薬局で投与された附子剤にあたった人達が相談に訪れるケースが後を絶たないが、いずれも舌質は淡ではなかった。
附子剤が不適な人達であったから、八味丸でやけに目が冴えたり、蓄膿症が悪化したり、空咳が発生したり、寝汗をかくようになったり、様々な弊害の報告を受けている。
ヒゲジジイに言わせれば、火神派のように腎陽虚ばかりを重視するやや偏った流派は、現代日本社会には馴染む筈がないと思っている。
一人の身体で五臓六腑の各経絡毎に寒熱虚実がことなるケースは日常茶飯事なのだから、それらの臓腑経絡毎の相関関係を分析しつつ、寒熱虚実に応じた配合方剤を投与することこそ中医学の弁証論治の鉄則であろう。
舌質が紅い人達に附子剤を乱用すれば様々な弊害が出ても不思議はない。
とりわけ肺は嬌臓であるから容易に肺熱・肺陰虚を誘発してロクなことはないので、偏った一派に偏るべきではないと警告しておく。
要するに一時のブームに乗って、
火神派(かしんは)を過信する勿れ!
ということです。
蛇足ながら、中国国内で中医学が衰退しつつある理由は、時間的あるいは収益的に能率の悪い中医学よりも、能率と収益のよい中西医結合や西洋医学の方面にばかりに人材が増加しているといわれ、ここでも現代中国らしい現象が垣間見られる。
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