2006年08月23日

生脈散(しょうみゃくさん)のお勉強

飛んでるで〜
飛んでるで〜 posted by (C)ヒゲジジイ

 昨日の熱中症の漢方薬の附録として、漢方処方「生脈散」についてのお勉強です。
 以下は「中医方剤与治法」(四川科学技術出版社)より引用(翻訳はヒゲジジイ)。
 引用の前の注釈として述べておきたいことは、本書では心気衰竭に対する効能を置き忘れ、心肺気陰両虚の病機とすべきところを肺に限定した解釈となっているので全面的ではないが、一つの解釈方法としてはとても理解しやすい参考書であるということです。(但し、【応用】の項では西洋医学的分析において心臓に対する優れた効能の報告がなされている。)          
  

生脉散(『内外傷弁惑論』)

 【薬物構成】 人参 麦門冬 五味子

 【用法】 水煎服用。現在では注射剤もある。

 【主治】
 @暑熱での発汗過多により気津を消耗・損傷し,手足がだるい・息切れ・物を言うのがおっくう・眩暈・意識が薄らぐ・口乾・口渇・脉象は虚数。
 A咳嗽が遷延して肺虚となり乾咳・痰が少ない・息切れ・自汗・舌が乾燥・脉は虚。

 【分析】 暑は陽邪で昇散の性質があり,人体を侵犯すると腠理を開いて多汗を生じさせる。

 『素問』挙痛論に「ネッすればすなわち腠理開き,栄衛通じ,汗大いに泄す。ゆえに気は泄するなり」とあるが,暑熱が人体を傷害すると腠理が開泄して多汗を生じることを述べたものである。
 
 発汗過多を生じると津気両傷という結果を引き起こすことになる。
 肺は気を主りまた水津の散布を主るので,津気両傷とは肺の気陰両傷のことなのである。
 気が消耗すると手足がだるい・息切れ・物を言うのがおっくう・眩暈・意識がぼんやりするなどを生じ,津傷すると口乾・口渇を生じる。
 咳嗽が遷延して肺虚となり津気が消耗・損傷する場合も,症状にやや違いがあっても病機は同一である。

 【病機】 肺気傷耗・津液虧損

 【治法】 補気生津法

 【方意】 人参は甘温で,大補肺気・生津止渇する。麦門冬は甘寒で柔らかく潤いがあり,潤肺滋陰する。五味子は酸温で,斂肺生津して耗散した気を収斂する。麦門冬と五味子は人参を助けて気陰を救い,これら三味によって益気生津の効を発揮し,気液が補われると諸症が解消する。

 【応用】 本方は気津が消耗・損傷した場合に優れた効果がある。
 暑熱によって生じた気虚津傷の証では,方中の人参は西洋参を用いるとよい。

 臨床上,本方はまた気陰両虚の心臓疾患で,動悸・呼吸困難・活動時に症状が強まる・倦怠感・眩暈・焦燥感・不眠・舌質は紅・舌苔は少・脉は細数などの症候が現われる場合を治す。

 報告によれば,本方の注射液を静脈点滴や筋肉注射として用いると,脱水・虚脱や各種心臓性ショックの治療に良好な効果がある。薬理的研究によると,本方には強心作用があり,心筋のグリコーゲンとリボ核酸の含有料を増加させ,虚血心筋の同化作用を改善するため,虚血性心筋が収縮するためのエネルギー源と筋繊維タンパク(アクチン)となり,ミオジンを合成する物質基礎となる。
 また,心筋の酸素と化学的エネルギーの消費量を低下させ,心筋の酸素欠乏に対する耐性を高め,心臓の生存時間を延長し,心臓性ショックにおける生存率を顕著に高める。このような心筋の収縮力を増強する特徴により,収縮が敏捷となって搏出量が増加し,冠状動脈の拡張に有利となり,冠状動脈における血流量が増加し,益気して心陽を通じさせ,気が行(めぐ)ると血も行(めぐ)る効果を発揮する。

 【加減方】
 (1)五味麦門冬湯
 人参・麦門冬・五味子・石膏・甘草。
 本方に石膏・甘草を加えたもの。生脉湯証にして内熱が残り激しい口渇があって水分を要求する場合,熱病で下した後に余熱が残って津液が既に虧損し脉は虚数・口乾・汗が出る・あるいは咳逆などの症候に適応する。

 (2)加減生脉散
 沙参・麦門冬・五味子・牡丹皮・細生地黄。
 水煎して2回に分けて温服。
 太陰の伏暑で,舌質は赤・口渇・多汗を治す。酸甘化陰〔酸味・甘味の薬物により陰を生む〕・養陰清熱作用にすぐれ,沙参のかわりに人参を用いると,熱病後の心不全で舌質が絳・舌苔は少・脉は虚数・夜間に症状が増悪する場合にも有効となる。



お庭の仲間達
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