それ以来、近くの内科医院でエリスロマイシン(200mgx3)、テオドール(100mgx3)、ソロムコ(15mgx3)の投薬をかれこれ、10年近く受けております。もともと、子供の頃から、風邪をこじらせやすい体質で、今でも、2〜3ヶ月に1回くらいは、微熱を出しては、上述の内科医院で、エリスロマイシンではない抗生物質(メイアクト、フロモックス、クラビットなど)を3〜5日間分処方してもらい対処しています。
最近、耳の聞こえが悪くなったので、耳鼻科に見てもらったら、副鼻腔炎から来る滲出性中耳炎といわれ、週2回程度の通院加療(鼻汁吸引除去と薬液噴霧吸引)と抗生物質(フロモックス)及びダーゼンの投薬処方を受けています。
しかし、2ヶ月近く通院・投薬治療を受けているのに、副鼻腔炎の症状はなかなか治まっていません。また、私は、結婚しておりますが、子宝に恵まれず、泌尿器科で検査してもらったところ、精子の数が極めて少ないうえに、精子そのものの活動性も極めて悪いとのことでした。
すなわち、副鼻腔炎、気管支拡張症(びまん性汎細気管支炎)、男性不妊症の3拍子そろった副鼻腔-気管支症候群(immotile cilia症候群)患者です。この頃では、階段の上り下りに、息切れを感じる度合いが強くなり、また、咳や痰もこみ上げてくる頻度や量が多くなったように感じます。
すなわち、気管支拡張症は徐々に確実に進行しているように思います。エリスロマイシンがなかったら、もっと進行が早かったのかもしれませんが、何か、エリスロマイシンと併用できて、確実に病状進行を食い止める漢方薬処方にめぐり合えないものかと模索しています。
そこで、今の私の悩みを聞いて下さい。
1) 私が、最近、漢方薬を調合していただいた薬局では患者に処方内容を開示してくださいません。効いている気がしているだけに、私には、それが大いに不満です。もし、処方を明らかにしていただければ、かかりつけの内科医や耳鼻科医に、漢方処方の長期的な投薬効果を医学的に確認してもらうこともでき、日本医療の進歩にも貢献するのではないでしょうか?
そもそも、副鼻腔-気管支症候群患者にとって、耳鼻科と呼吸器内科とが分かれているのこと自体が不便です。その上、漢方薬局までもが秘密主義ともなるとやるせません。
2) もっとも切実なことですが、漢方薬の薬代が、1ヶ月に5〜6万円もかかります。せめて、その1/4〜1/2程度の費用で処方を受けられないでしょうか?
ヒゲ薬剤師のお返事メール:拝復
副鼻腔炎に気管支関連の疾患や耳管関連の疾患が合併すること等、往々にしてみられることですので、決して珍しいケースではありません。
もちろん体質と症状にあった漢方薬を適切に配合し、また季節や折々に、臨機応変の配合変化を行いつつ、長期に渡って連用し続ければ、もののたとえとして8割は改善できるものです。
文面を拝見すれば、さいわいそちらの漢方薬局で出されたものが効いている様に思われるとのことですが、処方名等を開示されないというのは、言いにくいことながらこの秘密主義は、明らかに薬事法違反なのです。
薬剤師が運営する漢方薬局で直接対面相談販売することは、当然合法的なものですが、医薬品でもある漢方薬の処方内容等は、かならず開示しておく「義務」があります。
その点では些か信用できない薬剤師さんだと言わざるを得ないでしょう。
ところで、価格面ではこの自由な資本主義経済国である日本においては自由価格な訳ですから、何とも申し上げにくい問題です。
たとえ、極めて良心的な価格設定を行っているところでも、合併する症候群を考慮すれば、単一処方だけでは、たとえ一時的に効果があっても焼け石に水程度のようにも思えます。
言い換えれば、少なくとも複数の漢方処方を組み合さざるを得ず、のみならず、多少とも高度なテクニックを要する病状だと存じます。
たとえば辛夷清肺湯あるいは清肺湯などの単一方剤だけで治るとかの単純なレベルを通り越しており、複数の方剤が必要であり、しかも時に応じて配合変化の必要があるであろうということです。
それには、おそらく日本漢方レベルの没理論的なパターン認識漢方では限界があるかもしれず、弁証論治の高度な知識と経験が必要だと思われます。
それにともなう経費も、やや類似した患者さんを当方でも過去・現在の経験から類推しても、月額に換算すれば3万円から、人によっては5万くらいかかっている人も珍しくありません。
自費の漢方で、しかも複数の方剤や補助的な製品類の併用などが伴えば、月額にすれば、止むを得ない金額かもしれません。
但し、単一方剤だけで月額5〜6万円もするとしたら、かなり高価なもので、相当な技術料が含まれているものと思われます。大都会の医師の経営する自費のクリニック等では、単一方剤でも、そのくらいはかかると関東地区から来られている患者さんの情報もありますが、薬代以外にも高価な技術料が含まれているということなのでしょう。
結局は、経費の削減だけを考えれば保険漢方をご利用されるのが一番だという方向に向かいそうですが、今、通われている漢方薬局さんに談判し、処方を開示してもらい、その処方名を持って、お近くの保険漢方を扱われる病院や診療所を御訪問されるべきかと存じます。
ここでも「但し」、同一方剤が保険適用になっているかどうかは、大変難しい問題で、運がよければ、一部の方剤は共通したものが使われているのかもしれませんし、ソウでない場合もあるかと存じます。
言いえれば、保険漢方内での処方で、貴方の諸症状の改善がどの程度まで可能かは今後、保険漢方を処方して下さる医師の漢方知識と経験に大いに左右されることでしょし、相当に知識と経験豊富な先生にめぐり合っても、結局は、保険のきかない処方類の併用が必要にならざるを得ないことも十分に想像されることです。
でも、まずは保険漢方を試みてみるのが、経費的には最善なことでしょう。
ところで、当方の薬局などでは、ここ最近の新患さんの場合、ほとんど多くの人が保険漢方も何度か試みたものの、満足が得られず(効かなかったということですが)結局、ほどほど経費のかかる自費の漢方を求めて来られているという現実があります。
つまり、我々のような漢方専門薬局においては、西洋医学治療のみならず、保険漢方もほどほどやり尽くしたというような段階でなければ、腰をすえて経費のかかる自費の漢方を何年にも渡って継続しようという気にはならない時代のように思えますし、また逆に当方にしても、それほど苦労された挙句でなければ、自費の漢方に賭ける気にはならないだろうと思っていますので、そこまで苦労された人でなければ、歓迎しない傾向があります。
病院で治るものなら、それに越したことはないのですから!
以上、散漫なお返事になりましたが、適切な漢方薬の配合が得られれば、長期に渡って連用し、折々に臨機応変の配合変化を行ったとすれば、何年も、あるいは一生涯漢方を続けるつもりでやれば、(必要適切な西洋医学治療も併用するとして)数年後には8割程度は回復し、そのレベルを維持する為にも、多かれ少なかれ、一生涯に渡って漢方を継続すれば、比較的健康な生活が送れるであろう、と思われます。
以上、お返事まで。
頓首
参考:びまん性汎細気管支炎 (一万人に一人くらいの特定疾患)
気管支が枝分れして肺胞に入る手前の呼吸細気管支の慢性炎症疾患であり、咳嗽・喀痰に多かれ少なかれ呼吸困難を伴いやすく、特定疾患に認定されている慢性の呼吸器疾患。
編集後記:返信メールをお送りした後、考えて見れば、これだけの合併症と細菌感染が持続している場合は、漢方薬類も相当な種類と分量を要する可能性は高く、自費の漢方による経費的な問題では、やはり5〜6万円も月額要するのは止むを得ないだろうと思われる。
実際には、経費のこと以上にもっともっと大事な問題は、相当に知恵と技術を要する適切な漢方薬の配合と臨機応変の配合変化および西洋医学治療との上手な連携であろう。
文面における「確実に病状進行を食い止める漢方薬処方にめぐり合えないものかと模索しています」と述べられているお気持ちは尤もだが、めぐり合えるような固定した処方とは限らないように思われるのである。
つまり、常に臨機応変の比較的複雑な配合を要することはほぼ間違いないので、単一の方剤を捜すのは相当困難なように思えるのである。
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