桃源郷 posted by (C)ヒゲジジイ
【 ブログへ掲載の可否 】:転載応諾
【 年 代 】:30〜39歳の男性
【 職 業 】:会社員(事務系)
【 地 域 】:関東地方
【 お問い合せ内容 】: いつもブログを拝見させていただいていますが、昨日の記事の中で、六味丸の中の地黄が体内の湿邪を助長しない様に細心の注意が必要であるとありました。
私はアトピーを患っていてジクジクした湿疹があるので、今飲んでいる六味丸が自分の体質に合っているものなのか少し心配になりました。
今、中医の先生(●●先生)に診てもらっていて、陰虚があるとの事で、六味丸と抑肝散を飲んでいます。
皮膚に作用する薬は胃腸の調子が良くないので今、一時的に中止しています。
細心の注意が必要とは、どの様な事に注意すれば良いのか、素人にでも分かる様に教えていただけないでしょうか?
また、胃腸の弱いジクジク型のアトピーの人でも、飲める漢方薬はあるのでしょうか?
お教えいただける範囲の事で結構です。
どうかご享受のほど、宜しくお願いします。
桃源郷 posted by (C)ヒゲジジイ
お返事メール: 湿気の多い梅雨時には、地黄や熟地黄などの滋膩の薬物を使用すると、往々にして体内の湿邪を助長します。
ましてや胃腸が弱い脾胃虚弱タイプのアトピー性皮膚炎に投与するときは地黄や熟地黄を使用するには細心の注意が必要です。
ところで滲出液が常に漏出してジメジメタイプのアトピーで、しかも胃腸が弱いタイプであれば、多くは衛益顆粒(玉屏風散製剤)に猪苓湯の併用を主体に運用することが多いものです。
但し、滲出液の漏出が長期にわたる人たちのほとんど全員が、長期にわたる津液の損耗から肺陰虚や脾陰虚が生じ、最終的には腎に影響して腎陰虚を引き起こしています。
腎は主水の臓であり、この主水の臓である腎陰の虧損によって体内の水分調節機能が破綻を来たしているため、たとえ梅雨時のような湿気が多い季節でも、六味丸系統の方剤を併用しないことには玉屏風散と猪苓湯だけでは体液の漏出をコントロールできないケースが多いものです。
以上は、あくまで中医漢方薬学における一般論であり、現実に診て頂いている●●先生は、日本における中医学派の代表的な専門家(医師)ですので、信頼されてよいのではないかと思います。
【編集後記】 質問者の胃腸虚弱といわれる上記のメール内容からは中医学的証候を推測することはできないが、もしも脾虚水滞の兆候が顕著であれば、六味丸に含まれる地黄や熟地黄のような滋膩の生薬を用いると、ますます脾虚水滞を助長して胃もたれや軟便・下痢を誘発し兼ねない。
それゆえ、たとえ腎陰虚が明らかであっても、補気建中湯などで脾虚水滞を治療する方剤の併用が必要となる。
さらには、当帰や川芎が配合された抑肝散は、脾虚に対する白朮や茯苓の配合があっても、ときにアトピーに悪影響を及ぼす危険性なしとせず、ましてや脾胃気虚のレベルによってはますます胃腸症状を誘発し兼ねないので、配合には慎重を要する。
但し、メールのお返事にこれらの注意点を書かなかった理由は、中医学の一流の先生に受診されているので、それなりの根拠があって投与されているものと思ったからである。
しかしながら、通常であれば脾胃虚弱者に対する注意点として、上記の内容を念頭に置いて配合方剤を考えることは専門家として一般常識であるので、敢えて編集後記に記しておいた。
IMGP6955 posted by (C)ヒゲジジイ
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