2006年07月14日

帯状疱疹を繰り返す体質の改善が漢方で可能だろうか?

性別 : 女性
年齢 : 40歳〜49歳
御職業 : 〇〇〇〇〇看護師
お問い合わせ内容 : こんにちは、はじめまして私は 帯状疱疹をくりかえします。
 医学的には検査しても、どこも悪いところは無いのですが、思えば海外出張の後とか、プロジェクトの後とかで 肉体より精神的に緊張するような仕事の後、必ず春〜夏に、数年おきに帯状疱疹をくりかえしてしまいます。

 初期にすぐに帯状疱疹の抗ウイルス剤を服用するため、ひどくはなりませんが、今回は6月21日に出て、治療後、東洋医学の免疫療法を受けてみました。
 体調はとてもよくなったのでよかったのですが、そこで内臓の冷えがあるといわれ、体を冷やさないようにといわれ、半身浴を自分でもよくやって体を温めていました。
 気分は良くなって、元気なのですが、まずアルコールがまったく飲めなくなり、すいかやトマト、ピーマンなど、普段食べたくないようなものが食べたくなり、体に熱がこもった感が抜けなくなりました。

 そのうち寒気がしてひどい風邪を引いてしまいました。解熱した後、実は今日なのですが、また帯状疱疹が出てしまったのです。ただ、体調は悪くなく、元気で、よく休んだので疲れているとは思えません。

 私に合った免疫を強化する東洋医学の漢方治療というものはあるのでしょうか?

 私は今どのようにするのが一番よろしいのでしょうか、是非アドバイスおねがいいたします。


ヒゲ薬剤師のお返事メール:拝復

 帯状疱疹だけの問題で言えば、漢方医学にせよ中医学にせよ、意外に容易な疾患のようです。ウイルスを完全排除出来るかどうかまでは断定できませんが日本人の体質上、どうも多くは五苓散系列の方剤に板藍根(ばんらんこん)を併用する程度でも、急速に消滅するケースを、とても多くの例で経験しています。

 中には西洋医学における抗ウイルス剤が、めまいなどの副作用で連用できない例でも、即効的に効いている例ばかりです。

 安易な病名漢方やエビデンス漢方には批判的な立場ではあるのですが、このような例外もあって、帯状疱疹にはかなり病名漢方が通用するようです。

 つまり、五苓散系列の方剤(茵蔯五苓散の場合などもある)に板藍根で、帯状疱疹に対処するという病名漢方です。

 ところで、頂いた文面を拝見して、とても気になったのが「温め療法」です。

>内臓の冷えがあるといわれ、体を冷やさないようにといわれ、
>半身浴を自分でもよくやって体を温めていました。

という点です。

 昨今、温め療法がブームになっているようですが、この温暖化の時代、しかも飽食の時代といわれるほど栄養豊かな時代、暖房設備も充実した昨今、皆がみな温め療法に走るのは、大いに問題です。過ぎたる及ばざるが如し、という喩え以上の問題を含んでいます。

 当方には折々に関東地方で既に東洋医学的治療、多くは漢方の専門の医師や薬剤師のところ治らなかった人達が直接来られるケースがあるのですが、その多くの人が、貴女様と同じように、身体が冷えているからということで、同様に温め療法を強く奨められた人が多かったのですが、そのゆえか、漢方処方のピントのズレもともなって、かえって炎症性疾患を悪化させているケースも多いのです。

 極論すれば、六臓六腑の経絡ごとに、六臓六腑の臓腑ごとに、寒熱はそれぞれに異なるものですから、温めてよい経絡と、温めるとまずい経絡もあったりと、人間様の身体はそう簡単に一筋縄ではゆかないものだと愚考します。

 つまり、昨今流行の温め療法では、温めてもらったら困る経絡や臓腑に熱化をうながし、むしろ弊害が出てくるケースも多いということです。

 あまりにも短絡的な昨今の「温め療法」ブームは、まったく噴飯物だと思っています。
 とりわけ肺は嬌臓(きょうぞう)です。デリケートで繊細な肺臓ですので、温めすぎた為に肺系統の弊害が出ているケースをよく目撃します。

 また、昨今は外食する人が多いせいか、たとえ脾胃に虚寒があっても、肝胆に湿熱が宿っている人も意外に多いのです。

 貴女の場合も、

>すいかやトマト、ピーマンなど、普段食べたくないようなものが
>食べたくなり、体に熱がこもった感が抜けなくなりました。

 とあるように、六臓六腑すべてが一時的に熱化して、とてもアンバランスな状態を招いたように思えます。同時に肺系統に関連した肺衛(肺の衛り)の機能が低下して、風邪を引いてしまったと考えられます。

 ですから、即刻、温め療法は中止すべきです!

 地元でも治りかけていた慢性気管支炎や肺炎を、この温め療法類で却って悪化させた人や、転移ガンを持つ男性が、医療用の十全大補湯とともに温め療法にこだわったために、ヒドイ鼻出血を生じた例など、漢方処方における温補剤による弊害や、ブームの温め療法による害悪を沢山目撃する毎日です。

 漢方医学には、昔から「補剤の生殺し」というようなコトワザがあるほどです!

 世の中、健康に対するあまりにも短絡的な療法が出没極まりないのですから、常にやや批判的な態度で接し、頭から信じると、トンデモナイことになることもあり得ると思います。

 東洋医学でも漢方治療はあるのでしょうか、との御質問ですが、もちろん体質改善はほどほど期間がかかるにせよ、漢方と漢方薬の得意分野でもありますので、知識と経験の豊富な、しかもブームに便乗しないしっかりとした見識のある専門家にご相談されれば、それほど困難なことではないと存じます。

 帯状疱疹を繰り返す人は、昨今はお年寄りばかりではなく、40代くらいから相当に増えているようですが、正確な弁証論治にもとづいた適切な漢方薬を適宜組み合わせれば、比較的容易なことと存じます。

 但し、六臓六腑それぞれの個性に応じた体質改善が必要ですので、単に一処方だけで改善することは、なかなか困難なもののようです。どうしても複数の方剤が必要になることと存じます。

 まずは信用のおけそうな専門家を見つけられることだと存じます。それにはいつも書いていることですが、最低一度は直接出向かれることで、安易にメール相談や電話相談だけで、漢方処方を決めるべきではないと存じます。

 ともあれ、とても有益な御質問を頂いて、感謝しております。

 以上、取り急ぎお返事申し上げます。
                                                                頓首

六臓六腑に対する注記: 漢方医学や中医学では五臓六腑と言いながらも、実際には十二経脈という経絡の主体があってそれに連なる六臓六腑的な考えを明らかにとっているから、あえて六臓六腑と表現してみたかった。ヒゲ爺がボケて間違ったのではなく、故意にアテツケタと言った方が正確です。
 ところで六腑の五つまではいえても、六つ目を言える人は少ないでしょうexclamation&question 膜原と腠理から構成される「三焦(さんしょう)」というものがあるのです。
 また、この腑としての三焦に対応する臓みたいなものが「心包絡(しんぽうらく)」なんですよexclamation
 だから、故意に六臓六腑と言ってみたかった訳です。



折り返しお礼のメール:
早速、ご誠実で詳細なお返事を頂き本当にありがとうございます。

 帯状疱疹については 望みがありそうで 希望がもてます。
 〇〇でよい先生を探して、診ていただこうとおもいます。
(名医に紹介されていた〇〇の・・・・・医院の先生を 一度お尋ねしてみようかな・・・と 今思っております。)
 本当なら、そちらに伺いして、先生にお薬のご相談をさせていただきたいのですが・・・伺うことができずほんとうに残念です。

 そして まず仰せの通り、温め療法は中止いたします。

 代謝を高める=温めるではないのですね。

 思えば、まさに 風邪を引く前も どうも体内に熱がこもっているのに なぜか外側は寒い状態でした。
 結局、アンバランスを生じさせ、炎症を促進させたということなのですね。
 冷やす食べ物が 欲しくなったことも、納得、 まさに自然の摂理なのですね。

 そういえば、自分でも気道が重苦しいので、自然に胸骨部に冷やすためのシートを貼って休んでいました。
 冷えが気持ちよくて、翌朝には呼吸も風邪もずいぶんよくなっていました。

 私は漢方は以前に、排卵痛で悩み、ケイシブクリョウガン(ツムラ25番)を飲んだとたん、嘘のようにぴたりと痛みがなくなったという経験があります。 (血が停滞しやすいのでしょうか)

 ストレス社会で日々生活しているので、なかなか自分で 自分の体の声を察知する力は、なくなって行くような気がします。 
 また漢方の力も借りながら、気長に体の調子を建て直すことができたらと思っております。

 ご相談に乗っていただき本当に感謝いたします。
 ほんとうに どうもありがとうございました。

 これからも HPを楽しみに拝読させていただきます。
 また何かありましたら ぜひご相談させていただければとおもいます。