2011年04月18日

体力のない人にも大柴胡湯の適応者は五万といる

シックなカラーで人懐っこいイソヒヨドリの雌
シックなカラーで人懐っこいイソヒヨドリの雌 posted by (C)ヒゲジジイ

 今年も非常に華奢に見える女性達で、大柴胡湯適応者が頻発する。
 ところが大柴胡湯エキス製剤の効能・効果には

「体力が充実して,脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく,便秘の傾向があるものの次の諸症:胃炎,常習便秘,高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘,神経症,肥満症 」

という記載がある。

 このような記載はまったく信用ならない。
 記載されていることは間違いではないが、正しくもない。
 「体力が充実」してなくとも、とても華奢で体力が非常に低下している女性達にも適応者が五万といる。

 「脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく」という記載はまったく正しい。ここだけは文句のつけようがない。

 「便秘の傾向」というのはあってもなくても問題はない。

 「胃炎」がある人にも適応証があれば使える。

 同様に「高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘」も適応証があれば、このような症状に効果が出ることもあるあるが、他の合併証によって生じているケースも多いので、頭痛や肩こりまで改善できるとは限らない。

 「神経症」については適応証があれば効果的なこともあるが「肥満症」に関してはたとえ適応証があってもこの方剤だけでは弱いことも多く、合併する適応証に対する方剤の併用が必要なことが多いし、第一、過食を止めて運動不足を解消する必要がある。

 上記をみると、いかにも体格の良い人達や肥満症の人達以外には使用できないような誤解を招く効果・効能であるが、現実には大柴胡湯が適応する人には意外に痩身で華奢な女性達の方が多い。

 40年近い漢方相談経験から断定できる。上記の記載中で最も正しく重要なのは「脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく」という箇所だけで、逆に最も邪魔になる記載は「体力が充実して」という部分である。

 何をもって体力が充実してと判断するかは議論のあるところであるが、現実にはいわゆる体力が低下して華奢で比較的小食な女性達にも適応者がとても多い。

 このような華奢な女性達でも適応証に間違いないケースでは、大柴胡湯によって「脇腹からみぞおちあたりにかけて苦」しい症状が改善されるとともに、逆に体力が充実して来るのだから、漢方薬の実力は侮れない。

 しかしながら、一見体力のありそうなヒゲジジイが、大柴胡湯の適応証の人達の喜びにあやかりたいと、みずから服用実験をしてみたところ、次第に倦怠感を感じるようになり、仕事の途中でも横になりたくなったり、なんとはなしに体力と気力の低下を感じることが増えて来たので、適応証もないのに使用すると、真逆の反応することを確認することが出来た(苦笑。

 このように漢方薬は真の適応証を見つけるにはかなり熟練が要る。
 それゆえ、巷の病院や医院で安易に投与される医療用の漢方製剤(最近では大建中湯や桂枝茯苓丸の問題が多い)による誤投与で困った人達の問い合わせ電話が絶えないのである。

 合成医薬品の誤投与と異なり、漢方薬の誤投与は問題が少ないとはいえ、少なくとも連用してもまったく無駄になるので、巷のお医者さんたちも日本漢方だけでなく、中医学の弁証論治の基礎くらいは学んで欲しいものである。

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ESC_2846 posted by (C)ヒゲジジイ

ラベル:大柴胡湯
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