2006年05月20日

アトピー性皮膚炎と補中益気湯

 平成六年の『和漢薬』誌の新年号の巻頭随筆として依頼されて書いたものの中に、一面的な内容だった『アトピー性皮膚炎の中医漢方薬学療法』(本ブログに「2006年05月13日:壮大?な失敗作:アトピー性皮膚炎の中医漢方薬学療法」として転載しているもの)に対する補足を書いている文章が見つかった。
  アトピー性皮膚炎と補中益気湯

 近年、爆発的に大流行しているこの疾患は、難治性なるがゆえにマスコミに大きく取り上げられ、日本の漢方界でも多様な治療方法が研究発表され続けていますが、漢方や中医学にとっても、決して容易な疾患ではないようです。

 筆者自身も本誌四六一号に『アトピー性皮膚炎の中医漢方薬学療法』と題して、黄連解毒湯と滑石茯苓湯(猪苓湯)や六味丸・三物黄芩湯などの合方に、食餌療法の一環としてウチダのイオン化カルシウム併用による方法を発表させて頂いたところ、各地の先生方から好評を得ることができました。

 ところが、最近は拙論で発表した方剤の組み合わせの範囲内では、十分に解決できないケースが出現しており、新たに補中益気湯や五苓散・辛夷清肺湯などが、配合方剤の一環として重要な位置を占めるようになっています。

 とりわけ、脾や肺の気虚を無視できない病態が増えており、数年前までの「黄連解毒湯+滑石茯苓湯や六味丸」が主体であったのに加えて、「黄連解毒湯+補中益気湯+滑石茯苓湯」のパターンが増加しています。

 前記拙論の発表当時は、補中益気湯類などの脾虚に対する方剤に関心をよせつつも、アトピー性皮膚炎に使用する必然性を認めることができなかったのですが、ここ二年間に爆発的に使用機会が増え続け、これによって当時と同レベルの有効率を、何とか維持しているのが現状です。

 したがって、前記の拙論は一部修正・補足する必要が生じているものの、補中益気湯類がアトピーに応用され得る理論的根拠は、すでに同拙論中に「脾虚について」と題した項目を設けて、ある程度のヒントを述べています。

 このように時代と共にアトピー性皮膚炎に対する経験と考察が深まるにつれて、豊富な手法を次第に習得してゆき、昨今は来局されたアトピー性皮膚炎の皆さんだけがご存知の一大飛躍?をなしとげて、普遍性と個別性をバランスよくミックスした手法を完成しつつある時代を迎えているということです。

 但し、中医学的にかなり正統派的手法であるのは、間違いなく
脾肺病としてのアトピー性皮膚炎
 の拙論です!

 しかしながら、昨今の方法の方が中西医結合的手法も用い、かなり普遍性のある方法を土台として一応の完成をみているわけです。

 実際に現在、服用中の方だけがニンマリとうなずく方法ですよね?!
 但し、保険は一切きかない漢方専門薬局の医薬品が主体ですから、ほどほどの経費はかかります。
posted by ヒゲジジイ at 02:34| 山口 ☁| 漢方薬や中医学の学習方法および懐かしい拙論 | 更新情報をチェックする