2010年08月23日

末期の肝硬変で腹水もある状況下で利尿剤の作用を阻害する可能性のある一部の漢方薬

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IMG_7938 posted by (C)ヒゲジジイ

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患者さんの年齢 : 80〜89歳の女性
簡単なご住所 : 関東地方
お問い合わせ内容 : 末期の肝硬変、食道静脈瘤で在宅療養中の母のことで先生のご意見を伺わせて下さい。

 ラシックス、アルダクトンを朝と昼で2錠ずつと、煎じ薬補中益気湯や中建中湯に五苓散を加えてのんでいます。

 昼間尿意はあっても中々でず、腹水が少しとガスがたまっているといわれています。平熱で血圧も正常、顔色は白く、小水の色、臭いも正常です。
 まだ検査は何もしていませんが、お医者様は、何故でないのか原因はわからないとおっしゃっています。

 先生は、原因は何だと思われますか?腎臓が悪くなったのでしょうか?腎臓が悪くなりかけているのなら、早く手当てをしたいのですが、他にどんな症状がでますか?

 遅れまして大変失礼いたしました。私は、娘の◎◎と申します。どうかお返事を下さいます様お願い申し上げます。

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お返事メール: 通常、このようなギリギリの状況で御質問を受ける場合はお返事はご遠慮させて頂いております。

 ただ、このたびのご質問の場合、中医学的に見ても、漢方医学的にみても、母上様に投与されている漢方薬のうち、あきらかに中建中湯が五苓散やラシックス類の利尿作用を阻害している可能性が高いと思われましたので、お返事させて頂きました。

 もしもエキス剤で投与されておれば、補中益気湯中の甘草と中建中湯中の甘草および朝鮮人参も倍加されていることになり、利水作用を強く阻害することもあり得る問題です。
 たとえ煎じ薬で投与されていても、やはり腹水があり、利尿がないときに中建中湯を投与するのはいささか憚られる方剤です。但し、補中益気湯と五苓散の併用はしばしば行われる配合です。

 よほどの例外が無い限り(そのような例外は滅多にないと思いますが)、腹水があり、利尿もうまく行かない時に中建中湯を投与することはほとんどあり得ない(絶対とは言いませんが)ということです。(やや絶対に近いかもしれません。)
 以上、取り急ぎお返事まで。


編集後記: 腹部にガスが溜まっていても腹水が関連する場合には小建中湯や、小建中湯も含まれる中建中湯などのように甘草が沢山配合された方剤は使用することは逆効果である。
 ましてや現在、利水がうまくいってない状況下にあってはなおさら中建中湯の投与は憚れるはずである。

 それゆえ、通常は厚朴を主体にした適切な配合方剤で腹部のガスによる張りに対処するのと同時に、なるべく甘草や大棗の配合されない利水剤を用いるのが無難であろうと思われる。(補中益気湯合五苓散はエキス剤ではしばしば用いられるが、この場合でさえ稀ではあるが補中益気湯中の甘草や大棗および升提作用のある升麻が邪魔になることさえある。)

 しかしながら近年、医療用漢方が盛んになって、このようなケースでも建中湯類が投与されるケースがしばしば見受けられ、それを聞くだけで冷や汗を禁じえない。

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ラベル:腹水 肝硬変
posted by ヒゲジジイ at 06:33| 山口 ☁| 病院の保険漢方による誤投与あるいは危険な配合 | 更新情報をチェックする