可愛い一人息子のボクチン posted by (C)ボクチンの母
年齢 : 40〜49歳の男性
御職業 : 会社員
簡単な御住所 : 中国・四国地方
具体的な御職業 : 薬剤師
おたより : 村田先生突然、失礼致します。
私は、地方の中小企業の製薬メーカーの薬剤師をしております。製薬メーカーといっても、近年は健康食品がメインとなってしまっており、薬剤師としては働いているのかどうか怪しい状態です。
時々サイトを拝見させて頂き勉強させて頂いているのですが、「生姜と乾姜の錯誤」http://www.choshu.info/kankyo.html に関連して、少し気になったことがあったので、投稿させて頂きました。
先日、たまたま山田光胤先生の『漢方処方応用の実際』南山堂を見ておりました所、p.22の8.漢方薬の投薬法1) 薬物についてで、
〔生姜〕 傷寒論にある生姜は,なまのショウガである。〔乾姜〕 傷寒論の乾姜は,乾燥したショウガである.現在これを乾生姜と慣習上よんでいる.生姜の代りに乾生姜を用いるときは,1日分2.0gぐらいがよい. 市販の乾姜は,一度蒸したショウガを乾燥したものである.後世方ではこれを用いたようであるが,著者らは乾生姜を用いている.とありました。
また、『漢局の漢方』 清水藤太郎著 南山堂刊 昭和38年8月20日 でも、p.50に
ショーキョー ZINGIBER 生姜〔基〕 各地に栽培するショーガ科の多年草,ショーガZingiber officinaleの生の根茎.生のフルネ(ヒネショーガ)である.「姜汁」は生姜のしぼり汁である。p.89に
カンキョー ZINGIVER SICCATUM 乾姜 乾生姜〔基〕 各地に栽培するショーガ科の多年草,ショーガZingiber officinaleの根茎のコルク皮を去り,石灰汁につけて乾かしたもの.日本薬局方の「ショーキョー」に相当する.ヒネショーガのコルク皮を去り,熱湯に入れて後乾かしたものを「三河干姜」又は「黒姜」と称する.とあり、日本でも昔は、生のショウガを生姜、日局ショウキョウを乾姜と呼んでいた場合もあるようです。
山田光胤先生と言えば、大塚敬節先生の流れを汲む日本漢方の第一人者と思いますので、なぜこれが本流にならなかったのかが不思議です。
清水藤太郎先生も、局方の制定に関わっていらっしゃると思うので、日局ショウキョウが漢方の生姜と異なってしまったのか、不思議な気もします。
ただ、山田光胤先生が、「市販の乾姜は云々」と書かれているので、当時から村田先生のおっしゃる「煨姜もどき」が乾姜として主流だったように思われます。なぜ、日本の乾姜が「煨姜もどき」になってしまったのかは不明ですが、もともと日本漢方でも、乾燥したショウガを乾姜としていた流れもあったということをお知らせしたかった次第です。まとまりの無い文章で申し訳ございません。
飛んでるとんでる posted by (C)ヒゲジジイ
お返事メール:おたよりありがとうございます。
山田光胤先生の『漢方処方応用の実際』は、三十数年前の古方派時代に熱心に愛読した時代もありました。
生姜を乾燥させたものが乾姜であるから、わざわざ蒸して製造するなど不要な小細工であることはあまりにも常識的なことだと思います。
その常識論を山田先生が書かれていたことは覚えていませんでしたが、山田先生のお考えが日本の漢方製剤に踏襲されなかったことはとても不幸なことだと思います。
ところで白朮と蒼朮の問題ですが、白朮を蒼朮で代用してよいとされたのは山田光胤先生の岳父であられる故大塚敬節先生であったと言われますから、やはり方剤を構成する薬味の選定においては、日本古方派の限界があったのではないかと思われてなりません。
白朮を蒼朮で代用する杜撰 にも書いています通り、玉屏風散中の白朮を蒼朮で代用しようものなら、方意を台無しにしてしまうことは、誰が見ても明らかなことでしょう。
日本古方派は、日本の漢方復興に大いなる貢献があったことを認めるに吝かではありませんが、漢方医学発展における重要な中継地点であったと考えるべきで、いつまでも日本古方派に固執していては進歩はないものと考えています。
ともあれ、マンネリ化しているブログの活性化にご協力頂き、ありがとうございました。
ツバメ posted by (C)ヒゲジジイ
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