2009年12月25日

北海道からのおたより:新型インフルエンザ治療に使われた漢方薬の御報告

マガモ
マガモ posted by (C)ヒゲジジイ

おたより: 北海道の某医薬品登録販売者

 ご無沙汰しております。10月に中医学の書籍について問い合わせた北海道の●●です。

 今年も残り1週間となりましたが村田先生は変わらず忙しい日々を送っているのでしょうね。体調崩されぬよう、どうかご自愛下さい。

 こちら北海道はすっかり冬景色となりまして、日中でも氷点下の真冬日も多くなってきました。先日、出張で占冠(しむかっぷ)に行ってきたのですが、最低気温が−24℃を記録した日でして、北海道生まれ北海道育ちの自分でも身震いするほど寒かったです。

 さて、たいぶ下火になってきたとは言え、まだまだ話題の多い新型インフルエンザですが、2週間ほど前に3歳になる愚娘(次女)が新型インフルエンザに罹患しました。

 自分は仕事中でしたので妻がかかりつけの小児科に連れて行き、A型と確定後にタミフルが処方されたのですが、あえて飲まさずに次女の状態を見ながら参蘇飲+銀翹解毒散+板藍根を服用させました。

 この時点で熱は38℃後半、咽頭痛は強く自然発汗はなし。
 1回目の服用後しばらくしても寒気がとれないようなので、2回目も同じく参蘇飲+銀翹解毒散+板藍根を飲ませ就寝。夜中起きるかと思いましたが朝まで寝続け、朝7時では熱が37℃、咽頭痛はまだあるものの寒気はないとのことなので銀翹解毒散+板藍根のみに変更。

 日中にもう一度、銀翹解毒散+板藍根を服用するよう妻に言っておき、夕方自分が帰宅すると熱は36℃台の平熱に咽頭痛もなく、何より食欲旺盛ですっかり良くなっていました。

 普段から先生の各サイトをくまなく拝見していますので、参蘇飲+銀翹散+板藍根は頭に入っておりましたが、ここまで効果が絶大だとは思いませんでした。

 先生に言わせれば各メーカーの製品の優劣を指摘されるでしょうが何せドラッグストア勤務なのでイスクラのものは当然あるはずも無く、ロート製薬の銀翹解毒散、松浦漢方の参蘇飲と板藍根を使用しました。しかし、それでも速攻で効果をあげられたのは漢方薬の力と先生から盗んだ(?)知識の賜物ですね(笑)。

 ただ、この話しには続きがありまして、次女が解熱後2日ほど経過した頃に長女(5歳)が発熱しました。間違いなく新型インフルエンザだとは思いましたが念のため、普段とは違う小児科に自分が連れて行きました。

 簡易検査の結果はA型でほぼ新型に間違いないと医師から言われましたがタミフルやリレンザではなく、漢方薬を処方して欲しいと伝えました。
 そこまではいいのですが、医師は長女の状態を診るまでもなく、自信満々に「麻黄湯という良い漢方薬があるから出しておく」と言いました。

 この時、長女の体温は39℃で咽頭痛もありましたが寒気や関節痛などの悪寒はなく、何より額も背中も発汗でびしょ濡れの状態だったのです。中医学初学者の自分ですら麻黄湯ではないと判断できるのに、自信満々に麻黄湯を出すという医師。

 カルテにいろいろ書き込んでいる医師の後ろ姿に思わず飛び蹴りでもおみまいしてやろうかという衝動にかられつつ、その場を後にしました。
 製薬会社のMRの言うままに情報が入ると医師もこうなるんでしょうね。

 もちろん処方された麻黄湯は飲ませず、常備している八ツ目製薬の銀翹解毒丸+中村薬品工業から出ている万葉板藍仙を合わせて服用させ様子を見ることに。
 夜中に鼻が詰まって苦しいとのことで見てみると黄色の粘性鼻水が出ていたので辛夷清肺湯を追加しました。

 翌朝、熱は38℃台でしたが鼻は通って楽になったようで、その日は銀翹解毒丸+万葉板藍仙で過ごしました。その後、状態は安定していたのですが、なかなか咽頭痛がとれないので八ツ目の銀翹錠を小さく割り、トローチのように服用させたところ数時間後には咽頭痛がほぼなくなりました。
 翌朝、熱も下がり、咽頭痛もなく、予防的に板藍根のみ服用させ終了。

 医師の言うままに麻黄湯を服用させたら体力は奪われ、咽頭痛がさらに増していたと思います。
 インフルエンザ=麻黄湯という病名投薬。中医学を知らずに漢方薬を投与するのは怖いですね。


 余談ですが、中村薬品工業の万葉板藍仙、なかなか良いと思います。板藍根に金銀花と晶三仙(山査子、神曲、麦芽)を加えたものです。
 先生の目にかなうかは不明ですが、個人的な経験から良いように思いました。

 話しを元に戻させて頂きます。

 実はこの後も、長男(1歳2ヶ月)が新型インフルエンザに罹患し、さらに検査はしていませんが妻も発熱するという事態になったのです。

 長男は1歳ということもあり、かなり神経をつかいましたが参蘇飲+板藍根で2日で回復。
 妻は熱も40℃を超え、激しい咽頭痛に襲われましたが葛根湯や参蘇飲、板藍根、松浦漢方の地竜、小太郎のチョレイン(猪苓湯)を状態を見ながら投与し3日ほどで回復しました。

 自分はというと、多少咽頭痛もあった時がありましたが予防的に銀翹錠をなめたり、適宜板藍根を服用していたので大事には至りませんでした。

 自分にとっては激動とも言える2週間でしたが、漢方薬を適切に使用すれば新型インフルエンザにも対応でき、現代薬を凌駕することも可能であることを実感した期間でした。

 中医学書を基礎に実践的な先生のブログでさらに力をつけ、実際の病に漢方薬を使い、効果が出る。中医学を学んで良かったと思います。

 長くなりましたが、先生のブログから沢山の知識を得ていることに感謝していることを伝えたく、メールしました。

 今後ともブログの継続をよろしくお願いします。

 ホワイトクリスマスイブの北海道より。

オオバン
オオバン posted by (C)ヒゲジジイ

お返事メール:おたより、ありがとうございます。

 とても貴重な体験ですね。是非、ブログにそのまま転載させて下さい。
 当方のブログは同業者や医師の先生方がご覧になられているようですので、皆さんの参考になることと思います。

 きっと転載を許可頂けるものと信じて、25日になる早々には筆者は前回と同様の掲載方法で北海道とは記載しても匿名とさせて頂き、ブログにアップさせて頂きたいと考えています。

 もしも不許可であれば、御面倒でも、それまでにお申し出下さい。(転載後に不許可となった場合は、直ぐに削除させて頂きます。)

 参蘇飲と銀翹散製剤に板藍根の併用は、各所に書いていると思いますが、きっと

風邪・インフルエンザ初期の漢方薬 

あるいは、漢方薬による風邪・流感(インフルエンザ)の治療法私案 などもご覧になっているのでしょうね。

ともあれ、

> 先生に言わせれば各メーカーの製品の優劣を指摘されるでしょうが

とありますが、それ以前に弁証が間違っていれば、たとえ優秀な製剤を使用しても効果が出るわけがありません。

 とはいえ、煎じ薬や生薬を直接扱った経験が長ければながいほど、エキス製剤の品質の優劣も敏感に分かるものです。
 生薬を直接扱ったり、煎じ薬の製造経験がなければ、エキス製剤の優劣の鑑別はほとんど不可能だと思います。


追記: おたよりの中で、なかなか良いといわれる万葉板藍仙についてのヒゲジジイの私見を述べると・・・

 本来高濃度の板藍根がもっぱら必要なところへ、余分に金銀花や晶三仙(山査子、神曲、麦芽)加えられている分、板藍根の成分が不足している可能性が大である。
 ましてや温性の山査子や神曲や麦芽は不要であり、金銀花はすでに銀翹散製剤にもたっぷり含まれている。
 このような余分な成分が加わり過ぎると、肝腎な板藍根の濃度が薄まって、本来の目的からはあまりに逸脱し過ぎるように思われる。

 要するに、本来の目的から考えても、高濃度の板藍根に限定して銀翹散製剤や参蘇飲製剤などに併用するのが望ましい。

カイツブリ
カイツブリ posted by (C)ヒゲジジイ