2009年12月06日

中医漢方薬学における実践的な弁証論治の実際

オオタカ(幼鳥)
オオタカ(幼鳥) posted by (C)ヒゲジジイ

東海地方の女性薬剤師さんからおり返し頂いたメール:ご指導ありがとうございます。

上下の気機の失調、前後(腹側と背中側)の寒熱の不調和、体の右半身と左半身のバランスの乱れなど、上下前後左右のバランスをいかなる方法で整えるか・・・・は漢方家の腕の見せ所ですね。
 茵蔯蒿湯の活血化瘀作用による手足の冷えの改善、大変に勉強させていただきました。

 臨床というのは、本当に教科書通りに遭遇することは珍しく、陰虚なのに、痰湿があってみたり、寒熱錯雑していたりで、微妙なバランスとりが必要になってきますね。

 こちらも来局者の半数強がガンのご相談ですが、特にこのような病気の場合は、虚実混雑で調整に神経を使います。
 今年は特に6月以降から腹水の方が目立ち、特に陰水の方はすこぶる効果をあげて、ウソのように楽になられています。
 先生のご尽力で補気健中湯が発売されれば、また多くの方に喜ばれますね・・・夢のようなお話です。

 いろいろな方を見ていますと、治すことができるかどうかは、勿論患者さんの養生にもかかわってきますが、自分の症状をいかに適切に表現できるかどうか・・・・というセンスにも大きく影響しますね。
 中には的を得ない症状を昔に戻ったり、今の話に戻ったり・・・とこちらがいくら誘導してもフォーカスできない方がありますが、これをやられるといっぺんに頭が疲労してしまい、頭の地軸が狂ってきます(苦笑)

 先生のように、ビシッと患者さんを選ぶことが大切なのでしょう・・・・・。
 が、未熟な自分には、一見さんお断り!の台詞は何十年も早く、なかなかそこまで言えませんワ。
 ともあれ、修行あるのみ・・・今後もどうぞよろしくご指導くださいませ♪

獲物を運ぶミサゴ
獲物を運ぶミサゴ posted by (C)ヒゲジジイ

獲物を運ぶミサゴ
獲物を運ぶミサゴ posted by (C)ヒゲジジイ

おり返しヒゲジジイのメール:御返信ありがとうございます。
 いつも思っていることを的確に書いて頂いて、ありがとうございますっ!

>自分の症状をいかに適切に表現できるかどうか・・・・というセンスにも大きく影響しますね。
>中には的を得ない症状を昔に戻ったり、今の話に戻ったり・・・とこちらがいくら誘導してもフォーカスできない方がありますが、これをやられるといっぺんに頭が疲労してしまい、頭の地軸が狂ってきます(苦笑)

 まさに先生のおっしゃる通りで、ヒゲジジイは短気だから、思わず「●●っ」と実際に口に出してしまうこともしばしばです。
 観察力のない人、表現力のない人、命に関わる自身の身体について、自覚症状等の表現が出来ない人は困ったものです。

 往々にして医療関係者にも多いのですが「私は専門ではないので、専門家の先生にすべておまかせしますっ」と嘯いて、自身で観察・表現しようという努力をされない人もいて呆れ果てます。
 
 効果が出かかったところで、何とか理屈をつけて服薬をサボって遠のいていた人が、突然忘れた頃になって再発したり転移したと言って駆け込み、薬を変えてくれと勝手な時だけシロウトの自己判断をされる人。
 このような人達は決まって同じことを繰り返すので、当然のことながら将来の成算が高いわけがありません。

 茵蔯蒿湯の活血化瘀作用は、肝胆系統に湿熱が存在する人に限って効果を発揮するもので、条件が揃えば高い確率で冷たかった手足が暖かくなります。どの教科書にも載ってないことですが、病機の詳細を解説するのは面倒なので省略します(苦笑。むしろ理論に堪能な先生にやって頂きたいと希望します(笑。

 ご指摘の通り、中医学の教科書通りの人は現実には僅少で、綺麗に整理された教科書記載の病態が純粋に存在することは稀です。
 たとえば、肝腎陰虧に肝胆の湿熱が併存する現象は、アトピー性皮膚炎などでは日常茶飯事ですが、中医学の教科書知識だけで各地を教えて回る指導者?や、中医学に入門したばかりの人達にとっては、「肝腎陰虧に肝胆の湿熱が併存」という教科書ではあり得ない記載については、ヒゲジジイが間違っていると阿呆呼ばわりするかもしれません。そのような連中も、やはり●●です(苦笑。

 杞菊地黄丸に茵蔯蒿湯の併用なんて日常茶飯事ということです。
 その他の病機でも、六君子湯に茵蔯蒿湯の併用、温胆湯に六味丸や杞菊地黄丸の併用なんて、まったく日常茶飯事です。

 五臓六腑の寒熱・虚実・燥湿はそれぞれで異なる、という教科書には書かれてない現実を直視する必要があります。
 学問的にはそれらの病機(メカニズム)を詳細に分析して解説すべきでしょうが、ヒゲジジイは歳を取り過ぎて、もはや昔のようなエネルギーがありません(苦笑。

 ともあれ、補気建中湯エキス製剤が発売された暁には、先生も是非、御利用下さい。

獲物を運ぶミサゴ
獲物を運ぶミサゴ posted by (C)ヒゲジジイ


posted by ヒゲジジイ at 21:45| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答 | 更新情報をチェックする