我が家の君子蘭 posted by (C)ヒゲジジイ
ご質問者:東海地方の内科医師
本日は膀胱炎の患者さんの経験からおたずねします。
30台の女性です。普段からストレスが多いかたで、ご本人も過食でメタボもありそうなかたです。4月上旬にあきらかな膀胱炎症状(頻尿、血尿)で受診されました。あまり考えることもなく、猪苓湯を3包と一応抗生物質を処方しました。
数日あとに再診され、膀胱炎は著効したそうです。あまり考えなくても効果があってよかった(苦笑)、と思っていましたところ、ご本人が次のようにおっしゃいました。「このまえのおくすりは下剤ですか。大変心地よく排便があっておなかのなかが掃除されたみたいでした。便秘ぎみなのでまた処方してください」
その場を適当に説明して処方したのですが、排便にも効果があることは一般的に知られているのでしょうか。村田さんから、「中医ではよく知られています」と言われそうですが。お教えください。
アシナガバチの巣作りの途中で一休み posted by (C)ヒゲジジイ
お返事メール: 五苓散や猪苓湯により、しばしば常習便秘が改善される思いがけない効果に遭遇することがあります。
それぞれに中医学なメカニズムは微妙に異なるようで、五苓散の場合は腎の気化機能が失調したために水精が満遍なく体内を流通出来なくなっているところに、腎陽を温めて化気行水する五苓散によって全身に隈なく分布する少陽三焦のルートを通じて腸管内に水精が十分に行き渡るようになった結果、便秘が解消するというもののようです。
一方、猪苓湯の方は、滋陰利水の効能がありますように、全身に隈なく分布する少陽三焦をルートとして、陰津が欠乏しているところは潤し、水湿が停滞しているところは利水し、同時に水精を隈なく全身に行き渡るように働くので、その結果、腸管が適度に潤って常習便秘が改善されることがあるようです。
蛇足ながら、五苓散にしても、とりわけ猪苓湯などは、適応証があれば、アトピー性皮膚炎の乾燥肌を、これら滲湿利水作用のある方剤類によって皮膚表面が潤い、乾燥肌が改善されることがあるのは、上記のように少陽三焦をルートとして水精が隈なく行き渡る結果生じる効能のように思われます。
ところが六味丸や四物湯など強力な滋陰薬である地黄などが配合された方剤が、却ってアトピー性皮膚炎患者さんの肌を強く乾燥させてしまうことがあるのは、強力な滋陰薬はバランスの悪い配合を行っていると、時には気津の通り道である少陽三焦の流通経路を阻害してしまう結果、却って肌をよけいに乾燥させてしまうケースがあるようです。
つまり臨床の実際においては、一般的な「教科書中医学的な効能」とは真っ逆さまの現象がしばしば生じるのは、上記のような理由からであると一人愚考し納得しているところです(苦笑。
ところで、その患者さんは抗生物質も使用されておられるので、もしかして抗生物質による軽度の副作用による下剤効果が常習便秘を改善したということもあり得るのではないでしょうか?
これもあり得ることだと思いますが・・・はたして???
折返し頂いたメール: 五苓散と猪苓湯のメカニズムについて興味深く拝見しました。
抗生剤ですが、クラビットを処方しました。可能性は否定しきれないと思いますが、経験的にはセフェム系のものと違って下痢の頻度は少ない印象です。そして、以前にもこの患者さんは同薬を使用したことがありますが下痢はありませんでした。
漢方薬の興味深い一面を体験できてよかったです。
アシナガバチの巣作り posted by (C)ヒゲジジイ
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