実際の本業としては、むしろこじれまくった難治性となった慢性疾患を苦労に苦労を重ねてようやく複雑な配合が整い、次第に寛解に向かうという神経をすり減らす消耗戦を勝ち抜いた時の快感は、何とも言えない充実感を味わえる。
しかしながら、そのような難治性の複雑な疾患を持つ人ほど、意外に根気に乏しいことがあるので、歯痒くなるときもないではない。
こちらが必死で頑張ってるのに、本人が数ヶ月も経たないうちに根を上げてしまったらどうしようもない。根気が続く人ばかりではなく、愚痴ばかりが多くて努力が足りない人もないわけではない。
それゆえ、根性があるかどうかは最初に選別させて頂いているつもりだが、見誤ることもある。
ともあれ本題に入ると、仕事上の酷使から両手が紅く腫れて浮腫んで辛い。このまま行けば仕事を止めざるを得ないという、かなり重症の腱鞘炎の中年女性が、正しい白朮が配合された五苓散料エキス製剤と地竜エキス製剤およびイオン化カルシウムなど10日間で8割以上の寛解という速効は、ステロイド注射も真っ青であろう。
(中医学的には、このケースの様に筋肉や腱に関連した疼痛に利用する五苓散では、白朮の代りに蒼朮が間違って配合された製剤でも、むしろこの方が有効性が高くなる場合もある。
但し、基本方剤としての五苓散には白朮が配合されていなくてはならない。)
先日も少し書いたアトピーで、珍しく加味逍遥散を主軸に、計画的に一週間ごとに処方を増して行く。茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)を加えて赤みが半減。皮膚の凸凹を解消するために精度の良い猪苓湯製剤を加えて一週間でほとんど消える。
このわずか合計三週間の服用で既に見かけ上は8割寛解。
次に六味丸を加えるべきところを、故意に保留して三種類の方剤でどこまで改善されるかを見届けた後、ステロイド離脱を促進する六味丸を遅かれ早かれ加える予定である。
計画通りに理想的に運んでいる喜ばしい例。
極め付きは、80歳前後の女性が半年前より両足がこわばって重く足を運ぶのに難儀する。へなへなのへたり足になりそうな不安に慄いている。何とか漢方薬で治らないかと相談にみえた。
弁証論治により六味丸系列のやや特殊な製剤を服用してもらったところ、僅か2〜3日で速効を覚え、10日足らずで半年前の無自覚な症状に完全回復した。
この超速効に喜ばれて、ご近所のご老人達を次々に御紹介下さるが、正直言って紹介されるこちらのほうは、ありがた迷惑。
お義理で来られる人も混じるので、そのような義理が絡む仕事はしたくないので、懇ろにお断りしてばかりいるのが実情である。
実際のところ、初めて来られるご高齢者の漢方相談は、後々トラブルの元であるからお断りするのが通例である。
この女性の場合は幼少の頃から良く知る女性であり、またこれまでも何度か当方の漢方薬の利用経験者であったからこそ、ご高齢者であっても漢方相談もスムーズに行えたという事情があった。
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