2008年09月06日

夏に繁用した漢方薬

おたより:東海地方の女性薬剤師

ご無沙汰しております。
 そちらのお天気はいかがでしょうか?
 このところの異常気象による集中豪雨で、度々水害に見舞われるこの地区は、心身ともに疲れ果て、心脾両虚となった常連さんが目立ちます。

 先日も、近所のショボ川が氾濫決壊寸前で、避難勧告が出て、カルテ、大切な書物、パソコン等を上げ下ろし・・・・あと一歩のところで浸水を免れ、ホッと胸をなで降ろしたところです。(歳のせいか、堪えました・・・足腰がガクガクです・・・苦笑)

 さて、今年の夏ほど黄連解毒湯を多用した年はありませんでした。
自分が冷え性のせいか、今まであまり好んで使いませんでしたが、体温をはるかに超える酷暑日が何日も続いたこの夏は、多くの人の体に熱がこもったように見受けられます。

 最も訴えが多かったのは不眠です。
 昼間に汗をかきすぎて、気陰不足しているところへ、今度はクーラーで冷える。
 お腹が冷えて痛むが、上半身や手足が火照って眠れない女性が続出。
 この症状にうまく対応したのが、芎帰膠艾湯(満量)+黄連解毒湯(3分の1〜2分の1量)でした。
 女性は、子宮が冷えると体が緊張しやすくなり、温まるとリラックスするようです。

 もともとは、黄連阿膠湯を持っていなかったために、試行錯誤していたのですが、芎帰膠艾湯の艾葉が子宮を温め、思わぬ効果をあげました。
 特に、顎のラインに頑固なニキビがあるような女性には、ピッタリと効くようです。

 また、湿度80パーセントに近い気候が災いし、もともと脾虚があるタイプや、ビールだ、バーベキューだ、と摂食過多で脾胃を傷め、不眠につながるケースも目立ちました。
 陽明胃経の阻滞をとって、陽を陰に納める半夏を用いた処方・・・竹茹温胆湯、二陳湯、半夏瀉心湯が活躍しましたが、やはり少量の黄連解毒湯を加味した例が多かったように思います。

 以上思いつくままに、この夏の所感を綴らせていただき、失礼をお許しください。


お返事メール: 貴重なご報告ありがとうございます。
 各地で水害が甚大な様子、危機一髪を免れて幸いに存じます。

 下関はそれほどの降雨もなく、適当な降り方でホッとしています。

 夏の暑さによる諸症状には、地方性がありそうに感じました。
こちらではブログでも書きましたように、むしろクーラー病による藿香正気散証や葛根湯証が目立ちました。

 もともと黄連解毒湯や茵蔯蒿湯など、清熱除湿の方剤や薬味を好んで使用する傾向が強いのですが、さすがにクーラー病が多発すると、風寒束表的な諸証に対する方剤を多用する夏というのも、実に奇妙なものです。

 日頃から過度な温め療法を警告するヒゲジジイが、お腹だけは冷やしてはならないっ! とか、冷たいものを摂り過ぎるなっ! などと、冷え過ぎに注意しまくっていた今年の夏でした。

 自身も最近になってクーラー病によって葛根湯のお世話になるなんて〜〜信じられないくらいでした。
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posted by ヒゲジジイ at 00:06| 山口 ☁| 熱中症や冷房病 | 更新情報をチェックする