2008年08月06日

アトピー性皮膚炎の漢方治療における根気の重要性について

昨日の続き

折り返し頂いたメール:お忙しい中、早速返信いただき恐縮です。

 抗生物質の軟膏はまだ使ったことがなかったので、漢方と併用してみようと思います。

 確かにとびひに対する抗生物質の処方でも各医師によってまちまちで、自分でももどかしいことがあります。

 漢方薬に関してはなかなかピントを合わせてくださる方とお会いできずにジプシー状態なのが現実です。

 自分の見極めが早いのかも(2ヶ月くらい)しれませんが、先生から見て、どれくらいの期間でピントがあわなければかえてみてもかまわないとお考えですか?
 ご返信いただきますと幸いです。

 ありがとうございました。

追伸
 今まで通った漢方の中で、自分が飲んでいる処方の名前を教えてもらっ たことはありません。そういう意味で先生のところは、目から鱗でした。
 それがきっかけでブログを毎日読ませていただいている昨今です。


お返事メール:トビヒが生じている面積にもよるのかもしれませんが、狭い範囲なら断然抗生物質軟膏や中黄膏などだけでも治ってしまうのが通常です。

 ところで、アトピー性皮膚炎に処方不明の煎じ薬を服用中だそうですが、処方未公開のものをこの情報公開が当然の時代に、なんとも前近代的な感性(販売側も購入側も・・・)にはやや驚かされるほどです。

 いつも書いていますように処方を秘匿することは薬事法違反でもありますが、この点については販売側にやや同情せざるを得ない事情もあります。処方公開していたら効果が出始めた時点で安いところに逃げられるという恐怖感からに他ならないからです。
(昨今、この業界も四川省の地震などの影響で、本来なら原料生薬の将来的な不安から、漢方薬類の価格が高騰しても当然な時代ですが・・・来年くらいには気がついたら、いくらお金を積んでも物が無いっ!という事態が大いにあり得る不安が内在している漢方業界です。)

 ともあれ、何日毎に通われて微調整を繰り返されておられるのかのご報告が無いので、僅か二ヶ月間で転々と薬局を変えられる事情を推察することすら不能ですが、手前味噌ながら当方では7〜10日毎に通ってもらいつつ微調整を繰り返しますので、運悪く当初から効き目が悪い人でも、二ヶ月目に入る頃こそ微調整たけなわの事情から、最も佳境に入る頃になるので理解困難です。(ご本人にも微調整のコツを習得してもらいますので・・・)。

 また、どれくらいでピントが合わなければ・・・というご質問ですが、当方では諦めの早い人は一度来られたのみで止める人が一割程度。
 二度目からが本格的な漢方治療がはじまるというのに、実に馬鹿な連中だと思っていますが、それ以外の人達は多くは一定の寛解(8割以上)が得られるまで頑張られるのが通例です。

 難航した場合は半年間以上、行ったり来たりで難渋しつくしても、そのうち快方にに向っているので、そのような困難を極めた例ほど漢方の偉大さに嵌っておられるように思います。
 ともあれ難渋した場合こそ、変えてしまうとまたゼロからのやり直しで無駄の連続になるような気がしてなりません。

 ピンと合わせに難渋するということは、その間にも多くのデータが蓄積されるということでもあり、なおかつ、どこ行っても複雑な病証であることが多く、そこでも治療困難ということで、またこちらに戻って来られるケースも目に付きます。
 以上、取り急ぎお返事まで。


折り返し頂いたメール:長いご返信、ありがとうございます。

 ブログにのっていたので、びっくりしました。
 いつも自分が読んでいるところに記事が載っているとなんか変な気持ちです。(悪い意味ではないです。ブログに掲載の件は もちろん了承ですので)

 とびひは両腕、両足、胸、背中ほぼ全身です。
 面積が広いので、内服の方が良いのかもしれないですよね。

 漢方の処方を聞くというお話は、一度聞いては見たのです。
 色々な生薬の名前を書いてもらったのですが、杞菊地黄丸のような名前がつくような配合ではなくその方のオリジナルのような感じでした。

 ピントがあうまでは辛抱強く通うしかありませんね。
 一週間ごとに通って2ヶ月です。考えてみれば少し余裕がないのかもしれません。
 でも、皮膚の具合が悪い状態で何ヶ月も耐えるのはなかなか根性がいり ます。
 ステロイドは塗りたくないですし。

 先生のところがもう少し近ければ絶対に通うのですが。

 それにしても、一回はひどいですね。野次馬のような気もしますが。
 魔法なんかはこの世の中には存在しないのに・・悲しいですね。1回で治ると思ったのでしょうか?

 余談ですが、先生の常連さんを大切にするというの考えにも感銘をうけ ました。
 その患者さんがいたからこそ、先生の処方がさらに良いものになったと いうことをご自身が理解されていて口に出されるのがすごいと思いました。
 恩を忘れない方なんですね。

 色々とありがとうございました。


ヒゲジジイのお返事メール: 全身に及ぶトビヒであれば、やはり内服薬が優先となって当然ですね。

 漢方を配合をするときには、必ず基本方剤というものがあります。基本方剤に基かない処方投与は中医学の伝統を崩壊させるものであると、名老中医たちが口を揃えて訴えていることです。
 サーズが流行したときも、中堅の中西医結合派では治らず、基本方剤を大事にする名老中医たちはよく治したと言います。

 基本処方の名を告げずに、生薬名だけを告げるのは、やはり処方を隠しておきたいからです。(その心理は同業者としてよく理解できます。)

 ところで、ステロイドの使用も正しく使用すれば、決して危ないものではありません。1週間に1〜2回の塗布ならほとんど蓄積することはないと言われます。

 なお、ブログに転載させて頂く条件のもとで、お返事申し上げることはお問い合わせフォームに注記させて頂いている通りです。その点、悪しからずご了承下さいませ。


【編集後記】 様々なところで漢方治療を繰り返しても治らず、村田漢方堂薬局に辿り着いたというケースでは、往々にして8割以上の寛解を得られるまで、一部の処方は固定できても、併用する様々な方剤や単味生薬類を臨機応変に常に微調整を繰り返す必要があったケースはとても多い。

 つまり、一定レベル以上のアトピー性皮膚炎では、配合の組み合わせが分かったからといって、他の疾患のように安易に固定出来ないことが多い。
 ピントが合う合わないといっても、常に一定のピントを維持ずるには臨機応変の配合変化の法則を分析しつつお互いに考えながら、ご本人自身に習得し体得してもらう必要が生じるのである。

 現時点でも、黄連解毒湯や瀉火補腎丸が必須となったかと思うと、急転直下、翌日には補中益気丸主体の配合にシフトしなければならないという、陰陽の幅がとても狭い体質の人もおられ、遠方ゆえにメールで互いに切磋琢磨してご苦労の連続の人もおられるのである。

 しかしながら、こういうケースこそ、体質改善三点セットの出番ではないかと思案している最中なのである。
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posted by ヒゲジジイ at 00:14| 山口 ☀| アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする