ところで、昨日の下肢静脈瘤が治ったご家族の別の人が、6月に予定されていた食道癌の前癌ポリープの内視鏡による摘出術が免除されたとの電話を受けた。
まったく患部が見えないので、何か飲んでいましたか?という質問に、漢方薬類を云々とお答えしたところ、主治医は「それは明らかに漢方薬の効果だねっ」と言われたということだった。
手術を予定されて以後、当方の漢方薬類など様々な豪華メンバーを利用され続けた結果、見事にクリアしたのである。よくよく運のよいご家族である。
前置きはこれくらいにして、ヒゲジジイがボケないうちに(苦笑、昨日に続いて葛根湯の秘伝?の一部を公開しておきたい。(もうボケてるかもっ?)
上記の食道癌の前癌ポリープと葛根湯とは何の関係もないので念のため。
昨日は葛根湯を滅多なことでは服用すべきではない人たちの話しを少し取り上げたが、今回は、常用しないまでも、時々服用して急場を救ったほうがよい人の話を書く。
葛根湯は単なる風邪薬ではないことは常々、色々なところで書いてきたが、世の中ではいまだに単なる風邪薬、しかも気休め程度の漢方風邪薬くらいの認識しかないのは実に勿体ない話である。
首の真裏を軽く揉んでみて気持ちがよく、同時にその付近を温めるとなお気持ちがよい、というのが絶対条件である。
この条件さえ備えておれば、頭痛・肩こり、めまい、吐き気、関節痛、眼精疲労、耳鳴り、クーラー病、風邪の初期、おたふくかぜの初期などに使用できる。
但し、人間様の病気というのは、複雑な彼や彼女が多いように、単純な葛根湯証が純粋型で現れるケースばかりではないので、この条件があっても常用できるとは限らない。
ところが、幸いにも優れた製剤を使用すれば、かなりな即効が得られるので、症状が取れた時点で止めるとよい。だらだら続けると他臓の熱証を助長する場合があるので注意が必要である。
しかしながら、葛根湯証が常習化している場合は、他臓の熱証に対する方剤とともに併用してバランスを取れば常用することも可能であり、重症者の場合は、このような適切な他方剤との併用によってバランスの取れた配合を常用すべきケースも多々見られる。
だから昨日述べた肺熱や肺熱に肺陰虧損を伴うケースでも、一時的に使用する機会がないわけではないが、使用するにはもっとも慎重を要する。
肺は最も脆弱な臓器であり、中医学ではわざわざ肺は嬌臓(きょうぞう)で、寒に対しても熱に対しても敏感に反応し、さらには湿に対しても、また燥に対しても過敏に影響を受けるという弱点を強調している。
専門家なら意外に思うだろうが、黄連解毒湯を使用すべき人でも、折々に葛根湯証を呈する人が案外多いものである。釣藤散証が常習化しておりながらも、折々に葛根湯を必要とするケースも珍しくない。
寒熱を固定的に捉えていると、足元をすくわれる。
慢性疾患においてこそ、葛根湯証が常習化している人がとても多いことを長年の経験で断言できる。
これらの人たちは、漢方薬の配合の一角として、必ず葛根湯を常時併用するか、あるいは折々に併用するかのいずれかが必要であるが、この部分は葛根湯以外の方剤で代用ですることは絶対に不可能である。
但し、葛根湯製剤には様々な問題があり、長年の経験からは、葛根:麻黄:甘草の比率が重要で、必ず4:2:1であるべきだと信じている。
多くの製剤に見られる4:3:2や4:4:2の比率のものは、村田漢方堂薬局では絶対に使用しなり。
麻黄や甘草があまり多過ぎると、常用するには高血圧や心負担が心配である。(ところがこのような製剤ばかりが出回っている。)
こういう製剤の選択は、天然生薬から製造される非常にデリケートな医薬品であるから、決して蔑ろにできないはずである。
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