2008年06月23日

腎機能低下(慢性腎不全)に対する中医漢方薬学

ご質問者:東海地方の内科医師

 いつも有益なご助言を頂くことができ、感謝しています。
 今日は二点ご教示ください。先ず一件めです。●●●●に関してです。年齢的なこともあると思いますが(7?歳)、眼が見難いと言っております。
 白内障もありますのである程度は仕方がないのでしょうが。今年の2月ごろにもやはり見えにくいといって眼科に受診しましたが、視力自体はさほど悪くなかったようです。

 そして、当時ちょっと気力と申しましょうか、意欲といったらいいのか微妙ですが、気分的に優れないといっていました。
 以前に抑肝散加陳皮半夏を飲む機会がありまして(イライラしたときに)、随分調子が良く美味しく服薬できたそうでしたので、本人が一日3包(エキス剤)服薬したところ随分調子がよくなって眼の見え方も改善したといっていました。

 そして、杞菊妙見丸はなにやら気分がいいそうです。夫との間柄とか娘のことやらでストレスは尽きないようではあります。
いつもながらに情報量が少ないなかでのご相談で恐縮です。

 二件目ですが、腎機能が低下している方への漢方に関してです。
 近隣の結構漢方で有名な先生がある雑誌のなかで黄耆(オウギ)が腎機能を改善する作用があり、それも単味でかなり大量を煎じて投与すると良い、と論じておられ、一般的に単味からニ味にこだわっているそうです(多くても六味までだそうで、それ以上は無駄であるとはっきりおっしゃっています)。

 個人的には、煎じぐすりを処方する予定はなく(いまのところ、エキス製剤の組み合わせで十分のようです)当クリニックとしては考慮外です。

 また、村田さんにご助言いただき、中医漢方薬学的に処方させていただいて、患者さんにも一定の手ごたえを感じていますので、さらに精進して行きたいと思っています。
 愚問かもしれませんが、黄耆の腎機能改善作用についての見解を教えていただければ幸いです。


お返事メール:
 http://m-kanpo.ftw.jp/u37512.html#727(平成17年07月27日の日録)このように現在は休眠中のサイトでも平成17年に取り上げています。
7月27日(水曜日)先ほど送られてきたばかりの東亜医学協会⇒●発行『漢方の臨床』誌7月号に、春日井市の灰本医師の注目すべき論文!
 それにしても、昨日の写真、クッキリとよく撮れてるよ!(あまり残しておくと場取り過ぎ、重過ぎるので、いずれば撤去しなければなるまい)
 まっ!それはともかく、朝鮮人参の「代用品」とされる党参の有用性を書くつもりが、上記の通りである。
 灰本先生の「慢性腎不全における黄耆の血清クレアチニン低下作用」と題された御高説、今後、相当な反響を呼びそうである!
 ヒゲ薬剤師の薬局でも、黄耆の配合された補中益気丸・六味丸・インチンコウ湯加減方の製剤の組み合わせで、クレアチニンも尿素窒素も、急速に改善している患者さんがあるものの、過去には慢性腎不全の漢方治療の難しさを、痛いほど味わっている。
 それゆえ、かなりな朗報となりうる内容豊富な、注目すべき臨床実践の成果が、かなり詳細に報告されておられるので、欣喜雀躍したほどである!
 キーポイントは、黄耆の使用分量にも関連性がありそうだ。 
 これに弁証論治が加われば、相当に威力を発揮しそうに思われる。
 ただ、小生の薬局では、やはり従来どおりの弁証論治で、クレアチニンや尿素窒素が異常に高くて透析寸前でもない限りは、従来どおり、クレアチニンや尿素窒素を正常化できているので、この記事を常に意識しながらも現実には黄耆の大量使用はまだ行ったことがありません。

(追記:衛益顆粒=玉屏風散製剤などの利用価値も多く、H24年現在は気虚が明らかな慢性腎不全患者さんに重要な併用方剤として併用することで、明らかな効果を発揮している。)

 腎不全患者さんには黄膩苔を認めることが多いので、高濃度の茵陳蒿湯を必要とすることが多く、六味丸系列の方剤とともに必要に応じて衛益顆粒(玉屏風散製剤)や補中益気丸などの脾肺気虚を救う方剤に、尿素窒素(BUN)を積極的に下げるためには大黄の粉末(煎じては無意味)を併用する従来の考え方で、透析を免れた人が現在も何年にも亘って服用し続けておられます。(一生続けるべきだと考えていますが・・・)

 週二回の透析が三回に増えそうで、三回になると会社を辞めざるを得ないという切羽詰った男性でも、この方法で週二回の透析で維持できる状態が少なくとも五年以上続いています。

 黄耆の大量使用は、今後、透析寸前の患者さんに遭遇する機会があれば上記の通常の弁証論治に加えてみるべきか、と考えています。

追記: 過去に二例ほどビクとも反応せずに困惑した苦い経験があるものの、その後は上記のような基本的な弁証論治に薬用量を十分に使用することなどの工夫で、多くの人が透析を免れている。
 今後、もしも十分な改善効果が得られないケースに遭遇すれば黄耆を大量に追加してみる方法を試みるべきかと考えている。但し、上記の方法で今のところは十分に通用している。


 ●●様の眼につきましては、より効果を挙げるために、一度、杞菊地黄丸系列の方剤をイスクラ製の杞菊地黄丸に切り替えてみては如何でしょうか?

 時にメーカー間の薬効の違いや相性の違いは驚くべきほどで、たとえば最近も医療用のツムラ五苓散と、当方で自信のある某メーカーの五苓散の効果の違いを偶然比較する機会があり、歴然とした差異が出ているようです。
 やはり蒼朮(ソウジュツ)と白朮(ビャクジュツ)の問題は小さくないように思います。