今ではアトピーの治療で頻用されている白虎加人参湯なんですが…昔(もう15年以上前ですね)、これを使って著効を得たことがあります。
熱が下がらない患者さんで…しっかりとした体格の患者さんでした。皮膚は肉厚な感じです。
あらゆる治療をしても解熱せず…夕食の時にファミレスで湯本求真先生の本を読んでいたら…「白虎加人参湯の適応症は皮膚がバラ疹の様に赤みがさす」と書かれてあり、ふと患者さんのことを思い出すと…皮膚全体がピンク色をしたバラ疹の様な感じでした。
これは行けるかもしれないと自宅にあった白虎加人参湯の錠剤を砕いて水にといてやり…吸い飲みで飲ませたところ、あれ程の発熱が一日にして解熱しました。
と同時に、その患者さんの右腕が肘関節の所で曲がってしまって伸ばせなかったのが…「よっこいしょ」とか言って伸ばすんですね。ほんと驚きました。
腸の熱は筋肉の緊張と関連が深いんですよね…芍薬甘草湯なども、この関連を利用した漢方薬であると感じます。
その患者さんは、数年後に再度自分が受け持ったんですが…最後の言葉が「また…あの薬が飲みたいな」でした。心の中で泣きました。病状からして白虎加人参湯ではないのですが…別の漢方薬をあげようにも、あげられる時間もなく亡くなって行きました。
自分の出来ることと言えば…「決して無駄にはしないから許して欲しい」と心で思うだけでした。
白虎加人参湯の適応症はガッチリしていて皮膚の肉厚がある感じですね。白虎は陽明の主方ですから…かなり腸の熱があることが条件には違いありません。
その条件にアトピーの患者さんが入っていれば治るのかもしれませんが…アトピーを長く患っている患者さんで、それ程の肉厚があるとも思えず、白虎加人参湯をアトピーの患者さんに使う場合、今一度考えてみる必要があるのかもしれませんね。
お返事メール:貴重な症例のご報告、ありがとうございます。
本来なら先生の御高著に入れられるべきところを一足先?に当方のブログに転載させて頂ける事を心より感謝申し上げます。
白虎加人参湯は、昨今、アトピー性皮膚炎に盛んに使用されていますが、この方剤による治験例がとてもご豊富な先生は、「近代漢方」を提唱された元近畿大学医学部の故遠田裕政先生のようでした。ネットで調べると遠田先生の治験例が豊富なカラー写真付きで拝見できるようです。
しかしながら、小生の経験ではアトピーにおける白虎加人参湯証に遭遇した経験はほとんどありません。きっと鈍感で見逃しているのかもしれませんが・・・。
また、上記の故遠田先生とは一度もお会いしたことはないのですが、月刊「和漢薬」誌にはいつもお隣同士で連載を持っていたのでとても思い出深いものがあります。
また先生が誤解された中医学批判も展開されたのに対して、反論文を発表したこともあります(苦笑。
その反論文を喜ばれて某大医学部の某教授から長々とお礼のお手紙を頂いたことも懐かしい思い出です。
ところで、
>夕食の時にファミレスで湯本求真先生の本を読んでいたら…
>「白虎加人参湯の適応症は皮膚がバラ疹の様に赤みがさす」
とありますところは「フャミレスで」というのに思わず笑ってしまいましたが、湯本求真先生の「バラ疹の様に赤みがさす」という的確な表現といい、先生の患者さんの様子が「皮膚全体がピンク色をしたバラ疹の様な」というこの「ピンク色」というニュアンスこそ貴重な白虎湯系列の重要な症候表現の一つであろうかと思われます。
なお、白虎湯系列の方剤は陽明気分の病変としてとても有名ですが、この理論を覆そうとされる興味深い議論もありますので、御紹介申し上げます。
つまり白虎湯系列の方剤を肺経気分の病変に対するものとする比較的詳細な論説です。
これまでの陽明気分の病変とする定説と比較検討されると意味深長で興味深いものと考えます。
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