最近…経管栄養が盛んになってきて、老衰になり物が食べられなくなった方には経鼻チューブや胃瘻による治療が主流になってきました。
このことに関しては問題点も感じざるを得ないのですが…それは機会があったときにお話することとして、そんな患者さんの末期の症状に注目したいと思います。
体力が落ちた方に、無理矢理…食事を胃に入れると痰が多くなってくるんですね。痰が多い患者さんに限ってお腹の力が落ちていてお腹はペチャンコです。
これは何を意味するでしょうか? 「体力が下がってくると気管支炎にかかりやすくなるんです!」なんて説明する医師も多いのでは???
これを東洋医学的に考えてみると…胸とお腹のアンバランスに起因する症状ではないか?と推測することができます。胸は胸郭に囲まれており…痩せても、その体積を保っています。
一方、お腹は骨に囲まれていないことから…痩せればペッチャンコになります。また…水は体の熱い部分に移動し、体全体のバランスを取ろうと動いているように見えます。
と言うことは…胸が熱くなりお腹が冷たい時は…水が熱い部分に移動して全身のバランスを保とうとするという運動が起きることが予想されます。胸に移動した水は…「痰を出す症状」となる可能性が大きいと思います。
次に漢方的に考えるとすれば…生脈散に注目できます。この生脈散は麦門冬、五味子、人参により成りたっています。
麦門冬と五味子は胸以上に水を巡らせ、人参によりお腹を温めます。これは…胸とお腹のバランスを崩している症状に対して有効な処方であって、胸とお腹のバランスの大切さを教えてくれるような感じを受けます。
加えて…胸が熱くお腹が冷たいという状況で頻脈が起きやすい(生
脈散の主症状)と言うのも、心臓の症状が全身の変化の一端として現れていることの証明になると感じております。
体は素直ですよね。
そんな体の素直さを裏切らない治療をしなくてはいけないと感じます。
いつも全身を診なくてはと痛感させられます。先生を見習って頑張ります!
お返事メール:胃瘻につきましては、小生も高齢の複数の身内に関連した問題で深く感じるところがあります。
(中略)
ともあれ、ご提示されておられる胸とお腹のバランスにおける生脈散証に関わる詳細なご見解、大変興味深く拝読致しました。ご専門がご専門だけにっ!
してみるとあるいは、矢数道明先生のご高著『臨床応用 漢方処方解説』の325頁に掲載される「生脈散合真武湯」が適応するような状態なのでしょうか?
もしもこれらの漢方処方により胃瘻を免れるレベルに回復できるものなら・・・小生がそのような段階の患者さんに接する機会があるのは高齢の身内の者だけです。
その点では先生はその第一線におられるわけですから、漢方処方投与による臨床例のご報告を頂ければ幸いです。
折り返し頂いたメール: 胃瘻に関しては・・・(以下省略)
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