2018年03月03日

アトピー性皮膚炎で、関西から10日毎に通えそうにない人なので、研究熱心な漢方薬局を紹介していたところ

2011年03月03日の茶トラのボクチン(6歳)
2011年03月03日の茶トラのボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ

【 ブログへ掲載の可否 】:転載応諾(ブログへ転載させて頂く場合があります。)
【 性 別 】:30〜39歳の男性
【 地 域 】:近畿地方
【 具体的なご職業 】:漢方薬局の薬剤師
【 お問い合せ内容 】:いつもブログを拝見し、勉強させていただいております。

 先日、村田漢方堂に直接伺い、アトピー性皮膚炎の治療をお願いしたものの、遠方であったことなどから、先生の方から診れないといわれ、ウチの薬局を紹介されたという●●さんがこちらに来られました。

 いろいろな漢方薬を使っている様子だったので、それはどこでもらっているのかを質問したところ、何と!全くの自己流とのことで非常に驚きました。。。

 配合も理論なく、自己流のためか滅茶苦茶で、皮膚も乾燥・浮腫み・痒み・ゴワツキがあり、一見するととても酷い状態に見えました。

 しかしよくよく考えてみると、今までの経験ではそのような状況に陥っている場合、ほとんどの人が皮膚の血色がどす黒く、瘀血によって表層の血流が悪化しており、漢方を微調節したところで患部に到達しないため、あまり効果を実感させるに至らないこともあったのですが、彼女の場合は、まだ皮膚色は炎症による赤みはあるものの透明感があったため、これはイケるかもしれないと直感しました。

 話ではとにかく浮腫みとひび割れと痒みが酷いということで、この原因がどの臓腑由来かを考えたときに、真っ先に手掌角化症で肺が主る皮毛に濁水がたまったために生じる病理が頭に浮かび、日本漢方にて浮腫みと乾燥、肌荒れに用いる麻杏薏甘湯が効くのではないかと感じました。

 その考えのもと漢方では麻杏薏甘湯に利水を強化する目的で薏苡仁エキスを加味し処方しました。

 その処方を1週間続けると浮腫みと乾燥、ゴワツキ、痒みが一気に軽減し、症状が10⇒3になりました。そこからもう1つ工夫を加え、濁水のみならず、組織間の水を動かす目的で越婢湯の方意を応用し、麻杏薏甘湯+薏苡仁エキス+石膏エキスにしたところ、手指のひび割れと乾燥が局所的になくなり、普通の皮膚となってきました。

 現在、その処方を継続し、どこまで濁水を取り除けるかをみている最中です。本人に紹介元の村田先生に報告をしてもよいかと尋ねたところ、「ぜひお願いします」ということでしたので、ご報告させていただきました。

 一昔前にはアトピー性皮膚炎で手痛い失敗を経験し、自信喪失の日々を過ごしていましたが、その経験を糧にして本当に色々と考えることができるようになりました。まだまだ道半ばですが、これからも自分が得た知識と経験をもとに薬局独自の漢方療法を行っていきたいと思います。

 それと先生に1つ、ご了承を頂きたいというか、こちらの勝手な申し出なのですが、僕自身も先生と同じ考え方で中医学と日本漢方をうまく融合させた中医漢方薬学という理念に非常に共感しており、薬局漢方はそういう道をたどるべきと考えておりますが、この名称は先生が考えられたものであり、先生から直接指導を受けたことのない僕が同じ流派を使うことは許されることではないと思います。

 そこで僕自身、中医学と西洋医学と日本漢方を融合させた考え方に基づき、自分の漢方理論を「中正医結合和漢薬学」として1つの流派?という名称を使用しようかと考えています。

 しかしながら、この名称は明らかに村田先生が考えられた「中医漢方薬学」の二番煎じであることは明白であり、使用する前に村田先生に了承を得ておきたいと思い、あわせてご連絡させていただきました。

 仮に使用してよいということになりましたら、自分の流派を立ち上げ、「中正医結合和漢薬学」として今後、活動していく予定です。また逆に使用不可であれば、その名称は用いず、何かほかにいい案が出るまでこの思いは胸にしまっておこうと思います。

 色々な相談者さんをご紹介していただけると同時に、いつもながらいろいろと勝手を申してご迷惑をおかけしておりますが、自分の漢方道をこれからも追い求め、少しでも腕を挙げられるように研鑽していきたいと思います。先生にはまた色々とご質問等するかと思いますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

2011年03月03日の茶トラのボクチン(6歳)
2011年03月03日の茶トラのボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ

お返事メール:ご連絡、ありがとうございます。

 彼女の諸般の状況からは、どうみても莫大な交通費のことを考えますと、10日ごとに関西から通える人とも思えなかった人でした。

 また、丹参末を分けてほしいなどと、自己判断が旺盛な人には、これは扱えない人だなっと思った人でした(苦笑。

 もっと10年前なら、強く説得して1〜2度しか通えなくても、あとはメールのやりとりで頑張っていたかもしれませんが、アトピーだけは、安定するまでに頻繁に通える人でなければ無理だと判断し、ご迷惑とは存じつつも、ご紹介させて頂いた次第でした。

 経過報告を読ませて頂くと、流石に素晴らしい分析による弁証論治と経過、実に見事な采配ですね。

 先日も、8?歳の頭鳴の近畿地方の女性の問題で、娘さんが代理で、何とかならないかというメールが届いたのですが、これだけの長文を書く暇があったら、近畿地方には漢方薬局は多いはず、たとえば●●町の〇〇〇〇〇薬局さんなど、あくまでたとえばですが、と返信したばかりでした(苦笑。

 ともあれ、流派としての「中正医結合和漢薬学」の立ち上げ、おめでとうございます。
 「中医漢方薬学」と同類であっても、一向に構いません!

 もはや食欲以外は、名誉欲も、体力もまったくなくなっていますので「中医漢方薬学」など、どうなっても構わない境地に達しています(苦笑。

 〇〇さんのブログを拝見していますと、最近はますます中医学的にも日本漢方的にも、一段と飛躍されているご様子、将来がますます楽しみだと存じます。

 こちら老兵は、安心して去るのみです(呵々。

2011年03月03日の茶トラのボクチン(6歳)
2011年03月03日の茶トラのボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ

折り返し頂いたメール:早速のご返信、ありがとうございます。

 僕自身、自己流であれだけの漢方を適当に飲まれている人の経験はなく、もしかしたら素直に受け入れてくれず、結局自己流になってしまうかもしれないという思いもあったのですが、話をすると意外とすんなり受け入れてもらえたので、俄然やる気になりました(苦笑)。

 今までの経験上、浮腫んで乾燥して荒れている皮膚には麻杏薏甘湯+薏苡仁エキスが奏功したことが多かったこと、どう考えても病位はそこまで深くなく脾や肝、腎よりも肺の宣発粛降異常に伴う水湿不利であり、上水道の水の停滞であれば、あそこまで皮膚構造が崩れることはないため、下水道の水が停滞していると考察しました。

 病位が肺で実証に属し、上水道の水の停滞であれば、麻黄・石膏の越婢湯の方意を、下水道の水であれば麻黄・杏仁・薏苡仁の麻杏薏甘湯を用いるということを『金匱要略』から読み取り、そのように応用して効果を出せているので、今回もその理屈に基づいて処方を組み立てました。

 ただ今、症状が改善しているのは、これまでため込んできた汚れを掃除しているからに他ならず、その汚れが取れた後にようやく病の本質が現れると思いますので、そのうち大きく処方変更しなければならない時期が来ると思います。

 そのことは既に本人にも伝えているので、今は徹底的に掃除をして、体内から汚れを出していきたいと考えています。

 漢方薬局を開業して10年。

 鍼灸畑から来たせいもあり、一般的な漢方薬局の色に染まることなく、理論的に考える癖があったのが、良かったのか悪かったのか・・・

 ともかくようやく少しずつ自分の臨床に自信を持てるようになってきましたので、この勢いを絶やすことなく、これからも頑張りたいと思います。

 先生から「中西医結合和漢薬学」についての了承も得られたので、これからしっかり自己理論を追及して相談者の悩みの解決ができるようにします。

 これからも何卒よろしくお願い申し上げます。

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2011年03月03日の茶トラのボクチン(6歳)
2011年03月03日の茶トラのボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ
posted by ヒゲジジイ at 10:55| 山口 ☀| アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする

2018年03月01日

桂枝湯における肉桂配合のエキス製剤の問題

2011年03月01日の茶トラのボクチン(6歳)
2011年03月01日の茶トラのボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ

【 ブログへ掲載の可否 】:転載応諾(ブログへ転載させて頂く場合があります。)
【 年 代 】:20〜29歳の男性
【 地 域 】:東海地方
【 具体的なご職業 】:鍼灸師、及び整体師
【 お問い合せ内容 】:

桂枝湯の解表作用について

 この間は写真の掲載ありがとうございました。
 あの世の彼女は喜んでると思いきや、「私を都合のいいダシにしたわね」と怒ってる気もします。
 あの世に行ったら謝っておきます(苦笑)

 あれから先生のメインのブログを最初から読んで勉強したお陰で自分の体がずいぶんとよくなりました。
 内容は【六味丸、茵蔯蒿湯、柴胡加竜骨牡蠣湯(少量)、抑肝散、(頓服)半夏瀉心湯】です。
 色々あった症状もほぼなくなり、気が付いたら4s近く体重も下がりすこぶる快調です。

 昨夜も嫁の風邪でかなりの頭痛になり、血圧の上昇と脈拍の低下がおこり。救急病院を考えましたが、頭部の圧痛点が少陽に顕著で、背部兪穴の反応に肺と肝、隔が強く、脈が浮でしたので、小柴胡湯と参蘇飲をツボの反応等を見ながら少しずつ飲ませました。
 これで無理なら病院だなと思いましたが、30分以内に脈も血圧も正常になり、今朝も娘の幼稚園バスの送りに普通に行けるようになりました。
(本当は鍼灸と手技でやればいいのですが、バタバタしている子供がいるとなかなか難しいです…)

 ところで本題なのですが、肉桂の配合された桂枝湯には解表作用はないような気がいたします。
 上の娘が衛気虚気味で風邪をひきやすく、適応するかと思いきや。衛営の調和は起こりますが、肝腎の邪気がまったく抜けていってくれませんでした。(※触診によるものです)
 その反面、そもそも肺虚気味なので肺陰も弱く、かえって煮詰まってしまったようでした。(反応がよくないのですぐに辞めました!)

 自分でも飲んでみましたが、葛根湯や麻黄湯のように麻黄との配合では反応する感じはいたしますが、肉桂の桂枝湯ではどうも効力を感じ得ません。

 体質も関係するとは思いますが、以前から先生がおっしゃているように『肉桂と桂枝の錯誤』問題のせいで大事な解表作用がそもそもなくなってしまった。傷寒論の桂枝湯にあらざる全くの別物な気がいたします。
 実際には桂枝の桂枝湯を飲んだことがないのでなんとも言えませんが…

 なので先生のおっしゃる通り、外感病の初期には桂枝も麻黄も入ってない参蘇飲が無難であるのは間違いないなと思いました。感謝申し上げます。

2011年03月01日の茶トラのボクチン(6歳)
2011年03月01日の茶トラのボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ

お返事メール:おたよりありがとうございます。

 彼女に限って
>「私を都合のいいダシにしたわね」と怒ってる気もします
というのは絶対にあり得ないと思いますよ。

 我が家のボクチンも、すでに亡くなって5年以上になりますが、薬局の店内はもちろん、台所をはじめ寝室やトイレの中にさえも、長い廊下の壁にもビッシリと写真を張り付けています。

 台所のテーブルの上にも何枚も立てかけていますが、その写真を現在の家猫3匹が、かわるがわる1日に1度は、懐かしそうに写真を軽く舐めまわすことがあるので、日々不思議に思っているところです。

 印刷のインクが体内に入っては困るので、やめるように説得するのですが、それこそいずれの猫も馬耳東風で、1日1度のそれぞれの儀式となっています。

 ボクチンが折々にこの世に戻って来ているのだろうと、勝手に納得しています(笑。

 そちらの彼女も、折々にこの世に戻ってきていると思いますが、時折にしても感じられるのではないでしょうか?

 ところで本題の桂枝湯、ご指摘の通りで、本来、桂枝を使うべきところを、日本で製造されるエキス剤のいずれも、肉桂を使用しているのですから、本来の解表作用を発揮できずに、腎陽を温めてばかりの、へんてこりんな薬効となっていますので、(麻黄の配合される葛根湯や麻黄湯ならまだしも)、日本の桂枝湯エキス製剤となると、まったく使用にたえないかもしれません。

 葛根湯証を呈する風寒束表には、麻黄があるおかげで、桂枝であるべきところを肉桂が使われていても、それほど大きな問題には感じられませんが、桂枝湯となれば、話が別ですね。

2012年03月01日の茶トラのボクチン(7歳)
2012年03月01日の茶トラのボクチン(7歳) posted by (C)ヒゲジジイ

折り返し頂いたメール:返信ありがとうございます。

>台所のテーブルの上にも何枚も立てかけていますが、その写真を現在の家猫3匹が、かわるがわる1日に1度は、懐かしそうに写真を軽く舐めまわすことがあるので、日々不思議に思っているところです。

 なんと!写真に挨拶をするとは…
 猫の感性はすごいの一言なので、何か感じているのでしょうね。
 最近は仏壇に手を合わせない人が増えてるようなので、猫の方がはるかに優れていますね。

東海地方のAさんの愛猫東海地方のAさんの愛猫

 写真の子はかなりのオカン猫で、生前はよく怒ってくれてました。
 いつまでたってもゲームを辞めないのでコントローラーの上に乗ってきてやめさせようとしたり、朝ちっとも起きないので、胸骨にかなりの肉球圧をかけてきて悶絶させたり、起きるまで皴枯れ声で鳴き続けたり。
 あとは、気持ちが落ち込んでいると近くで寝て癒してくれるのはしょっちゅうでした。

 今は自分の部屋に写真を飾ってあるのですが、時たま深夜まで起きてると
「早く寝なさい!」と振り向くと言われている気がするときもあります(苦笑)

> ところで本題の桂枝湯、ご指摘の通りで、本来、桂枝を使うべきところを、日本で製造されるエキス剤のいずれも、肉桂を使用しているのですから、本来の解表作用を発揮できずに、腎陽を温めてばかりの、へんてこりんな薬効となっていますので、(麻黄の配合される葛根湯や麻黄湯ならまだしも)、日本の桂枝湯エキス製剤となると、まったく使用にたえないかもしれません。

 やはりそうなんですね。となると柴胡桂枝湯とかも現方の通りではなく少し違った使い方になってくるわけですね。

 それでは今度桂枝入りの方剤を体験したときに、またご報告させていただきます。

2011年03月01日の茶トラのボクチン(6歳)
2011年03月01日の茶トラのボクチン(6歳) posted by (C)ヒゲジジイ

折り返しヒゲジジイのメール:

 柴胡桂枝湯の場合は、シンプルな配合の桂枝湯とは異なって、各種の雑病から風邪の後期の症状まで、肉桂の配合となっていても、十分に効果を発揮します。桂枝湯ほどは問題は大きくないのが現実のようです。

(追補:肉桂にしても桂枝にしても、エキス剤の場合、精油成分の揮発問題も大きいが、煎薬とて、下手な煎じ方を行っていれば、同様な問題も生じる。)

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2012年03月01日の茶トラのボクチン(7歳)
2012年03月01日の茶トラのボクチン(7歳) posted by (C)ヒゲジジイ
ラベル:桂枝湯 肉桂 桂枝
posted by ヒゲジジイ at 22:02| 山口 ☁| 間違いや問題の多い日本の漢方と漢方薬 | 更新情報をチェックする