2016年03月31日

漢方内科医の先生による最近の漢方治療例

2011年03月31日の茶トラのボクチン(6歳半)
2011年03月31日の茶トラのボクチン(6歳半) posted by (C)ヒゲジジイ

おたより:東海地方の漢方内科医

4X 歳、女性
平成 2X 年 2 月 3 日、「 30 歳の頃からめまい・ふらつき・眼の乾燥感があります。右脚から下腹部に湿疹があり、とて痒いです。ステロイド外用薬を塗って凌いでいます」

 顔は頬が幾らか紅潮し、舌下静脈が怒張し、下腹部に瘀血があり、両手指と足指が冷えていてまして、右下腿の外側に大きな貨幣状の苔癬化したビランと浸出液を伴う暗赤紫色調の発疹が散在していました。

 本治目的として、当帰四逆加呉茱萸生姜湯証と瘀血とのぼせを目標にして、桂枝茯苓丸加薏苡仁合当帰四逆加呉茱萸生姜湯を考えました。表治目的で、ビランがあることから桔梗石膏 ( 静岡のある先生が汎用なさっていました ) 、浸出液があることから猪苓湯と越婢加朮湯の合方を処方しました。

2 月 26 日、「 3 日位してかゆみが楽になってきました。内服薬が切れた途端悪化しました」

 継続処方にしました。

3 月 31 日、「双極性障害で精神科からリーマスをいただいています。この時期から夏にかけてイライラと気分の落ち込みがひどくなります。薬局で抑肝散加陳皮半夏を買って飲んで落ち着きました」

体型的に防風通聖散証がありそうでしたので、桔梗石膏を防風通聖散に変更し、桂枝茯苓丸加薏苡仁を抑肝散加陳皮半夏に変更しました。

4 月 28 日、「脚がひどくなってしまいました」

気候も暖かくなり、のぼせもなくなっていましたので、当帰四逆加呉茱萸生姜湯を龍胆瀉肝湯に変更しました。

5 月 28 日、「脚の発疹は乾いてきて、ボコボコした発疹は平らになってきました。でも眼科に緑内障で通っているせいか頭痛が気になります。眼圧がかなり高いらしいです」

龍胆瀉肝湯で冷えて、当帰四逆加呉茱萸生姜湯の証である頭痛が悪化したと考えて、当帰四逆加呉茱萸生姜湯を再開しました。

6 月 25 日、「やはり脚が猛烈に痒くなりました」

迷いましたが、手足の冷えは改善していて、全身状態も良さそうでしたので、当帰四逆加呉茱萸生姜湯を 1 包に減量し、龍胆瀉肝湯を 2 包に増量しました。

7 月 28 日、「脚のかゆみは少なくなってきました」

バランスがそれなりに取れていると考えて、継続処方としました。

8 月 25 日、「悪くはないです」

継続処方。

9 月 26 日、「夜におトイレへ 2 、 3 回おきます」

 なぜか、防風通聖散を桔梗石膏に変更 (1 包 ) し、当帰四逆加呉茱萸生姜湯を八味丸に変更しました。

1 月 26 日、「調子が比較的よかったので受診が空いてしまいました。眼圧がかなり高いそうで、基準値は 12 以下だそうですが、 20 を超えているそうです。当帰四逆呉茱萸生姜湯がなくなったせいか、手足が冷えます」

 眼圧を低下できればと八味丸を五苓散に変更し、末梢の血液循環を改善する目的でサフランを少量 (0.5g) 龍胆瀉肝湯合抑肝散加陳皮半夏に追加しました。

2 月 25 日、「腕の発疹はだいぶ良くなってきましたが、おなかの発疹の治りが悪いです。ただ、五苓散を飲みだして眼の違和感 ( 眼球が熱くなり圧迫されるような感じがすごく良くなりました。それから、あまり娘にイライラして当たり散らさないようになり、娘から『おかあさん、性格が変わったね』と言われてます。微妙な感じですけど。精神科の先生よると『リーマスは減量してゆきたい』とおしゃってくださってます」

 桔梗石膏を 1 包から 2 包に増量し、お腹の発疹は暗赤紫色調で瘀血が背景にあり、末梢の血液循環が悪い感じがして、浸出液が少なくなっていましたので、越婢加朮湯を薏苡仁末に変更しました ( 前記の静岡の皮膚科先生が、良く使う方法だそうです ) 。

3 月 29 日、「眼圧が 14 まで下がりました。『随分さがったね』と眼科で言われました。やはり五苓散をのむようになってから眼の違和感がすごく改善し、視力も矯正ですけど、 1.2 まで改善しました。皮膚はサフランを増量してから良い感じに乾燥してジュクジュクがなくなってきました。それから、気分的にもサフランが増えてから明らかに良くなってきました。良い感じです。ありがたいです」

 気をよくして、薏苡仁末を 2 包に、サフラン 2g に増量して処方しました。


 下腹部から下肢に散在する苔癬化した貨幣状湿疹、双極性障害、緑内障を持った患者さんに漢方薬を投薬したケースです。発疹については、当地方の漢方勉強会で講演に来てくださった静岡の皮膚科の先生の処方を参考にして改善を得ることが出来ました。緑内障は眼房水の循環障害と理解されていますので、水代謝に影響する五苓散と薏苡仁末の効果で改善が得られたようです。緑内障の方は結構多いので、参考になりました。メンタルの方は、抑肝散加陳皮半夏がイライラ的な情緒不安定に効果があるという印象は経験的にありましたが、末梢血液循環を改善する目的で加えたサフランがかなり効いていることは驚きでした。なにか、血液循環を改善する作用ほかに、ニューロンにも良い影響を及ぼしている感じがしてきました。

 いろいろな病態や症状が一つの生薬やエキス剤で改善してゆく様子を観る事が出来るのは漢方を使うものとして醍醐味ですし、サプライズの連続で、益々漢方の魅力に魅せらています。しかし、これも、村田さんからのお知恵によるところ大ですので、下関方面に脚を向けては眠れません。感謝です。

 重ねてクドいですが、「漢方おそるべし」ですし、漢方薬こそカラダに優しいので soft medication ですね。

 話はかわりますが、少し不便ですけれど、電話のない生活も周囲からの電話の応対をしなくて済む分気楽です。日本も数十年前はこんな感じだったのでしょうか? 便利になるということは何かを失うということかもしれません。

2011年03月31日の茶トラのボクチン(6歳半)
2011年03月31日の茶トラのボクチン(6歳半) posted by (C)ヒゲジジイ

お返事メール:

 方剤の微調整の推移をとても興味深く拝読させて頂きましたが、薏苡仁の眼圧を下げる作用があるらしいことは、当方でも、重症の緑内障で、実際に眼圧の高かった女性が、従来の配合方剤(釣藤散+杞菊地黄丸など合計3方剤)で30近くあった眼圧が20以内に治まり、4度目の手術を免れていたところへ、美容に何かよいものはないかということで、高濃度の薏苡仁エキス製剤を追加したところ、みるみる眼圧が下がって12まで下降して驚いたことでした。

 せっかく半年以上も続いていたのが、春のせいか、最近はまた18くらいに戻ってしまいましたが、確かに薏苡仁は有効なように感じていたところでした。

 そこで、先週、五苓散を追加したばかりでしたので、偶然の符合に驚いた次第でした!

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2011年03月31日の茶トラのボクチン(6歳半)
2011年03月31日の茶トラのボクチン(6歳半) posted by (C)ヒゲジジイ

2011年03月31日の茶トラのボクチン(6歳半)
2011年03月31日の茶トラのボクチン(6歳半) posted by (C)ヒゲジジイ

2012年03月31日の茶トラのボクチン(7歳半)
2012年03月31日の茶トラのボクチン(7歳半) posted by (C)ヒゲジジイ

2012年03月31日の茶トラのボクチン(7歳半)
2012年03月31日の茶トラのボクチン(7歳半) posted by (C)ヒゲジジイ