2014年08月23日
腎不全に対する漢方薬の有用性について
2010年8月23日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母
おたより:東海地方の内科医師
広島では長引く雨で土砂災害が起こってしまいましたが、下関は大丈夫ですか? ことし、こちらはあまりはっきりした梅雨がありませんでしたが、この時期になって結構ケリラ雨が降ることがあります。
最近、ひどい豪雨のなかで受診された患者さんの症例ですが、ご報告させてください。
61歳の女性です。
「歩いていると膝が痛い。今、総合病院に通院しています。片側の腎臓が原因はわからないないそうですが働いてなくて、片側の腎臓だけで生きているようなものと聞いています。そのせいか血圧も高くて降圧剤を内服しています。今日は、とにかく膝を良くして頂きたいです」という症状で初診されました。
腎機能が低下していて、膝から下の下腿部が浮腫んでいて、舌下の静脈が怒張しふくらはぎの静脈も怒張していましたので、八味丸と疎経活血湯と防己黄耆湯を処方しました。
2週間後、再診され「身体が暖かくなってきました。他にはまだ分かりません」とのことで、処方継続しました。
その後、膝の痛みについては、ご本人から話しがありませんでしたので、効果ありと考えて、処方を継続しました。
約5ヶ月後に総合病院の腎臓内科へ受診して検査を受けられました。ご本人いわく、「クレアチニンが一番悪い時に1.9でしたが1.54に低下していました(基準値は0.8まで)。
でも、先生は何もおっしゃいませんでした。ただ、透析にならないようにしたいですね」とのこと。
「担当の先生はデータをご覧になっていると思いますが、お忙しいので説明なさらなかっただけと思いますよ」とお話ししてお帰り頂きました。
初診から8ヶ月後の再診の時、「何時もの血液検査を腎臓内科で受けました。やはりクレアチニンは1.53で1.5台で横ばいでした。でも先生は、じゃあ同じクスリのんどいて、としか言われませんでした」とのことで、「腎機能は安定しているようです。八味丸が効いていると思うので30丸から60丸へ増量します」と説明して、八味丸を増量しました。
1ヶ月後に受診。前回の腎臓内科の検査から1ヶ月あとの定期検査が行われたそうです。ご本人、「クレアチニンは1.61で、先生は、自分が担当してから一番良いデータでした。私がこの病院に赴任して◯◯さんの他にもう一人しか透析しないで済んでいるかたがいます、と言われたのですが、正直微妙な気持ちですね。私の担当医の患者さんはほとんどが透析になってしまっているということですものね」
6ヶ月後の再診、「例によって腎臓内科の検査が三日前に行われたのですが、ある意味大変でした。クレアチニンが1.5に低下しているのを先生がご覧になって、驚いた様子で、私が知らないところで何かやっていますか?」と言われました。漢方薬をずーっと飲んでいることを説明しました。
先生は、「一度死んだ腎臓の機能がこれ程回復することは普通考えられない。でも、漢方薬は内服継続を許可します、とおしゃってくださいました。でも、振り返ると、漢方薬を内服し始めて1、2ヶ月でクレアチニンは1.5台に低下していましたよね」とクビを左右に振りながら最後に「先生はやっと真剣に私のことを気にかけてくださったような気がして嬉しいです」と言って笑顔で帰って行かれました。
漢方薬を処方する側としては、何も特別な処方をした訳ではないと思いますが、改めて漢方薬の凄さを実感出来て、「やはり、漢方おそるべし」という感じです。
他に明らかになったことがあります。西洋医学的に「もう治る見込みはない」と言われても、必ずしもその言葉を真に受ける必要はない、ということです。
この患者さんの場合、専門医の先生の見込み通りですと、透析しなければならない程になっていたであろう病状が漢方薬によって改善した訳ですから、西洋医学的評価は必ずしも当たってはいない、ということになります。
もちろん、だからといって、民間療法的なものがすべて評価されて良いという偏った考えも如何とは思いますが。無論、漢方薬は民間療法類ではありませんが。ただ、漢方は西洋医学の基盤となっている統計学によって埋れてしまっている患者さんを拾い上げることが出来ると思います。
村田さんが個別の患者さんにおいて詳しく弁証して投薬している様子を創造しますと、ネコちゃんが脳疲労の妙薬となっているのかもしれないと思いました。
2010年8月23日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母
お返事メール:
貴重なおたより、ありがとうございます。
腎不全の問題。
漢方薬のよいところは、全身を観察して弁証論治して投与されれば、そのように重要臓器に対しても、良好な効果が得られる点だと思います。
たとえば、重症のアトピー性皮膚炎の人達に対して、初期には微調整の繰り返しになるとはいえ、不思議と多くの人の中心的な方剤が、肝胆系統の方剤や、腎膀胱系の方剤に集約されて行くようです。
ということは、脾肺病のアトピー性皮膚炎の病因となる臓器は、肝腎系統であろうと、結果論からの推論が成り立つように思われます。
これが漢方医学というよりも、中医学の深みのあるところだと思います。
整体観を重視する所以であると思います。
同様に、先生の投与された膝関節炎で投与された方剤の内容を拝見しますと、明らかに腎系統に作用する八味丸が主体で、水湿を調節する防已黄耆湯に、血行を改善する作用も併せ持つ疎経活血湯。
これが結果的に腎不全にも、明らかな効果を発揮していることは、防已黄耆湯中の黄蓍自体が、西洋医学的な研究でも腎不全に効果があることが証明されているだけに、なおさらのことかと存じます。
なお、腎不全に関しては、村田漢方堂薬局ではご相談件数も比較的多く、透析を免れたいがために長期間、漢方薬の連用者が多いのですが、一定レベル以上になると、期間を引き延ばすことが精一杯ということがあるとはいえ、多くの場合、次第にクレアチニンもBUNも改善して、中には腎機能検査自体がまったく正常に復した人すらおられます。
ですから、先生も御指摘の通りで、この分野でも、漢方薬は大いに活躍の場があるものと思います。
いつも有意義なお話し、ブログへの御協力、ありがとうございます。
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2010年8月23日のボクチン(6歳) posted by (C)ボクチンの母
2012年8月23日のボクチン(8歳) posted by (C)ボクチンの母
posted by ヒゲジジイ at 00:06| 山口 ☀| 腎盂腎炎やネフローゼ、慢性腎炎および腎機能低下や腎不全
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