
2008年8月3日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母
虚証と実証の概念
村田漢方堂薬局 薬剤師 村田恭介
恭賀新年
新年早々些か気が引けるものの、あまりにも基礎的な部分の問題なので、せっかくの機会だから記させて頂きます。
ネット上でよく見られる虚証と実証の解説について
先日、久しぶりにネットで「虚証と実証」を検索してみて驚きました。
実証は「体質強壮な人」で、虚証は「体質虚弱な人」、「中間証」は実証と虚証の中間で、中庸のとれたちょうどよいバランスがとれた状態を指すように書かれている。
とするなら、日本漢方では「実証」も「虚実中間証」もまったく健康体であり、断じて病態ではないことを指すことになり、唯一「虚証」だけが病態といえることになる。
とはいえ「虚証」の概念は「体質虚弱」というのではあまりに漠然としすぎているように思われる。
翻って、現実的な問題としては、多くの疾患は虚証が基礎になって発病しているので「邪の湊るところ、その気は必ず虚す」と言われる。
それゆえ、ほとんどの慢性疾患は虚実挟雑の証候を呈するはず。
一般用漢方製剤承認基準の手引書でも
一般用漢方製剤承認基準に増補収載された294処方の解説書『新 一般用漢方処方の手引き』が出版されたという。
いまだに托裏消毒飲(たくりしょうどくいん)が収載されないことには個人的には残念ですが、ともあれ、相変わらず由々しき問題は虚実の概念。
各処方について、虚実の概念を体力のみで分類し、それを5段階表示で適応度をポイント化して示唆している。
T.体力虚弱 U.やや虚弱 V.体力中等度 W.比較的体力がある X.体力が充実
いったい全体、体力とは何ぞや?
漢方専門薬局経営40年のキャリアがあっても、生来筆者の頭が悪過ぎるのか、さっぱり理解できない。
一見して華奢でひ弱そうな女性たちで、いわゆる体力虚弱な人達に、大柴胡湯適応者が五万と存在するので、過去40年間に極めて多数のひ弱な女性達に著効を得ている。
そもそも、虚実の概念を意味不明な「体力」のみで表現しようというのが土台無理な話ではないだろうか。
虚弱で食欲もなく胃が痞えてばかりいた女性達が、大柴胡湯で胃がスッキリとして元気になり、体力を回復した人が多い現実がある。
そろそろ実証と虚証について、これまでのような曖昧で模糊、どうしようもなく漠然とした概念でよしとせず、総力を挙げて綿密な検討を行ってもよいのではないでしょうか。

トラちゃんとシロちゃんとクロちゃん posted by (C)ボクチンの母

2008年8月3日のボクチン4歳 posted by (C)ボクチンの母
ラベル:漢方の臨床