ルリタテハ posted by (C)ヒゲジジイ
呉茱萸湯は古方派時代に超重症の偏頭痛に超速効を得て、大きな手柄を立てたものだと有頂天になった記憶がいまだに生々しい。
拙著「求道と創造の漢方」にも当時、「漢方の臨床」誌に発表したものを転載していたはずである。
しかしながら昨今で需要があるのはむしろ病院治療時に冷蔵庫保存されていた点滴を受けた影響もあってか、入院患者さんがシャックリが止まらなくなって、病院漢方でも止まらないときに、しばしば呉茱萸湯で速効がある例に遭遇するくらいで、頭痛で使用する情況が激減している。
ところで、昨日の開局前の慌しい時間帯に電話がかかったが、受話器を取る時間が取れなかった。9時過ぎて開局後しばらくして同じ電話番号の人から再度かかって来る。
受付嬢は鄭重にお断りしていたが、「オタクに鎮痛剤の呉茱萸湯はありますか?」という問い合わせだったということで、例によって安易に置いているとでも答えようものなら、質問攻めに合うか、あるいは直ぐに買いに行くとか、いずれの場合でも大いに困る場合があるので、電話での漢方薬の処方指名客にはお断りしておくに限るのである。
過去の長い経験から、電話で漢方薬の処方指名でピントが合っていたケースはほとんど1〜2割程度で、多くの場合がまったくのピント外れであった。
昨今は過去のこれらのデーターから、時間ばかり取って説得するのに往生することのあるお気楽な指名客には言下に「置いていません。申し訳ありません」と鄭重にお断りするのが通例となっている。
情報が氾濫する昨今、ネットで調べたり、あるいはテレビやラジオ、あるいは週刊誌などの情報を鵜呑みにして、とんでもない処方を指名して電話で訊ねる人が多いが、素人療法に付き合うのは、この歳になって些か沽券に関わる問題でもある(苦笑。
シロウトが簡単に手が出せるほど漢方薬世界はそれほど安易ではないのだが、世間の開業医さんたちが手帳を見ながら番号で投与される医療用漢方も、素人療法同然と言っても過言ではない。
しばしばトンでもない方剤が投与される事例に遭遇するが、何といっても漢方薬だから度し難いピント外れであっても、安全性においては合成医薬品ほどの副作用発現率とその強弱は比較にならないくらい極めて低い。
そのような安心感があるゆえか、お医者さんたちの漢方的誤投与は頻繁で、いつまでもその尻拭いをやってあげるわけには行かないのである。
モンキアゲハ posted by (C)ヒゲジジイ
ラベル:呉茱萸湯