2010年06月25日

鬱金(ウコン)と姜黄(キョウオウ)の違いについて

ムクドリ
ムクドリ posted by (C)ヒゲジジイ

ブログへの転載の可否 : ブログへ転載を許可します
年齢 : 20〜29歳の男性
ご職業 : 学生 (海外にて勉強中)
お問い合わせ内容: 村田先生初めまして。
 中国語圏の台湾で勉強をしているものです。鬱病等で漢方薬を飲んでいます。

 HPのほう、自分などにはまだまだ理解が追いつかない深い内容で、毎回興味深く拝見させていただいております。
 質問の内容なのですが、下記URL http://murata-kanpo.ftw.jp/u15207.htmlにある鬱金と姜黄の違いについてです。無学な自分の知る範囲の指摘で恐縮ですが、以前農業関係に携わっていましたので、疑問に思った次第です。無礼をお許しください。

 姜黄は沖縄で春ウコンとされているものでマメ科の植物の根ではありませんでしょうか。これはいわゆるカレーのターメリックではなく、味が格段に苦いです。
 鬱金のほうですが、これがカレー粉に入っているターメリックであり、ショウガ科の植物の根ではありませんでしょうか。沖縄では秋ウコンなどと言われていて、色はこちらのほうが黒っぽいのですが、黄色の成分クルクミンはこちらのほうが多かったと記憶しております。

 あるいは、中医学ではこのような分類をせず、仰られるように部位の違いなのかもしれません。お暇な時にでも、ご教授いただけますと幸いです。
 読んでいただきありがとうございました。

ムクドリ
ムクドリ posted by (C)ヒゲジジイ

お返事メール:
漢方薬のウコン(うこん:鬱金)と健康食品のウコンはどう違うのか?

 上記、現在は開店休業のブログですが、数年前に書いた上記の内容、とりわけ前半部分をしっかり読まれれば、ご理解頂けるのではないかと思います。
 つまり、「植物名」としての鬱金と姜黄と、「中医学における中草薬名」としての鬱金と姜黄の違いです。

 このことは専門家でも混同している人がいまだに多数おられますので、一般の方が疑問に思われるのは当然でしょう。

以上、取り急ぎお返事まで。

ムクドリ
ムクドリ posted by (C)ヒゲジジイ

おり返し頂いたご質問メール: 村田先生、お返事ありがとうございます。
 ご多忙でお身体があまりよろしくないとのことですが、迅速に返信いただきとてもありがたいです。
  
 ブログのほう何度か読ませていただいているうち、またわからない点が浮かび上がって参りました。もう少し質問させていただいてもよろしいでしょうか? 本当にお暇のある時でかまいません。

 中医学では姜黄と鬱金と呼ばれているものは同じ植物で、すなわちショウガ科の植物、沖縄でいう春ウコンという理解でよろしいのでしょうか。どうも、何度読んでも誤解しているような気がします。
 理解力が無くて申し訳ありません。

 また、中医学では鬱金は常用されているとのことですが、
下記(台湾の中薬エキスメーカー双璧の1つです)
http://w3.sunten.com.tw/product_list.php?mode=1 では鬱金が見あたらず、姜黄のみとなっています。
 非常に有名で中薬は網羅している会社なので、常用されている品が入っていないというのは考えにくいのですが、これはなぜ掲載されていないのでしょうか?

 これは台湾の中薬は中医学とはまた少し系統が違うということなのでしょうか。

 よろしくお願いいたします。

ムクドリ
ムクドリ posted by (C)ヒゲジジイ

ヒゲジジイのお返事メール:貴方だけに限らないのですが、明らかに読解力不足です。さきほど、

 「植物名」としての鬱金と姜黄と、「中医学における中草薬名」としての鬱金と姜黄の違いです。

と書きましたが植物名というのは基原植物を指しますが、さらに「日本における植物名と、中国における植物名もそれぞれ異なる」のです。
 これに中草薬名が薬用部位によってそれぞれ異なるので、とてもややこしくなり、皆さんが混乱して理解できなくなるようです。


>  中医学では姜黄と鬱金と呼ばれているものは
> 同じ植物で、すなわちショウガ科の植物、
> 沖縄でいう春ウコンという理解で
> よろしいのでしょうか。

 このご質問こそ、皆さんがよく陥る読解力不足です。
 日本で言う「ハルウコン」は、中国での植物名、あくまで植物名(基原植物)は鬱金です。このことはご案内のブログにしっかり書いているはずです。
 植物名としての鬱金と、中医学における中医方剤の配合薬として使用するときの鬱金を混同してはなりません。

 配合薬(中草薬)としての鬱金は、基原植物いずれであっても塊根部分が鬱金として使用され、基原植物が鬱金と姜黄の根茎は姜黄であり、莪朮の根茎は莪朮として中医学で使用される方剤の配合薬として使用されるわけです。

 なお、台湾の漢方に鬱金がないのはとてもあり得ない話です。すくなくとも中草薬としての鬱金は、繁用中の繁用生薬で、中医学を少し学んだものなら基本的で常識的なものであり、やや御幣がある言い方かもしれませんが、姜黄よりもはるかに鬱金の方が重要です。

 もしも上記の説明でも理解困難であれば、万事休すです。

ムクドリ
ムクドリ posted by (C)ヒゲジジイ

再度おり返し頂いたメール:村田先生、返信ありがとうございます。
 ご指摘のとおり、誤解していました、お恥ずかしいです。改めて読み込みました。

 中医学で言う鬱金と姜黄の違いとは、植物の品種の違いではなくて、1群の品種内の 部位の違い(塊根と根茎)で、前者を鬱金、後者を姜黄と言う、という理解でよろしいでしょうか。

 ちなみに、どうも自分の調べた範囲では乙金というのが鬱金とのことで、これは中薬会社の販売リストにも入っています。台湾では鬱金のことを乙金と言っているようなのですが、これは正解でしょうか? (玉金は、やはりリストにありませんでした)

 おかげさまで、現在かかっている中医の先生の話をもっとしっかりと理解できます。
 鬱病および事故による脳出血、硬膜外血腫に先生の根気と覚悟の精神でこれからも向かっていきます。
 簡単なことではありませんが、高杉晋作が幕府軍に向かった時も同じような状況だったと思います。
 本当にありがとうございました。

ムクドリ
ムクドリ posted by (C)ヒゲジジイ

おり返しヒゲジジイのお返事メール:
>  中医学で言う鬱金と姜黄の違いとは、
> 植物の品種の違いではなくて、1群の品種内の
> 部位の違い(塊根と根茎)で、前者を鬱金、後者を姜黄と言う、
> という理解でよろしいでしょうか。

 それで間違いありません。よく理解されました。
 専門家でも理解されてない人のほうが多数派ですよ(苦笑。
 
 但し、莪朮(ガジュツ)の根茎だけはそのまま莪朮(ガジュツ)で、姜黄とは別の中草薬となります。

 なお、中草薬としての鬱金は別名は玉金であり、またご指摘の通り「乙金」という呼び方もあるようですね。それで間違いありません。

 貴方は現在闘病中とか、小生の先祖は高杉晋作にやられた長州藩の多数派だったようですが、多数派を屈服させた高杉晋作は立派なものですね。
 焦らず根気よく頑張って下さい。


編集後記:
重要参考文献:
中医学上の鬱金(玉金)と姜黄と日本の健康食品「ウコン」の錯誤問題について
  ●中医学上の鬱金(玉金)と姜黄と日本の健康食品「ウコン」の錯誤問題について 

 中医学では繁用されながら、日本国内では比較的流通量の少ない中草薬に「鬱金(うこん)」がある。性味は辛苦寒で、帰経は心・肺・肝・胆と作用領域が広く、効能については、@活血止痛・A行気解鬱・B清熱涼血止血・C清心開竅・D利胆退黄など、単味でこれほど多方面の効能を持つ中草薬も珍しい。

 ところで、中医学における鬱金は、日本国内で「ウコン」の名で流通している健康食品類とは別物である。日本市場の「ウコン」は原植物名をあてたもので、中医学では「姜黄(きょうおう)」に該当する。

 中医学上の鬱金は日本の植物名における[1]ウコン(中国の植物名では姜黄)や[2]ハルウコン(中国の植物名では鬱金)または[3]ガジュツ(中国の植物名も莪朮)類の塊根である。

 いっぽう、中医学上の姜黄は[1]や[2]の根茎を指しており、これこそが日本国内における「ウコン」の名の市販品(健康食品類)に該当する。

 また[3]の根茎は中医学・日本市場ともに莪朮(がじゅつ)である。

 以上のように、中医学上の鬱金と姜黄の違いは、決して植物の品種の違いではなく、主には同一植物における薬用部分の違いなのである。

 なお、中医臨床においては鬱金類の効能の特徴にもとづいて「広鬱金」と「川鬱金」の二系統に分類して使用され、前者は行気解鬱に長じる[1]の塊根であり、後者は活血化オに長じる[2][3]の塊根である。

 ところで、広鬱金[1]の主産地は四川省であり、川鬱金[2]の主産地は浙江省であるから、川鬱金の「川」を四川省の意味に取ってはならないのだが、「中薬材」関係の書籍では[1]の主産地が四川省であることから、広鬱金であっても川鬱金と称することが多いので、決して混同してはならない。

 中医学における鬱金の適応領域は多岐に渡っており、肝臓・胆嚢・胃腸・脳血管・心臓・肺臓・泌尿器系・婦人科系などの各種疾患、および各種の出血証に対する要薬であるだけに、日本の健康食品類のウコンと混同を避けるために、鬱金の別名である「玉金」と称したほうが無難である。

 日本市場のウコンは中医学における姜黄であり、玉金とは寒熱が相反し、効能もかなり異なっているので、混同して用いてはならないのである。


ムクドリ
ムクドリ posted by (C)ヒゲジジイ


posted by ヒゲジジイ at 07:18| 山口 | 間違いや問題の多い日本の漢方と漢方薬 | 更新情報をチェックする