2010年04月29日

日本の漢方の実態

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2010年04月21日 漢方処方の重要な薬味「乾姜」の問題について の続き

おり返し頂いたメール:お返事ありがとうございます。

 実は学生時代に、葛根湯を作ろうとした時、生姜4 と書かれていたので、 何も知らないまま、日局ショウキョウを 4g計り込んで、辛くて困ったことがあります。
 その時、はじめて、漢方でいう生姜と、日局ショウキョウが異なることを知りました。

 そういう経験から、ショウキョウは生のことをいうという認識でした。

 私は日本の漢方しか学んだことがありませんので、中医学のことは良く存知ません。

 ただ、村田先生のおっしゃるように、日本の漢方は理論らしい理論が無いと思います。

 漢方の入門書を読んでも、それと実際とが全く結びつかず、結局は、○○、××、△△という症状があれば◎◎湯 というような、いわゆる口訣漢方にならざるを得ないのが現実だと思います。
 病名漢方よりはましな気もしますが……。

 基本概念である虚実にしても、入門書では、汗をかくのは虚証としているのに、汗をかいている時に使う、麻杏甘石湯や越婢湯は実証用の薬方と、矛盾していても平気です。

 最近、『漢方の臨床』誌で、中村謙介先生が太陽病を熱証として良いのかということを提起され議論になっていますが、これも今まで(時々は話題になったものの)そう大きな問題になっていなかったのは不思議な所です。

 この寒熱については今もって良くわからない所があります。

 例えば、
1.砂糖は、よく体を冷えすと言われ、その理由としてサトウキビが南方の暖かい所で採れるからとしています。
 だとすると、北海道などで栽培される甜菜(ビート)から取れる砂糖は 温めるということになるのか?
 一般的な常識では、砂糖はカロリー源になるので、体を温めるような気もします。

2.唐辛子は体を温めると言われますが、もともと南方の植物で、本来は冷やすのではないか?
 実際、インドなどでは、唐辛子を含む香辛料を用いて汗をかき、結果として体温を下げると言われています。

3.越婢加朮附湯のように、石膏と附子が組み合わされたような薬方は、結局、体を温めているのか冷やしているのか?

 などなど、昔からの疑問が何十年とそのままです。初心者から脱出できません。

 大塚敬節先生の功罪は色々あると思いますが、やはり漢方は学でなくて術だとしてしまった所が最大の問題だったと思います。
 病気の治療という面だけで見れば、当時は学としてより術とした方が現実的な選択だったのかもしれませんが、そこで医学としての進歩は無くなったのではないかと思ってしまいます。

 日本の漢方は、将棋に似ているような気がします。
 将棋は、使える駒は決まっていますが、その使い方が名人と素人では異なります。
 将棋の駒を薬方と考えれば、同じように思われます。

 そして、中学生からプロになるような天才的な人もいれば、大人になってもヘボ将棋のままの人もいるように、漢方も、腕の差が大きいように思われます。

 それに、将棋にもある程度の理論(定跡)はあるものの、指す人の好みの型や戦法のようなものもあり、最終的には指す手を決めるのは、結局、理論というよりは直感です。

 これもいわゆる漢方に相通ずる所があるように思われます。

 朮の問題については、昔から混乱があったと思っておりました。
 最初に読んだ本(刈米先生の『生薬学』だったと思います)は、皮を去るかどうかで白朮と蒼朮を分けるとしていて、その後、植物が異なることを知りました。

 局方も昔は朮として記載しており、7改正か8改正の頃までは、白朮と蒼朮の区別がなかったと記憶しています。(かなりあいまいな記憶です)

 大塚敬節先生の影響が大きいとは知りませんでした。

 生薬の基原については 、他にも色々と問題があり、わかって使っている人は少ないのではないかと思います。

 特に日本の漢方は、薬方単位で使うことが多いので、その薬味にまで注意を払っている人は少ないと思います。

 その上、現在は、エキス剤が主流となり、生薬自体、ほとんど知らない人が多いのではないでしょうか?

 このような状態では、村田先生がおっしゃるような生薬の問題を取り上げても、余りピンとこない人の方が多いような気がします。

 思い付いた事を書いておりましたら、結局、まとまりが付かなくなってしまいました。

 この度は、わざわざお返事ありがとうございました。 サイトは時々拝見させて頂いております。
 今後とも、よろしくお願い致します。

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お返事メール: とても貴重な体験談のご報告ありがとうございます。

 また、ブログに転載させて下さい。訪問者は同業者や各メーカーさんが多いので、きっと皆さんの参考と教訓にもなると思います。

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posted by ヒゲジジイ at 00:30| 山口 ☔| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする