2009年08月02日

肥満には大柴胡湯?

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DSC01043 posted by (C)ヒゲジジイ

 肥満薬として防風通聖散が乱売されるのはもってのほかだが、昨今、大柴胡湯製剤も派手に乱売されている模様。

 まだこちらの方がマシかもしれない。僅かながらも信憑性があるからである。
 但し、実証タイプ云々の「実証」や「虚実中間証」などという日本漢方特有の幼稚な概念には問題があるが、ここではこれらの迷妄について論じるつもりはない。

 最も問題なのは、確かに正確な弁証論治にもとづいて使用される場合、偶然、肥満者に適応することはあるものの、現実的には痩身の男女にもしばしば適応するケースが多く、村田漢方堂薬局で大柴胡湯を販売している対象者は8割近く、比較的痩せ型の人が多いのである。

 それゆえ、大柴胡湯は肥満者にだけ適応があって、痩身の人間には御法度などと考える不勉強な専門家が多いので、ここで大きく警告しておきたいのである。

 既に拙著「求道と創造の漢方」にもはっきりと記載している。
 同書は30歳までに各専門誌に執筆したものをまとめただけに、まだ日本古方派時代のものであるが、胆石症に大柴胡湯と題して、かなり的確なことを書いているので次に引用する。
胆石症に大柴胡湯

 胆石症の多くは大柴胡湯の応じる場合が殆どであるということは常識的なことになっている。日頃の健康時の体質傾向的な虚証、実証にはあまり関係しないことも事実であり、実際のところは、胆石症や胆嚢炎に限らず、一見卑弱に見える痩せ型で、胃下垂、内臓下垂型と思われる人にも、季肋部や心下部のみが特別に充実しているのを案外見かけるものである。
 そんな現実を考えると、一般に言われるところの、大柴胡湯は実証向きで、小柴胡湯は虚実中間、柴胡桂枝乾姜湯は虚証向きである、などという言い方は、私は嫌いなのである。こうい見方、言い方は全体的な、総合的で、しかも却って漠然としたもので、実地に役立つのは胸脇部や心下部の部分的な充実度が重要なのである。したがって身体各部の部分的な虚実を云々するならともかく、漠然と、実証だ、虚証だというのは、そのことにくらべればあまり意味のあることとも思えない。
 表現としてはまだまだ拙いながらも既に日本漢方で盛んに言われる実証や虚証、あるいは虚実中間証の意味するところはナンセンスであることに気付いしまった頃の表現である。

 昨今では痩せ薬として派手に宣伝される大柴胡湯だが、たとえ適応証があっても大柴胡湯単独ではかなり非力である。
 実際に肥満に対する効果を増強するには適切な方剤の併用が必要だが、それを実践して肥満体を完全に解消された人は村田漢方堂薬局では数多い。

 適応証があれば肥満にもやや効果があるだけでなく、肝胆系が原因で胃腸のトラブルを生じやすい痩身の男女にも大いに効果があるので、単なる肥満専用の漢方薬などに貶めて欲しくないものである。

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posted by ヒゲジジイ at 21:31| 山口 | 大柴胡湯や茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の真実 | 更新情報をチェックする