2009年03月03日

脾気虚がメインと考えるには、あまりにも矛盾する自他覚症状

年齢: 30歳〜39歳の男性
ご職業: 会社員
簡単なご住所 :関東地方
お問い合わせ内容: はじめて。○○○○と申します。

 西洋人参の帰経と脾気虚について、ご質問があるのですが、体質はとても暑がり、汗っかきで舌は赤く、黄色い舌苔もあります。

 風邪をひきやすいなどや疲労感、下痢などの症状は全く無いのですが、漢方の先生からは、脈診の診断で気虚や脾気虚があると言われました。
 下痢などの症状が全くなくても、漢方の症状では脾気虚がある場合はあるのでしょうか?

 暑がりで、のぼせがある脾気虚の体質改善には、西洋人参は適しているでしょうか?
 インターネットで調べたのですが、西洋人参の帰経は心肺腎になっており、脾には帰経してないと読んだのですが、西洋人参は脾を強くする効果はあるのでしょうか?

 また、イスクラ製薬から販売している香西洋参と西洋人参ではどちらが効果が高いのでしょうか?よろしくお願い致します。


御返事メール:脈診は医師や鍼灸師が行う範疇ですが、主観がとても入りやすく習熟度によってかなり診断能力に差が出やすいようです。ですから脈診ばかりでなく、舌診のほうこそ客観的に把握し、誰もが納得しやすい面があるようです。

 ご報告の様子では、舌が赤いということから、臓腑経絡系統の一部に熱証が存在する可能性が高いと思います。あるいは陰虚も存在するのかもしれません。
 また、黄色苔がある場合は、いずれかの臓腑経絡系統の一部に湿熱が存在する可能性が高いと思われます。

 それなのに、敢えて脈診から脾気虚を強調されるからには舌が大きく嬌嫩(きょうどん)であったり、歯型がくっきりとあるなどの現象が伴っているはずです。これらの状況が伴わなければ、脾気虚の診断もやや怪しくなります。

 もしもこれらの状況が並存するようであれば、上記の熱証あるいは陰虚証に加えてさらに脾肺の気虚が並存するやや複雑な体質ということになります。
 かなりバランスの取れた、上手な漢方処方を組み合わせる必要があることでしょう。

 自覚症状としては、とても暑がりで汗っかきということからは、脾気虚よりも熱証の存在や陰虚の存在の方がより重要だと思われます。

 なお、西洋人参は、中医学的には養陰、清熱、生津であり、また、ご指摘のとおり脾気虚とは無関係です。貴方に適切だとは言い切れませんが、あくまで部分的には当たらずといえども遠からずの部分もあのかもしれません???
 日本では食品扱いですので、効果云々についてはこれ以上書くことはできません。日本は恐ろしいほどの漢方後進国ですのでっ!・・・(苦笑


折り返し頂いたメール:お答えしていただきありがとうございます。

 乾燥肌と二の腕の角化症の治療で、白虎加人参油と少量の黄連解毒湯を飲んだ事があるのですが、ある程度、皮膚病には効果があったのですが、冷やす効果の高い白虎加人参湯や黄連解毒湯は、下痢などの症状がでなければ長期間のんでも大丈夫でしょうか?

 脾虚についてなのですが黄色の舌苔が厚いのですが、舌苔が付着するにはどんな原因があるのでしょうか?
 脾気虚がなくても胃熱や肝胆湿熱でも舌苔が厚くなると読んだ事があるのですが。

 舌苔があるからというだけでは、脾気虚が必ずあるとは限らないのでしょうか?

 また、西洋人参には補気の効果は無いのでしょうか?

 お願い致します。


御返事メール:実際に効果がある方剤こそ正解です。継続服用すべきかどうかは、身近に直接漢方相談を受けられている専門家と相談しながら、他の方剤との配合も絡めて臨機応変に専門家と直接ご相談しながら考えるべきです。

 それ以下の舌のご質問は、基礎理論をご存知ない方に説明するのは不可能ですので、あしからずっ(苔に関する質問のやや支離滅裂なご質問内容から、これ以上のコメントは無理だと判断しました。)


追記:苔の状態で脾気虚を判断するのではなく、主として舌体から判断されるものである。

 気虚があるとすれば、汗かきのことから、むしろ疑われるのは肺気虚の並存である。
 つまりアトピー患者でもしばしば遭遇する玉屏風散証である。黄連解毒湯などの清熱剤に肺脾の気虚に適応する玉屏風散の併用が必要な症例は決して珍しくない。

 なお、常々書いているように、五臓六腑それぞれの各臓腑経絡系統は一人の身体において、寒熱虚実が異なる現象が往々にして生じているので、想像以上に複雑なケースも多々見られるので、厳密に分析すれば、それほど単純に多少の脾虚証があるからといって、それだけをクローズアップすれば、往々にして逆効果の処方が出されるケースも多い。

 最近も、遠来者のアトピー性皮膚炎に、脾虚があるからといって人参湯を投与されて急激に悪化した経験を持つ女性が相談に来られたが、当方で初回に試験的に服用してもらっているのが茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)や猪苓湯や地竜などで、脾虚に対する薬物は猪苓湯に含まれる茯苓と猪苓くらいのものである。



posted by ヒゲジジイ at 19:22| 山口 ☔| 漢方と漢方薬関連の御質問 | 更新情報をチェックする