おたより: 内科医師
アトピーは本人のやる気次第、という記事を読んだ記憶が薄れないうちに(笑)患児のおかあさんから感謝のお言葉を頂戴しましたので、知恵元である村田さんにそのままお届けします。
患児は生後しばらくして顔面を中心とした発疹が出現し、近くの皮膚科を受診。アトピー性皮膚炎と診断されました。
定番のステロイド外用を処方され指示どおり実行していたそうですが、なかなか改善しなかったようです。
初診時には顔面を中心としてほぼ全身に発赤疹が無数に散在していました。かゆみがひどく夜間も不眠でお母さんもかなりバテバテの状態でした。
黄連解毒湯+猪苓湯+茵蔯蒿湯と六味丸+麦門冬湯の処方で治療を開始しました。
かなり順調に改善してゆきましたが、3か月ごろで効果が止まりました。
当時、お母さんが本当に治りきるのか不安で心配であるようすが明らかでした。ひょっとするとそのような母親の心理的状態が影響しているのかもしれない、と考えて、六味丸+麦門冬湯を抑肝散加陳皮半夏+炙甘草湯に変更しました。
そのあと発疹は順調に改善してゆきました。半年の時点でほぼ綺麗になり、そのあと受診されていませんでした。
つい先日、母親が花粉症になって1年半ぶりに再診されたのですが、アトピーのむすこさんと一緒でした。始め私は一緒の男児が以前診てた全身真っ赤の患児であることに気がつきませんでしたが、母親からすごくよくなってこのように綺麗になったことをお聞きしました。
本当に別人のようにきれいなお顔でしたので、私もびっくりして、「あのときのお子さんですか」と発してしまいました。
お母さんが帰り際に、「本当にその時はありがとうございました。一時はどうなるものかと家族ぐるみで大変心配していたのですが、このように良くなって安堵しています」とのお言葉でした。
患児は当時ゼロ歳ですから、お母さんのやる気というか心配症(笑)が効をなして受診と内服の世話を実施されたのも改善の要因の一つかと思いました。
それにしてもこのように治癒する症例があることは今後のアトピーのかたを拝見するうえで大変励みになりました。かさねて感謝いたします。
お返事メール:貴重なおたよりありがとうございます。
アトピー性皮膚炎はほんとうにデリケートな皮膚病だと思います。大人でも四逆散を併用している人も多く、女性では昨今、加味逍遙散を必要とする人ばかりが増えています。精神面の影響も大きい証拠だと思います。
大人の場合(といっても子供さんはお断りしている薬局ですので・・・苦笑)、ステロイド漬けの挙句に、とうとう効かなくなって長年塗布した場所から大量の滲出液が流れ出る状況に陥った人にもしばしば遭遇します。
各地の漢方薬でも結局は寛解することもできず、途中からは増悪の一途を辿って、病院では亜鉛化軟膏類を出されても、却って痒みが増大してしまう人も多く、最高潮に悪化している状態で来られるケースでは、毎日が微調整の緊張を強いられます。
重篤化したアトピーでは、毎日のように配合変化の必要があるケースが多く、滲出液が大量に出る場合は、多くは玉屏風散製剤が基本ですが、これに猪苓湯や六味丸系列の方剤だけでよい人もいれば、さらに茵蔯蒿湯や黄連解毒湯あるいは地竜、時には葛根湯の併用が必要だった人もいます。
葛根湯製剤に六味丸、猪苓湯、玉屏風散製剤という配合が適応した人もいたのですが、半ばで無音となってしまいました。
さまざまなバリエーションがあるにせよ、ステロイドの副作用(またはリバウンド)による大量の滲出液を止めるのにほとんどのケースで玉屏風散製剤が必須ではあっても、遅かれ早かれ不要になることも多く、減量したり中止するタイミングも重要です。
延々と続けていたら、熱証が強いケースでは、途中から痒みが再発してしまう人も多いわけです。
ところで大人でも、三ヶ月間は苦労の連続だった人が、その後の三ヶ月であっさり寛解してしまった時点で、突然無音となった女性達が何人もおられますが、その後の再発はないのかどうか? こちらの方が心配になります。
漢方薬は経費がかかるからと、半年間の弁証論治の苦労をねぎらってくれるどころか、とても耳障りな言葉を発して無音となった現代っ子らしい女性もいました。
短期間で素晴らしい結果が伴っても、時に苦労しがいがないな〜っと思うこともあります。ヒゲジジイは駄々っ子ですから(苦笑。
2009年02月13日
アトピー性皮膚炎と精神面の影響について
posted by ヒゲジジイ at 13:53| 山口 ☁| アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病
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