2008年11月16日

百聞は一見にしかず、とは漢方相談のためにある格言です

昨日の続き

折返し頂いたメール:ご返信ありがとうございます。●●の○○○○です。

 漢方はメールだけでいただいていました。
 30項目程をチェックするものを使い、証を判断していただき肝気鬱血が長期に渡る場合や興奮した状態を化火と言われていました。

1、気滞が存在して内臓の筋肉(平滑筋)に収縮が起こる
2、感情が乱れる(イライラやヒステリックや怒りっぽく、抑うつ感、緊張感が強い)
3、性ホルモンの周期によって体調が変化する

ということなので

 大脳辺縁系の興奮を鎮めていくので(サイコ、シャクヤク)
清熱剤で(オウレン、セッコウ、チョウトウコウ、オウゴン、サンシシ)などを合わせていただいているみたいなのです。

 今年の5月頃婦人科では当期芍薬を渡され1ヶ月ほどで生理痛がなくなりびっくりして漢方に興味を持ったのですが、その後体調も悪くしんどく病院へ行く気がなくなりました。それからまた生理痛が出ました。

 8月末から今の漢方を飲み始めて今月には生理痛がなくなったが生理前に不機嫌になり生理になると体調を崩すのが顕著になったような気がして効いてるのかよくわかりません。仕事を8月でやめたのも関係してるのかよくわかりません。

 やはりそのようなメールだけで診断は不十分ということなのでしょうか。。
 自律神経失調症みたいなのですが。。
 先生にみていただきたいのですが、山口県までは遠いので躊躇してしまいます。
 しばらく考えてみます。
 お忙しい中お返事ありがとうございました。



お返事メール: 前回のお返事でも書こうかと思ったのですが、メールだけで断定はできないので控えていましたが、肝鬱化火といわれるくらいなら、どうして加味逍遥散のような普遍的でオーソドックスな処方が出されてないのか不思議です。

 もちろん加味逍遥散だけで解決するはずのものではありませんが、肝鬱化火が事実なら、諸症状を総合すると、少なくとも加味逍遥散が主軸の処方であるべきであろうと思われます。
 但し、これもメールだけでの相談ですからアテになりません。

> やはりそのようなメールだけで診断は不十分ということなのでしょうか。。

 一定レベル以上の多くの疾患ではほとんど不可能です。商売のためには利益を得るために必要悪ということかもしれません。その理由の一つの詳細は次のページにも書いています。

http://www.canpo.biz/sisei.html

 メールや電話だけで済まそうとするのはとても安易な方法だと思っています。何度も書きますように、商売上は必要悪です。それをしないと食っていけない薬局もありますから(苦笑。


> 先生にみていただきたいのですが、山口県までは遠いので躊躇してしまいます。

 このような状況では来られるには及びません。無理に来られて旅行疲れで却って病を悪化されては逆効果です。(稀にはそういう場合も無きにしもあらず)
 もうすでに、この躊躇だけで当方に来られる迷いは断ち切られるべきです。

 昨今は関東よりも、関西地方から予告ナシに泊りがけで来られる男女が続いています。
 連泊できない人の場合、日帰りで毎月通われている人もおられるので、最初の頃は体力に影響しないか、ハラハラしていたほどです。
 
 躊躇があって、それを無理して来られてもよかったためしは僅少です。
 直接来られている人の多くは、最初から治りたいという気迫と熱心さが違います。前向きな姿勢が免疫力をよりアップさせて、どこへ行っても治らなかったものが一定レベル以上の緩解が得られるです。

 地元近辺で通える範囲の漢方薬局などで、足繁く通って正確な弁証論治を得ることが必須だと思います。何度も書きますが、

http://www.canpo.biz/sisei.html

 ここにも書いていますように、メールや電話だけの漢方相談ではどんなに詳細に行っても、効果が出ない場合はお互いに疑心暗鬼となり、その後の必要な配合上の微調整がスムーズに行えないことがほとんどです。

 百聞は一見にしかず、とは漢方相談のためにある格言です(苦笑。



折返し頂いたメール:早速のお返事ありがとうございます。

 今何をすればいいのか迷っていました。
 近くの漢方屋さんに行けばいいのかと思ったこともあるのですが、どこに行けばいいのかわからず。たぶん腕のいい方で信頼できる人を探していたのだと思います。

 昨日内科の先生にみてもらったのですが別に悪いところはないのではと言われ今一応血液検査はしているのですが、結果に異常なしなら心療内科を受けてみたらと言われました。

 先ほど、今いただいている漢方薬局に加味逍遥散をなぜ使用しないかを初めて電話して聞いてみました。
 胃が悪いので受け付けないから使用しなかったというお返事でした。

 次回の漢方では生理中に血流低下が顕著なので黄体ホルモン辺りへ的をしぼめるということです。
 自律神経失調症の専門の漢方薬局ということなのでやっぱり今のところであともう少しだけ飲み続けてみようかという気持ちになりました。

 勝手な相談をしまして申し訳ありません。
 貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。



【編集後記】 加味逍遥散は肝鬱脾虚に対する治療方剤である逍遥散に牡丹皮と山梔子を加えたものである。肝鬱脾虚に効果がある逍遥散を土台としているので、「胃が悪い」という情況にも効果を発揮することはざらである。
 もしも牡丹皮や山梔子、当帰などが胃に障りそうな不安があれば、適切な併用方剤でなんとでも調節可能である。

 メールだけで即断できないとはいえ、上記のような逍遥とした心の動きと迷いの情況こそ、逍遥散や加味逍遥散証を疑わせるに十分な条件が揃っている。

 思い返せば、ヒゲジジイがはじめてまともな原稿料を頂けた拙論が1978年に月刊和漢薬誌299号に掲載された「加味逍遥散加桂枝桃仁について」であった。

 日本漢方を信奉していた時代から35年、昨年からは異常なほど加味逍遥散証に遭遇する機会が増え、先日も頻繁にゲップを出すのにひどくえづいて、胃の調子が非常に悪く、食欲不振の状態の女性に、高濃度の加味逍遥散に茵陳蒿湯とガジュツを加えてあっさりと一週間くらいで治まっている。

 昨今のようなストレス時代に肝気鬱結はしばしばみられ、肝鬱火化には現実には様々なバリエーションがあるとはいえ、女性で婦人科の疾患が併発している場合の肝鬱化火といえば、加味逍遥散を使用するのが常識である。

 但し、何度も強調しているように一定レベルを超えるとメールや電話でどんなに詳細に情報を得ようとも、正確な弁証論治はほとんど不可能である。
 症状が複雑化すればするほど一処方だけで寛解できるケースはますます困難となりがちであるから、一度も足を運ぶことなく安易な道を選択するといつまでも病気が遷延しがちである。
posted by ヒゲジジイ at 01:19| 山口 ☔| とんでもない話や、信じられない困った話 | 更新情報をチェックする