2008年07月31日

遠来者があるときに2組のお邪魔虫

 本来なら一ヶ月に1名あるかないかのストレンジャー。

 ところがよりによって本日の午後に限っては連続2組。しかも遠方から泊りがけで来られている人がいる間にたて続けである。

 スタッフが少ない薬局だけに大迷惑であるが、遠来者は既に一年間当方の漢方薬を利用され、来局されるのも5度目である。某疾患が7割前後は寛解しているので、もう少しの微調整の問題の段階である。

 ともあれ、そのストレンジャーの一人目は受付嬢のお断りで何とかお引取り願えたが、2組目の二名が某疾患の「お話を聞きに来た」と言って執拗極まりない。
 とても難航して疲労困憊の受付嬢。みるに見兼ねてヒゲジジイが「お断りして帰って貰いなさいっ!」の一言でようやく・・・である。

 一方、メールの問い合わせのほうでは匿名者による「・・・・・・・・の病気に罹っているが東洋医学的な資料があったら送って欲しい」という僅か一行だけの文面で、まことにもって図々しい要求である。

 しかもこれらの連中ときたらいずれも60代の男女である。本日だけで合計4名である。

 この国がダメになるのは当然であろう。若い人達よりも腐っているのは(図々しさばかりが目だって)常識を弁えない中高年後半の連中ではないかっ?!

 といっても午前中に初めてみえた同じ60代のご夫婦、漢方薬で病気を治そうという真剣な態度とのあまりの違いで、よけいに極端な対比現象を感じるのである。
ラベル:無礼者 お邪魔虫

2008年07月30日

猫や犬にも効果があった漢方薬のおはなし

おたより:東海地方の内科医師

 いつも示唆に富むブログを拝見しています。

 個人的に興味深い患者さんとそのペットを経験しました。
 70台のご婦人ですが、再生不良性貧血のため病院の専門内科へ通院してみえるかたです。耳鳴りと頻尿があり不眠とのことで受診なさいました。

 例によって根堀り葉堀り問診をして型のごとく診察を行い、十全大補湯1包と牛車腎気丸2包を処方しました。2週目に再診されたときに、「最近よく眠れません」とおっしゃられ、娘さんいわく、「老齢の猫がいるのですが、夜になると全く寝ません。
 体がえらそうでお世話しないといけませんので。動物病院に連れていって診てもらっていますが、どうも腎臓がよくなくて末期のようです。」とのことでした。

 ダメもとと思い、高齢のご婦人に「漢方薬はご自分で飲んだあとに多少余っているのではありませんか」と伺ったところ、「すこしですが溶かした余りが湯のみの底にあります」とのことでした。
 そこで、「あまっている漢方薬を猫に飲ませてみてはいかがでしょうか」とお勧めしたところ、「一度試みてみます」とお返事でした。

 本当に猫に与えるとは思っていませんでしたが、その次の再診のとき、ご婦人いわく、「猫が眠れるようになりました。おかげで私たちも不眠から解消されて調子がいいです。漢方薬をどんどん飲んでくれました」と感謝してくださいました。

 猫の詳しい弁証は不明ですが(猫はしゃべってくれませんので)、効果があったことは明らかです。
 動物病院でも漢方薬結構いいかもしれません。いろいろ要求の多い人間と違って素直に効果が現れるかもしれないと愚考しました(笑)。


お返事メール:興味深い体験、ありがとうございます。
 漢方薬を服用する猫ちゃんは立派ですね。

 常連さんの高齢の雌犬のあらゆる病気を当方の漢方薬で治療されている方がおられます。先日も甲状腺機能低下と診断されたのに補中益気丸と牛黄+人参の配合製剤で短期間に回復したと喜んでおられました。

 足がへなへなになった冬には八味丸系列の方剤で治ったり、高齢になれば人間様と同じような処方がペットも同様に効果を示すようですね(笑
posted by ヒゲジジイ at 09:56| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答 | 更新情報をチェックする

2008年07月29日

神経を消耗する中高年世代の悲哀(苦笑⇒ストレスによる高血圧

おたより:東海地方の内科医師

 蒸し暑い日が続くなかでアトピーの患者さんなど新規の受診者が増えていますが、村田さんからのアドバイスに基づいた治療がお役に立っているようです。患者さんに変わって感謝いたします。

 過日、個人的に内服について見直しのご助言を頂きまして、杞菊地黄丸のみにしました。多少不安もありましたが、多彩な症状は改善し、血圧も低下してきました。
(後略)


お返事メール:おたよりありがとうございます。
 メールを頂いて、小生も慌てて杞菊地黄丸を服用しましたっ!

 日頃常用している製剤ですが、月曜日の朝寝坊してコーヒーを半分飲んだだけで、朝から薬局がやや混雑し、新人さんも交えて午前中6人続いたくらいのところで久しぶりにフラツキを感じてしまいました。

 どうやらブログに書いた通り土日の睡眠不足が応えてしまったようで、治っていたはずの高血圧が再発したようです。風呂上りには115〜70前後、昼でも仕事が無い日は120〜130で安定していたのですが・・・仕事中は上がっても一時的に150前後で直ぐに下がって来ていた筈が、油断して漢方薬の服用をおろそかにしていたら、この通りでした。(一時的に160をはるかに超える。

 杞菊地黄丸と茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)に丹七粉(丹参と雲南田七の混合粉末)に牛黄製剤などで調子がよいものだから、最近は朝と晩で、朝寝坊した日は服用しない日は夜一回だけになったり、逆に朝一回だけで終わっていたり、服用を怠る人には自己責任だよっというのは灯台下暗し、自分自身のことでした(苦笑。

 ところで、やはりこの温暖化の時代、八味丸のような桂皮、附子が配合された方剤は、たとえ必要があっても短期間に止めておくべきで、高血圧体質の場合はなおさら補陽薬を用いるのは慎重でなければならないようです。
 世間では八味丸のみならず大建中湯の乱用が目立ち、それらによる温補過剰による弊害は、折々に書いている通りです。

 小生も仕事上では繁用する五苓散でさえ、体質によっては桂皮(本来は桂枝であるべき)にあたって痒みが生じたり、ツムラの五苓散で蕁麻疹を悪化させてしまうケースも稀ではないようです。
 といっても必要な時には五苓散などでは、常連さんの場合、痒みが生じかけたら止め時よっと、運用がとても上手な人が多く、彼女たちはいつの間にか玄人はだしです(笑。
posted by ヒゲジジイ at 00:54| 山口 ☀| 高血圧 | 更新情報をチェックする

2008年07月28日

常連さんは女性が断然多いが・・・

 癌や悪性腫瘍では男性の方が明らかに多いが、二十年以上の常連さんともなると断然女性の方が多い。
 常連さんでなくとも、お馴染みさんや最近の新しい人の割合も、やはり癌や悪性腫瘍以外では女性の方が断然多く、この毒舌家というよりも日本人としての最低限のマナーを要求する頑固爺には、不思議と大和撫子が集まる。

 ところが、電話やメールで噛み付かれるのは、男性では有り得ないことで、信じられない暴言を受けるのは決まって女性からである。
 それをやられると日本男児として許せない。許せない理由は、明らかに度が過ぎるからである。
 だから断固として拒絶する。

 男性では有り得ないマナーの悪さを見せるのも、ほんの一部とはいえ、決まって女性であるのは不思議というほかはない。
 最低限のマナーというものがあるだろう。

 このような不満をぶちまけるブログが多いので、極端に緊張して来られる人が多いが、実際にはそれほどガジガジの怖いオヤジではないので、皆一様に安心されるのは当然である。

 不特定多数の人が訪れるブログやサイトだからこそ、逆にこちらの方こそ警戒して、断じてクレーマーを寄せ付けないテクニックを使っているだけだ。
 長い人生経験から、クレーマーには最も警戒している。見抜くのも早い。昨今の日本の現状は、なりふり構わぬエゴイストばかりが増え続けている。堪え性がない。欲求不満を他人にぶっつけて反省がない。

 幸いにも、というか当然だといおうか、常々皆に自慢しているように、ヒゲジジイの薬局にはそのような連中は皆無である。間違って来られれば一瞬にして見抜いてしまうから、有り得ない。
 外界とはまったく異なった別世界なのである。古きよき時代のなつかしい日本である。

 このブログの利点の一つは、こんな頑固オヤジの薬局など、誰が行くものかっと、クレーマー連中に敬遠してもらう為にこそ、もっとも大きな存在意義がある。

 それほど現代社会はクレマーやマナーの悪い連中だらけということだ。患者さんには要職に就かれている男性も多いので、いかにひどい現状かを耳にする機会が多い。
 どうしてこんな日本になったのかと嘆かれながら、ヒゲジジイがうらやましいという。組織にいる限りは真似が出来ない、と悔しそうである。個人営業だがらやれることらしい。
 某企業の支店長さんは長年のクレマー処理の過労から心身ともにボロボロになって来られた。

 ヒゲジジイの顧客にはクレマーやマナーの悪い連中がまったく存在しないのが自慢ではあるが、毎日マイニチ迷惑電話にはお断りの連続である。
 意外にもお問い合わせフォームを利用したメールでは稀なことである。

2008年07月27日

土曜日の午後からは大事なメールが殺到するのに・・・

 土曜・日曜は大事な遠方からのメール注文やお問い合わせが集まる日である。
 そのほとんどは以前、遠路はるばる下関へ泊りがけで来られて以後折々に再来されながらも、通常はメールや電話相談に切り替え、コツコツと漢方薬を続けられている人達である。

 これらの大事なメールとは別に、新たに深刻なお問い合わせメールも混じるので、ブログに利用させてもらうかわりに出来るだけ丁寧にお返事していたつもりだが、延々と付き合っていると仕舞いにはオチョくられてひどい徒労感。(病気をダシに弱者権力ヒゲジジイをここまでコケにする不遜な輩

 神経内科領域の相談だったので「愚娘が神経内科医で・・・」と書いた「愚娘」という基本的な日本語の慣用句に無知丸出しで、

 何が愚娘か、自慢なくせにっ!・・・と惨々な罵りである。

 そしたら序にもっと自慢してやろう、愚息も内科医だよっ!

 だから今回はそいつのメールも削除。お陰で不眠となった。今、朝方4時ではないかっ(苦笑

2008年07月25日

腎不全に病院で投与された大黄甘草湯の問題点

 本日遭遇した恐怖体験。

 帯状疱疹に対する抗ウイルス薬を、医師の禁止にも関わらず過剰に飲用して以後、メッキリ体力を喪失した患者さん。
 しかしながら半年以上、医師もそれを見逃し、高血圧治療の一環として毎日の運動を強く推奨していた。一年に一回の血液検査によりクレアチニンとBUNが暴走しはじめていた。
 そして出された漢方薬が大黄甘草湯エキス製剤である。

 腎不全の兆候が明らかで、同時に浮腫傾向がみられる高血圧患者さんに対し、BUNを改善するのに大黄が有効だからと言って「大黄甘草湯」はないだろうっ!
 通常なら大黄甘草湯に含まれる一日量2gの甘草はそれほど問題とはならないが、高血圧と浮腫・腎不全に対するときはどのような災いが待っているかっ?
 このような基礎的な知識が皆無であることの怖さは漢方の専門家でなくとも常識中の常識ではないかっ!
 
 素人さんでも怪訝に感じて当方に来局されたわけだが、当然、大黄甘草湯は禁止し、甘草の入らない大黄の原末を奨めて、他の数処方と共に透析を免れるべく背水の陣をしいてもらった。
 腎不全患者さんに対する大黄甘草湯を投与することの問題点についてよく説明して、主治医に伝え、当方で奨める大黄の原末製剤に切り替えることの許可をもらうようにアドバイス。
 もしも許可を与えないようなら、直ぐに転院すべきことを強くアドバイスしたことは言うまでも無い。

 テレビなどでは漢方薬は病院でもらいましょうとさかんに宣伝されているが、患者さんも稀には命がけの覚悟が要るときがあるかもしれない。

2008年07月24日

漢方薬による色白美顔術

 荒れ肌と某皮膚疾患に困窮されていた女性が、常用されている漢方薬の補充に来られて驚いた。
 この日差しの強い真夏の真っ盛りというのに、白人よりも白い肌に変身し、ほんの少し前までの荒れ肌とはあまりの変身に、「ちょっと出来過ぎだよ〜〜〜っ!」とこちらの方から苦情を思わず吐いたほど。

 案の定、体調は頗る良いのに皆から「お具合でも悪いのですかっ?」と心配されるほど肌が急に白くなっているのですよ。
 この脱色効果は明らかに高濃度のヨクイニンエキス製剤と高濃度の某漢方製剤の二種類だけによるものだから驚異である。

 これまでのように処方名を明かさないのがミソっ。ギブ・アンド・テイクである。
 体質に合いもしない人に模倣されて、ぜんぜん効かないではないかと、あらぬ苦情を言われたくないからである。
 それでなくとも迷惑電話が毎日続いているのだからっ。

 先日も病院で投薬されたツムラ防風通聖散に関連して、お前のブログではどうして防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)を悪し様に書くのかという苦情があったばかりである。
 コチトラには世間で乱用されている防風通聖散製剤ナイシトールによる副作用情報が数々舞い込んでるんだよっ。

 おっと、色白美顔術と防風通聖散とは何の関係もない、まったく無関係だから、ぜったいに誤解しないようにっ!

 また、ヨクイニンにしても、体質によっては胃もたれを生じて食欲を害する場合があるので、安易に模倣して苦情をこちらに持って来ないように・・・変に真似されて苦情を言われても、こちらでは責任を負いかねます。
posted by ヒゲジジイ at 23:43| 山口 ☀| 若返りや美容関連 | 更新情報をチェックする

2008年07月23日

薬が飲めない状態の腹水の貼りぐすり

性別 : 女性
年齢 : 40歳〜49歳
ご職業 : 会社員
簡単なご住所 : 近畿地方
お問い合わせ内容 : 私の実父(70歳)が今年1月に余命半年と宣告され、7月より入院し、病院の介護の元なんとか生きながらえています。
 まったく動けず、まったく食せず、まったく話せず、ただ点滴だけに頼っている毎日です。ガリガリに痩せ衰えていき、以前のように痛がったり嘔吐を繰り返すこともできなくなった今ですが、せめて本人が一番イヤがっていた<腹水>をマシにしてやれないものか?とご相談のメールをさせていただきました。

 飲み薬が飲めないので、貼り薬とか方法はないものでしょうか?


御返事メール: 田螺(たにし)の殻を除去し身を用い、これに蕎麥粉を振りかけ、どろどろと融けたものをガーゼなどにのばしてお臍の下に貼る。乾いたらその度にはり替える。

 この方法で、二十五30年前に悪性腫瘍末期の女性のご家族にアドバイスしていたところ、驚くほど水が抜けたという(患者さんのご主人から直接)報告を得たことがあります。
 この方法は当時、和漢薬誌?などで読んだ記憶があったので思い出し(て当時それを試すことをアドバイス出来)たのですが、念のためネットで「むくみ 田螺」で検索したところ、

http://app.m-cocolog.jp/t/typecast/89405/80466/4281055?page=2

にありました。腎臓病に用いることになっていますが、当時、間違いなく腹水にも効果があったとの報告を得た鮮明な記憶があります。
上記では民間療法をゲテモノ扱いしているようですが、決して馬鹿にはならないものと思います。


折り返し頂いたメール:早々のご回答ありがとうございました。
早速試してみます!
ラベル:腹水

2008年07月22日

寝冷えやクーラー病に藿香正気散(カッコウショウキサン)が大活躍

 暑い夏には寝冷えやクーラー病が流行る。
 だから今日も電話で常連さんからの藿香正気散(カッコウショウキサン)の補充注文があり、クーラーをかけっ放しで冷え込み、気分が悪くなったので1回飲んだだけで随分軽くなったという報告である。

 強烈にクーラーが効いた会場に長時間いたために南極のように冷え込んでからだをガタガタ言わせて腹満を訴えるお馴染みさんにも販売した。
 夏の常備薬として必需品であるから、常連さんもお馴染みさんも常備している人が多い。

 といっても消費量は意外と少ない。治れば直ぐに止めるように言っているからである。クーラー生活の多い人には、飲み過ぎない程度に、臨機応変の使用方法を伝授している。
 胃腸にはとてもよいが、乱用すると粘膜を乾燥させてしまうからである。

 胃腸に来ないクーラー病では葛根湯も大活躍している。でも藿香正気散と同様に乱用すべきではない。

 今日は疲れたからこのへんでっ


参考文献:注意が必要な漢方薬(肺陰を損傷しやすい漢方処方)
posted by ヒゲジジイ at 20:58| 山口 ☀| 熱中症や冷房病 | 更新情報をチェックする

2008年07月20日

熱証タイプの気管支喘息患者さんが3名連続すれば慢性疾患の温暖化が著しい証拠のように思える

 同じアレルギーでも気管支喘息で来られる人よりも、成人のアトピー性皮膚炎患者さんに遭遇する機会の方が多いが、ここ数ヶ月の間に続けて三名の気管支喘息患者さんが御相談に見えていずれも明らかに熱証タイプの人ばかり。
 二名は小陥胸湯加味製剤合辛夷清肺湯が主方剤で明らかに有効、もうお一人は地竜を主体に体質改善三点セットの併用で明らかに有効である。

 やっぱり温暖化は人体にも及んでいても当然であろう。
 にもかかわらず三名とも多かれ少なかれ、各種の間違った温め療法で被害を蒙っていた。

 しかしながら、ここで注意を強く喚起しておかねばならかいことは、熱証に偏った持病を持たれていても、強い寒邪に遇えば一時的に寒証に陥ることはあり得る事で、やや熱証に傾くアトピーがある人でも、折々に葛根湯証の頭痛を呈する人も珍しくない。
 一時的な風寒束表である。

 先日も、典型的な実熱証と陰虚火旺証が合併していたアトピー性皮膚炎の男性が、20度のクーラーでひどく寝冷えして強烈な悪寒とともに頭痛・吐き気でどうしようというメールが舞い込んだ。
 地元だから来れない距離ではないが、動けないからメールが来たのである。

 全面的に現在服用中の漢方薬は一時中止するように厳命し、かわりに藿香正気散(カッコウショウキサン)だけを服用するように指示。(バッファリンも併用したとのこと)
 結果は二回の服用で完全に治ったので、従来の清熱解毒剤を主体にした多種類のアトピー治療方剤類を直ぐに再開している。

 このように熱証や陰虚証体質であっても、気象条件や生活環境条件によっては一時的な外感風寒の症候を呈するので、臨機応変な配合変化がここでも必要になるのである。

 しかしながら、上記の気管支喘息の患者さんたちに限っては、過去の病歴を詳細に検討してみたところ、風寒束表に見舞われても直ぐに温病に転化しており、二名の人は明らかに葛根湯を代表とする麻黄や桂枝など辛温発散の薬物が配合された方剤は、どのような時にも使ってはならない体質者のようである。
 つまり発作を誘発する風邪症状はいずれも外感風熱の症候を呈していたということである。

 ところで、とても重要なことは四季を通じてお腹だけは保温に注意すべきで、お腹が冷え過ぎるのはよくないことである。

2008年07月19日

本人不在で漢方薬を販売する特殊例

 ガジガジ頭に見えるヒゲジジイでも、内容如何によっては柔軟に対処できることがあるのが常連さんからの依頼である。まさに特別待遇することがあっても当然であろう。二十年以上もどっぷりと中医漢方薬学に嵌って漢方薬の何たるかを体感的に熟知されている人達である。

 常連さんのお孫さんが遠くに在住ではあるが、来れる状態ではないので何とかならならないかとの依頼は、これが初めての人であったり、多少のお馴染みさん程度であっても、すべて絶対的にお断りすることは常日頃から徹底している。
 
 ところが常連さんともなると心得ていて、かなり的確な情報を収集して詳細な報告があり、一部の配合薬もみずから示唆するほどの知識を持っているから話が早い。
 二方剤の提案は常連さんからあり、もっとも主軸になる方剤はこちらから提案し、併せて三方剤。

 早速、送って服用後の反応は(信頼感というバックアップの薬が後押しするのか)的確な著効を得たのである。
 新人さんで著効があっても、稀には先日書いたように逆に大きな態度をされるのとは大違い、常連さん達からは心から感謝してもらえるから、また頑張らなくちゃ〜という意欲も湧くというものである。

 巷では、漢方はやさしいとか、漢方薬は効かないとか、様々に言われているが、決してやさしいとは思わないし、一昔前の多く医師たちがのたもうていたように「漢方薬なんて効くわけがないっ!」とも思わない。

 時に難問の数学を解くように、一定期間、お互いに難行苦行を強いられることもあるが、想像を絶する著効を奏することも決して珍しくないのが中医漢方薬学なのである(笑。
posted by ヒゲジジイ at 18:24| 山口 ☁| 漢方薬および生薬・中草薬・漢方の即効例 | 更新情報をチェックする

2008年07月18日

どの漢方メーカーの麻子仁丸(ましにんがん)が良いのでしょうか?

性別 : 男性
年齢 : 60歳〜69歳
ご職業 : 会社員
簡単なご住所 : 関西地方
お問い合わせ内容 : ネット拝見しました。
 麻子仁丸についてお伺い致します。
 メーカーによって差があるとブログにお書きですが、どのメーカーのものがいいのでしょうか?

 小生ヘルニア手術(5年前)後の癒着で本年始めから下剤なくして排便不可能となりました。もっとも子供の頃から内蔵下垂で胃腸は虚弱ではありますが。
 ネットで麻子仁丸がいいと知りましたが、どのメーカーがいいのかご教示下さい。

 また上記症状には麻子仁丸以外に最適な他の漢方薬があればご紹介下さいませ。
 よろしくお願い致します。


御返事メール:ネットは便利な反面、ご本人の体質がわからないまま、このような文面だけで適切な漢方薬が見つかるものと錯覚を起こされる現象が多々見られます。

 貴方に麻子仁丸が適切だという前提で問い合わされるのも問題です。

 癒着症状が原因の便秘であれば、より適切な配合が必要かもしれません。一つだけの処方に頼っていても埒が明かないことも多いのです。
 たとえ麻子仁丸で排便が可能になったとしても、癒着という誘発原因および本来の体質を考慮した配合(処方を組み合わせるなど)が必要なこと多いものです。
 麻子仁丸だけでは中途半端な効き目に終わり、また他の薬を追い求める結果となるかもしれません。

 お住まいの近辺にも漢方専門薬局があるはずですから、直接出向いてよくご相談されて、病状と体質に合った漢方薬を求めて下さい。


参考文献: 麻子仁丸について述べているブログで注意を強く喚起していること⇒
記載内容はすべて専門家向けです。一般の方がヒントにされる場合は、必ず医師・薬剤師など近隣の漢方薬の専門家に御相談下さい。素人療法は絶対に禁物です!
 なお、ネット上での販売目的の利用や引用に関しましては、かたくお断りします!!!(漢方薬を含めた医薬品のネット上でのお誘い販売は、多くの識者から医療事故を引き起こす危険性が大きいのではないかと、強く危惧されています。)

—━漢方専門薬剤師による漢方薬方剤漫遊記

posted by ヒゲジジイ at 19:52| 山口 ☀| 間違いや問題の多い日本の漢方と漢方薬 | 更新情報をチェックする

2008年07月17日

クレアチニンを下げる漢方薬はありますか?

簡単なご住所: 東北地方
お問い合わせ内容:  HPを拜見いたしました。一番分かりやすく丁寧に書かれてありましたので興味深く読まして頂きました。

 ◎男、70歳、4、5年前からクレアチニンが4〜7の間を上下してます。
 体重62,2kg、血圧140/80 月2回通院 尿蛋白+2 自覚症状特になし

 ◎6/30クレアチニン7.2◎5/22数値 中性脂肪199、BUN78,7 血清クレアチニン6,7 RBC 350、 ヘモグロビン10,4、その他は正常値。

 ◎5/8に、血清クレアチニンが7,1になったとき医師が、人工 透析の準備が必要。と言っておりました。
 人工透析をしないように漢方藥がありましたらご指導ください。
 クレアチニンを下げる漢方藥があるものですか?


お返事メール:クレアチニンと尿素窒素(BUN)を低減させて透析を免れた人は、当方でも沢山おられますが、いずれも安定するまで10日毎に通いつめることが出来た人たちばかりです。
 それほど厳密な弁証論治が必要ですが、一定レベルの段階を超えると五分五分の賭けになります。

 検査数値を拝見すれば、同レベルの段階の人では通い詰められる状況下でも、透析時期を延長できただけで、結局は透析せざるを得なくなった人もおられます。
 すでに一定レベルの段階を超えておられますので、とても微妙です。

 地元で7〜10日毎に通い詰められる状況下では、あるいは5割くらいの確率はあるかもしれません。なるべくベテランの漢方専門薬局をお近くで見つけてみて下さい。

 体質も分からないまま、ここでヒントになる処方を挙げるのは誤解を招く可能性が高いので、差し控えます。必ずベテランの経験の深い専門家を地元で見つけられるべきです。
 以上、簡単ながらお返事まで。

2008年07月16日

漢方薬がせっかくシャープに奏効しても、彼等彼女等のその後の言動

(1)猛暑なのに、風邪でもないのに明らかな葛根湯証を呈している人が続く。職場のクーラーの影響が大きいのだろう。

 フラツキや眩暈が葛根湯単方で治るなんて信じないもいるだろうが、先日のブログでも報告した人は、薬局で服用して帰られて後は完全に症状が雲散霧消している。今度は残っている耳鳴を治して欲しいという希望である。

 香蘇散を追加しておいたが、今度ばかりは簡単には消えないだろうと引導を渡しておいたが、先日の来局当初の悲壮な風貌とは一転している。
 フラツキの「フ」の字も言われないのでこちらから訊いたほどである。
 一気に症状が雲散霧消したからといって、最初に来られた目的をお忘れかっ!? こういう低額な漢方薬で速効する人ほど態度がデカくなる場合がある。

 人間様はこのようにゲンキンなものですよっ。

 新人さんが毎日続いていると、安定した効果がなかなか出ずにうまく配合が決まらないとき、無い頭を振り絞って難行苦行することの多い毎日だが、速効すれば速効するでこんなことなら・・・こんな時こそやる気を喪失して、この仕事を放り出して逃亡してやろうかと本心で思うときである(苦笑。


(2)足に出来た湿疹がひどい色素沈着、何とかして欲しいと悲壮な訴えで、なかなか難航しそうだがと出した三種類がよく奏効して順調に経過して大いに喜ばれていたが・・・
 そのまま音信が途絶えたので忘れかけていたが、久しぶりにやって来て、三種類のうちの一種類だけを求める。
 他の二種類はネット上のお誘い販売サイトで同じ値段で購入しているから不要だという。この一種類だけがどうしてもネットでは見つけられなかったから二種類だけで続けていたが、やっぱり三種類の併用の方がよいようだと、当然のことをのたまう。

 当方では既にそれらの二種類ともにお誘い販売サイトよりも◎○以上販売価格を下げていたが、口が裂けても伝えなかった。
 逆ギブ・アンド・テイクのつもりである(苦笑。


(3)印環細胞癌によるスキルス胃癌が卵巣転移して手術後、腫瘍マーカーは最悪の状況を迎え、抗癌剤治療が裏目に出てますます上昇、意を決して当方の漢方薬類を利用されて以来、連戦連勝続きで腫瘍マーカーはおろか全身の精密検査も完璧に合格。

 ところが一年が経過したくらいで、もう服用量を2回に減らしてしまい、「いつごろ止めてもよいか?」との質問には「何をお考えかっ?」と問い質すほど。
 一生涯服用すべきで、今度再発や転移をした場合、同様な結果が得らるとは限らないですよっと説得する意欲は・・・もうない。

 すでに同じことを何度も回答したはずのものである。
  村田漢方堂薬局の為に買ってあげるのではない、ご自身の命の為に購入されているはずである。

 健康のありがたさ、適切な漢方薬を見つけ出す苦労、および漢方薬の恩恵を深く感じられている常連さんたちとは大違いの人達。

 ご自分の身体のことですから、最終的には自己責任で自己判断して下さい。説得する意欲はもうありません。

2008年07月15日

顔が思い出せなくなった漢方薬のお馴染みさんも多い

 当初はなかなかしっかりしたピントが合わずに右往左往して、ようやく1〜2年近くなって安定した効果が出始めて以後は電話注文による送りに切り替わった人が、いつの間にか十年以上のお付き合いになっている人達が相当な人数にのぼる。

 たとえば皮膚炎に慢性気管支炎が合併していた人など、皮膚炎の漢方薬は直ぐに見つかったものの気管支炎の方がなかなかピントが合わなかったことを覚えている。タバコを止めないのも問題だった。
 
 そうこうする内に、いつしか気管支炎の方は治って、シャープに効いたはずの皮膚炎に対する漢方薬は常に注文がある。気管支炎治療のためにステロイドの内服が長かったらしく、その副作用だと言われていたように思う。
 その後遺症がいまだに続いているのか(あるいはもしかしてまたステロイドの内服が続いているのか?)十五年以上、思い出したように注文が入る。1〜2年は熱心に通われた人であっても、もう顔が思い出せない。

 同様な人が何人もおられる。三十五年もこの仕事をしていると、常連さんとまでは言えないが、いつの間にか電話相談から電話注文に切り替わって細々と長い付き合いになっている人がとても多い。
 いずれの人も、会えば直ぐに顔が分かるだろうが、会わずに思い出すには些か無理がある。

 しっかりした効果が出せる漢方薬の配合を見つけるのに苦労した人達に多いが、それらの慢性疾患はいずれも9割以上の寛解を得ていても、根治までに至ってない証拠に、思い出したように注文が入るのである。

 常連さんのように徹底的に服用されれば、あるいは根治もあり得るのだろうが、電話注文に切り替わって以後の服用ペースでは、そうは行かないようだ。
 しかしながら、各種治療に失敗して来られた人達だけに、奇特にもへたな中医漢方薬学に賭けて下さり、苦労の末に8割以上の寛解を得て後、途切れ途切れでも長期間継続されているからこそ、ひどく再燃することもない。安定した状態を持続されているのだから、結果的には正解と言えるはずである。

 長年苦労された慢性疾患が、そうそう簡単に根治するはずもないが、8割以上の寛解を得て、それが持続出来れば文句はないはずだ。
 時に神経質な人が、百パーセントの根治を望まれ、残りの1〜2割を焦り、不満を漏らす人がおられるが、常連さんのように徹底して漢方薬に嵌らないことにはなかなか百パーセントなんて有り得ない。

 単なる膀胱炎や風邪を治すのとは訳が違う。

 宿痾がそうそう百パーセント根治していたら、人間様は永久に死なないことになる理屈ではないかと、他のブログでも書いたばかりであった。⇒<保険適用外で豊富に存在する優れた漢方製剤(医薬品):漢方薬局経営薬剤師の一喜一憂/a>

2008年07月14日

具体的な漢方処方を提示することの問題点

 最近の新人さんで目立つのが、当方のブログ類を御覧になって様々に模倣してみたが、一向に改善しないのでとうとう直接やって来られたケースが続く。

 とりわけアトピーのように最初の間は臨機応変に方剤の配合変化を行う必要がある疾患に対して、どうしても素人さんは固定的に考えてしまうので、逆効果の方剤を熱心に続けていて、少しは効果があったように誤解していたケースもみられる。

 膠原病などでも、どの辺を御覧になったのかは知らないが、つまみ食い的な使用方法ばかりだから、長期間、無駄な努力を重ねられていたケースもある。
 いずれも既にツムラの保険漢方は何度も経験済みで、治らないからサイトで検索して自身の研究で漢方薬の素人療法を行っていた人達である。

 一定レベル以上の疾患では、ピントのあった基本骨格の方剤を見つけるのにしばらくかかる場合があり、アトピー性皮膚炎のように変化が激しい疾患では、常に臨機応変の配合変化が必要になることも心得ておかねばならない。

 たとえば分泌物が多いケースや、全身から汁が流れるほど出て体力を喪失して命の不安まで覚えるほどだったケースなどでは、初期に絶対的に必要だった玉屏風散や玉屏風散+補中益気丸というケースも珍しくないが、かなり改善して一年も経つ頃にはむしろ邪魔になり、体質改善の基本方剤から外す必要が生じることも珍しくないのである。

 とりわけ変化の激しいアトピー性皮膚炎では、連用する方剤を固定的に考えてはならず、常に必要な基本方剤がどれであるかを見極めた上で、折々に配合比率を変化させる必要があり、あるいは併用すべき方剤が異なる臨機応変さを必要とする。

 その常に必要な基本方剤ですら、8割程度の寛解を得て以後は、一部方剤を入れ替える必要が生じることも稀とは言い切れない。
 使ったり使わなかったりする必要が出てくる方剤も多いし、そのようなきめ細かな配慮がなされればなされるほど改善率が向上するのである。

 アトピー以外の疾患でも、葛根湯系列の方剤では常用する方が良いとは限らず、長期間必要とするにしても適宜使用した方がよいケースと、常用すべきケースと大きく分かれる。
 適宜使用すべき人が常用してしまうと、この暑い季節だから桂皮や麻黄の辛温発散作用により、皮膚に痒みが勃発する事だってあり得る。

 あまり具体的なことをこれまで書き過ぎたつもりはないのだが、却って中途半端な書き方が多かったために、専門家には割り引いて考えてもらえるだろうが・・・。
 ところが、中医学理論や中医学の基本用語に暗い素人さんに模倣されるケースを想定していなかっただけに、今後はブログの書き方をどのようにすべきかと思案しているところである。

 一定レベル以上の疾患ともなると、素人さんがちょっと齧りで模倣しても、ほとんどうまくいくはずもないのが目に見えているのだから。
posted by ヒゲジジイ at 00:47| 山口 ☀| アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする

2008年07月13日

大建中湯製剤の問題点の続報

2008年07月05日 痒くなる副作用が目立つ大建中湯エキス製剤の問題点 の続報っ!

おたより:先日、老父の夜中のガスによる腹痛について相談させていただいたものです。

 なんとか漢方薬局を探し当て、先生から教えていただいた薬を買いに行ったら、親切に相談に乗ってくれ「大建中湯でだめだったなら、あなたのいう薬が私もオススメです。」といっていただき、「まずは1週間試しなさい。」といって小分けで売ってくれました。

 6日間で痛みは半分以下になりました。

 本日報告に行って、もう少し量を増やしたほうがよいかうかがったところ「もう少しこのままの量で継続したほうがよい。量の増加やら他のことを考えるのはその後です。」といわれました。
 また一週間後、再度ピントあわせ・調整することになるかと思いますが、なんとかメドがつきそうで大変嬉しく思いました。

 よいアドバイスを与えてくださり、有難うございました。
 再度、お礼まで。


御返事メール:ご丁寧に御報告ありがとうございます。
 少しはお役に立てたかと思うと嬉しいです。

 保険適用外の漢方薬は、とてもバリエーションが豊富ですので、勉強熱心な漢方薬局でご相談されれば、今後もこまごまと助けになることと思います。
posted by ヒゲジジイ at 00:05| 山口 ☔| 大建中湯の誤投与による不快反応や副作用 | 更新情報をチェックする

2008年07月12日

高血圧体質の人に葛根湯を用いることの是非

昨日の続き

折り返し頂いたメール: 葛根湯は血圧のことがすこし気になりますが、適宜使用であれば影響はすくないかもしれませんね。
 いつもありがとうございます。


ヒゲジジイの御返事メール:ちょうど本日(昨日11日)「真珠腫性中耳炎」が原因とみられる頑固なフラツキで来られた同年代の方がおられました。

 まさに葛根湯証の条件(首の真裏を軽く揉むと気持ちが良いというのと、同じ首の真裏を温めると気持ちが良いという二拍子揃う)ぴったりの女性でしたので、胃弱を考慮してオルスビー錠とともに葛根湯製剤(1日量:葛根4、麻黄2、甘草1の配合比率)を直ぐに薬局で服用されましたが、帰られる30分後には効果が出ていましたっ!
 その方は右肩がひどく下がって背骨も曲がり、明らかな頚椎症合併が疑われる様子でした。

 なお、日本流の漢方では葛根湯が高血圧にも有効例があるとの記載を古方派当時何度も目にしていますが、葛根の分量が多ければ多いほど脳内の血流量を改善し、葛根自体が高血圧にも有効です。

 但し、麻黄や甘草の配合比率の多い製剤では高血圧を悪化させる可能性がありますので、葛根湯製剤の選択には慎重さが要求されると思います。
 その点ではツムラの葛根湯製剤は比率的に問題がありますので、高血圧傾向の患者さんには半分量で様子を見ざるを得ないと思います。


追記: 過去、中国国内では葛根単味による臨床実験による高血圧およびこれに付随する頭痛やフラツキ症状に対する有効性を証明するデーターが各種発表されている。湖北中医雑誌1985(1):27や中国医学科学院など。
 それゆえ、葛根湯中の麻黄や桂枝・甘草・生姜が心配な場合は、葛根単味を煎じて利用することが無難かもしれないが、明らかな葛根湯証を呈している場合は、葛根の比率の高い配合で慎重を期して少量から適宜使用してみることも必要だろう。

 また、中年前後からは八味丸ではなく六味丸合葛根湯というケースはしばしば見られることであり、葛根湯合杞菊地黄丸ともなれば、受験生から高齢者まで、意外に適応する人が多いものである。

2008年07月11日

もしかして葛根湯証を呈する頸椎症が原因の「フラツキ感・軽度耳鳴り・めまい」では?

おたより:東海地方の内科医師

 ブログを拝見していますとお忙しい毎日をお過ごしのようですね。当クリニックも、中医漢方薬学もどきの投薬を行いすこしずつではありますが、馴染みの患者さんが増えていまして、何とか息をつないでいるところです。
 なかには、一回の受診だけでそのあと来院していないかたもいらっしゃいます。効果の現れるのが遅いという印象をお持ちのかたの場合、もうすこし時間を頂戴できればと思うこともあります。

 最近のご時勢からいって超即効をご期待のかたがだんだん多くなり、当方も余裕のない診療を余儀なくされる傾向が日増しに大きくなってきている感じがします。でも可及的速やかに正確な弁証を行えるように日々研鑽を心していかなければとも思っています。

 前置きがやや長くなりましたが、個人的に相談にのっていただければと存じます。
 血圧は降圧剤とチョウトウサン、ハチミガン少量(一日10丸)を服薬し、夕食のあとジュンチョウトウを1包内服しています(内服しないと硬い排便となります。リアルの話で恐縮です)。
 
 おかげさまで血圧はまずまずで、排便も出だしはやや硬いですが、普通便からやや軟便がでています。
 舌は紅で、以前は薄い黄色苔がありましたが、目立たなくなっています。

 この最近午前中の診療の10時半過ぎになりますとやたらと眠くなります(就寝が1時過ぎになることも影響しているかもしれません)。
 そして、これは随分まえからの症状ですが、フラツキ感・軽度耳鳴り・めまいがあります。
 土曜日の診療を終了すると結構フラフラになるのは脳疲労のせいでしょうか。さほど頭を酷使しているとも思えないのですが。

 さすがに、患者さんの前でウトウトすることはありませんが(笑)、何とかできないかと愚考しています。
 ご助言くださいますようにお願いします。


御返事メール:先生も御多忙続きのご様子、お互い老体?には応える毎日のようにお察し申し上げます。
 といっても先生はまだ中年真っ盛り、小生は五十代でもすでに老体の気分です。

 実に馬鹿げた妄想ですが、いつまでも血気盛んな頃の自身のイメージから脱し切れないまま、気が付けば既に中年っ!
 まさかこんなに年を取るはずではなかったのだがっ!

 三島由紀夫の小説にしばしば出て来る「夭折」するはずだったはずだが・・・、このような老醜を晒す身になるなど信じられない毎日。
 どうせ老醜を晒すくらいなら、この腐り切った日本を少しでも古きよき時代を思い出させようとはじめたはずのブログ 文武両道・失われた日本の心も、昨今は放置したままのテイタラク。

 何を書いてるのやら、心身ともに疲れ切る毎日。昨今、新しい来訪者がずっと続くことは喜ばしい事ながら、繊細な神経が常にピ〜〜ンと張り詰めた状態で、牛黄製剤や哲学の煙で何とか毎日を過ごしている状態。暑くなって血圧は正常化したものの、冬になればアテにならないし・・・と、当方も冗漫な前置きが長くなるのも、この度の先生のご相談内容、小生自身が昨今、同類の悩みを上記の哲学の煙や牛黄製剤や麝香製剤で何とか誤魔化している毎日。

 こちらからも先生にご相談したいくらいです(苦笑。
 むしろ先生のように診療中に眠くなるのはうらやましいくらいです。

 ただ小生も、耳鳴りこそありませんが、フラツキ感は折々に感じることがありますが、これは目を酷使することと若い頃に右腕ばかり使う運動をやり過ぎたため(と頭部打撲もあり)の頚椎症が原因であろうと考えています。
 しかしながら、ここ一年近くは首を縮めない姿勢を保つ、首をなるべく伸ばすことを心がけることで、ほとんど解消しています。

 先生の「フラツキ感・軽度耳鳴り・めまい」も頚椎症関連、あるいは頚動脈の狭窄などが原因ではないかと勝手に推測するのですが、案外、葛根湯証があるのではないでしょうか?

 首の真裏を軽く揉むと気持ちが良いというのと、同じ首の真裏を温めると気持ちが良いという二拍子揃えば間違いなく葛根湯証です。但し、この条件が揃っていても高血圧傾向があることを考えますと、ツムラなど医療用の葛根湯では甘草の比率が多過ぎます(逆の表現をすれば甘草の配合分量に比較してに葛根の量が足りないので、一回に服用する量を半量に減らす必要があります。

 上記の条件が揃っていれば、葛根湯の半量を適宜使用することで、葛根湯による覚醒作用と同時に軽度の頚椎症が原因だった場合の「フラツキ感・軽度耳鳴り・めまい」であれば、そのほとんどが雲散霧消する可能性が高いと思います。

 世の中、意外に釣藤散証と葛根湯証が合併することも多いのですが、葛根湯は比較的速効があるので、あえて常用する必要はなく、適宜使用する方法でも十分な効果が出ることが多いものです。

 まずは、葛根湯証が潜んでないかを点検されてみては如何でしょうか?
 もしも葛根湯証がなければ、姿勢を正す整体治療が有効なように思います。

2008年07月10日

ネットで漢方相談が可能なほど弁証論治は安易でお気楽なものなのか?

昨日の続き

折り返し頂いたメール:早速のブログでの回答有難うございました。感謝いたします。ご回答を読んでの感想です。

 病気を患っているものは非常に弱い立場にあります。ましてや専門知識のない状況下で、漢方とはこうゆうものだと先生に言われるとそうなのかと信じざるを得ません。その結果ご指摘のような誤りを犯してしまいやすいのです。ましてや地元で自分にあった薬局や先生を少ない情報のなかで見つけるのは至難の業です。勢いネットの情報にたよってしまうのです。

 村田先生のご指摘の通り、ネット上にあらゆる種類の漢方理論が氾濫し、ここなら大丈夫かもしれないと思うと、思わず相談に踏み込んでしまいます。
 また、改善の兆候が現れないともっと良いところがあるのではと思い安易にお店を換わってしまう結果となります。

 わたしの場合も全てがネットで相談をし、お薬を送っていただいたケースでした。これでは微妙な調整など期待できませんね。大いに反省しています。

 改めて対面し、コミュニケーションの中から生まれる信頼関係のもとにお薬をいただく姿勢が大切であると痛感しています。自分の病気にもっと根気をもって、努力をしなくてはとかつをいれられたきがします。有難うございました。


御返事メール:折り返し、御返事賜りありがとうございます。
 まったく思いがけない内容のお返事だけに、ブログを運営する者としては大変有意義だと感じています。

 まったく想像の埒外であるネット上でのご相談だけによる漢方相談ばかりだったっ!というお話のようですが、些かショックと言いますか、失礼ながらそのような安易で安楽な方法こそ、よほど運が良くない限りは、滅多なことで正確な弁証論治は行える筈もないではないか、と感じた次第です。

 一般的な病気の場合でも、一度も直接診断を仰いだ実績のない患者さんが、電話相談やメール相談だけで診断と投薬を行ってくれる病院が無いのと同様、漢方相談だからと言って、安易に電話相談だけやメール相談だけで、一度もお会いしないまま、漢方薬を購入することは、かなり無謀な行為のように思われてなりません。

 たまたま合成医薬品のような危険性が少ない漢方薬だから、ついつい販売側も患者さん側も安易な方法を模索しがちであることは理解出来るとしても、現実には漢方薬の弁証論治こそ、一定レベルの疾患ともなると、ご本人に一度も会わずに適切な処方を見つけるのは至難の業であり、本来行うべきものではないと確信しています。

 そのような安易な方法が通用するのなら、小生こそブログのみならずHP制作はお手の物、派手な宣伝打ってシコタマ儲けるのは十分に可能ですが、どうしても良心が許しません。
 ヒゲジジイがこのような綺麗ごとを書くと、何か裏があるだろうと勘ぐられる方も多いのですが、ぶっちゃけ言って効かない薬を販売して苦情が殺到するのが怖くて小心者ゆえ、到底、そのような安易な販売方法は取れないだけのことです。

 直接、漢方薬局に出向くこともなくしてどうしてネット上の勧誘記事だけで、信頼に足るかどうか、相性がよいかどうか(相性の問題も極めて大きいと思います)などなど、分かりようも無いと思います。
 何を行うにも、ある種の賭けを伴うのは止むを得ないことゆえ、直接ご自身でなるべくなら通える範囲内で見つけ、ご自身の勘を信じて、ここはと思った漢方薬局に賭けるべきだと思います。

 蛇足ながら、相性の問題も意外に大切で、村田漢方堂薬局に遠路はるばる来られた人でも、その後のメールや電話での交信の内容がどうしても噛合わず、とうとうこのブログに時折登場される東海地方の女性薬剤師に無理をお願いしてバトンタッチして頂いた経験を持つ者としては、互いの相性の重要さもヒシヒシと感じております。

 手前味噌ながら、当方には遠路はるばる来られる人の多くは最低限二泊三日程度の旅程で来られ、数日間連続した集中的な漢方相談があるからこそ、その後のメールや電話での交信(による微調整)がうまく運ぶことが多いのです。

 もちろん一度も来局されない人の電話相談はすべてお断りしていますが、一度も来られない人のメール相談であれば、漢方薬販売はしないかわりに、ブログに利用させて頂く変わりにメール交信で可能なだけのアドバイスをお送りしている訳です。
 来られない人の電話相談はありがた迷惑であっても、メール相談であれば、このようにブログに利用させて頂くギブ・アンド・テイクで割り切らせて頂くことは前回でも述べた通りです。

 ともあれ、地元近辺で相性の合った漢方薬局を見付けられることを念じております。そうすれば諸症状の内容から考えましても、少なくとも現在の半分以上の寛解は十分に得られることと思います。
posted by ヒゲジジイ at 00:17| 山口 ☀| とんでもない話や、信じられない困った話 | 更新情報をチェックする