2008年05月31日

そんなに混雑するならどうして予約制にしないのですか?

 予約制にどうしてしないのか?というご質問をシバシバ受ける。土曜日のあの混雑ぶりを知る人ならではのことで、もっともな問いかけであろう。

 しかしながら幸いにも先週の土曜日は、皆があの混雑を嫌って、会社を休まれてウイーク・デイに来られた人が多かった。
 そのお陰で、のんびりたっぷりと一人一人に時間が取れて疲労困憊することもなかった。

 現実には、月曜日と火曜日と土曜日以外は、のんびりした仕事が出来るのである。
 水曜日から金曜日にかけては、薬局店頭に集中される日が無いわけではないが、むしろ遠方の人たちへの追加注文の発送業務に奔走していることが多い。

 本題の「どうして予約制にしないか?」というご質問に対する回答は、これまでも何度か書いたことがあるが、あれでは充分に納得されないらしいから、本当の本音を二〜三、こっそりとここに書いておきたい。

 予約制にシフトすると、数十年来の常連さんが気楽に来れなくなるからである、というのはこれまでもシバシバ書いた。
 その常連さんこそ気心も知れて新しい人たちのように神経を使うことなく、お互いに気楽に話し合えるし、同時に漢方薬の購入額が、新しい人たちの平均5〜10倍なのである。
 だから、予約制などして常連さんが気楽に来れないことになれば、まったく本末転倒である。

 いつも書いているように、これらの常連さん達が村田漢方堂薬局を支えてくれるお陰で、新しい人たちにたっぷりと時間が取れるのだ。

 村田漢方堂薬局の売り上げの8割近くを支える常連さんをないがしろにしては罰が当たる。
 ヒゲジジイがヒヨッコの時代から、なかなか効果を発揮しないのを我慢に我慢を重ねて、しっかり効き目が出るまで辛抱強く耐えてくれた人たちである。
 育ての親である。ないがしろにしてよいはずがない。

 といっても、数十年のお付き合いだから、薬局店頭に来られる機会は減って、電話注文されてまとめてお送りすることが多い。
 だから毎月やって来られる常連さんは一部の人に限られる。だからこそ、来られたいときには気楽にやって来てほしいから、この常連さんたちのために予約制はしたくない、というのが本音である。
 わずか1〜2年のお付き合いの人たちの5〜10倍の額を漢方薬に投資される大事なスポンサーである。

 また、安易に予約制にすると物見遊山客クレマーの選別が出来なくなる

 相変わらず毎日毎日、電話やメールでのお問い合わせが多いが、問い合わせること自体が迷っている証拠となっている場合が多く、問い合わせされる人の9割は、以下に述べる直談判の連中のような決意は感じらず、明かに及び腰や思わせぶりである。
 だからとりわけ電話での問い合わせに回答する時間がいつも無駄だとわかっているだけに面倒臭い。

 だからほとんどのケースで遠まわしにお断りするが、それにも耐えてやって来られ、意気に感じて御相談に乗れるのがほんの1割程度ということである。

 ところが、予告なしに来られる人の多くは直談判の意気込みで真剣味が違う。予告なしに来られる人の7割くらいは本物。
 しかしながら3割くらいは物見遊山やクレーマーマガイの様子だから、慇懃無礼にお断りする。(時にはケンモホロロに)

 なにせ本気でやって来る人でなければ、弁証論治の説明の半分でも理解されようとする意気込みがなければ、臨機応変の配合変化を理解し、覚えてもらうことが出来ない。

 村田漢方堂薬局のやりかたは、漢方薬の配合変化による反応を繰り返し比較してもらうことも多いのだから、ご自身の身体に対する漢方薬の運用方法を覚えて勉強しようというくらいの意気込みが必要なのである。

posted by ヒゲジジイ at 02:17| 山口 ☁| 漢方と漢方薬関連の御質問 | 更新情報をチェックする

2008年05月30日

ヒゲジジイの発想の根拠は少陽三焦理論をヒントにしたイマジネーションが多い

 たとえば先日のブログ 2008年05月21日:猪苓湯で乾燥した皮膚が潤うことが多いのはなぜか? で書いている内容は、少陽三焦理論にもとづくものである。

 系統だった少陽三焦理論を書かれた陳潮祖先生の諸著作に多くを負うものであるが、ヒゲジジイの頭の中では実体が無いといわれる少陽三焦を次のように平成5年に立体構造モデルを当時の『和漢薬』誌に発表している。
 
 少陽三焦の組織構造私見(実体が無いと言われる少陽三焦の組織構造モデル!)

 このような得手勝手なイマジネーションの効用は、様々に広がる連想によって猪苓湯や茵陳蒿湯などの応用範囲を爆発的に拡大できたのである。もちろん実際の有効性を多くの症例で確認済みである。

 といっても実は、平成5年に少陽三焦の立体構造モデルを発表する以前、陳潮祖先生の諸著作を読む以前、今から25年前頃から既に猪苓湯の広い分野の応用は行っていた

 しなしながら、その当時は理論的根拠を示すことが出来なかったのだが、陳潮祖先生の諸著作に出会ってようやく、少陽三焦理論にもとづいた猪苓湯の応用に関する拙論を月刊『和漢薬』誌1991年新年号(通巻452号)の巻頭論文として発表するに至っている。

猪苓湯が滑石茯苓湯に変わるとき
 
 少陽三焦理論にもとづくイマジネーションを応用して、まだまだ各種方剤の応用範囲が広がるはずである。
 たとえば、半夏厚朴湯、温胆湯、四逆散、黄連解毒湯、六味丸系列の各種腎虚の方剤などなど。
posted by ヒゲジジイ at 08:22| 山口 ☁| 中医漢方薬学 | 更新情報をチェックする

2008年05月29日

「疾病の本質」を研究するには中医学理論の学習が必須なのだが・・・

おたより: 関東地方の内科医師

突然の質問をお許しください。

 自分は小さいときから漢方薬に接しており、また、医師になった後でも漢方薬の勉強や投与をしてきました関係から「病気に対して他の方とは異なる独特の考え方」を持っています。きっと、その考え方は村田先生の考えと似ていると感じています。

 ところで‥アトピーでも認知症でも、なんの病気でも同じなんですが‥一般の人(医師を含めて)は病気が起きている場所しか見ようとしません

 小児のアトピーなどは「小さいうちは免疫が未熟でアレルギーがおきやすいけど‥体が成長していけば治ることも多いんですよ」とか医者に言われて納得しているのだと思います。薬を飲ませて今だけでも症状が取れれば納得するんですよね。

 今‥自分の勤めている病院の看護士から「子供の舌が茶色に変色して大学の耳鼻科に見てもらったけど検査があまり変化ないから‥近くの耳鼻科にかかっている」とか‥、加えて、その子のことを聞くと「耳から浸出液がでる‥アトピーで皮膚科にいったり‥肺炎で休んでる」などと話します。

 このことからすれば、色々な医師にかかっているようですが‥自分が「かわいそうだろ!」という話をしても耳を傾けません。ハァ〜 

 もう、すでに村田先生にはお分かりの通りの解毒症体質の子です。それも舌が茶色なんですから、かなりの鬱血です。
 話を聞いていて、説得できない自分が情けないです‥。

 そして今日、視床出血の患者さんと少し話しました。ほぼ寝たきりですが‥ある程度の会話は成立します。「ここが悪いんだけど分かる?」との自分の問いに「分かる」と答えるんですね。
 その場所は、頭ではなくて、胴体の一部分です。これも‥自分の気持ちを突き刺す言葉でした。
 患者の言葉に耳を傾けないのは医師を含めた回りの人なんですよね。

 先生、僕は自分の意思を貫く医療をするべきなんでしょうか?

 僕は家族や身の回りの人には、自分が正しいと思う医療をしていますが‥一方で、お金を稼ぐために諦めとも似た医療をしています。
 見捨てている自分は逃げているだけなんでしょうか?

 お答え頂ければ幸いです。


お返事メール:拝復
 六君子湯や大建中湯、抑肝散のようにエビデンス漢方による患者さんの被害に最近、またまた遭遇しました。

 大腸がん手術後の大建中湯エキス剤の投与により、激しい皮膚の掻痒に見舞われています。適応症の区別も付かないエビデンス投与により、一部の患者さんは迷惑しておられます。

 日本の将来の漢方の為を思えば、漢方の本質を理解されて先生のような人達が一人でも多く出てこないことには、日本の漢方はますますエビデンス漢方に堕するばかりです。

 ひるがえって職業として考えれば、確かに信念を辛くぬことは経済的な冒険は免れないと思います。
 西洋医学専門の開業でさえ、身内の内科医の中には少し前まで出身大学近辺の都会での開業を真剣に考えて調査した結果、親の医院があるわけでもないのに、資金的にもかなり困難なことが分かり、方針を変えて、転々とアルバイトの口を何軒も掛け持ちして資金を得る方法に切り替え、開業を無期延期している者もいます。

 でも先生の場合は、一定の地盤もあってのことゆえ、人生は一度しかないのですから、この世界に打ち込む情熱がありやなしや、の問題だと思います。

 自分のことを出すのもなんですが、薬局ながら漢方専門で貫いた若かりし頃(苦笑)、流行る薬局でもないのに、毎月毎月、膨大な書籍代の浪費に家計を常に圧迫して、愚妻には随分苦労をかけてしまいました。
 あれだけの書籍代を投入しなければ、もっと楽な生活が出きていたのに、と思う反面、逆にあれだけの書籍代の浪費があればこそ、漢方を本業として貫けたのだと考えると複雑な心境に陥ります。

 人に教わるのがイヤで、書籍に頼りながら自身の感性を頼りに、西洋医学に見放された人達がいつまでも諦めずに通って下さるのを徳とし、深夜まで寝ずに書籍を調べながら格闘する毎日が続きました。

 その多くの患者さんたちのお陰でいびつな中医漢方薬学などと嘯く老人となり果ててはしまいましたが、ようやく漢方の本質の深いところの一端が少し分かりはじめたような気になっています。

 世の中には、ご存知のように西洋医学では解決不可能な疾患が五万と存在するわけですから、何も背水の陣で挑まなくとも、上記のようなアルバイト先を点々とする医師をヒントに、高額な給料を支給されるアルバイト先を一つ二つ掛け持ちしながら、先生の信念を貫けるクリニックを開設されるべきかと存じます。

 アドバイスの方向が間違っていたらとても恐縮ですが、小生が先生のお立場だったら、信念を曲げた生活は耐えられないですし、また組織に属するのが大嫌いですから、きっとそうするだろうな〜〜〜と思った次第です。


折り返し頂いたメール: ご指摘の通り、開業を模索したいと思います。

 ただ、開業に際しては何か欲しい‥との考えより、一般向けの本と専門向けの本を書きたいと思います。子供の程度かもしれませんが‥傷寒論の理論的な解析を終えており、病気の本体を探ることも可能なレベルになっているのではと自分なりに考えております。
 そんな本が漢方の進歩に一役を担うことが出来れば幸いなのですが‥。

 病気は額に入った絵と同じに思えます。
 絵が変われば‥当然、変わったことがわかります。
 でも‥額縁が変わった時のことを考えていません。
 額縁が変わっても絵が変わったように見えるはずです‥。

 病気を診るときに特に問題なのは後ろのケースです。

 臓器は、その背景臓器とのバランスを取って運動しています。
 ある臓器に症状が現れる場合でも、その臓器自身が根本原因ではなく、背景臓器が変化することによって起きる症状もある‥ということを暗示していると思います。

 もちろん、この考えが慢性病を考える上での重要なポイントになるに違いないと考えますが‥説得できるかどうか?

 でも‥動くことなんですよね。
 出来るだけ模索してみます。

 今日、患者の体を診て思ったことは、下腹部、つまり骨盤内のエネルギーと病態との関連です。骨盤内臓器は一生を通してダイナミックに変化します。女性なら初潮を向かえ、妊娠、閉経‥となり、骨盤内の力によって体が出来、生殖を可能にし、年を取ると骨盤内の力も下がり閉経となり、老いて行きます。

 下腹部に力がない場合は、体に力が入りません。特に、死んで行く方は極端に下腹部の力が落ちて色々な症状をだします。
 その症状は下腹部以外に多く、「額縁と絵の関係」のように、面白い所なのかもしれません。

 漢方薬でも、人参湯などは胸部の痛みが取れる漢方薬でありながら、そのフォーカスされている場所は下腹部が中心です。

 こんなことを書いていると‥矛盾を背負って死ぬよりも、背水の陣で自分が正しいと考えたことをすべきなのでしょうね。やはり‥やるべきですよね。

 づらづらと書いてしまいました。
 本当に感謝しております。

編集後記:惜しむらくはこの先生のお考えは、中医基礎理論を学ばれていれば、中医学的には常識的なことを説明されているに過ぎないことに気づかれていたずである。
 日本漢方の限界から抜け出すには、常々中医学を学ぶことが必須であることをアドバイスしていたのだが・・・。
『素問』咳論に曰く
五臓六腑はみな人をして咳せしむ。独り肺のみにあらざるなり
という条文をあげるまでもなく、関東の医師が述べられる「ある臓器に症状が現れる場合でも、その臓器自身が根本原因ではなく、背景臓器が変化することによって起きる症状もある」のは中医学的には当然のことで、やはり中医学をご存じない日本漢方の先生方の限界を感じざるを得ないのであった。
posted by ヒゲジジイ at 07:53| 山口 ☔| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2008年05月28日

肥満に効く漢方薬がありますか?

性別 : 女性
年齢 : 30歳〜39歳
ご職業 : 会社員
簡単なご住所 : 関東地方
お問い合わせ内容 : 肥満に関して。
 3年弱で20キロ強太りました。色々ダイエットを試みましたが痩せません。漢方を試してみたいと思ってます。
 1??cm83キロ3?歳女(出産暦アリ)目標体重60キロ。漢方で痩せるのは無理でしょうか?


お返事メール:肥満に最も効果的なのは「食わずに走る」に限ります。

 これを書いたら愛想なしですので、漢方の立場から言えば、本気でやれば超肥満体でもスマートになることは比較的容易です。
 それには脂肪過多症の特効薬で有名な扁鵲(へんせき)」や、あまりあてにならない「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」などだけに頼るのではなく、正確な弁証論治に基づいた漢方処方を組み合わせる必要があります。ですから一定の出費は免れません。

 肥満専門の処方を組まない場合でも、体質に合った漢方薬を長期間常用すれば、明らかな痩身効果があることは35年間に多く実証済みです。
 当方の漢方薬を長期間、常用されている人では、もともと肥満体であった人でも、全員、スマートに変身しています。


折り返しメール:処方して頂けないでしょうか?ある程度のお金がかかるのは当たり前と思ってます。


お返事メール: 一度は、直接来られないことには体質に応じた弁証論治にもとづく配合が不可能です。
 一度も来られない場合は、扁鵲(へんせき)を安売りするのが関の山です。
 そちらの地元で配合処方をきちんと公開する漢方薬局を見付けてください。


折り返しメール:関東なのですぐに行けません。●●●に行けますがそれまで、その漢方を飲んだほうがいいですか?

 長く三爽茶と防巳黄耆湯を飲んでますが、効き目なし。。一緒に取りあえずその漢方を飲むがいいですか?


お返事メール: 防巳黄耆湯は、水太りだけが原因の場合は凄まじく効果を発揮する場合がありますが、そうでもなければほとんど無効です。

 ともあれ、もともと肥満体の上に生理不順などで西洋医学治療によるホルモン剤使用による超肥満でもなければ、運動不足の割りに食い過ぎが原因です。
 食事量を一人前以上は食べないようにすることが基本です。

 扁鵲(へんせき)は、脂肪過多症には無難な配合です。だから、凄まじい安売り競争となって薬局同士が潰し合いをやっています。(恐らく村田漢方堂薬局が最も安値のようですが・・・苦笑)

 もともと肥満体の上にホルモン剤により超肥満となったケースでは、中背以下の女性で百キロを越える体重を、5年で20kg以上減量、その後の5年で20kg以上減量で、まったく肥満の痕跡すら残さなくするのに10年近くかかりました。

 肥満用健康食品を販売する事業者から、健康食品で痩せたことにして宣伝に使わせてくれというペテン行為に勧誘されたり、さまざまな逸話を残しています。

 10年もかかったのは、肥満を治す目的で漢方薬を利用されたわけではなかったからです。
 ホルモン剤による副作用を消すばかりでなく、みかけによらずひどい虚弱性があったので、様々な症状を漢方薬で治すうちに、いつのまにかスマートな身体になったわけです。

追記:その後、胆石症らしき発作が起こったので、発作止めの牛黄製剤とともに大柴胡湯合茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)を飲んでもらったら、ほんの数ヶ月でさらに10Kg以上減量して70kgを下回る体重に減量して平成24年現在も維持し、漢方薬の常連さんとなっている。)

 ホルモン剤が原因でなければ、まずは食事量を減らして扁鵲くらいは服用しておいたほうが良いでしょう。
 食事量を一人前に制限し、体質に合った漢方処方を数種類組み合わせれば、半年〜1年くらいもあれば、かなり減量するものです。

 体質に合わせるには直接一度来られないことには不可能です。


折り返しメール:100グラムも痩せません・・
 扁鵲を飲みたいので、支払い方法等教えて下さい。
 ・・・・・・・・・には、そちらに伺い体質等見てもらい処方して頂けるまでの間、扁鵲を飲み、食事を気をつけたいと思います。

 食事ですが、米がとにかく好きです。お茶碗に2杯か1杯強食べます。3食きっちり、おやつはなし。(甘いものとかおやつ系が好きでないので・・・)

 ただ、、酒が大好きです。(<−−これが問題?)


お返事メール: アルコールを好んで飲まれる人の中には、扁鵲に配合されている桂枝(シナモンの仲間)が、身体を温めて、まれに痒くなる場合があります。

 直接来られる意義は、舌の状態から体中の体質傾向がかなり詳細に把握できることです。
 本当に来られるおつもりがあれば、歯は磨いても、舌の苔を磨かないで下さい。自然な苔の状態が必要です。口を漱ぐのはまったく構いません。

 来られるまで、アルコールを止める訓練をすることです。
これが肥満の原因になっている可能性が高いのでしょう。


折り返しメール:唯一の楽しみの酒を断つってことですよね。(涙)
 酒を断ってから扁鵲を飲んだほうがいいのですよね?
 舌を磨かず●●●に伺います。

 今やるべきことは、1人前の食事を3回と運動のみですかね・・・


お返事メール:酒をたっても扁鵲が合うとは限りません。まだ迂闊に手を出さないほうが良いです。

 一人前の食事はとっても後は軽い運動のみ。

 そして適切な漢方薬により、体内の蓄積物を適正に分解することです。その適切な漢方薬は個人個人によってかなり異なるものです。


折り返しメール: なるほど。
 まず、体質等見てもらって処方された漢方を飲むことですね。
 ヘンセキに手を出さず、●●●そちらに行くまで食事と軽い運動で頑張ります。


編集後記:このように前宣伝が長い人ほど、実際にはやって来られず、永遠に無音のままっ・・・呵呵っ!
posted by ヒゲジジイ at 07:25| 山口 | ダイエットや肥満症 | 更新情報をチェックする

2008年05月25日

腹中雷鳴に効く漢方薬

性別 : 女性
年齢 : 30歳〜39歳
ご職業 : 会社員
簡単なご住所 : 西日本
お問い合わせ内容 : お腹の音が気になります。学生の頃から。
 そんなにお腹がすいているわけではないのに、かなり大きな音でグーグー鳴り静かな場所や会議中、仕事中もそのことばかりが気になります。

 ネットで調べていたらそれにきく漢方薬があると出ていました。
 そちらでお腹の音に聞く漢方薬は処方して頂けますか?
 かなり真剣にいい方法を探しているので教えてください。


お返事メール:拝復

>かなり真剣にいい方法を探しているので教えてください。

 ということですが、メールでわずか数行の文で、一度も来られたことが無い方に対してお教えできるほど人間様の身体は単純ではありません。

>ネットで調べていたらそれにきく漢方薬があると出ていました。

 ということでしたら、その調べたサイトでお訊ね下さいませ。

 上記のお返事では、いかにもお愛想がないので、結論から言いますと、単純性の胃腸の自律神経的な不穏なリズムが原因であることが多いので、体質に応じた漢方処方を組み合わせれば、遅かれ早かれ8割程度の寛解が得られます。

 同様な悩みの人はとても多く、それほど経費がかからないものです。
 よっぽど安上がりで行けば、一か月分三千円以内のやや特殊な漢方薬の錠剤で半分くらいは直ぐに寛解する場合もあります。

 ストレスがらみによる空気嚥下症が絡んでいる場合は、さらに1〜2処方を加える必要がありますので、この場合は10日分ごとに様子を見ながら、効き目が上がるように工夫します。

 結局のところ、治したい意欲があれば、漢方薬のピントがしっかり合うまで7〜10日毎に通う決意と意欲があるかどうかの問題です。

折り返し頂いたメール:メール、ありがとうございました。
 ネットで調べていたのですが、病院などで処方して・・としか書かれていなかったので、お腹の漢方薬が本当にあるのかわからないし、(以下省略)


編集後記:もちろんこの人もその後も永遠に来られることなく無音のまま。

2008年05月24日

病歴の短い湿疹の場合

性別 : 女性
年齢 : 30歳〜39歳
ご職業 : 医療・福祉関係
簡単なご住所 : 西日本
お問い合わせ内容 : 皮膚の痒みに困っています。皮膚科には行ったのですが、すっきりとは治りません。

 2月ころくらいは、背中全体や脚が痒くて、眠れなくて大変でした。皮膚科から抗ヒスタミン剤とステロイドもらいだいぶよくはなりました。
 でも、最近は生理前から外陰部あたりの皮膚が痒く、ナプキンを当てるともっとかぶれてしまいます。生理後も痒みが取れず、仕事終わった夕方あたりからの強い痒みに本当に困ってます。

 皮膚科では、湿疹といわれました。でも、貰ったステロイドきかないです。漢方薬で改善できるでしょうか?


お返事メール: 湿疹の始まりはいつ頃からなのでしょうか?
湿疹が生じるには必ず原因があるはずですが、その原因を見つけながら体質に合った漢方薬を服用されれば、当然治ります。

 最近多いタイプは、舌の奥に黄色い苔が生えている人では、湿熱が原因で、主として過食などが原因です。
 このタイプであれば、たとえ重症でも漢方薬で治りやすいものです。
 といっても、様々な体質の人がおられますので、その人の体質と症状に応じた適切な漢方処方を選ばなければなりません。

 通常、10日ごとに通える根気さえあれば、遅かれ早かれ漢方薬で治ります。


折り返し頂いたメール:お返事ありがとうございます。湿疹は子供の頃から出来やすかったです。
 特にストレスあるときとかに良くでるように思います。

 今ある痒みは、酷くなったのは二週間前くらいからかと思います。貰ったステロイドはきかないのでつけてないです。
 仕事終わってからだと営業時間内に間に合わないです。最初の問診は時間どれくらいかかりますか?


お返事メール:
 平日は朝9時から夕方6時まで、土曜日は朝9時から昼12時までです。ぎりぎりの時間でも駆け込めば、延長戦はしばしば行っておりますので、たとえ土曜日でも12時までに来られればよいのですが・・・。

 土曜日は運が悪いと待ち時間が長い場合がありますが、来られる皆さんは熱心な人達ばかりですので最後まで延長してやっています。

相談時間は最初はとても長いです。早くて30分、原因が複雑であれば1時間はたっぷりかかる場合もあります。(一般論で言えば、重症者が多いので、それ以上かかる場合もあります。)

 ひどくなったのがまだ二週間くらいなら、漢方薬をする前に、病院を変えてみるのも一つの方法かもしれませんし、同じ病院でも、ステロイドが効かなくなったと言えば、他の方法を考えてくれるかもしれません。

 村田漢方堂薬局の場合は、治療の行き場を失った重症者が集まるところです。
もしもどこへ行っても治らないようであれば、その時には無理してでも時間を取って通う決心がつくかもしれません。

 一度だけ無理してやって来られても、後が続かなければお互いに時間の無駄となります。貴重な時間ですので、お互いに無駄なことは避けたいものです。
ラベル:湿疹 陰部掻痒症
posted by ヒゲジジイ at 00:01| 山口 ☁| 漢方と漢方薬関連の御質問 | 更新情報をチェックする

2008年05月22日

高血圧における人参配合上の注意点について

御質問者:東海地方の内科医師

前略 いつもお世話になります。
 小生の血圧が一時落ちついていましたが、この1週間ほどですが上昇傾向にあります。
 患者さんの数からいってさほど忙しくはなく仕事の要因は考えにくいかと思っています。

 舌はごく薄く黄色苔でしょうか(微妙です)。排便はちょっと硬い時期があり潤腸湯を夕食のときに1包飲んでいて、多少やわらかい排便です。
 ほかに釣藤散2包(朝夕)啓脾湯2包(朝 夕 おなかの具合を壊して下痢になったときに服薬してつづけています)を服薬してます。
 それから八味丸を10丸飲んでいます。

 この前天気が悪かったときにひさしぶりに頭が重かったです。
 何かお気づきの点があればご助言ください。素人知識的にニンジンは血圧に影響を及ぼすと理解していますが、あまり影響はないと思いますがいかが、この点もお教えいただけますと幸いです。


お返事メール:人参は血圧を上昇させる作用が優れているっ!ので高血圧の人には慎重に用いる必要があります。

 釣藤散の場合でも本来は党参(トウジン)を配合すべきだと愚考していますが、融通性の無い日本の漢方業界では軒並み人参が配合されています。
 ですからどうしてもこの人参が釣藤散の降圧効果を弱めているのは明らかです。

 そのお陰で、昨今、血圧が正常な二十代の男女にも杞菊地黄丸と併用してもらう機会が多く、好評を得ていますが、中年以降の高血圧患者さんに使用する場合には、配合中の人参は邪魔で、血圧上昇作用のない党参のほうが無難であり、この方が血圧降下作用をより発揮しやすいようです。(追記:煎じ薬中心の仕事をしていたころに、しばしば確認済み。

 また、併用されている啓脾湯(ケイヒトウ)中にも人参が含まれていますので、人参がダブった分、血圧に対する効果を相殺してしまっていると感じます。

 小生などは、以前から愛飲していた朝鮮人参入りの医薬品ドリンクを、某メーカーが訪問する度に、HP制作のアドバイスの謝礼として置いて行ってくれるのですが、昨今、それを服用すると一気に血圧が上昇してふらつき、服用することが出来なくなりました。

 なお、ブログにも書いたことですが、夜食を止めるだけでも小生は血圧がかなり安定し、10日間で2Kg減量できたほどです。食事量の減量の絶大な効果を感じています。

 下関でも月曜日は雨で、そのときはさすがに頭が久しぶりに重かったのですが、釣藤散をやや多めに服用することで翌日には治りました。
 先生の場合も、釣藤散は1回に1包として1日3回服用とし、啓脾湯は中止されるべきかと思います。
 八味丸も腎の陰陽両虚が明らかであれば必須でしょうが、地黄は意外に腸を緩める場合があるので、猪苓湯(これも下痢を治すことがあるのは傷寒論にも記載があるほどですっ!)や五苓散など、他の処方を探してみられてはいかがかと思います。

 釣藤散合猪苓湯というのも味のある配合です。腎陰陽両虚があきらかであれば、八味丸の少量を釣藤散などと同時に併用するほうがバランスが取れやすいものと思います。

 人参はやはり、人によっては少量でも血圧を上昇させますが、例外は釣藤散や半夏白朮天麻湯、牛黄と人参の配合など、これらのケースでは人参の血圧上昇作用を打ち消していますので無難なようです。


折り返し頂いたメール:さっそくのご助言ありがとうございます。ニンジンを控えるかたちで考えてみます。
posted by ヒゲジジイ at 18:36| 山口 ☁| 高血圧 | 更新情報をチェックする

2008年05月21日

猪苓湯で乾燥した皮膚が潤うことが多いのはなぜか?

オオタカ(幼鳥)の雄姿
オオタカ(幼鳥)の雄姿 posted by (C)ヒゲジジイ

 あらゆる事象で必ず例外はつきものであるが、一般論から言ってアトピー性皮膚炎の乾燥部分を潤すのは、何も地黄や当帰などが専売特許というわけではない。

 猪苓湯を配合処方中に加えることで皮膚が潤うケースがしばしば見られる。
 その理由は、皮下の水湿が停滞しているために表皮が乾燥しているケースが多いからである。
 だから猪苓湯を使用することで皮下の水湿の停滞が上皮の乾燥部分と調和して却って表皮が潤うようになる。
 とりわけ凸凹状のアトピーの乾燥部分に対する猪苓湯の配合は欠かせないほどだ。

 事実、この湿気が増えた時期に、一昨日も地元のアトピーの男女がそれぞれに猪苓湯をこの時期、濃度を濃くすることで痒みも含めて乾燥部分が治まり、凸凹感が減少している。

 但し、この猪苓湯の作用も瀉火補腎丸などの六味丸系列の方剤の配合があってこそのバランス効果も無視できない。
 もともと猪苓湯は「滋陰利水」の効能を持ち、潤す作用と湿邪を除去する作用の二面性をもっているだけに、利水方面だけが主作用というわけではない。

 また、注意が必要なことは六味丸系列の方剤は、潤す作用がメインではあっても、これによって却って肌が乾燥してしまう場合がある。
 六味丸系列の方剤によって体内に潤い成分を補給したのは良いが、皮膚まで到達せずに、却って内々で停滞した場合には、却って潤すはずの六味丸系列の方剤によって水湿を停滞させた結果、却って皮膚を乾燥させてしまうわけである。

 このような場合は、猪苓湯によって水湿の停滞を解消してやることで皮膚が潤うようになることが多い。
 それゆえ、六味丸系列の方剤と猪苓湯を併用するケースは甚だ多いということになる。

 とりわけ、舌に苔がある人には猪苓湯が必要になるケースは多く、苔が乏しい人でも、掻いたところから水分が僅かでも漏出する傾向がある人にはほとんど必須に近いものである。

 現実問題として、肌が乾燥する理由から、猪苓湯を省略して六味丸系列を積極的に使用すると、体質によっては却って乾燥が増す場合がシバシバ見られ、そのような時には却って猪苓湯を加えることで肌が潤ってくることがしばしばである。

 皮膚表面に現れる現象は、あくまで体表での現象であり、滋潤作用や利水作用という薬効とは逆の現象が皮膚表面で生じる現象は、上記の理由から決して不思議なことではないのである。

 乾燥時期には六味丸系列の方剤は、直接的に潤してくれる場合が多いが、湿気の多い季節に過剰に使用すると、体内に水質を停滞させて、却って皮膚が逆に乾燥してしまう場合があり、このようなときは、むしろ猪苓湯に重点を置かなければならないケースはよくみられるものである。

 猪苓湯といえども水毒がまったくない人が使用すると皮膚まで乾燥させてしまうことがあっても不思議は無い。
 また、掻き毟ったところから滲出液がまったく見られないケースでは、例外的に猪苓湯がやや邪魔になってくるケースもあり得るかもしれない。

 なお、アトピーにおいて漢方薬の効果が十分に皮膚に到達してくれない場合、気滞が原因で漢方薬が皮膚に到達できない場合があり、そのようなときは伝家の宝刀的に四逆散を加えると、一気に効果が上がることも珍しくない。

 ところで、乾燥時期に紫雲膏が重宝していた人たちも、湿気の多い季節になると、この季節だけはしばらく紫雲膏の強烈な保湿力が却って煩わしくなる場合があるので、そのように感じられる場合は、一時使用を休んでおくことである。

 季節と情況に応じて、配合変化を微妙に行なってこそアトピーの改善を促進する。
 地元では苦労の末、その機微を把握された人も多く、常に相談しながらではあるが、季節に応じて衛益顆粒(玉屏風散製剤)や補中益気丸(党参入)が必要なときと不要なとき、六味丸や猪苓湯の配合比率の変化を微妙に感じ取ってみずから操られる名人の域に達しつつある女性もいる。

 茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)が必要なときと不要なとき、黄連解毒湯や地竜の巧みな竿さばき。六味丸と瀉火補腎丸を生理後と排卵日以降に巧みに使い分けるなどは朝飯前。
 そうこうする内に、いつのまにか9割近い寛解を得ている。一年半近く欠かさず一週間毎に通い続けた熱心さにより、中医漢方薬学の名人になりつつある人達である。

 蛇足ながら、昨年からしばしば目立つのが天津感冒片などの銀翹散製剤の少量を、風邪引きをきっかけに痒み止めの一部として利用される人が増えていることである。

 最後に重要なことは、同じアトピーでも上記のことはほとんど無関係で、六味丸系列のみならず茵蔯蒿湯すら邪魔になり、猪苓湯も不要という体質の人もいる。
 現実に黄連解毒湯・補中益気丸・四逆散・天津感冒片および体質改善三点セットで順調に経過しつつあり、毎日塗布していたステロイド外用薬の使用が激減している人もいる。

 但し、この場合でも状況変化によってはいつ何時、六味丸や猪苓湯あるいは茵蔯蒿湯が必要になるかは断定できるものではない。
 今現在が不要であり却って邪魔になるからといっても、病状自体が一定不変ではないので、状況に応じた配合変化の柔軟性が常に必要である。

飛んでるオオタカ(幼鳥)
飛んでるオオタカ(幼鳥) posted by (C)ヒゲジジイ

posted by ヒゲジジイ at 01:00| 山口 | アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする

2008年05月20日

強迫神経症に合併する過敏性大腸炎の漢方薬

漢方専門薬剤師による漢方薬方剤漫遊記 漢方専門薬剤師による漢方薬方剤漫遊記 から

性別 : 男性
年齢 : 30歳〜39歳
ご職業 : 会社員
簡単なご住所 : 関西地方
ご意見やご質問をどうぞ :  はじめまして、●●と申します。
 漢方医学を現代医学的に再解釈したり、あるいは化学的に効能を分析したり関連付けたりすることに拒絶感を覚える方も多いかもしれませんが、ぜひご意見お聞かせ下さい。

 数年前に強迫神経症・自律神経失調と診断され、今までいろいろやってきながら数年たちました。心理療法・催眠療法も受けています。
 しかし生まれながらにして疳の虫・夜鳴きが激しく、幼いころから身体が硬かった自分は、今思えばそのころから肝気鬱結だったようで、心理療法や現代医学の投薬で症状が大幅に改善されたとは言いがたく、最近になって通い始めた漢方式鍼灸でようやくお腹と背中の頑固な張りが緩和されてきました。

 催眠・心理療法においても、過敏性腸炎の緩和催眠CDを渡されたので、きっと精神の不調と消化器とは、医学的・化学的な関連性があるのだと思っていましたが、ネットで興味深い事実に行き当たりました。

 うつ、強迫症は脳内のセロトニン不足が引き金で起こるもので、逆に過敏性腸炎とは腸内の過剰なセロトニン分泌で引き起こされる下痢などを伴うという。セロトニンとは脳神経伝達物質なので、脳の物質と考えてしまいそうだが、実は腸内のクロム親和細胞で作られている。
 ということは過敏性腸炎とうつ・強迫症とは、実は関連性があるのではないかと個人的に感じるようになった。

 実際、下記のHP記述では、胃潰瘍と精神安定を兼ねた薬(スルピリド:ドクマチール)と抗鬱剤(SSRI選択的セロトニン再取込阻害薬)を投与すると、強迫症に係わっているとされている部位の、前部帯状回皮質が鎮静したとあります。
http://www.ocd-net.jp/column/c_04.html
 そう考えると、うつや強迫症には、過敏性大腸炎に効く薬が良いのでしょうか。
 四逆散はやはりそれに良い薬なのでしょうか。

 事実、鍼灸院では柴胡加竜骨牡蠣湯か四逆散を薦められました。今まで前者を飲んでいましたが、頭を使いすぎた直後の就寝時の不眠には、あまりきいていません。頭が緊張して少し張り詰めたような感じがします。

 やはり肝と脾の不和によってもたらされた、神経のバランス異常なのでしょうか。私も四逆散に処方を変えてみたいと思います。
 いかがでしょう。


お返事メール:本来、適切な漢方薬を求めるには、漢方の専門家に直接相談するべきです。
 それを承知でお問い合わせされているはずですので、すべて当方からのアドバイスはほんのヒント程度にして、お近くの中医学に堪能な専門家のところへ出向くべきです。

 まず、強迫神経症は、意志力があり人生を前向きに考えたい人には、医師が主催する森田療法がもっとも効果的なように思います。

 但し、せっかく漢方薬を考えておられるので、ヒントを述べれば、もしも柴胡加竜骨牡蠣湯で一定の効果を感じられる部分がおありなら、四逆散に切り替えるのではなく、四逆散も一緒に併用することです。
 配合薬物としては柴胡が二重に重なってしまいますが、それぞれの処方の配合比率をやや減らし加減で併用すれば大丈夫です。

 当方では、パニック症候群と鬱傾向が合併している症例では、しばしば両者を併用してもらうケースが多々あります。

 中でも典型例としては、会社に出勤するのはよいが、会社の前まで来ると決まってカラエヅキ(内容物の出ない嘔吐)を繰り返し、この不安神経症というか、強迫神経症がかった発作のために、出勤が甚だ困難となり、離婚寸前まで行ったところで、当方に相談に来られ、柴胡加竜骨牡蠣湯と四逆散の併用で、次第に寛解するに到り、半年後からは奥様が代理で漢方薬の購入に来られるまでになりました。
すなわち離婚を免れた訳です。

 そのほかにも何度も離職せざるを得なかった重度のパニック障害をこれらの配合を主体に、その他の多種類の併用方剤とともに再就職がかない、ようやく長年のパニック症候群から離脱できた人など。

 ところで貴方が悩まれる強迫神経症に合併する過敏性大腸炎は四逆散証の場合もあれば、桂枝芍薬湯が適応するケースや、柴胡桂枝湯が適応するなどの場合もありますが、柴胡加竜骨牡蠣湯と四逆散の併用でも、それらの方剤がすべて含まれてしまいますので奏効する可能性なしとしません。

 また強迫神経症につきましては、内容にもよるでしょうが、パニック症候群のようにうまくいくかどうかは不明です。程度が軽症であれば、漢方で十分寛解できるでしょうが、重症のばあいは森田療法など禅的な厳しい生活指導が必要な場合もあるように思います。

 心の理不尽に矛盾した葛藤の解決というのは、ときに難航するケースが見られるようです。

 メールでお返事できる程度は、せいぜいこれが限界です。ほんのヒント程度にされて、御覧になったブログ http://cyosyu.exblog.jp/ の注意書きにもありますように、
「記載内容はすべて専門家向けです。一般の方がヒントにされる場合は、必ず医師・薬剤師など近隣の漢方薬の専門家に御相談下さい。素人療法は絶対に禁物です!」
という内容を遵守して下さい。

 西洋医学的な分析は、あくまで参考程度のことで、これにあまり深入りすると弁証論治の世界観がいびつに歪んでしまいます。

 以上、取り急ぎお返事まで。


【編集後記】
 科学は錯覚の繰り返しだから、新しい発見というものこそ明日には修正が施されることも珍しくない。
 それにも増して問題なことは、西洋医学的知見を中医学や漢方の世界でこだわりすぎると、弁証論治や方証相対の原則から逸脱してしまうことが多い。

 といっても西洋医学的知見を否定するのではなく、ある程度は参考にはしても、あまり深入りしないほうが無難だということである。


折り返し頂いたメール:●●です。

 ご意見拝見しました。ずいぶんと深みのある内容で、その日の内にお返事下さりまして、大変恐縮です。

 ずいぶんとお手間を取らせてしまいました。
 とはいえ、相当納得するものがあり、その方向で検討したいと思っております。ありがとうございました。

2008年05月18日

夜食を止めたら10年若返った話し

 まだ10日足らずのことだが、夜食を止めたら体力が一気に回復したっ。
 ヒゲジジイ自身のことである。おまけに血圧がほとんど正常化。といっても、時にむかっ腹が立ったときは一時的に上昇(苦笑。

 毎週、あの地獄の土曜日が続けば、自分のほうが死んでしまうと悩んでいたが、平日でも夜食が多かった翌日の疲労感が強いことに気がついた。
 そこで、夜食を止めてみたら、今週最もハードだった月曜日が夜間7時までの延長戦となっても6時半までは疲労感が出なかったことに驚愕したのだった。

 これに自信を得て、食い過ぎに注意するのと同時にそのまま夜食の習慣を絶ったままこの一週間、無事に生きていたっ。
 というか、体力に自信を回復して気分爽快。無い頭を酷使することに疲労感を感じなくなった。10日足らずで2Kgの減量となる。

 同じ頃に、同年代の男性で手術前から漢方薬を利用され、手術の原因も過食にあったことが予測されるので、食事制限の一環として夜食を止めたら体重が減るのと同時に体力が回復して、手術前より健康感が漲ってきたと喜ばれていた。

 そこで思い出すのが、数十年前に食道がんで亡くなった父のことである。
 造船業の盛んな時代を生きた「世界の●●」と言われた会社でゴルフ、ゴルフの毎日で接待したりされたりの数十年で退職後間もなく他界した。
 同じような生活を送った父の同僚や後輩も同様に長生きできた人は僅少である。
 同じ同僚や後輩でも、アルコールが飲めなかった人たちは現在でも健在である。
 とりわけアルコールがいける人ほど定年退職後の余生が少ない。飲めなかった人ほど長生きである。

 ヒゲジジイはアルコールは一切やらない甘党である。
 甘党もろくなことは無く、哲学の煙が手放せないので長生きできるとは思っていない。

 そんな自分のことよりも結論として言いたいことは、やはり過食や夜食は碌なことがないし、またアルコール依存傾向が強い人ほど、長生きする確率は低いということである。

 飽食の時代である。飽食やアルコール漬けの生活は、メタボリックやアトピーの問題であるのと同時に、やはり命を縮める大きな原因の一つであることは間違いないように思われることである。

 へたな漢方薬を服用するくらいなら、むしろ食事制限、とりわけ夜食を止めることは、現代人の最高の妙薬かもしれないんですよっ(苦笑。

 と言いつつ、夜の一杯のコーヒーだけは格別ですっ。
posted by ヒゲジジイ at 00:00| 山口 ☀| 若返りや美容関連 | 更新情報をチェックする

2008年05月17日

無表示医薬品が横行する漢方業界の薄気味悪さ

 といっても伝家の宝刀も時に通用しないこともあるが、地元では美人になれる体質改善三点セットとして有名?である。
 愛用者がとても多いのである。

 ところが昨年夏、関西からやって来られたアトピーの女性が、しょっぱなから劇的に寛解したのに、排卵日以降はまったく効を奏さなくなるという青天の霹靂の出来事があった。

 例外の無い規則は無い、とはこのことだろう。

 その後は体質改善三点セットが却って邪魔になり、結局は黄連解毒湯・補中益気丸・六味丸・猪苓湯・イオン化カルシウムで順調に回復する最もありきたりなパターンで終始して、今年になって音沙汰が無くなった。
 既にステロイドを苦労して離脱されておられたので、あのまま寛解が持続しているということなのだろう。

 アトピーよりもむしろ一般の湿疹類で稀に難航することがあり、一般処方では一進一退と言う珍しいケース。
 業を煮やして伝家の宝刀の体質改善三点セットと猪苓湯で今のところ明らかな改善効果が得られている。

 この体質改善三点セットの愛用者は地元ではとても多く、美容方面にこそ大いに喜ばれている。
 服用者には当然、情報公開しているものだが、これだけはブログで公表するわけには行かない(苦笑。

 それはそれとして、実に秘密主義が横行する漢方界である。
 最近は特に新人さんたちが、これまで服用されていた漢方処方をまったく教わってない事例ばかりが続くので、唖然とすることばかりである。

 無表示医薬品を購入するほうも購入するほうであるが、もっとおかしいのは販売する薬局・薬店のほうである。
 秘密主義ほど価値観が出るという巧妙なマジックに他ならないのだが、これまで服用している薬を教えるように連絡をとらせても、頑として口を閉ざして服用者にすら永久に隠し通す同業者もいる。

 実に薄気味悪い業界である。
posted by ヒゲジジイ at 01:17| 山口 ☀| とんでもない話や、信じられない困った話 | 更新情報をチェックする

2008年05月15日

昨日の続き:アトピー治療には食事制限や日用品の点検も不可欠

折り返し頂いたメール::こんな私にまで、ご丁寧な返事ありがとうございました。

 文面のニュアンスで気迫がないとか申されるのは少々遺憾ではございますが、確かに、切羽つまっていないかもしれません。
 5-6割ぐらいは治った状態にありますので。

 本当に、死にたくなるほどキツかった時期は、抜けておりますので。
 実際その時期は、顔中がひび割れ汁が滴り落ち、痛みとかゆみで生きている心地がしませんでしたから。
 そのため、白内障も残ってしまいましたし。

 それと比べると今は切羽つまっていないと思います。
 それが、文面にも現われたのだと思います。
 それに、我慢することに慣れてしまって、何事に対しても常に冷静なスタンスになってしまうのもあるのですが。。

 アドバイスもありがとうございました。
 今お世話になっている漢方薬局は、煎じ薬で説明は何が入っているとか具体的な処方の説明はなく、炎症をとるのを加えたとか、便通を良くするのを増やしたとか身体を温めるのを多く入れたとか、納得のいく十分な説明はいただいております。

 効果は、なぜか▲▲で出会った漢方の先生のときほどの効果は得られていないのですが、十分な効果は得られております。

 私が、季節によって体質が変わりやすいようですので、身近に相談出来る方が良いと思い、今の漢方の先生に変更したのです。

 それとブログも読ませていただきましたが、私が5-6割の状態から良くならないのは、自分の生活に原因があると再認識できました。
 甘いものであったり、清涼飲料水を飲んでみたり、肉類を多く食べたり、つい普通に食べてしまっていました。
 ちゃんと漢方の先生からも注意されていたのに。

 現状を打開できないのは、漢方薬の問題というより、自分の問題という方が大きい気がします。


 ですので、これを機にしっかりとそれらを注意したうえで、しばらく今の漢方薬でがんばってみようと思います。
 しばらくやってそれでダメなら、また▲▲の先生のところに戻ってみようと思います。
 それでも、うまくいかなければ、再度相談させて頂きたいと思います。

 村田先生のHPに巡り合い、メールの返事を頂き、本当に、治してやるという活力が再度出てきました。
 ほんとうに、喝を入れられたような気分です。
 ありがとうございました。

 それでは、失礼したします。


ヒゲジジイのお返事: 当方からのお返事に対して、何のご挨拶もないままの人が大変多い中、ご丁寧に折り返しのご挨拶、ありがとうございます。

 また、当方からのアドバイスに対してはお礼には及びません。
 当方でもブログの材料に利用させてもらうわけですから、ギブ・アンド・テイクです。

 お返事のメールを頂いて感じることは、やはり食生活や日用品の点検と改善の重要性です。
 これを実行されるか怠るかでアトピーの改善スピードはかなり異なるものです。

 ご参考までに、成人型の重症アトピー性皮膚炎は飽食病

 このページにも記載している通りです。
 食事などに反省点が大いにおありとのこと、この面については大いに自己責任ウエイトが大きい部分です。

 当方でもステロイド漬けだったにも関わらず、漢方薬で一定の効果が得られると、それをよいことに毎日の飲酒を止めようとしないツワモノもおられます。
 でも、自己責任部分を自覚されているので、もう一歩が治らない部分に苦情を言われることはありません。
 そのアルコールさえ止めればほとんど根治してしまうのに惜しいことだとアドバイスしても、現状でほどほど満足されているのか「不養生でどこまで治るかの良い実験台ですよっ!」と嘯いて恬然とされているので、最近ではもう言わないことにしていますよ(苦笑。

 今回の往復メールも、食事療法の重要性を強調するのにブログで利用させてもらうのに好都合です。

 今後の健闘をお祈り申し上げます。
posted by ヒゲジジイ at 00:19| 山口 | アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする

2008年05月14日

アトピー性皮膚炎治療の漢方相談

性別: 男性
年齢: 30歳〜39歳
ご職業 : 教職
簡単なご住所 : 九州地方
成人型の重症アトピー性皮膚炎治療の漢方薬サイトのお問い合わせフォームより :  村田漢方堂 御中はじめまして●●とも申します。
 この度、アトピーの漢方治療に関して相談したくメールいたしました。

 現在私は、ステロイドはもう7,8年前から絶っており、5年ぐらい前から漢方を使っておりますが、未だになかなか改善には至っておりません。
 20代はずっとアトピーとの戦っていたので、今年3?歳になりますが、いい加減どうにかならないかと思っております。

 漢方も現在すでに3軒目になっております。
 1軒目は、急なリバウンドのため、実家の◎◎に療養しに帰った時を機に行かなくなり、2軒目は、◎◎で見つけて薬の調合などもしてくれて、満足していたのですが、遠方のため電話でしか相談できなかったため、1年半ぐらいで変えて、3軒目は、▲▲で薬を調合してくれる漢方薬局を探して、今約1年ぐらい通っています。

 悪くはないが、良くもないという状態がずっと続いております。
 最近、あまり良くならないので、私の両親も漢方治療に不満を言ってくるようになりまして、普通の病院も含め、いろいろ探していたのです。
 それでインターネットにて探していたら、貴サイトにたどり着いたのです。

 今行っている漢方薬局も1年経ってないので、もう少しお世話になるか迷っているのもあるのですが。
 一度村田様にお話が聞いてみたくメール致しました。

 長い間漢方治療しても、自分に薬が合ってなければ、やはり効かないものなのでしょうか?
 人によって分かりにくいこととかあるのでしょうか?

 もし、村田様の漢方に変えた方が良さそうなら、一度薬局にお伺いしたく存じます。
 それでは、失礼いたします。


お返事メール: 貴方の様に各地の漢方薬局のみならず、高名な漢方専門医などで漢方治療を何年にも渡って試みながら治らずやって来られる重症者は珍しくもありません。
 しかも病歴が数十年に渡る人も珍しくありませんので、貴方の長年のご苦労も大変だったとは言え、それを上回るご苦労を重ねて、当方に辿り着いた方も沢山おられます。

 但し、貴方の場合のニュアンスでは重症でもないご様子。

 しかもステロイドは離脱しているとのことですから、スムーズに行けば、最近あった2例のうち同様な人や、幸か不幸かステロイドが効かなくなって来られた人では、初期の数ヶ月は10日毎に、ピントの微調整に苦労し通しでしたが、ペースが掴めだしたらどんどん寛解してお二人ともさっさと半年過ぎる頃にはサボり癖がつくほどの寛解状態。

 いずれ再燃して駆け込んで来ることでしょうが、ステロイドが離脱できているひとは、うまくいけば一年もあればほとんど見掛け上は寛解してしまうものです。

 しかしながら、ステロイドを毎日塗布していたような重症ではもっと長期間を要することもあるのは当然ですが、皆さんそれなりの覚悟と信念をもって来られているので、脱落者はほんの少数です。

 というのも、当方からやる気の無い人は選別させて頂き、迷いのある人やタメシ飲みのつもり程度の及び腰の方は、最初からお断りしているからです。

 但し、アトピーは真の意味で根治などは滅多なことではあり得ないかもしれません。1割程度の名残は、徹底的な食事制限と日用品の綿密な点検と整理を行なわない限り、かすかな名残はつきまとうものと思います。

 貴方は漢方薬局で服用されながら、メールのご報告では服用された処方が一切記載されておられませんが、例によって無表示の漢方処方を飲んで来られたのでしょうか?
 昨日もアレルギー疾患で来られた新人さんは、同じ九州地方で無表示の漢方処方を続けられていて却って調子が悪く、処方名を尋ねると「教えられない」と言われたそうですが、この情報公開の時代に、明らかな薬事法違反です。

 それはさておき、当方の漢方薬のやりかたは服用者に自主性をもってもらい、配合変化の法則を少しずつ覚えてもらいつつ、臨機応変の配合変化をみずから行えるようになってもらうやり方です。

 それ以前の問題として、また当方の薬局に移った場合、これで貴方は4件目ということになります。
 ところが、メールを拝見していると、貴方は2件目の漢方薬局では満足していたというほど効果があったところを、それを敢えて離れて3件目の薬局に移られたとは、本当に惜しいことをされていますねっ!

 効果が明らかにあるのはその先生の技術と知識が高いことの証明ですから、遠くになるからといって変えるべきではなかったと思います。
 馴染みになって体質をよく知ってもらえているところほど、臨機応変の処置も早く、ゼロから出発するよりも遥かに能率的なことが多いものです。
 しかもご実家の近くというその有利な条件でもあるその漢方薬局から引き続き依頼しなかったことが貴方の最大のミステイクだと思いますっ!

 どこの漢方薬局でも漢方薬なら同じだと誤解されている人がおられますが、技術と知識の差は、素人さんが想像する以上に月とスッポンなのです。
 悪いことは言いませんので、そのご実家近くでよく効いていた漢方薬局へお戻りなさることを強くお奨めします。

(当方に移ってこられる人の多くは切羽詰った面持ちで問い合わせる間もなく駆け込んで来る人達ばかりですが、貴方の文面のニュアンスからはその気迫が感じられませんので、恐縮ながら、きっと村田漢方堂薬局のやり方には合わないような気がするのです。)

以上、書き殴りで恐縮ですが、お返事申し上げる次第です。
posted by ヒゲジジイ at 08:03| 山口 ☀| アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする

2008年05月13日

扶正と祛邪(化学療法時における補剤の有効性について)

おたより: 東海地方の内科医師

 いつも熱烈なる中医漢方薬学論を興味深く拝見しています。先日の虚実論は大変示唆的でした。

 以前私は血液の悪性疾患を治療させていただいていましたが、漢方(いわゆる日本漢方)に遭遇するまで、抗がん剤を用いた厳しい化学療法を実施していました。
 当然副作用の結果、感染症とか偶発症のために治療なかばで不幸な転帰をたどるかたも少なくありませんでした。勿論たいした副作用を経験することなく回復され、がん細胞が検出されない、いわゆる寛解と称する状態に到達するかたもみえました。

 ここで生じた疑問は、化学療法に耐えられるかどうかが何によって決まるのかという点でした。もしその化学療法にたいする認容性を規定する要因がすこしでも判明すれば、治療成績も改善するのではないかと愚考したわけです。

 当時たまたま私の父親が喘息になり、麦門冬湯にて一夜にして著効し、そのときはほんとうに驚嘆しました(現在中医漢方薬学にて良好)。
 
 このエピソード以降、日本漢方をある先生のもと師事し日常の診療に導入し始めました。
 すると、驚いたことに、副作用のでかた、偶発症の発生頻度があきらかかに減少している印象を得ることができました。

 今から振り返りますと、日本漢方的尺度で気虚・血虚を評価して方剤を選択していました。しかし、師事した先生からは、いわゆる体力を指標とした虚実の概念は強調されていませんでしたので、日本漢方的な虚実を考慮には入れていませんでした。

 患者さんのなかには体力のあるかたもそうでない華奢なかたもいました。
 化学療法に漢方を導入するまえの状況ですが、体力の有無とか、日本漢方的な虚実の状態が化学療法の認容性に影響をおよぼしている印象ではありませんでした。

 したがって、いわゆる正気を補強する方剤を内服していただくことによって患者さんの全身状態が改善し抵抗力が回復し、ひいては化学療法の成果が向上したように愚考しています。
 ここで、去邪法は化学療法が担当したことになります。


 村田さんのご指摘のように、虚実に関する正確な知識が啓蒙されると患者さんの病状の改善に大きく寄与すると感じています。今後とも熱烈に中医漢方薬学を発信してください。

 私ごとながら、例年5月の連休のころに風邪で寝込むことが通常となっていましたが、今年は元気に過ごすことができています。これも中医漢方薬学のおかげと思って感謝しています。


お返事メール:おたよりありがとうございます。

 化学療法による去邪法に、漢方薬による扶正法というお考え方は、ご尤もだと興味深く、とても示唆に富む治療方法だと納得します。
 実際の厳しい臨床に携われておられた先生でおありなだけに強い説得力を感じます。

 実際の臨床時には、常に扶正と去邪というバランス感覚が必要であると実感します。

 昨今、ブログでも書きましたように漢方薬を求めて来られる方の中には、勉強熱心な方もあるのはとても慶賀すべきことなのですが、多くは日本漢方の稚拙な虚実論ですので困ります。

 困るといっても、実際にはその日本流の漢方で治らなかった人たちばかりですので、人の身体は一人の体の中で虚実混合(虚実挟雑)で、五臓六腑それぞれに虚実に違いがあるのだから、体力で虚実を判断するような稚拙な考えだから適切な漢方薬にめぐり合えなかったのですよ、ということで納得してもらえます。

 虚実挟雑・寒熱錯雑などは日常茶飯事ですので、生命体を常に固定的に考えてはならいことを来局者には常々口を酸っぱくしてアドバイスしています。
 
 補剤であれ瀉剤であれ同様で、アトピー性皮膚炎などでも昨年の重症時には必須であった玉屏風散 (ギョクヘイフウサン)が、8割以上の寛解に到達した頃には必要がなくなりむしろ邪魔になったり、あるいは黄連解毒湯が途中からは不要になることも日時茶飯事です。

 交通事故後遺症で血行不良から生薬製剤二号方と葛根湯製剤の併用が必須でみるみる血行がよくなって喜んでいた人が回復するにつれて不要になり、現在は疎経活血湯加減方と茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)に変化しているなど、常に寒熱虚実は時に応じて判断しないことには、一定レベル以上の疾患には対応できないと思います。

 実際には、五臓六腑の虚実と寒熱をしっかり把握する必要があり、しかも固定的に捉えてはならないわけで、こんな面倒な弁証論治ですから、それに比べれば日本漢方の虚実論など安気なものです。

 分かりやすく安易なものほど疑ってかかるべきことも多いはずですが、体力の有無で判断する虚実論を記載した書籍類やネット情報が氾濫しているのも実に困ったものです。

 さいわい当方の後継者は少なくとも同じ漢方薬局ではないので世間的な柵(シガラミ)が少なく、愛国心の強い小生とて引き続き遺言がわり日本漢方に喝を加えていきたいと存じています。

 貴重なご体験のご報告とともに応援のお言葉を頂き、まことにありがとうございました。
posted by ヒゲジジイ at 00:17| 山口 ☁| 急性骨髄性白血病など血液の悪性疾患(血液癌) | 更新情報をチェックする

2008年05月12日

長期間続けてもらってようやく奏効したり気がついたりした難儀な症例

 頑固な疾患というのは、時に効果がなかなか出ずに難儀することもあるが、諦めずに服用し続けることでようやく奏効する例というのも枚挙に暇がない。

 といってもヒゲジジイはせっかちな方だから、10日間で多少とも効果が見えなければ、「微調整」という名目で早く一定の効果がでるようにあらゆる工夫と無い知恵を働かせるのが常である。

 なかなか難治性の疾患で、たとえば膝関節を手術後に細菌感染を生じ、繰り返し長期間ミノマイシンの投与を受けながら治りきらず、漢方に救いを求めて来たやや高齢の人にもやや難航していたが、ご本人自身も長期間かかるものと観念されているので、四ヶ月間の服用の成果がようやく実り始めたところである。

 まだまだ予断を許さないが、ヒゲジジイとしては珍しく配合処方を一度も変えることなく続けてもらった。
 金銀花入りの荊防敗毒散に防巳黄耆湯製剤に白花蛇舌草である。
 黄耆(オウギ)と金銀花の配合など、托裏消毒飲の方意を含ませるのは、日本流の時代から実績が多いからである。

 単なる皮膚掻痒症でも、やや高齢のお馴染みさんが最初に出した茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)だけを飲み続けて半年以上、最初の頃は薬局店頭には遠来の人達が沢山立て込んでいるときに大声で「まだ効かんっ」と言いながら、アテツケガマシクやられていたが、昨今、大人しくなったのでご夫婦で来られたときに、その後どうなのっと訊くと、この木の芽立ちの春先、もっとも皮膚病患者が増える時期に、最近は痒くないそうだ。

 初期にはステロイドを塗りたくっていたはずだが、効き目が出てくると現金なものである。茵蔯蒿湯だけでは不足だから瀉火補腎丸などを追加しようにも、きまって立て込んでいる時にばかり偶然来られるものだから「アレ頂戴っ」で半年以上、単方でもあきらかな黄膩苔がある人だから、長期間の服用でようやく確実な効果がでて来たようで、今年になって、しかも春先にも激しい再燃することもなく落ち着いている。

 本来なら上記の二例のようなノロノロした効果では、服用者が途中で諦めるか、あるいは効果を出すために追加の方剤を工夫するかのいずれかだが、幸か不幸か上記のお二人のように、漢方薬は効果がのろいものだという先入観が、却って幸いした例である。

 とても申し訳なかった例では、重度の貧血症状に気がつかず、様々に方剤を多種類工夫するも、大きな成果が得られずに丸一年。
 丸一年も頑張ってもらって成果が乏しいのによううやく気づいて何のことは無い、牛黄製剤を利用したシンプル・イズ・ベストでようやくまともな効果が得られたという近年まれに見るひどいドジ。

 本当は、アトピー以上にご相談者の多い転移癌や進行癌における数々の自慢話を書きたかったが、変な誤解を受けたくないので自慢話は止めにした。
posted by ヒゲジジイ at 00:23| 山口 ☁| 中医漢方薬学 | 更新情報をチェックする

2008年05月11日

虚証・実証・虚実中間証の錯誤について

 昨日の続きである。
 最近はご自身の病気を治したい一心で勉強熱心な素人さんも多いから、少しは理解しやすい虚実論をここに書いておきたい。

 皆さんの仕入れてくる漢方の知識では、体力が乏しいのが虚証、体力が充実しているのが実証という何ともあやふやな知識を仕入れて、実証用の黄連解毒湯や大柴胡湯、虚実中間用の加味逍遥散、虚証用の六君子湯などという日本漢方の錯誤した知識を得て来られるケースがほとんどである。

 こんないい加減な分類で漢方処方を運用していたら、一定レベル以上の疾患になると滅多なことで治るものではない。
 ここからがとても重要な記載である。

 一人の身体において五臓六腑それぞれに寒熱および虚実に違いがあり、しかもそれは固定的なものではなく、情況によって五臓六腑それぞれの寒熱や虚実は変化するのである。

 だから日本漢方の解説書で特に強調されて書かれているような「体力」によって虚証と実証や虚実中間に振り分けることは、ほとんどナンセンスに近い分類なのである。

 どんな人でも一人の身体で五臓六腑それぞれで美妙に寒熱も虚実も同居しているのだから、体力が無い人でも、配合バランスを考えながら、必要に応じて黄連解毒湯や大柴胡湯などがシバシバ配合されることがあっても当然なのである。

 そもそも「体力のあるのが実証」という考え方そのものが、ほとんど錯誤に違い考え方であることだけは覚えておくといい。
 体力があれば実証用の漢方薬も服用する必要なんてある筈が無いっ!

 たとえばこの仕事を始めて35年間、胆石症発作を繰り返す虚弱体質で体力の無い女性達に随分遭遇して来たが、その多くが大柴胡湯+茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)+オルスビーや牛黄製剤で即効を得る機会がしばしばであった。
 また、気力体力の喪失した人たちのストレス性疾患でも、舌先が極端に赤く、イチゴの粒粒のような赤みが顕著な華奢な女性達に随分遭遇して来たが、必要な他の漢方処方とともにバランスを取りながら、黄連解毒湯の適量を併用してもらうことで明らかな改善効果を得ることもシバシバである。

 とりわけ黄連解毒湯などは、各地の漢方専門病院や漢方薬局を歴訪して治らず、当方のところへ辿り着いて判明したことは、いわゆる虚証用の温める方剤ばかりが出されていて、清熱解毒作用のある黄連解毒湯など、その人にとって必須の配合が欠けていたために、いつまでも諸症状に困しんでおられたというケースは枚挙に暇が無いほどである。

 だからといって、黄連解毒湯のような清熱作用のある方剤を単独で乱用すべきではないことは常識で、必ず他の方剤とバランスをとりながら、氷伏(ひょうふく)を起こさせない配慮が必要である。

 それゆえ素人療法は怪我のもとだから、必ず中医学に堪能な専門家と常に相談しながら漢方薬を求めるべきなのである。

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posted by ヒゲジジイ at 10:04| 山口 ☁| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2008年05月10日

体力が無ければ虚証、体力がある人は実証、その中間が虚実中間証と規定する日本漢方の錯誤

 本日たまたま二度目の来局者で、黄連解毒湯製剤を主体にした三種類の配合をお出ししていた人から質問を受けた。

 漢方薬専門の書籍を数冊持っていて、いずれの本にも黄連解毒湯は体力の充実した実証用の方剤と書かれているが、自分のよう虚弱性の体質に大丈夫だろうか?

 黄連解毒湯製剤を規定の半分量で服用頂いており、既に鎮静効果などを感じられ、他薬との配合で他症状にもやや効果が出ている上でのご質問である。

 確かにこの方は、見かけ上は明かに華奢なタイプで日本漢方の虚実論から言えば「虚証」と判断されるのだろう。
 だから既に病院で出されていた六君子湯を代表とする各種虚証用の方剤では効果がなく、虚実中間証用の方剤で一部効果があったのであろう。

 ところで、そもそも体力の充実度で虚実を判断する日本漢方の考え方事体があまりに稚拙で、あいまい過ぎるのである。
 体力が充実しているのが実証なら、実証の人はどうして病気になるのか不思議な理論である。

 こんな幼稚で理屈に合わない錯誤した理論を引っ提げて「WHO東アジア伝統医学用語の標準化」の作業に出席する資格があるのか実に疑わしい。

 虚とは正気の不足を指し、虚証とは正気不足を示す証候である。
 実とは邪気が盛んなことを指し、実証とは邪気が盛んなことを示す証候である。

—『中医学基礎』(1978年:上海科学技術出版社発行)

 これこそが虚実論の本流のはずであるが、日本で出版される多くの一般向け漢方書籍類では、体力で虚実を分類する錯誤をおかすから、華奢なみかけの人には永久に大柴胡湯も黄連解毒湯も使用できないことになる。

 虚実論をもっと詳しく知りたければ、虚証と実証についてがある。
 これは以前、『中医臨床』誌に依頼されてヒゲジジイが翻訳したもの。

 さらにヒゲジジイの血気盛んだった昭和末期に『漢方の臨床』誌に掲載された日本漢方の将来「中医漢方薬学」の提唱 は、当時日本の漢方界を震撼させた記念碑的な拙論だが、その一部を引用しておこう。専門用語が未熟な日本漢方

 「虚実」の問題において、<体力が余っているのが実証><体力が衰えているのが虚証>と表現する漢方の一般向け啓蒙書籍が多い。その実、漢方の専門家個人個人によって様々にニュアンスの異なった解釈がなされているが、やはり結果は大同小異である(文献5)。この実証、虚証の極めて幼稚な解釈は数々の困った現象を生むことになる。

 現代日本漢方の特異な風潮として、体質ばかりでなく方剤においても実証用、虚証用、虚実中間証用などと規定することに熱心な現象が見られるが、これは病人の状態を常に固定的に捉えることを奨励するような間違った観念を植え付けかねないものである。

 一方、<実とは外因、内因を含めた病邪の存在をあらわす概念><虚とは生態の機能面、物質面の不足をあらわす概念>と規定する中医学のありかたにおいては、合理的な病態把握が可能である。「実とは邪気が盛んなこと指し、虚とは正気の不足を指す」のであるが、従って「実証」とは邪気が盛んなために現れる証候であり、「虚証」とは正気不足より現れる証候である。
 現実問題としてとりわけ慢性的な疾患の場合、「虚実挟雑」状態であるのが一般であるが、疾病の過程はある意味では、正気と邪気との相互闘争する過程とも言える。それ故、中医学には「扶正&去邪」の法則がある。この理由から一般的な慢性疾患では「扶正法」、「去邪法」を同時に用いる「攻補兼施」が治療原則となることが多い。

 ところが現代の日本漢方に従っていると、体力の強弱のみで虚実を論じ続けるあまり、病邪(邪気)の存在に対する認識を忘却しかねない奇妙な医学と言わざるを得ない。その奇妙さをカバーするためか、かの徹底した実証主義者であるはずの吉益東洞が提唱した「万病一毒論」という「観念論」を利用して一事を糊塗する以外に、この極めて幼稚と思える漢方医学をどう弁明できるのであろうか?

専門用語が未熟な日本漢方より一部抜粋

posted by ヒゲジジイ at 16:28| 山口 ☔| 日本漢方の情けない現状と限界 | 更新情報をチェックする

2008年05月08日

杞菊地黄丸は規定の半分量でも効く

 必然的に特定の製品の宣伝をすることになりそうだが、イスクラ製の杞菊地黄丸は用法用量に規定されている分量の半分量、3〜4丸を1日3回でも十分に眼精疲労に効果を感じると言われる人も多い。

 別に節約しているわけでもないだろうが、こちらから見れば不思議に思うが、いずれも若い二十代の男女で言われるので間違いないのだろう。
 ネットや携帯で画面ばかりを眺めている世代である。

 ネットと言えば、連休中に予定していた遠出も億劫になって中止し、家にこもって「Web標準・・・」とか「スタイルシート デザインレシピ」などの本を眺めていると、XHTMLの世界の習得が、まだまだ基礎レベルの習得にまで到ってないのを痛感した。

 そこで、連休中に僅かでもWeb標準にかなうようなサイトに修正する努力をしてみたが、まだまだ序の口の修正しか行えていない。所有するサイトが多過ぎるからナオサラ。

 ホームページというのは、意外に「構造言語学」的な世界のようで・・・
posted by ヒゲジジイ at 12:22| 山口 ☁| 間違いや問題の多い日本の漢方と漢方薬 | 更新情報をチェックする

2008年05月03日

過剰な糖分は痒みの敵! 当然でしょうっ

 先日来、急に気温が上昇して暑くなった頃、やたらに咽喉が渇くので、アイスクリーム類をバカスカ何人分も食べ、おまけに美味しいショートケーキ類に甘いジュース類をシコタマ胃袋に入れたら、全身各所が痒くなり、二日間に亘ってボリボリ掻き毟って、痒みを掻くときの快感と苦痛を同時に味わった。

 ちょうど慢性湿疹で、村田漢方堂薬局では珍しく消風散と黄連解毒湯、天津感冒片と猪苓湯製剤でピントが合うかもしれない人の目の前でボリボリとやって、いかに甘いものが痒みに悪いかを実証してみせて教訓を与える情況に遭遇したのだった(苦笑。

 昨今、ヒゲジジイは杞菊地黄丸と茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)、小陥胸湯加味製剤、柴胡加竜骨牡蠣湯、超高級な牛黄製剤で体調が頗る良いところへ、甘いものの過食によって僅か二日間とは言え、痒みを掻き毟る苦痛と快感を同時に味わったのである。
 高濃度の茵蔯蒿湯を服用していてさえもこの通りである。

 アトピーで苦しんでおられる人の中には、甘いものを止めてもあまり変化がないと強弁する人もあるが、甘いものを止めたくないための反論に過ぎないと信じている。

 今日からしばらく休みが続くので、またまた美味しいケーキ類やアイスクリームをタラフク堪能して再実験でもしてみますかっ
posted by ヒゲジジイ at 09:42| 山口 | アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする

2008年05月01日

パソコン社会の必需品、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)

 最近、常連さんやお馴染みさんに大変評判がよいのは杞菊地黄丸(コギクジオウガン)。
 いまさら当然のようだが、仕事上も家庭生活でもパソコンを見る機会が激増しているのが原因と思われるが、眼精疲労を訴える人が急速に増えている。

 だから杞菊地黄丸の売れ行きは、既に社会現象に近いのではないかと思われるが、肥満に効くかどうかも怪しい防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)などよりも遥かに現実的で、有効性がかなり高いのがこの杞菊地黄丸である。

 村田漢方堂薬局でも昨年から顕著に杞菊地黄丸を販売する機会が増えており、しかも数日以内の著効を発揮することが多いのでとても重宝している。
 多くは初日から効果を発揮するので、超即効が出やすいと言っても過言ではないように思う。

 イスクラ製の杞菊地黄丸が最も評判が良いので、肝腎陰虚の舌証を確認して販売すれば、ほとんど百発百中である。

(仕事は明日一日頑張ったら4連休が続く・・・ニコニコ笑顔)
posted by ヒゲジジイ at 19:01| 山口 ☁| 時代的な傾向や使用頻度が増加中の漢方薬方剤 | 更新情報をチェックする