2008年04月05日

情報が氾濫する漢方薬

性別 : 女性
年齢 : 40歳〜49歳
簡単なご住所 : 中国・四国地方

お問い合わせ:??歳の母ですが、父が亡くなってから、物忘れがひどかったり、頑固になったりしています。認知症かアルツハイマーの初期かとも思ったのですが、物忘れ検診は、パスしますので、病院へ行きたがりません。
 それで、予防にと、ネット検索して、害はなく、栄養になりそうなサプリなどを買って気休めにしていました。

 ところが、3月31日付けの地方紙に、抑肝散に含まれる釣藤鉤が、アルツハイマーを防ぐという記事がありました。先生のブログで時々、釣藤散という名前を拝見します。

 母は、父の死の直後よりはかなり立ち直っていますが、物忘れはすこし残っていますし、気休めのサプリよりは、広告ではない新聞記事で紹介された大学の先生ご使用の漢方薬の方がよいのではないかと思ったのですが、どちらを買うにしても、他の成分が入っています。

 抑肝散と釣藤散と、どちらかを母が服用しても大丈夫かどうか、大丈夫であるならどちらの方が安全でしょうか。

 素人が、証も分からずに、新聞記事を読んですぐ飛びつくのは安易すぎるような気もし、一般治療にはまだなっていないようで、誰に相談ということもできず、あまり体質にこだわらなくていい安全な薬であれば、試してみたいような気がして、メールさせていただきました。


お返事メール:お訊ねの件、「大学の先生ご使用の漢方薬」という「抑肝散に含まれる釣藤鉤が、アルツハイマーを防ぐ」というお話、随分以前から「釣藤散」などは老人ボケの予防になると言われて来て久しいものです。
 もっと効果的な可能性があるのは牛黄や麝香など「気付け」作用のある動物性生薬であろうと思いますが、とても高価です。

 長年の経験からは、漢方薬の長期連用者は癌になりにくく、ボケにくいのは村田漢方堂薬局の常連さんのご高齢者たちでしっかり証明済みだと思っています。
 話はながくなりましたが、「抑肝散と釣藤散」とどちらがお母上によいだろうか?という御質問、お答えは不可能です。

 漢方処方というものは、それほど安易に結論づけられるほど、また大学の先生だからといって実際の漢方に対する造詣が深いのかどうかも怪訝な話で、科学的検証という名の下にますます漢方医学を「幼稚な科学」に貶める傾向が強いのがそれら大学の偉い先生方なのかもしれません。

 もしも真剣に漢方薬を考えらておられるのなら、地元近辺の漢方専門薬局に直接行かれて、ご相談されたほうが、メールで訊ねるよりはるかに確率は高いものです。
 是非、お母様をお連れしてご相談なさるべきです。
 但し、抑肝散と釣藤散のいずれかに絞り込んで考えるのは間違いです。

(蛇足ながら、村田漢方堂薬局では、たとえ直接連れて来られても「常連さんのご家族」でない限りすべてお断りしているご相談内容です。当方の漢方服用経験者が付き添ってない限りはピントの微調整が成功しないのが目に見えているからです。)


折り返し頂いたメール:早速のお返事をありがとうございました。

 新聞記事の大学の先生は、証に関係なく抑肝散を処方していらしたような印象で(違うのかもしれません)、もしかしたらあまり扱いの難しくない漢方薬なのかもしれないと思い、お聞きしてしまいました。

 予防と気休めでサプリを飲んでいる状態で、体質を気にしなくていい漢方薬かもしれないと思ってしまい、お騒がせして申し訳ありませんでした。

 やはり漢方薬は、サプリと違って、気軽に飲むというわけには、いかないようですね。
(「気軽に」は先生のお嫌いな言葉でした。すみません。)

 認知症やアルツハイマーは、発症前の予防が一番よいということですが、はっきりとした症状がない時に、予防の投薬をしてもらえるかどうかわからないのですが、母を説得して近くの漢方病院に行って体質についての相談だけでもしてみようと思います。(漢方薬局さんの方はどこに行っていいかわからないので)

どうもありがとうございました。

☆最初のメールに添えつけるべきで遅くなってしまいましたが今ふと思いついたので、元の新聞記事から、関係部分を抜粋します。

「東北大加齢医学研究所の荒井啓行享受は最近、周辺症状のうち、妄想や昼夜逆転行動などが抑肝散という漢方薬で改善し、身体機能も向上することをみつけた。
 荒井教授によると抑肝散に含まれる釣藤鉤という生薬にはベータアミロイドが集まって固ま(り脳に沈着す)るのを防ぐと共に、固まったものを分解する働きがあるという。」


折り返しヒゲジジイのお返事メール:脳梗塞の後遺症からボケ症状を来たしたご老人が、医師から抑肝散を投与されたために、老人性皮膚掻痒症をますます激化させて、そのために全身ステロイド軟膏塗布量が増えるばかりで、それでもなお抑肝散を投与し続けるという漢方に無知な医師たちの所業は目に余るものがあります。
 弁証論治のなにもあったものではありません。

 このご老人は熱証体質であり、抑肝散中の当帰やセンキュウがよけいに皮膚掻痒症を激化させていることにも気が付かないというお粗末。
 こと漢方に関する限り、いくら権威のある大学の先生が発言されることでも、話半分以下として受け取っていたほうが無難なのです。

 但し、抑肝散証に間違いない人が使用すれば、かなりな効果が得られることは事実、間違いありません。


お返事メール:認知症への、抑肝散の処方は、もしかしたら広く行われているのですね。
 記事が、「最近」「みつけた」だったので新治療かと思いました。

 母は軽症というか父の死の一時的なショックにすぎないかもしれません。物忘れはあっても「人柄が以前とは違う」と感じることがほとんどなくなり、副作用が出る可能性が高いなら、薬はなくても生活には差し支えないと思う一方、認知症やアルツハイマーのような病気の発症確率を下げられるなら、様子をみて服用を中止する余裕のある副作用リスクは受忍してもよいのではないかという気持ちも強いです。

 現在全然深刻な状況ではないのと、もし発症した場合の深刻度がものすごく高いのと、予防が非常に有効らしいのと、身内がたまに違和感をもつ程度の段階で病院に行くものだろうかという迷いと、本人がこの話題を非常にいやがるのとで、サプリでお茶を濁していました。

 抑肝散も新聞を読んだ時には、安全であれば効果はダメ元でいいぐらいに思っていたのですが、証があえばかなり有効性を期待できるということですので、どうにかして、証の正確な判定という、漢方薬の前に立ちはだかる敷居を越えられないかどうか検討してみたいと思います。

 どうもありがとうございました。


【編集後記】抑肝散証や釣藤散証くらい、どこの漢方薬局でも、そのくらいの区別はできるはずだから、近くの漢方専門薬局に訪問されたほうが、こと漢方薬に関しては、病院よりも信頼がおけるような気がするが・・・。
 医師が皆、漢方知識があると思うのはトンでもない大間違いだが、「漢方病院」ということだから、漢方専門の医師がおられるのなら、抑肝散証や釣藤散証の判定くらい容易であろう。
posted by ヒゲジジイ at 00:01| 山口 ☀| 漢方と漢方薬関連の御質問 | 更新情報をチェックする