2008年03月25日

やや特殊なタイプの増水行舟法常習便秘に増水行舟法の応用の可能性

おたより兼お問合せ:東海地方の内科医師

 茵蔯蒿湯(インチンコウトウ) ですが、舌の所見を評価して処方していますが、なかなかいい感じです(花粉症)。
 もちろん、患者さんによっては追加の方剤が必要な場合があるようです。 麦門冬湯、真武湯、苓甘姜味辛夏仁湯、辛夷清肺湯などが補助となってくれます。

 本日の本件ですが、30台半ばのご婦人ですが、幼少期からの頑固な常習性の便秘に悩まされて受診されました。
 舌は紅で無苔、脈は尋常です。腹部は両側下腹部にお血を認めます。

 排便がないとき(数日にわたり)、下剤を使用され排便が出るそうですが、そのようにして数日排便が順調にあると(下剤を使用して)のどが必ず数日してヒリヒリするそうです。
 そして常時水分を一日2L以上飲まないと体がだるいそうです。

 便秘のときはのどの症状は全くないとのことです。一応、教科書的に通導散、牛車腎気丸を処方しましたが、ご助言くださいますと幸いです。


ヒゲジジイのお返事メール:茵蔯蒿湯は本日も速効の報告を得ました。
 10日ごとに通って来られている方のご家族がベテランの看護婦さんで、この時期、花粉症で仕事に差し支えるので点鼻薬と点眼薬が離せないのに、黄膩苔が確認できたことから直ぐに服用してもらったところ、速効をえて点鼻薬と点眼薬の使用が激減したそうです。
 不思議なことに雨降りの日だけは一時必要なときがあったとか。
 それでも著効に間違いないとて茵蔯蒿湯を今回も余分に買って帰られました。

 お尋ねの便秘症の女性の舌像において苔がなく紅色であることから、陽明熱実し津液枯燥の状況が推測され、典型的な陰虚による便秘症と思われます。
 この場合、中医学的には増水行舟法を行うべきで、代表的な方剤は増液承気湯(玄参・麦門冬・生地黄・大黄・芒硝)です。

 しかしながら、増水行舟法を「常習便秘」に応用する場合、エキス剤で行うには潤腸湯に滋陰降下湯や養陰清肺湯のいずれかを加えることでも十分に代用になるのではないかと思います。
 あるいはこの女性のように津液欠乏を起こしやすい陰虚体質者では、下剤の入らない滋陰降下湯だけでも十分に常習便秘を改善できる可能性もあり得ることだと思います。


【編集後記】 生来の陰虚体質者の体質改善剤としては六味丸が基本であるから、上記の方剤とともに八仙丸(麦味地黄丸製剤)などを根本体質改善剤として長期間続ける必要があるだろう。
posted by ヒゲジジイ at 20:22| 山口 ☁| 常習便秘症 | 更新情報をチェックする