2008年03月23日

茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)にまつわる雑談

おたより:東海地方の女性薬剤師

 ここ3ヶ月ほど、実は私も茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)を愛用しています。
特にアレルギー等はありませんが、一日の殆どが座り仕事なのに、食べ過ぎているのかもしれません。(^^;)
 舌の他の部分に対して、肝胆がいつも赤く、時折黄膩苔が見られることがあります。

 そのくせ、丈夫かというとそうではなく、本質は脾腎陽虚です。
 無理しては、しんどくなり、肝熱が上がってくるタイプです。
 血筋的にも、中風のサラブレットです。

 茵陳蒿湯は、私にとって寝る前1度の服用が最も調子がよく、朝は脾胃を温めるもの、昼は理気、そして夜は化痰や解毒の食事で対応しています。

 先生がおっしゃるように、現代の食事事情からすると、これから茵陳蒿湯は益々活躍しそうですし、こういったタイプのガン体質予防、改善にも使えそうな気がしています。

 また、お話は変わりますが、少し前のブログで、頭に良い物・・・で先生は”哲学の煙”を書いておられましたが、私の場合は、コーヒーです。
 コーヒーのお供に、甘い洋菓子をとらず、栗、くるみ、松の実、枸杞子などの補肺腎系統を少量いただくと、頭や目の疲れに良いみたい・・・・。

 そして、私はピアノの練習前に、全蝎を摂ります。
 特に、新しい曲を練習していて思うのですが、昨日まで指が絡まって動かなかったところが、突然に弾けるようになる・・・これは、指が覚えたのでなく、その部分の頭の神経がうまく伝達し、つながったことをヒントに、通経絡作用のある全蝎をとると、指の動きが良くなることを実感したためです。

やはり、中風の気があるせいかもしれませんが・・・(笑)


ヒゲジジイのお返事: 茵陳蒿湯証は、たとえ僅かでも「黄膩苔」が必発ですね。これがない人に使っても無駄だと考えています。舌質よりも重要なのが黄膩苔の存在だと考えています。
 先生のように脾腎陽虚の人にもシバシバ遭遇しています。それに近い極端な例に最近遭遇しています。

 以前ブログにもお問い合わせを掲載した、
 2008年02月13日 様々な症状が複合する場合の漢方薬

 この女性、あらゆる自覚症状が、茵蔯蒿湯・五苓散・葛根湯という配合で、ドンぴしゃりと嵌っています。
 ひどい黄膩苔が現在は軽減して、この配合で偏頭痛や肩こりのみならず、胃症状も全面的に快癒。まだまだ徹底的に継続服用の必要がありますが、このような配合は、日本漢方の時代では決して考えもつかない組み合わせでした。

 使っている方剤は古方ばかりですが、配合方法はあきらかに中医漢方薬学派です。日本漢方の伝統である古方を重視する伝統を守りながら、発想は中医学理論を基礎に、それも陳潮祖先生の少陽三焦理論を最も重視しています。


折り返し女性薬剤師からのお返事:先生がおっしゃるように、私も茵蔯蒿湯、五苓散、葛根湯、そして柴胡桂枝湯によくお世話になり、この四つの方剤があれば、自分はかなり安心できます。
 薬局には、自分と似たタイプの女性がよく訪れるので、これらはとてもよく出ています。

 脾腎陽虚の女性は、当然、衛気も弱く、特に足元から邪気が入りやすいようです。
 冷えによってすぐに膀胱炎の初期症状を呈し、足の裏の湧泉と、足のきびす付近の申脈や昆侖に圧痛がしてくるのが特徴です。

 こんなとき、タイミングよく、葛根湯と五苓散を使用して、督脈と膀胱経に通陽すると1度の服用で治ってしまいます。

 ところが、ここでタイミングをのがすと、すぐに少陽へ入り、本格的な排尿痛、口渇、熱っぽさが出てきます。
 特にデスクワークで座りっぱなしの女性は帯脈機能が失調しているため、膀胱経に邪気が入ったかと思うと、驚く早さで、少陽の症状が出てきます。(少陽に入ると、臨泣穴の方が痛くなってきます)
 こんなときには、柴胡剤と猪苓湯を持ってくるか、黄膩苔があれば茵陳蒿湯と五苓散を併せ、スカッと症状がとれています。

 ただ、私の場合、古方にも中医にも精通しておらず、頭の中が体系化されていません。

 自分は物覚えが悪く、ひととり勉強してからでは、おそらく百年たっても処方できないと思うので、自分のタイプとよく似たところから、少しづつ攻めて勉強中です。
 きっとおかしなことを書いていると思うので、ビシビシとご指摘ください。
 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


折り返しヒゲジジイ:先生ほどの経絡とツボを通した分析能力がおありでしたら超一流です。
 没理論の日本漢方に精通する必要はありませんが、経絡理論や鍼灸知識を用いてそこまで分析できれば十分でしょうっ!
 ただし、さぞやヒゲジジイと一緒に仕事をしたら、微妙なところで意見が食い違ってケンカばかりしそうな予感がします(苦笑)。

 ところで花粉症の人達のその後は、やはり茵蔯蒿湯を主軸にして急速に治まった人ばかり。但し、茵蔯蒿湯を常用中に生じた常連さんの花粉症では既に服用していた辛夷清肺湯に涼解楽(銀翹散製剤)で治まってきました。
 多くは茵蔯蒿湯が主体で、一部の人に銀翹散製剤や藿香正気散(カッコウショウキサン)、それ以外の人は、ヒゲジジイオリジナルの体質改善三点セットで治まっています。

 今年ほど花粉症に遭遇した例は近年稀でしたっ!
 花粉症の急性発作で村田漢方堂薬局に駆け込む新人さんは、仕事が過剰に増えるばかりだから、上手にお断りするのが例年でしたが、お馴染みさんご本人のみならず、そのご家族のご相談を受ける機会がとても多く、ご相談受けた人はいまのところ全員、短期間で治まってくれてホッとしています。

 本日土曜日は午前中なのですが、お馴染みさんや常連さんが立て込んで、途中来られた新人さんは幸いすべて市内の人達だったので、お二人ほど日をあらためて出直してもらうことにしました。

 電話のほうでも朝から奨めてほしいような思わせぶりな相談電話が続きます。
 春の数ヶ月だけに続く咳嗽が長年繰り返して病院で治らないのだが、というご相談には一時抑えだけでよいのなら、よその漢方に行ってほしいと迷いを断ち切って差し上げたこの老婆親切。

 一人ひとりにたっぷり時間をかけるので、本気の人でなければ、この老体に鞭打って心身ともに消耗する弁証論治はやっておれません。

 ところで服用が不真面目でも効果がある人はいるもので、
2008年03月17日:一日1回の服用もおぼつかないアトピー性皮膚炎の患者さんからのおたより この一日1回服用するのがようやくというアトピーの人、やっぱり二度目の下関へ遠路はるばるやって来られました。

 例年重症化する冬だというのに、意外にも一日1回の服用でも初めて来られた8月下旬に比べれば、明らかに好転しているのです。
 合併していた鼻詰まりも出ず、両腕が明らかに残っているものの、ややひどかった顔面は頬の赤味がわずかに残るのみ。
 これなら2回の服用でも十分治る可能性があるではないかと、大いに励ましておきました。

 一日1回の服用では遠路はるばる相談に来られても無駄だと返信していたものの、これだけ明らかな効果があれば、押しかけてでもやって来られる意義があったというものでした。
 皮膚病は、他人からも客観的に治癒や悪化の状態が分かるだけに、昨今一番やりがいのある仕事かもしれません。

 この方は、北陸地方の人らしく冷え性で寒がりではありますが、大柴胡湯・茵蔯蒿湯・猪苓湯・六味丸・ササヘルス・イオン化カルシウムの併用で、村田漢方堂薬局ではまったくオーソドックスな配合でした(苦笑)。この配合で結構身体が温まっているようです。

 せっかく遠くから来られたのですから効果をアップするために高濃度のヨクイニンエキス製剤を追加してもらうことにしました。


【編集後記】ヒゲジジイの最も不得意とするところは、典型的な心気症タイプで極端に愚痴っぽい悲観主義の人。不安がってあれやこれやのピントの外れた不毛な逆質問ばかり受けるのも返答に窮するばかりで最悪である。
 最近、そのような方に短期間でこちらが根を上げてギブアップしてしまい、東海地方の女性薬剤師を御紹介して無理に引き受けて頂いた。
 ヒゲジジイの不得意分野は頼もしい彼女にお願いするのが一番だ(笑)。
posted by ヒゲジジイ at 00:20| 山口 | アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする