2008年03月19日

注意が必要なメーカー間における製剤原料の大きな違い

 昨日ご紹介した平成7年に、A医師に回答した花粉症の弁証論治。

 実はこの医師から紹介されたステロイド漬けとなっている顔面の皮膚病患者さんを、苦労の果てにようやく茵陳五苓散と猪苓湯製剤で効果を得たことがある。

 そこでA医師にお伝えして患者さんをお戻ししたところ、医療用の漢方では3日で再発するのだった。
 再び、当方の同製剤に戻したら3日で顔面の皮膚病が消失するのである。
 このことは当時ウチダ和漢薬発行の『和漢薬』誌の巻頭随筆に掲載している。

 また成川一郎氏の「漢方製剤の偽装」を読んで感じたことでも書いているように
 たとえば、これは既に十年くらい前に「和漢薬」誌などにも発表したことだが、顔面に生じた慢性の皮膚疾患に、医師の出された医療用の猪苓湯と茵陳五苓散の配合で全く無効であったものが、市販されているエキス量二分の一の猪苓湯とエキスと粉末が混合された茵陳五苓散の併用によって比較的速やかな効果を示した例など、患者さん御本人と、主治医に薬剤師2名によって、何度も確認したものである。

 さらに最近しばしば遭遇することだが、複数の女性が医療用の猪苓湯エキスを出され、小生から見ても適切な投与であると思われるのに、一向に効かないからもっといい漢方薬が欲しいという要求に、濃度は二分の一だが効力の点では長年信頼している某メーカーの猪苓湯エキス製剤を試してもらったところ、速やかな効果を得ている事実をどう解釈すべきだろうか?
 このように医療用で効かなかった理由を猪苓湯製剤の質の問題ばかりにおもっていたが、茵陳五苓散製剤にも大きな問題があったことを今になって気がついた。

 この医療用漢方メーカーのツムラ漢方さんでは、ほんらい白朮(ビャクジュツ)であるべきところをすべて蒼朮(ソウジュツ)に置き換えられた配合なのである。
 ヒゲジジイの薬局では使用しない医療用のツムラ漢方だから、ほとんど関心がなかったのだが、先日、五苓散に蒼朮が使用されている問題を論じて以後、ちょっと気になって調査したところ、あらゆる方剤の白朮であるべきところが、すべてが蒼朮に置き換えられて製造されているという信じ難き事実っ!

 日本漢方の杜撰さがここにあり、補虚の白朮を去邪の蒼朮に置き換えたら、茵蔯五苓散や五苓散など利水系の方剤なら問題にならないこともあるだろうが、とりわけ補虚を主眼とする六君子湯や補中益気湯および十全大補湯など、それら数十処方以上ある方剤類が悉く、本来の方意を微妙に損なうことになる事実を知る医療関係者がどれだけいるのだろうかっ?

 こういう逆鱗に触れることをズバリ指摘できるのは、老い先短いヒゲジジイ以外には出来ないのだろうかっ?
 上述の白朮と蒼朮の問題は、すべて学問的にも臨床的にも中医学的には当然のことで、常識中の常識なのである。
 日本の漢方界は漢方処方に配合する生薬に関して、どうしようもなくデリカシーに欠け、杜撰なのである。
 それに比べれば、エキス濃度の問題なんて二の次ではないだろか。
posted by ヒゲジジイ at 00:02| 山口 ☁| 間違いや問題の多い日本の漢方と漢方薬 | 更新情報をチェックする