2008年03月09日

五苓散(ゴレイサン)の成分に蒼朮(ソウジュツ)を用いるのは間違いである

 最近、ようやく五苓散の優秀な製剤を手に入れることが出来た。猪苓湯と同様、各社それぞれ意外に優劣の大きさを感じており、なかなか気に入った五苓散製剤が見つからなかったのだが、灯台下暗しであった。

 それはともかく、言うもはばかられるが、五苓散製剤の原料に蒼朮(ソウジュツ)を使用している信じられない漢方製剤がこの日本に堂々と存在し、広く流通しているのだから驚愕ものである。
 その製造元の漢方と漢方薬に対する学識レベルを疑わざるを得ない。

 五苓散の薬味は、猪苓・沢瀉・茯苓・白朮・桂枝であると原典の傷寒論に記載されている。
 なにゆえ白朮(ビャクジュツ)のかわりに蒼朮(ソウジュツ)なのか?

 白朮と蒼朮は、中薬学上の薬効は明かに違いがある。類似した点も多々あるが、明かに異なる部分もある。
 脾虚脾湿に適応する白朮と、湿邪の実証に適応する蒼朮である。燥湿健脾を特長とする白朮と、去風除湿を特長とする蒼朮である。

 白朮と蒼朮の最も大きな違いは、白朮は固表止汗して黄耆(オウギ)がないときには一定の代用になるほどだが、蒼朮は逆に散寒解表して発汗作用がある。


 たとえば玉屏風散(ギョクヘイフウサン)は黄耆・白朮・防風の三味で構成されるが、この白朮を蒼朮で代用することがあっては絶対にならない。蒼朮に入れかえられてしまうと、玉屏風散の立方の主旨である表衛不固の治療方剤(益気固表止汗)としては完全に失格してしまう。

 同様に五苓散の立方主旨から考えても、明かに白朮でなければならないのである。

 もともと日本漢方(漢方医学)では白朮や蒼朮の原料に対する考えかたが非常にルーズであったが、その悪しき伝統が平成の御世にまで受け継がれているらしい。
 この国の漢方レベルは未だにこの程度のものであるかっ?

 白朮がないときの代用として古立蒼朮(コダチソウジュツ)を止むを得ず使用するというのなら話はわかるが・・・しかしながら、白朮の流通が途絶えたという話は聞いたことがない。

 実は、蒼朮を用いた五苓散エキス製剤が意外に広く日本で流通している事実を先ほど偶然知ったばかりなのである。
 だから驚き過ぎて眠れず、このブログの投稿も夜中の3時(苦笑)。

 実際には過去、五苓散(1)において
この五苓散ばかりは、色んな意味で、様々な応用方法があり、また、配合生薬中の「白朮(びゃくじゅつ)」が、「蒼朮(そうじゅつ)」を使用する漢方製剤があったり、「桂枝」であるべきところが、日本には腎陽・心陽・脾陽を特に温める作用の「肉桂」が使用されているなど、書こうと思えば、様々な方向から、どのようにもダラダラと書き続けてしまえるほど、話題はつきない。
 と述べていたが、事ここに至ってやや錯誤した製剤が広く流通するのも如何なものかと思って、敢えてここに書いた次第である。



玉屏風散(優秀な製剤は日本では衛益顆粒)の参考文献:アレルギー性鼻炎に対する玉屏風散
          玉屏風散証の見分け方
posted by ヒゲジジイ at 03:17| 山口 | 間違いや問題の多い日本の漢方と漢方薬 | 更新情報をチェックする