2008年02月16日

日本国内における乾姜の錯誤問題についての御質問

性別 : 男性
年齢 : 30歳〜39歳
簡単なご住所 : 東京都
お問い合わせ内容 : 拝啓
 こちら東京よりは暖かいとは存じますが、寒中いかがお過ごしでしょうか。

 当方漢方とは無縁の素人ではありますが、折にふれ楽しく、また興味深く記事を拝見しております。
 拝読していて半夏瀉心湯の項の乾姜の件が気になりました。この正しい乾姜を使用する良心的なメーカーというのはどこなのでしょうか。

 先生は結胸散や銀翹散の項のように良心的な薬剤、メーカーを折にふれ紹介されており、素人ながら胸のすく思いでしたが、乾姜の件ではメーカーをお書きになってお出ででないのはやはり何か差し障りがあるのでしょうか。

 素人療法は禁物とは重々承知ですが、風邪がまず咽喉に来たというときの銀翹散など、やはり助かる便利な常備薬もございますし、具合の悪い時漢方薬店で相談すると複数社のものを提示される場合もあります。

 ならば「正しい乾姜を使用する」ような良心的なメーカーのものを求めささやかながら支持したいと思うのです。

 つまらぬ質問で本当に恐れ入ります。
 ご多忙とは存じますが、先生の記事に度々登場する歯の件など読者としても心配でなりません。

 どうか先生もご自愛の程よろしくお願い申し上げます。敬具


お返事メール:残念ながら、ご指摘の奇特なメーカーを明かすことは出来ません。
 それは以下の理由からです。

 日本国というものは、昔から出る釘は打たれるし、「悪化は良貨を駆逐する」たとえ通り、立派な肩書きの先生方が間違ったことでも正論として指示されれば、嘘も真として置き換えられる。

 永遠に錯誤したまま、その考えが暴力的に強制され、いずれは遅かれ早かれ、煨姜(ワイキョウ)や炮姜(ホウキョウ)もどきの間違った「乾姜」に改悪される宿命にあるからです。
 その改悪を少しでも遅らせるためには、奇特なメーカー名を挙げるなどして、これ以上刺激するのは得策ではないからです。たとえ内密にでも貴方様にお教えすることも出来ません。

 幸い、錯誤した「乾姜」が使用されても、まったく無効ということではないようですので(といっても人によっては無効に等しい場合もあるのですがっ!)。

 現在もたまたま、手術待ちの胃癌患者さんが、さいわいにも正しい乾燥生姜を用いた半夏瀉心湯製剤で超速効をえて自覚症状を完璧に消せており、その人達のためにも、改悪される時期が少しでも遅れて欲しいのです。

 いずれにせよ、「乾姜」と表示される生薬原料は、あくまで乾燥生姜、つまり日本薬局方の「生姜」でなくてはならないのは厳然たる事実です。 

 いかに立派な肩書きのある先生方が、「乾姜」が蒸して加工した煨姜(わいきょう)もどきであると強弁したところで、ひどい錯誤であることに間違いはないのです。

 日本人は肩書きと言う権威に弱い人種が多いので、何をかいわんやです。

 まともに中医学を学べば、常識中の常識なのですが・・・何とも不思議な国の日本としか言いようがありません。

参考文献:日本漢方における生姜と乾姜の錯誤
      意外に重要な!漢方製剤および煎薬の品質問題
      生姜と乾姜の錯誤による無効経験
      日本国内における生姜と乾姜の錯誤問題
      半夏瀉心湯 (はんげしゃしんとう)



折り返し頂いたメール:早々のお返事に恐縮しております。
 記事を拝見した際何か事情があるように感じ引っ掛かっていたのですが、「裏話」を明かして頂き、なるほどと納得した次第です。

>いずれは遅かれ早かれ、煨姜(ワイキョウ)や炮姜(ホウキョウ)もどきの間違った「乾姜」に改悪される宿命

慄然としました。専門領域である以上先生のような志ある専門家のさらなる出現を期待するしかありませんが、何とも歯がゆい話です。

 最後になりましたが、丁寧なご説明心よりお礼申し上げます。これからも興味深い先生の記事を楽しみにしております。

posted by ヒゲジジイ at 17:39| 山口 ☁| 間違いや問題の多い日本の漢方と漢方薬 | 更新情報をチェックする