2007年12月31日
毎年仕事始めによくみられる病(やまい)ぶり返しの報告
年末年始の暴飲暴食が祟って、来年の仕事始めには必ず数人の病(やまい)ぶり返しの報告が入って来ることだろう。
毎年恒例のこととなっているので慣れっこになってしまった。
せっかく好転して順調に経過していた人も、年末年始の暴飲暴食が祟ってやや再発気味となる例は、この仕事をはじめて35年間、同様な報告を繰り返し受けている。
たとえ暴飲暴食はなくとも、いつもとは異なる食事内容の激変からくる影響が大きいのである。
おまけに一部の自覚の乏しい人は、服用回数が激減する始末。
とりわけ胃腸疾患やアトピー性皮膚炎などの皮膚病関係に多い。
いまさら十分に気を付けるように言ったところで、馬耳東風の人が多いので、強調する気にもなれない。
かく言うヒゲジジイ自身が、すでにコッテリした食品ばかりが続いて、やや便秘気味である。漢方薬の服用も、休日というのに昼の服用が欠けがちである。(だから男は長生きしにくいことは常々述べている通りである。)
だからといってヒゲジジイ個人の問題と、深刻な病気で漢方薬に頼っている人の問題を同列に置いてはならないのである。
職業柄、自分自身には多少甘くとも、他者にはやや厳しくても当然である。病気がよくなってくれなければ職業として成り立たない。
この当然の機微が分からない人は、ヒゲジジイの哲学の煙に理解を示すことも出来ないだろう。
ところで、村田漢方堂薬局に来られている男性でも熱心に欠かさず真面目な服用を数年から10年以上という人もある。
女性人に比べればはるかに人数は少ないが、男性でも熱心な人もおられるのは事実である。
しかしながら、総じて男性は薀蓄を求める割には長続きしないことが多いのは歴然たる事実である。
posted by ヒゲジジイ at 11:41| 山口 ☁| 中医漢方薬学
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2007年12月29日
ようやく一週間まとまって休めますね
本日土曜日の昼から一週間以上まとまって休めます。メールの送受信や補充注文の発送はほとんど年中無休であっても、薬局の扉を一週間以上閉じたままであることで、一年間の蓄積疲労が取れようというものである。
といっても、毎年必ずといっていいほど特別に漢方相談を行って欲しいという依頼があるが、もちろん今年もすべてお断りした。
まったく見知らぬ人からの依頼のみならず、数年間くらいのおなじみさんまでがご家族の漢方相談に乗って欲しいとの、たっての依頼もあるから困惑することもあった。
10年以上の常連さんではあり得ない依頼であり、ヒゲジジイが働きすぎで卒倒したらいけないからと、身を案じてくれるほどなのに(嬉涙)。
このような年末年始の慌しい時に、そのような依頼電話も多く、少人数の薬局であるために無駄な時間を奪われ、店頭に来られている方のご相談が中断されたり、遠方への発送が遅延しそうになったこと多々もあった。
多くの人は、遠方から来られるために、仕事を休んで来られているのに、上記のような無理な依頼をされる人達の話は、まったくもって得て勝手に思えてならない。
年末年始の休暇中でなければ下関までは行けないから、あるいは里帰りのついででないと直接出向くことはできないと主張されるのである。
繊細でデリケートなヒゲジジイの休暇を潰せというその根性が気に食わないので、そのようなデリカシーに欠ける人達には絶対に来て欲しくないと思うばかりであった。
平日に都合をつけてわざわざ下関まで直接やって来られる人達こそ、よっぽどの思いで来られていることが分かるだけに、意気に感じて精魂を込め、へとへとになるまで無い知恵を絞りぬいて長時間の漢方相談を行うことが出来るのである。
年末になってもまだブツブツ文句ばっかりブログに書いている(苦笑)。
posted by ヒゲジジイ at 22:35| 山口 🌁| お気軽やお気楽、迷っている人・無礼な人・クレーマー予備軍の漢方相談お断り
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2007年12月27日
中医漢方薬学の世界
進行癌や転移癌が外部に露出し、滲出液や出血を伴う状況においては往々にして出血が止まりにくい場合があり、これによる急激な大量出血が致命的になる場合もある。
いよいよ出血が止まらなくなり、漢方や中医学の世界でも有名な止血剤を用いてもまったく効果が見えないとき、患部の損傷部分の改善剤としての托裏消毒飲(たくりしょうどくいん)よりも優れた効能を発揮するエキス剤三点セット(@玉屏風散のエキス製剤・A金銀花と人参が配合された荊防敗毒散のエキス製剤・B白花蛇舌草のエキス)とともに、大量出血時に用いる独参湯をヒントに、高濃度の人参と牛黄の配合された製剤を併用することで、ぴたりと止血できた。
体力・気力も回復し、今後どこまで回復できるか楽しみである。
また偶然、同様の状況に陥りつつある段階のご相談があり、同様の方法を伝授したが、同様な速効が出てくれることを念じているところである。
posted by ヒゲジジイ at 00:18| 山口 | 悪性腫瘍・癌・ステージ4の進行癌や転移癌
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2007年12月25日
先生のブログのネタを増やす結果となってしまいました・・・(茶髪とアトピー性皮膚炎)
確かに、ご本人には申し訳ないがブログの材料を提供してもらう残念な結果となった。
タイトルの「先生のブログのネタを増やす結果となってしまいました・・・」というのは本日送られてきたアトピー患者さんのメール内容の象徴的な部分である。
月末と年末が二重に重なって、店頭や電話による常連さんの補充注文のみならず遠方の人達のメールによる御相談および補充注文が重なる毎日だから、ブログは途切れがちになるだろうと思っていたが、
2007年11月23日 茶髪とアトピー性皮膚炎 の顛末を書かざるを得なくなったのである
アトピーの悪化原因の一つが、明らかに茶髪用の染料であったケースはざらに目撃している。だから、こちらが注意するまでもなく、重症化して漢方治療を求めて来られる人の多くは、茶髪を止めてホウホウノテイでやって来られたはずだ。ということを書いていたのだが、やはりこの方は上半身のみ、その後次第に出没して明らかに再発しているといわれる。
それが寛解するとともに、のどもと過ぎれば熱さを忘れるの喩えどおり、六ヶ月目にして茶髪を再開した人がいる。よくぞあの重症だった状態からここまで改善したものだと思うものの、まだ8割がたである。完治したわけでも、完全寛解状態に安定したわけでもない。わずかに一部に残っている部分があるのに、とても勇敢な方である。
だから、もしも再発したら、決してヒゲジジイの腕の悪さのせいにしないで欲しい、茶髪の再開が原因であるのだから・・・と宣言して無理に止めさせようとはしなかった。
人それぞれの価値観があり、たとえ万が一病気が再発しても、やむにやまざる執念のように、どうしてもやりたくなる人間の業というものがあるようだ。
幸い、いまのところ茶髪に染めた上部の再発に限られているようで、最も重症だった両手は一定の寛解を維持している模様である。
今回は直接来られにくかったのか、メールでのご報告である。急ぎ他の補充注文と一緒に地竜(ミミズ!)を追加してお送りすることになったが、予測された事態だっただけに
やっぱり一度やって懲りなければならない宿命だったのだと思います。早速ブログに採用させて頂きます(苦笑)。というお返事を書く以外の慰めの言葉が見つからなかった。
(書いてはいけないことだけど、本音を言って美しい本物のフランス人女性みたいに茶髪がとても似合っていたので惜しくもあります・・・涙)
いずれにせよ、漢方薬によるアトピー性皮膚炎寛解例は非常に豊富な村田漢方堂薬局であるから、今後もしばらくは忍耐の微調整を繰り返せば、恐らく数ヶ月以内に寛解することだろう。
また、別の女性でアトピーの重症化から全身の体力まで失って職を辞していたが、半年で8割の寛解を得て体力も回復した十ヶ月目にして社会復帰した。
それはよいとしても、お化粧も再開したのでハラハラしていたが、一ヶ月以上経過しても、今のところ再発傾向がみられないので固唾を呑んで推移を見守っている。
posted by ヒゲジジイ at 20:00| 山口 | アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病
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2007年12月23日
子供の裸足生活と大人の裸足生活の意味は微妙に異なる
昨日の冬の裸足生活者のブログは、とても反響が多かった。現在、六味丸を服用中の人から、意外にも寒い冬にもかかわらず自宅では裸足生活が日常だが、自分は瀉火補腎丸の方がよりフィットするのではないでしょうかというご質問ばかりでなく、すでに瀉火補腎丸を服用されている人からもおたよりがあった。
【補注:瀉火補腎丸=知母地黄丸のみならず三物黄芩湯(サンモツオウゴントウ)証の場合もある。】
おたより:北陸地方の鍼灸師
前略
お蔭様で腰は大分楽になりました。今朝のブログ私もその一人ですね(笑)
やはり、瀉火補腎丸を使用するということは、腎陰の虚が激しいということでしょうか?
自分は小さい時から、靴下をはくのがいやで、夜など足が火照って寝れないことがしょっちゅうでした。
先天的な問題というか、素因なども考えられるのでしょうか?
お返事メール:ほとんどの子供は本来、稚陰稚陽で、陽に傾きやすく六味丸証がベースにありながら、五臓六腑それぞれに寒熱虚実に個性をあらわすものと思われます。
言い換えれば、六味丸的な陰虚火旺の性質を持つのが幼児・子供の本性のはずですから、その後の生活環境によって、陰虚火旺・虚火上炎の知柏地黄丸証にまで発展するかどうかが左右されるように思われます。
環境因子が大きいのではないかと思います。
多くの子供は、靴下を履きたがらないことからも、総じて子供というものは稚陰稚陽で、陽に傾きやすい六味丸証を持っていることが言えるはずです。
ところが、昨今は大人になるにつれてますますエスカレートし、虚火が益々熾んになって瀉火補腎丸を必要とする人達が年々増え続けているように感じています。
つまり、子供の頃は冬でも靴下を脱ぎたがる傾向があった人でも、大人になるにつれて靴下を必要とするように稚陰稚陽も適度に安定に向かうものでしたが、昨今は成長するにつれ六味丸証よりも虚熱の勢いを増す人が増えているように思われるのです。
この現象が中年に差し掛かって、生理が終わった以降にガラリと体質を変え、若い頃の足冷えが一転、裸足の生活を好む野蛮化(苦笑)の道に嵌った人々にもしばしば遭遇する昨今です。
子供の場合は裸足の生活を好むからと言って、アトピー性皮膚炎でもない限りは瀉火補腎丸を使用すべきではなく、子供は稚陰稚陽なので、穏当な六味丸を主体に考慮すべきですが、大人の場合では同じ裸足生活人間ともなると、虚熱が強烈なことが多く、虚火上炎と言われるように、顔面紅潮や眼の充血や寝汗などが顕著に併発している人もあるくらいです。
蛇足ながら、愚妻も中年以降は突如として瀉火補腎丸の愛用者となっていますが、小生の場合は、冬ともなれば靴下をこよなく愛しております。奥ゆかしく上品な人間ですので(苦笑)。
【編集後記】 上記の赤文字部分を補足すると、稚陰稚陽というよりも稚陽稚陰として中医学世界では定着した熟語であり、子供の体質的な特徴を清の時代に呉鞠通が『温病条弁・解児難』で記した次の論説が出典である。
小児稚陽未充、稚陰未長者也。つまり「小児のおさない陽はまだ充実しておらず、おさない陰は成長していない。」というものである。
また、古くは朱丹渓が
陽常有余、陰常不足という小児の生理的な特徴を述べている。
つまり、小児は常に陽が有り余っており、陰は常に不足しているという意味である。
これらによっても分かるように、子供たちが靴下を脱ぎたがるのは当然の理であり、足が火照って家では真冬でも裸足で平気であっても何の不思議はないわけである。大人とは根本的な生理特徴が異なっている。
このように、生理と病理方面においても小児は決して大人のミニチアではないということである。
posted by ヒゲジジイ at 00:19| 山口 ☔| 中医漢方薬学
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2007年12月22日
寒い真冬に裸足で過ごす人々が増加中!
自宅に帰って靴下を脱ぎ捨てる人々が増え続けている。この寒い真冬に信じられない行為だが、ご本人たちは至極当然のことと思われているらしい。
足が火照るからなのか、床暖房でもないのに裸足で過ごせるのだから羨ましいといえばウラヤマシイが、中医学的には陰虚火旺を疑わねばならない。
腎陰虧損による陰虚陽亢の六味丸のみならず、これに知母と黄柏を加えた瀉火補腎丸(知柏地黄丸)の可能性が高いのである。
これらの多くの人に、春夏秋の季節に問うた「足は火照りませんか?」という質問には「いいえ、ほてりません。冷えることがあります」と答えた人も多いのに。
「はい、火照ります」と跳ね返るようにお返事された人は、ほとんど即決で瀉火補腎丸が必要であることが類推できるので話は簡単だった。
春夏秋の季節にはちゃんと「冬場で布団の中で足が火照って無意識に冷たいところに足を置くことはありませんか?」という質問にも、否と答えた人が多い。
だから陰虚の存在が確認出来ている場合は、足が火照ると答えた人以外は、疑問の余地なく六味丸を他の併用薬とともに服用してもらって一定の効果は得られていたのである。
ところが、冬に差し掛かるや、たまたま自宅における生活状況の質問から、意外やイガイ、この寒い冬に向かって帰宅するやいなや、靴下を脱ぎ捨てて裸足生活が始まるというのだった。
朝はあさで、出勤寸前までハダシで過ごし、靴を履く寸前にようやく靴下を履くというのである。
六味丸を増強するか、多くは瀉火補腎丸に切り替えることで、アトピー性皮膚炎や高血圧が、一段と寛解する例をここ数ヶ月に何例経験したことか!
地球の温暖化によるものか? 飽食の時代なるがゆえか? 職場環境や生活環境における暖房設備の充実によるものか?
おそらくはそのすべての要因が輻輳しているに違いない。
時代は刻々と変化している。
従来から村田漢方堂薬局における六味丸の販売量は半端ではなかったが、次第に瀉火補腎丸と二分される勢いは止まりそうもない。
但し、六味丸系列の方剤には瀉火補腎丸(知柏地黄丸)のみならず、肺腎陰虚の八仙丸(味麦地黄丸)、肝腎陰虚の杞菊地黄丸などもあるので鑑別が必用である。
posted by ヒゲジジイ at 02:11| 山口 ☔| 時代的な傾向や使用頻度が増加中の漢方薬方剤
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2007年12月21日
わざわざ関西からオルスビー錠のために来られた奇特な方
タイトルに書くのは申し訳ないほど、まったくとても素直で善良な人だった。
要するに、
2007年02月15日 逆流性食道炎に対する安上がりな漢方薬
という記事をご覧になってのことである。
突然、関西からやって来られたが、病歴も極めて浅いのだから、まずは病院治療に頼るべきですよ、と言えば、身近な身内の方が合成医薬品の副作用で間質性肺炎になった怖い経験があるので、病院の治療薬は怖いので、オルスビーを求めてやって来られたというのである。
そちらの地元でも探せばどこかに売っていることでしょうに、村田漢方堂薬局でしか売られてない薬だと思い込んでおられたらしいのである。
せっかく来られても、偶然千客万来となった午後だったために待ち時間も長く、また30分も話すことが出来なかった。
ご本人も最初から短時間の御相談のおつもりだったらしく、外にタクシーを待たせておこうとされたくらいだった。
【オルスビー関連記事】
※オルスビー錠が逆流性食道炎に効果があったとのご報告と質問
※飽食の時代病=胆石症による疼痛発作がやけに目立つ
※瀉法の重要性について
※逆流性食道炎の御質問
ラベル:オルスビー錠
posted by ヒゲジジイ at 00:17| 山口 ☁| 逆流性食道炎・機能性ディスペプシア・胃痛・胃潰瘍・十二指腸潰瘍および萎縮性胃炎
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2007年12月20日
遠方の場合はメール力(りょく)次第です
タイトルの「力」は、カタカナのカによく似ているので誤読されないように願います。ひらがなでいえば「めーるりょく」と言いたいのです。
これまで地元近辺で様々な治療法を試みても治らず、ワザワザ遠方から泊りがけで下関にやって来られても、その後のメールリョク(メール力)次第で、完全寛解が得られるか、中途半端で終わるか。
順調に経過する限りは必要がなくとも、効果が途中で途絶えたり、中途半端な効果が持続する場合は、微調整の為にメールを使った詳細な情報交換が必須となる。
車で数時間以内で通える人で熱心な人は、7〜10日ごとに半年、一年と通い続けられるから、相当な難治性のものであっても、最終的にはより完全寛解に近づけるのである。
その点では遠方の場合は、しばしば通うことが出来ない分、メールでの定期的な報告が必要なのである。
中医漢方薬学における弁証論治は、とりわけヒゲジジイの弁証論治は極めて神経質で綿密繊細、その人の体質と病状を徹底的に知り尽くして適切な方剤を見つけようという完璧主義者なのである(苦笑)。
その割には比較的シンプルな方剤を好んで組み合わせるので、この点でも明らかに中医学と日本漢方を合体させた中医漢方薬学となっている。
ところでここ数日、直接のご来訪者のみならず、常連さんの電話による補充注文やメールによる相談や注文であんまり忙しくてブログの更新を怠っていたら、ご訪問者数の割にはウェブランキングバナーのクリック数が激減しているので、上記のようなあらずもがなのブログを書いてお茶を濁した。
posted by ヒゲジジイ at 13:20| 山口 ☀| 中医漢方薬学
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2007年12月18日
先天性総胆管拡張症
性別 : 男性
年齢 : 20歳〜29歳
ご職業 : 会社員
簡単なご住所 : 東海地方
お問い合わせ内容 : 村田先生
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎に住む2?歳の●●●●と申します。ご多忙の折、お読み下さることを感謝いたします。
かなりの遠方のため、すぐには伺えません。急ぎませんので、何卒ご返信お願い致します。
病歴(オペ歴): 先天性総胆管拡張症(総胆管空腸吻合術);肝内結石(肝左葉切除)のち胆管炎を頻発;統合失調症。
現在の服薬: ウルソ、クラビット、インチンコウ湯(ツムラ)、エビリファイ、アキネトン、ルボックス。
インチンコウ湯は、自分と酷似した症例に著効した例を知ったため主治医に頼んで飲み始めてから2週間です。肝機能が悪化したので中止になるかもしれません。
専門家による証判定もせず漢方を飲むなどということはいけないと痛感しました。
生後まもなく、上記先天性疾患でオペをし、17歳で肝左葉切除後、10年間肝内結石および胆管炎を繰り返して、肝硬変になるのも時間の問題と言われております。
1月2日ならば伺えるのですが、村田先生は休暇でいらっしゃいますか?
お返事メール:メール拝見しました。
茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)湯を自らの選択で服用されたそうですが、この方剤を単独使用する場合は、舌質が紅で黄膩苔という条件などがきっちりと揃っていなければなりません。
黄膩苔はあってもその他の諸条件が異なる場合は、単独使用してはならず、弁証論治に基づいたバランスの取れる他の方剤と組み合わせなければならないなど、漢方には漢方のしっかりした原則を守らなければ使用しても無意味となります。
ところで、病状から察しますと、一般的な方剤の組み合わせだけでは効果が弱い可能性も考えれます。
経費的なことを考えれば、通常なら10日分で3,000〜15,000円くらいで済むとむところが、病状の進行度から推察しますと、適切な牛黄製剤や麝香製剤まで併用する必要があるかもしれません。
この場合は、かなり高価なものになり、たとえば10日分で2〜3万円以上の経費がかかってしまうことも十分考えられます。
だからと言って絶対に寛解するという保障までは無いわけですから、遠路はるばる来られる価値があるとも言い切れません。
年齢も大変お若いことを考えれば、旅の疲れ等を考えましても、地元近辺で通える範囲の漢方薬局を見つけられては如何でしょうか?
せっかくメールを頂いても、このようなお返事で申し訳ない次第です。
なお、正月休みは12月30日〜1月6日まで休みで、7日(月曜日)が仕事始めとなります。
以上、取り急ぎお返事まで。
編集後記:疾患の内容と現在の病状から推測するに、かなり遠路の旅になるため、到底通うことは無理であろうし、また無理を押して一度来られたとて、それですべて弁証論治が定まるはずもなく、使用すべき漢方薬の経費も考慮すれば、お引き受けするには無理があるケースであったと思われる。
posted by ヒゲジジイ at 00:08| 山口 ☁| 漢方と漢方薬関連の御質問
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2007年12月17日
腹水の漢方薬の御質問
御質問者:イギリスの漢方医
御無沙汰いたしております。
○○○○で漢方医をしている●●です。以前、一度、ブログにメールを掲載させていただいた事があります。
○○○○で漢方の資格を取ってから、やっと2年目に入り、先生のブログを参考にさせていただきながら、毎日の診療に悪戦苦闘しております。
本日、メールさせていただいたのは、36歳のがん患者(◎◎◎◎◎◎◎人で奥様が日本人です)で、10日前から、漢方を服用してもらっている方について、アドバイスをお願いしたくメールを書いています。
正式の西洋医学での診断名は、Desmoplastic Round Cell Tumorです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Desmoplastic_small_round_cell_tumor
骨盤組織内にできる結合組織肉腫です。
2006年6月に発症し、8ヶ月間にわたり、化学療法を受けました。
幸い、腫瘍は縮小したのですが、3ヶ月前から、腹水が除々に溜まり始め、12月4日の時点では、腹水が約10リットル以上あったと思います。
お腹がパンパンに腫れていて、皮膚の引っ張りによる痛みがかなりありました。
12月4日に、腹水を漢方でとりたい(後で、知ったのですが、奥様が村田先生のサイトをみたことがあるらしいです。)との希望で治療にこられました。
自汗、盗汗がはげしく、特に朝の4時頃から7時にかけて、頭部からバスタオルを数回変えねばならないほどの汗がでます。
舌は、舌縁に歯痕、中央部より奥に、黄厚苔、中央部から全部は、無苔、舌先は、赤、舌体部は、暗赤色です。
脈は、数で、浮、強めに押すとかなり弱くなります。
顔色は、蒼白で、手足はやせ細っています。
漢方服用はじめてから、便秘気味になり、4日間、お通じがないとのことでしたので、潤腸丸(丸薬:こちらでは、中国製の小さな丸い粒があります)を処方し、汗をすこしでも改善したいということで麦味地黄丸(丸薬)を処方、お通じの方は、翌日から、改善、汗のほうも40%ほど減少しました。
10日間、補気建中湯 煎じ薬(経験漢方処方分量集の1.5倍量)+カワラタケのエキス20gで様子をみましたが、改善がみられなかったため、病院で腹水をとってもらうことを強く勧め、昨日、今日で10リットル、水を抜いたそうです。
梅寄生は、こちらで入手できないため、日本に注文しました。
病院の医師からは、再度、化学療法を勧められたのですが、本人がどうしても厭だという事で、月曜日に退院してくる予定です。
本人は、漢方に賭けてみたいという強い希望です。
私も、できるだけのことはしてあげたいと思っています。
托裏消毒飲(たくりしょうどくいん)を模写したエキス製剤配合の併用や、牛黄製剤、分消湯などの使用も含め、アドバイスをお願いできないでしょうか?
英国では、動物性、鉱物性の中薬の使用は、正式には、認められていません。
そのため、入手するためには、日本から、取り寄せになります。
しかし、生命のかかったことですから、必要であれば、本人の承諾の元、使用したいと思っています。
以上、お忙しい中、本当にすみませんが、御助言のほど、何卒、宜しくお願いします。
ヒゲジジイのお返事メール:お久しぶりですね。
お問い合わせの件、患者さんは病院などに通える体力がある場合は、http://cyosyu.exblog.jp/i19/ ここにも書いていますように、補気建中湯を使用するほど虚証が重度ではないのかもしれません。
舌象などから推察しますと、分消湯に茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)を基本として、猪苓湯を加えるか?あるいは五苓散を加えるか? あるいは分消湯に茵蔯蒿湯の併用だけにするかのいずれかではないかと愚考します。陰虚の部分も明らかに存在するようですので、滋陰利水の猪苓湯を加えるべきか?
過去の経験でも、肝臓ガン末期の腹水の地元近辺の女性が、医師の名医といわれる各地を歴訪されて、何を出されても無効。
ようやく地元の小生のところに来る気になって、分消湯と茵蔯蒿湯だけの併用だったか、五苓散を加えたかのいずれかでしたが、パンパンに腫れた腹水も次第に消退したので、信用を得て、徐々に適切な製剤の追加を行い、その後3年間、生活の質を維持することが出来た例があります。
このように重度の腹水でも、自らの足で移動できる状況では、舌象に素直に合わせ、黄厚膩苔はインチンコウ湯証の並存こそ類推できるので、厚膩苔には分消湯で対応し、陰虚の舌象には猪苓湯中の阿膠程度で対応し、急を救うべく、2〜3種類の方剤併用のみでシンプルに行ったほうが効果が出やすいのかもしれません。
上記の方剤でも快便が得られることも多いのですが、既に使用されて排便に効果がある潤腸丸や麦味地黄丸は、ワンテンポ(1〜2日)遅らせて、必要なら再度使用するなど、綿密に臨機応変の処置が必要かもしれません。
なお、托裏消毒飲をガンや悪性腫瘍に利用できるのは、外部に露出して自壊した病巣や、体内で膿瘍となり白血球増加を見るなどで有効のようです。
なお、補気建中湯はあまり早い段階で使用しても、証候に適合しないことが多いものです。
起死回生というくらいですから、真の意味での超末期の腹水に偉効を示すことがある、ということで、補気建中湯が適応する状況では、多くは外出することも困難で、自立歩行も難儀な状態に近い段階だと愚考しています。
上記はあくまで文面による推測に過ぎませんので、専門家の●●先生の最終責任でお願いします。
【編集後記】 托裏消毒飲(たくりしょうどくいん)をヒントにしたエキス製剤の組み合わせ を中心にした応用例では、癌病巣摘出時に取りこぼしがあり、放射線照射後に爛れて潰瘍となり、癌細胞も含んで外部に露出した状況で使用し、一定の効果を長年持続している例がある。肺転移などの転移病巣もありながら、一定の生活の質を保持しつつ、仕事も継続されている。
多種類の製剤を折々に配合変化を行って、既に十一年の常連さんとなられているが、托裏消毒飲の併用が必要となったのは原発巣の大きな取りこぼしが発見され、放射線照射後一定の期間が経ってからのことであった。
折り返し頂いたメール:早速のお返事深謝致します。
方向性が掴めました。
早速、私の責任の中で、試していきます。
また、経過報告致します。
posted by ヒゲジジイ at 00:20| 山口 ☀| 癌性腹膜炎・腹膜播種・腹水や胸水に対する補気建中湯や分消湯の可能性
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2007年12月16日
今月の新人さんは速効ばかり(逆流性食道炎や進行癌、転移癌など)
お一人の例外を除いて、今月の新人さんは速効ばかりで気分が良いはずだが、血圧が安定しているのを良いことに、うっかり丸二日間、釣藤散の服用を怠っていたら(釣藤散以外の漢方薬は継続していた)、金曜日の夕刻から久しぶりに血圧が上がってしまった。
濃い目の釣藤散を追加すると直ぐに安定したが、配合中の一処方でも欠けると効果が激減する場合があることは分かっているとはいえ、男はこれだから長生きしにくい。
しかしながら、もともとこの辛気臭い仕事が無い休日には決して血圧は上昇しないのだから、自身の健康のためには引退すべきであろうが、常連さんたちに恨まれるのでワガママも言っておれない(涙)。
パソコンとメール交換だけで済む仕事ならどれだけ楽だろうと思う。しかしながらご本人と直接会わないことには、より精度の高い漢方相談は不可能である。(こんな愚痴を書いていると、お気軽・お気楽なご相談者はカナリ遠慮してくれるので、その点でもブログはとても便利ですね・・・苦笑)
男性といえば、逆流性食道炎の御質問 の男性こそ14日(金曜日)に遠路はるばるやってこられたのだが、その日一日しか滞在出来ない人だったので、他の遠方の人のように三日連続漢方相談というわけにはいかなかった。
食後の昼の服用の反応しか確認できなかったが、かなりな速効を得ていると言われていた。
一時的な錯覚じゃないの〜〜?と怪訝がるのはいつものヒゲジジイであるが、一回目の速効がそのまま持続してくれることを期待したい。
本題の速効例は新しく来られた転移癌の人や進行ガンの人が目立つ。
みなさんデリケートな段階だから、ここに詳細に書くわけにはいかないけれど、ご本人のみならず医師や周囲の人まで明らかに目で確認できる速効が出た人もいる。
抗がん剤で運悪く逆に腫瘍マーカーが爆発的に増えていた人も、速効で正常化している。
托裏消毒飲(たくりしょうどくいん)を模写したエキス製剤配合の併用が有意義な人が目立った。
総じて皆さん食欲が回復するので喜ばれる。
以上は皆、みずからの意思で来られるから可能なことで、身内家族に奨められて来られようとされるケースは、いずれもお断りしている。
一度でも来られた人ならご存知のように、臨機応変の微調整に付き合えるのは、ご本人の情熱で来られた人でなければ、理解力の面で困難を伴う場合があるからである。
ましてやご両親のいずれかが当方の漢方薬服用経験が皆無な場合の子供さんの相談は、最も困難である。
現代社会のように我儘な親たちがはびこる現状では、とうてい受け入れることはできない。綿密繊細な中医漢方薬学の価値は、これらの人達には理解困難であることが多いからである(苦笑)。
但し、ご両親のいずれかが村田漢方堂薬局の漢方薬服用経験者であれば、その子供さんは大人よりもスムーズに治ることが多い。
唐突だが、上記の話とは無関係に書いておきたいことを思い出した。
アトピー性皮膚炎の一部の人達が汁の分泌が止まったからといって、独断で猪苓湯製剤を中止したり、服用回数を減らしたために肌の乾燥がかなり戻ってしまった人達がいる。
復活したら再び肌に潤いが戻って来たが、当然である。猪苓湯は単なる乾燥剤ではないのである。中医学的な効能は滋陰利水である。
posted by ヒゲジジイ at 00:52| 山口 ☔| 漢方薬および生薬・中草薬・漢方の即効例
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2007年12月15日
漢方薬は太らす作用でもあるんですか?
一昨日、午後の発送準備に多忙を極める中にかかって来た迷惑電話。
「漢方薬には太らす作用でもあるんですか!?」
とやや怒りを含んだ詰問調で、どこの薬局か病院で出された漢方かは不明だが、当方とは無関係な女性からの問い合わせである。
当然のことながら、
「出されているところでお訊ね下さい。」と気忙しく愚問に対する返事を断った。
ところがまったく偶然のことながら、この日の午前中に次のよう同様な質問を受けたばかりだった。
一週間毎に通ってもらってまだ一ヶ月くらいの女性に、漢方薬を服用しはじめて1〜2Kgも太ってしまったよ、と愚痴を言われたばかりだった(苦笑)。
初回から比較的順調で、毎週、配合処方を加えて多種類の併用となっているが、複数の諸症状が明らかに順調な経過でホッとしている矢先のことである。
おなかの脂肪が取れる人が多い茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)も併用しているので、少しは痩せるかと期待していたのに、逆に太ったではないかという申告には馬耳東風。
病弱なんだから栄養失調のガリガリになるよか、少しは体重が増した方が健全なのよ〜〜〜と嘯(うそぶ)くばかりである(笑)。焼肉を外食するくらいだから体重が増えても当然だろう。
病歴のとても長かった主訴ともども、その他に併発していた様々な病状も速効で効いている部分が複数もあるのだから、聞く耳を持たないのは当然である(呵呵)。
posted by ヒゲジジイ at 00:06| 山口 ☁| 奇妙な電話・迷惑電話・お気楽電話・無礼な電話はサヨウナラ
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2007年12月14日
中医学における少陽三焦の解剖学的なイメージ
昨日の続き
折り返し頂いたメール: 血管系統および血液循環ということでは、心・肺・肝・腎・脾の五つの臓による協調の結果であるということは大変興味深いことです。
もっとも以前読んだ中医学の書籍のなかに記述がなされていたことをふと思いおこしました。いかに書籍の理解が自分のものになっていないかが分かりました(苦笑)。
そうしますと、西洋医学的な他の臓器あるいはその臓器系の働きを理解するうえで、同じようなことが当てはまるのでしょうか。ひょっとすると成書に記述されているのかもしれませんが。
なお、全く関係ないことで恐縮です。本日の夜、横浜は熱くなっていることだと思いますが、ちょっと遠くて参加できません。TVでの観戦になります。
ヒゲジジイのお返事メール:中医学的な臓腑概念を西洋医学的な概念に当て嵌めることは、かなり無理があると思います。過去、西洋医学の解剖学的な臓器の命名に東洋医学の五臓六腑の名前を転用されたことが大きな誤解の元だと思います。
また、中医学における五臓とは単に解剖学的な臓器そのものをいうのではなく、構造と機能を系統的に分類する考え方が大いに反映されており、同一系統における内在関係を重視するとともに、各系統間の密接な関係も重視したもので、人体を有機的な統一体としてとらえる「整体観(整体観念)」に貫かれております。
(追記:この整体観(整体観念)こそ構造主義科学)
ともあれ、今回頂いた先生のお便りがきっかけで、以前、中医学における解剖学的な分析を模索していた時代を思い出しました。
少陽三焦の組織構造私見(実体が無いと言われる少陽三焦の組織構造モデル!)
これは少陽三焦の組織構造私見ですが、この中に書いていますように、
あらゆる臓腑や経絡・諸器官(気管・血管・卵管・尿管など)の実質は、膜が円形に管道を形成した無数の集合体である筋膜で構成され、精気血津液という五種の基礎物質が運行出入する通路となっている。つまり、筋膜組織内の管道中を営血が流通し、管道外の間隙を津気が流通するのである。とありますように、愚見では臓腑や経絡・諸器官(気管・血管・卵管・尿管など)の実質は、すべて肝に属する筋膜組織で構成されているという考え方をしております。
但し、前回のメールで追伸の前に記しましたような「筋肉を覆う膜原は確かに肝ではあっても、筋肉自体は中医学的には脾に属します」という一般論を敷衍して、臓腑も経絡も諸器官(気管・血管・卵管・尿管など)にも、当て嵌めても、問題はないように思います。
すなわち、臓腑も経絡も諸器官も実質は脾に属し、それらはすべて肝に属する膜原に覆われているという考えです。
このようなかなり得て勝手な妄想を巡らせるにせよ、中医学を学ぶには個人個人にとって理解しやすいオリジナルなイメージを作り上げて学習した方が、理解しやすい場合が多いように思います。
このことはまた解剖学的な実証科学とは異なる構造主義科学としての中医学の大きな特徴でありかつ特長ではないかと思っています。
今夜は、まぐれでもよいから勝って欲しいものです。小生もTV観戦です。
posted by ヒゲジジイ at 00:11| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答
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2007年12月13日
血管の平滑筋細胞の中医学的問答
お便り:東海地方の内科医師
いつも有益なご助言を頂きましてありがとうございます。最近の内科の先生とのデイスカッション興味深く拝見しています。
お陰さまで私の血圧はほぼ正常化しています。西洋薬プラス漢方薬(釣藤散、八味丸)にて良好なコントロールが得られています。
ここで、個人的に興味深かったことがあります。初めは著名な血圧の専門家のご助言に従ってある高圧薬を内服開始し、その効果は緩やかでした。もちろん、事前にそのことも伺っていました。同薬の内服を継続し、ある時点で八味丸を開始しました。
村田さんはご存知と思いますが、私は目の問題、といっても些細なことですが、から釣藤散も服用していました。釣藤散と高圧薬を服薬してしばらくして八味丸を併用したことになります。
ここでは最大血圧はかなり低下していましたが、最小血圧がまだちょっとというレベルでした。ところが、数日すると最小血圧があきらかに低下し始めたのです。そして、平行して最大血圧も改善しました。それ以後結構いい感じです。
ここで私は以前漢方の指南いただいた先生の言葉「血圧は腎への配慮が肝要です」をいまさらながらに味わっているところです。
組織学的に西洋医学でいう腎は血管の集合体のようなものですから、血圧と腎の関連は理解できるところです。また、血圧に重大な影響を及ぼすホルモン(レニン・アンギオテンシン系)が腎などから産生されるという最近の知見はその裏づけといえるかもしれません。
組織学の教科書を視ますと、血管はその内側から血管内皮細胞、内弾性板、平滑筋細胞、外弾性板、結合組織から出来ているとのことでした。ここででてくる血管内皮細胞は動脈硬化性疾患(脳梗塞、心筋梗塞など)において重要な役割を担っていますが、その由来となる細胞(血管幹細胞)は血液細胞を造る元となる幹細胞(造血幹細胞)とその起源が同じであると理解されているそうです。ごく最近(数年)の見解みたいです(個人的にはなんとかついてゆけているレベルです、笑)。
どこかの中医の書籍で血液細胞は腎に由来するとの記述を思い出しまして、血管とその中を流れている細胞は腎で包括できるという中医的な概念が、現代の西洋医学の枠でいう組織生物学の最新知見と合致するのかもしれない、と愚考したわけです。ある意味、西洋医学の進展が中医に追いついたという感じもします。
血管の平滑筋細胞の恒常性に働きかけることは、動脈硬化性疾患とか血管が関与する病態の治療の上で何か意味があるのではと、これまた愚考しています。
ここで、お伺いしたい点ですが、筋肉と聞くと、単純に肝が思い浮かぶのですが、村田さんのお考えをいただければ幸いです。
お返事メール:高血圧が改善され、何よりです。小生の高血圧も地竜の大量使用と茵蔯蒿湯の大量使用、八仙丸(味麦腎気丸)、田七、丹参、釣藤散などで安定しています。また、夜の一杯の薄いコーヒーも効果的です(苦笑)。
このたびは腎に関する大変興味深いお話。
卑近な例でも塩分を控えるだけで治ってしまう高血圧患者さんも多々見受けます。
筋肉についての小生の考えですが、筋肉を覆う膜原は確かに肝ではあっても、筋肉自体は中医学的には脾に属します。
ただ、あらゆる筋肉組織には縦横にめぐる膜原と腠理との関連性はとても重要です。
http://mkanpo.exblog.jp/3557456/
膜原(まくげん)は臓腑や各組織器官を包み込む膜のこと。
腠理(そうり)とは、膜外の組織間隙のこと。
ということです。
現代医学で言う筋肉は、中医学的には肝に属する膜原に覆われ、筋肉そのものは脾に属する肌肉というわけです。
ところで、中国では以前から中西医結合を目標とした腎病の現代的研究が早くからなされ、様々な西洋医学的な解明が行われているようです。
ブログには日本での翻訳された書籍を交えて画像を貼り付けておきます。
小生も興味深くのめり込んだ時期もあるのですが、これに深入りすると却って西洋医学的な思考に引っ張られ、繊細な中医学的な細かな弁証論治を端折ってしまいがちになるので、ここ10年以上、これらの本を開くことはありません。
中西医結合的な課題は理想ですが、ややもすると西洋医学知識に洗脳されて、逆に中医学の本質が歪められ、中国では中西医結合は失敗だという意見も多く聞かれるようです。
http://blog.livedoor.jp/cyosyu1/archives/50354832.html
ここにも報告がありますように、
中国では中医学の再評価の動きが高まり「中西医結合」は中医学の発展にあまり芳しくないことから、今後の発展方向に議論が高まっているというS先生の記事は大変興味深い。とあることは象徴的です。
SARSが流行したときも「中西医結合」で育った若い世代よりも、中医学に長じた老中医が活躍したことなど、示唆に富むお話である。
(自分の不勉強の言い訳めいて恐縮ですが、愚息が学生時代に大学院に入る以前の学生時代に免疫系の研究が━略略略略略略略略略略略略略略略略略略略略略略略略略━。
小生は親ながら愚息に対抗して最先端の免疫学の専門書を多数読破したこともありましたが、深入りしても中医漢方薬学にそれほど役に立たないので二度と免疫学の本を開くこともなくなりました。
中医学的思考訓練には、通り一遍の西洋医学基礎知識で十分ではないかと、いまはやりの怠慢を「偽装!」的愚考で誤魔化しております(苦笑)。)
追伸:サッカーボケしていました。
同じ筋肉でも血管系統は、中医学的には心に属し、構成組織自体は肝に属する筋膜で構成された組織であると考えています。
この考えのヒントはやはり「中医病機治法学」の陳潮祖先生の書籍をヒントにしたものです。
血の運行は、@心気の推動、A肺気の宣降・B腎気の温く・C脾気の統摂が必要で、脈中の血量の調節は肝によって行われる、というのが中医学の基礎的概念です。
【編集後記】 学問的にも医学の発展のためにも先生の追究される「血管の平滑筋細胞の恒常性に働きかけることは、動脈硬化性疾患とか血管が関与する病態の治療の上で何か意味があるのではと」される点は、中医学的に考察することは意義あることに間違いないものの、西洋医学と中医学を結合した中西医結合が却って中医学を崩壊に導いている現実を知ると、やや慎重にならざるを得ないのであった。
本来、愚息や愚娘は中西医結合研究の最前線に立つべく、医学部に入学して医師であり医学者になったはずであるが、昨今の中国国内の事情を考えると、伝統的な中医学の崩壊の危機を迎える羽目に陥ってはまったく本末転倒である。
幸か不幸か、二人とも多忙を極めて今のところ中西医結合どころではない状況であった(苦笑)。
ともあれ、FIFAクラブワールドカップ準決勝を観戦しながらお返事を書くという怠慢をおかしたために、再読して慌てて追伸をお送りした醜態だった。
参考文献:腎系統の生理 腎系統の病理 五臓の病変が腎に波及するしくみ 穀精と腎精について
posted by ヒゲジジイ at 00:55| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答
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2007年12月12日
注文して翌日到着したパソコン工房のパソコン
先日DELLパソコンを注文していたが音も沙汰も無い。原則先払いのところを、代引きが便利なのでそれを希望しようにも、後払いという項目がかろうじて見つかっただけ。だからやむを得ず後払いにチェックして注文したが10日以上経っても、音も沙汰も無い。
どうせ安物の6万円弱のパソコンで二重になっても構わないから、早く入手できるショップを探すと、パソコン工房ならクロネコの代引きがあった。
早速8万円弱のノート型パソコンを注文したら翌日に到着した。それが上記の写真、右側。
メモリは2GB HDDは160GBの大容量。
左側一流某社の147,000円でHDD60GBに比べれば、遥かに安価で性能も、使い安さも申し分ない。
何せ先日も関東の内科医の先生とのその後のメール交換で、
メールに対するお返事は、ここ数年仕事上、メールが必須メール中毒となったかのようです。とあるように、連日メール漬けの生活である。薬局内には三台のパソコン。居間にも2台のパソコンを並べて能率の良い深夜作業が可能となった。
県外から直接漢方相談に来られる人達は、再々は直接来られませんので、頻繁なメール交換により漢方処方の微調整を行いますので、毎日たくさんのメールのお返事を書いています。当方の漢方薬を服用して頂いている人達ですので、本業です(笑)。
中には、ネットで得た漢方知識で、やや専門的な質問も受けますので、ネットでは決して書かれてない「漢方の真実」をお伝えしなければなりません。一日に同じ患者さんで3往復以上あることはシバシバで、それ以外の人も合わせると!一日数十回のメール送信があります。
それらの膨大なメールの内容は、真剣勝負の内容だけに価値ある内容が多いと思うのですが、ブログに公開するわけには行きません。
この深夜作業の時に、一杯の美味しい珈琲が格別であることは先日述べたが、通常より薄めにいれると意外に熟睡できることを知って驚いている。
ラベル:パソコン
posted by ヒゲジジイ at 00:45| 山口 ☁| 近況報告
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2007年12月11日
逆流性食道炎の御質問
御質問者:男性(年齢、御住所など不明)
以前、家内が子宮筋腫のことで桂枝茯苓丸の使用方法について先生のホームページを読んでメールしましたが、その節はありがとうございました。現在、家内はとりあえず桂枝茯苓丸を中止しています。
今回、切羽詰って誠にぶしつけなメールをしてしまいました。どうかお許しください。
今回は僕の悩みを聞いて下さい。
数年前から逆流性食道炎をわずらい、薬によって良くなっていたのですが、今年の夏ごろから以前処方されていた薬では効かなくなってしまいました。病院を変え六君子湯を加えるなど、色々(オルスビーも飲みました)試しましたが症状は改善しませんでした。
その間、精神的にも追い込まれ体重が4キロほど減少しました。現在はパリエットとガナトンそれに体質改善(冷え性)の為におたね人参を飲んでいます。以前に比べ食べられるようになましたが、のどに何かが詰まった感じや食後に胃液が溢れてきたり、タンが出たりする症状はいまも続いています。
四日前、久しぶりにオルスビーをのんでみたら胃が鳴り、食べ物がスーッと流れていき楽になりましたが次の日からは元の症状に戻ってしまいました。
胃カメラは3回撮りましたが荒れているだけで異常はありません。僕の胃はどうなっているのでしょうか?一生直らないのでしょうか?
良くなるものなら遠方ではありますが、一度そちらえ伺いたく自分の今月の休みを見ましたが日曜日しかありません。
残念です。
突然のメールどうも申し訳ありませんでした。
お返事メール:逆流性食道炎の半数近くはオルスビーだけでも有効なようです。
8月にも
http://murata-kanpo.seesaa.net/article/53322079.html
このようなご報告を頂いています。
しかしながら全員がオルスビーだけで寛解するとは限らず、半数以上の人は弁証論治に基づいた適切な方剤の併用が必要です。
時には適切な方剤がなかなか見つからずにやや難航する場合もありますが、その場合でも、根気良く漢方の専門家を信頼して半年あるいは一年かけても適切な方剤を見つけてもらうべきです。
中医学的には昇降失調が関連する病気ですが、これに関連する方剤は豊富です。豊富なだけに却って直ぐに見つからない場合もあるわけです。
但し、小生の見るところ、多かれ少なかれ胆経との関連も感じますので、これに関連した方剤の併用も強化する必要があるケースも折々に見受けます。
以上、やや専門的な話ばかりで分かり難いかもしれませんが、いずれにせよ根気勝負です。
一般論で言えば、男性は女性と異なって総じて根気がなく、諦めも早すぎるようです。もちろん女性でも諦めの早い人もおられますが、男性は一部の例外を除いて、我慢強くありません。貴方がそうだと言うわけではありませんが、逆流性食道炎は辛くとも、漢方薬のピントがしっかり合えば必ず寛解・治癒するものですが、中途半端な治療をしているとやはり再発します。
人間様の寿命は80〜90年くらいのもので、何事も諦めの早い男性は80年もありません。この短い人生ですから、年齢と共に様々な病気に見舞われても不思議はありません。それをいかに克服するかは、正しい治療方法を見つけることですが、逆流性食道炎は意外に西洋医学で治らなかった人も多いようです。
いずれにせよ、貴方の根気次第です。
地元で通える漢方薬局か漢方を得意とされるクリニックを見つけられてピントの合った方剤が見つかるまで通い詰めることです。
一時的にでも効くようでしたらオルスビーはやはり併用していた方がよいかもしれません。
【編集後記】「のどに何かが詰まった感じや食後に胃液が溢れてきたり」という症状を訴えられていることから、半夏厚朴湯や柴朴湯などの適応も十分に考えられるが、メールだけで即断できるものではないので、お返事には書かなかった。
ピントの微調整というのはお互いに大変な作業となることもあるので、弱音を吐かずにピントが合うまで地元で頑張るべきだ。
折り返し頂いたメール:早々の返信、有難うございました。
実は漢方を処方される内科医に見てもらいました。
処方されたのがオメプラールとガスモチン、それに六君子湯と便秘気味ということでケイシカシャクヤクダイオウトウでした。
この時点では体重も1キロ減をキープしていたのですが中々改善しない(のどに何かつっかえた感じと胃上部から食べたものが流れていかない感じ)ことから精神的にまいってしまい、先生には5週間ぐらい診ていただきましたが、僕の方が我慢できずに違う内科医に代わり現在にいたっています。
今は以前に比べ症状に対する気持ちの免疫とあきらめが出てきたため何とか気持ちを保てていますが早く直したい思いで一杯です。
そんな折、オルスビーを飲んだらスーッとしたので「やっぱり村田先生しかいないな!」となりメールしてしまいました。
一方的に思いを書いてしまいました。
先生聞いて下さって有難うございました。
ラベル:オルスビー錠
posted by ヒゲジジイ at 00:22| 山口 ☁| 逆流性食道炎・機能性ディスペプシア・胃痛・胃潰瘍・十二指腸潰瘍および萎縮性胃炎
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2007年12月10日
鼻炎・脂性・ニキビの漢方薬の御相談
性別 : 男性
年齢 : 20歳〜29歳
ご職業 : 学生
簡単なご住所 : 関東地方
お問い合わせ内容 : はじめまして、24歳の男性です。(私は●●県◎◎の出身で、村田先生のHPを拝見して相談させて頂きました)お忙しい所すみません、よろしくお願い致します。
2年くらい前から、慢性鼻炎に悩み、最近耳鼻科で勧められた辛夷清肺湯を使っており、やや改善しています。
10代の頃からかなりの脂性、にきびにも悩んでおり、荊芥連翹湯を試したいと思っています。
(以前住んでいた所の漢方医に相談した所、勧められたのですが、私が遠方に引っ越してしまい、現在、直接相談ができない状況です)
荊芥連翹湯も鼻炎に効果があるとの事ですが、今服用している辛夷清肺湯と併用することにより、相乗効果が期待できるのか、併用するのはやめたほうがいいのか判断がつきかねて相談した次第です。
何卒、よろしくお願いいたします。
お返事メール: 辛夷清肺湯が有効な鼻炎は、多くの場合、副鼻腔炎のはずですが、若い年齢層の人では、脂性でニキビも合併しているケースでは、辛夷清肺湯と荊芥連翹湯を併用することで、鼻炎にもニキビにも脂性にも相乗効果を発揮する体質の人がいるのは確かです。
昨今は、ニキビの悩みで来られる人が、村田漢方堂薬局に限っては激減していますが、以前は同様の配合で一石三鳥を狙ってしばしば成功していたものです。
十数年前にも同じ関東の医学生が村田漢方堂薬局で、同様な処方で寛解しています。
但し、貴方に直接会ってご相談したわけではないので、必ず貴方に合っているとは断定できるものではありませんが、以前住んでおられた漢方医?に奨められていたのなら、ますます可能性は高いかもしれません。
気をつけなければならないのは、辛夷清肺湯と荊芥連翹湯の配合比率です。漢方薬の濃度は多ければよいというものではなく、配合中の薬味の比率というものも重要です。
まずはお近くの漢方専門薬局か漢方専門クリニックでも見つけて、直接相談されて指導を仰ぐべきです。ネット通販などで安易に購入するのは、後々のご相談で困ることもあるので、必ず一度は直接出向いてご相談されるべきです。
【編集後記】 そういえば昨今、ニキビで悩まれる若い年齢層が来られるケースは激減している。
アトピー性皮膚炎のように小さい頃から病歴の長い人は若くとも相当深刻な悩みとなっているので、20代前後でも多くの場合、真剣さが異なる。だからヒゲジジイの神経質な弁証論治に耐えられる。
ところが、ニキビの悩みがいくら深刻でも、やはりアトピーの人達と比べて真面目さや、素直さの点でやや異なる部分が見えるので、ヒゲジジイ特有の「テスト」を行うと、やはり直ぐに退散される。そんなことを繰り返しているうちに、気が付けば昨今、ニキビの相談者がほとんど来られなくなった。これで良いのだ(苦笑
ともあれ、脂性体質を治すには上記の方剤だけでは実際にはやや不足の場合があり、弁証論治によって茵蔯蒿湯や猪苓湯などでバックアップした方よい場合が多い。
折り返し頂いたメール:
村田先生、お忙しい所早速の返信、本当にありがとうございます。
脂性やニキビは年齢が進めば落ち着いてくるものと思っていましたが、なかなか好転せず悩んでいたところです。
近日中に近くの漢方医に相談の上、ためしてみたいと思っています。
先生が他の質問で言われていたとおり、改善には半年、1年と時間はかかるかもしれませんが、地道に頑張りたいと思います。また報告させて頂きます。
本当にありがとうございました!
posted by ヒゲジジイ at 00:05| 山口 ☁| 吹き出物やニキビ、脂性や角栓および脂漏性皮膚炎
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2007年12月09日
一貫堂方や傷寒・金匱の方剤について
昨日の続き
お便り:関東地方の某内科医師
長年に渡って漢方治療をなさっている村田先生ならではのご指導を頂き感謝しております。確かに現代医学でも治りにくい病気を漢方で治していくことも大変ですね。
それにはお互いの信頼関係の維持が不可欠で加えて一人の患者さんが出す症状は体質から似たような症状の繰り返しですから‥先生の仰る方法が適していると思いました。有り難うございました。
巷ではアトピーなどの漢方治療をする方が増えている様ですね。初期段階で漢方治療を受ければ治療する側としても困難さは感じないと思います。
知人のアトピー治療をしたときは病院へ行くよりも早く自分の所に来たものですから‥まさに教科書そのものですね。こんな感じからすれば‥信頼をされるという前提が一番大切ということにつきると思います。
一方、慢性化したアトピー患者さんは時間がかかることが予想される反面、患者さん本人は「早く治らなければ漢方は効き目が無い」とか思う方が多いのではないかと思います。これには困ったものです。慢性病の患者さんの特徴としては病気が年輪の様に作られていて‥熱を取る薬と多少暖める薬を併用していかないと治らないとの感覚を抱いています。
充血を取る薬だけを使えば当然身体を冷やすので、一週間もすれば効き目がなくなるのが目に見えてます。早い人なら数日で効き目がなくなってもおかしくありませんよね。これからすれば、最初のムンテラが大切なのかな?とも思います。
昨日先生の本(求道と創造の漢方)を拝見しました。そこで感じるのは、その当時では一貫堂方が多いように思われました。一貫堂方は体力がある人ならば使いやすく効き目は強いですね。ただご多分にもれず一貫堂方は身体の熱を強烈に取る薬が多いので単剤で長期に飲ませると厳しいかな?と感じます。
多分、合方をしないと長期間飲めない患者さんが多い様な感覚を受けます。きっと、ここいら辺の感覚は先生も同じようにお考えになり‥現在の治療に至っていると感じました。
今、息子のこじれた風邪につき合い自宅で治療していますが、経過も順調でホッと一息です。塾通いで無理をしたためか今回は一時、陽明に熱が入って石膏を使いました。
でも、この陽明の熱は1日で取れて‥次の日は別の薬に変えました。古方は単純な分、効き目があり真剣勝負ですね。こんな感じで自宅でも医者をしているから・・・(後略)
今日は病棟だけの仕事で‥これから病棟に上がります。どんな一日になるのでしょう?
平穏な一日を望みます!(笑
これからもアドバイスを頂ければ幸いです。「温病論」も自分なりに勉強してみますね。
猪苓湯や茵蔯蒿湯などの身体における意味が余り良く分からないので‥ここいら辺もポイントですよね。頑張ってみます!
ヒゲジジイのメール: 当時は確かに一貫堂流の方剤をシバシバ使用しておりました。月刊「和漢薬」誌に当時、矢数道明先生が一貫堂の方剤を使用する先生方の統計表を発表された時にも、小生の名前が掲載されていたほどです。
アトピー性皮膚炎にもよく使用して効果が上がるときもあれば、逆効果となることもあり、次第に一貫堂の荊芥連翹湯や柴胡清肝湯などを使用する方法論に疑問を抱くことが増えて来ました。同様な体質の御姉妹に同じ荊芥連翹湯で一人は寛解し、一人は次第に悪化するケースを経験して、ますます不安を覚えた当時が思い出されます。
他の疾患と異なり、アトピー性皮膚炎は極めてデリケートな疾患で、一つの薬味の間違いでも効果を激減させたり、悪化させることさえあり得るようです。
そのようなデリケートな皮膚病に、薬味の多い一貫堂の方剤を使用することが次第に怖くなってしまいました。
現時点の方法を結論的に要約すれば、少ない薬味の方剤合方および単味生薬の加味が主体で、当時よりも格段の寛解率を得るまでになっています。
中医学の学習途上では、中医学特有の中草薬を用いて、病人さんに対する専用の方剤を新たに処方する方法を習熟することに熱心でしたが、方剤学のみならず中薬学を一定のレベルまで学習するうちに、次第に傷寒・金匱の方剤が、少ない薬味で構成され、いかに優れた方剤であるかを再認識するに至りました。
中医学を学ぶ多くの人が、既成方剤に頼ることを忘れて、いかにも中医学派らしい基本方剤を忘却したかのような、患者さんそれぞれに新たな方剤を処方する方向に向かわれる人が多いなか、小生の場合はお里帰りしたかのように、基本方剤の重要性に目覚め、徹底的に基本方剤の四逆散や猪苓湯や茵蔯蒿湯、あるいは八味丸から派生した六味丸など、比較的シンプルな方剤を重要視するようになりました。
傷寒・金匱以後の方剤でも、黄連解毒湯や六味丸を含めたその系列方剤など、単味では地竜や板藍根、白花蛇舌草や金銀花、黄耆、丹参、党参など。
仕事上では、中医学を学んだお陰で、煎じ薬を多用する必要性をほとんど感じることがなくなったのでした。この点は、他の中医学派とはまったく異なるところで、基本方剤の価値を再認識したおかげで、エキス製剤中心の仕事で十分にやっていけるどころか、むしろシンプルな基本方剤を組み合わせることで、極めて敏感なアトピー性皮膚炎も、日本漢方しか知らなかった時代よりも、寛解率が格段に向上しました。
多数の方剤を組み合わせる事が多いのですが、一貫堂の荊芥連翹湯中の薬味の数をはるかに下回るのです。
こうすることで不必要な薬味、とりわけ油断がならない川芎(センキュウ)や当帰などの使用を避けることができ、一貫堂の諸方剤から卒業することが出来ました。
なんだか奇妙な思い出話になりましたが、方剤学を学ぶ上では、
日本漢方の随証治療の精神と「依法用方」 もとても参考になりました。(追記:引用文は陳潮祖教授著の拙訳))
三、依法釈方〔治法にもとづいて方剤を解釈する〕における、という部分は傷寒論を再学習する上でも、とても参考になる部分でした。
四逆散を例にすると、原著では「少陰病、四逆し、その人あるいは咳し、あるいは悸し、あるいは小便不利し、あるいは腹中痛み、あるいは泄利下重するとき」に適応するとされ、四逆散の適応症を「あるいは」として五つの症状を挙げているが、これらのどの症状も各臓それぞれの病理変化が反映したものであり、肝気鬱結によって筋膜の柔和を失ったため、気血津液が失調して五臓の病変を誘発したときに本方が適応する、と解釈できる。この場合に、薬物の効能と君臣佐使だけで方意を分析すると、腹痛に対する説明はできても、その他の諸症状に対する適応を説明できそうもない。
このように、依法釈方によってはじめて古方の神髄を把握し、選薬処方の奥義をつかみ取ることができ、また、方剤が体現する治法を知ってはじめて、治法にもとづいて方剤を選択することができるのである。
なお、猪苓湯や茵蔯蒿湯は、現代社会では最も重要な方剤だと認識し、日々大量使用の毎日です。書けば際限がなくなりそうですので、非専門的に暗示させていただければ、地元の消化器内科の医師が胆石症は現代人の三分の二が一生に一度は罹患すると言われます。真偽のほどはともかく、小生の弁証論治によっても現代人の三分の二の人に茵蔯蒿湯証が確認できます。
猪苓湯も同様ですが、尿路結石患者の多発とも相関関係がありそうに思えます。
両者いずれも、地球温暖化の問題のみならず、むしろもっとも問題なのは有史始まって以来、前代未聞の飽食の時代。皆がみな、昔の王侯貴族以上の飽食の毎日であってみれば、両方剤の適応者が多発しても不思議はないように思われます。
アトピー性皮膚炎に限らず、各種疾患にも広く応用できる方剤です。
ちょっと種明かしし過ぎました(苦笑)。
【編集後記】 最後の灰色活字の部分はブログでは秘匿することを先方にお伝えしていたのだが、本ブログは医師・薬剤師・鍼灸師・臨床検査技師など医療関係者のご訪問も多いので、ご訪問者への精一杯のサービスとして、種明かしを消さずにブログにも掲載した。
但し、茵蔯蒿湯も猪苓湯も単方使用では頑固な慢性疾患には非力な場合も多いので、誤解なきよう願います。バランスの取れた併用方剤が必要なことが多いということです。
posted by ヒゲジジイ at 00:37| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答
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2007年12月08日
漢方処方を臨機応変に配合変化を行う方法
昨日の続き
お便り:関東地方の某内科医師
「温病論」が必要とのご指摘を頂き有難うございます。
確かに…いざ臨床となりますと傷寒論のみでは厳しいのが現実です。傷寒論の処方の効き方は鋭い反面、投与後に体がダイナミックに変化して次の日には別の薬が必要になってきます。
家族なら冷や汗をかきながら、殆ど毎日処方を変えることなりますが…いざ、外来となると出来ないですね。困ったことです。
「温病論」は、今度の神田に行ってきたときに一冊分かりやすい本を購入したいと思います。「衛気営血弁証」をちらっと見てみますと確かにその通りに病気が進む様に感じます。
自分の患者さんではなかったのですが…肺炎→(回復)→肺炎
再発→(回復)→肝炎→(回復)→腎不全→透析→死亡というケースを見た事がありました。
このケースと比較すれば臨床ではかなり使える理論ではないかと思いました。でも自分は理論を消化するのに時間がかかりますので、ゆっくりと進みたいと思います。お付き合い頂ければ幸いです。
おやすみなさい。
お返事メール:毎日処方を変化させる、あるいは朝と晩では処方を変えるなど、外来診療では出来ないのではないか、とのご心配につきましては、小生の薬局で行っている方法がヒントになるかもしれません。
合成医薬品のようなキツイ副作用がなく、気持ちのよい効き方をしてくれる漢方薬の素晴らしさに嵌ってしまった常連さんたちは、常備薬として急性疾患用の各種方剤を家庭に常備されておられます。
急性疾患に罹ったときは、すぐ来られない場合は、電話相談でアドバイスです。といっても常連さんたちは、長いお付き合いの中で、ご自身の急性疾患時の対処法をほとんどマスターしておられますので、アドバイスはとてもスムーズです。臨機応変に配合変化を行うのは、常連さんともなると簡単です。
たとえ新患さんでも、村田漢方堂薬局では理解力の無い人には御相談に乗らない方針ですので、あまり困難を覚えたことはありません。
新しい人でも、目的とする疾患に必要となる可能性のある方剤は、順次常備してもらうようにしています。(それが出来ない人は、漢方治療困難ですので、結局はお断りせざるを得ないことになっています。)
posted by ヒゲジジイ at 00:01| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答
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2007年12月07日
中医学と西洋医学の違い(関東地方の某内科医師の論点)
昨日の続き
お便り:関東地方の某内科医師
早速ご丁寧な文章の返信を頂き大変感謝しております。有難うございます。
一つ一つ論文を拝見させて頂き…自分なりの浅はかな考えながら、自分の考えをお話いたしたいと思います。
まず「中医漢方薬学」の提唱という論文を拝見して感じましたことは、ごく自然な考えで違和感を持ちませんでした。
日本漢方では一つの処方があって、それには「証」と言われる症状のパターンを作り出します。しかしながら、この「証」だけの判断では処方の見分け方が至極難しく処方の判別が出来ないのが現実であるのは言うまでもありません。
ここで最初に考えられるのが処方を作る薬草の性格に注目することが解決策の一つだということです。漢方薬は薬草により作られており、薬草の性格が分かれば処方の性質も掴むことが出来るのではないかという点です。おそらく、その為に東洞が「薬徴」を著したのではないかと思います。
でも東洞の「薬徴」では不十分さを隠し切れないことも事実です。それに反して中医学は丁寧な薬草の性格の説明があり…一般的な医学教育を受けた方ならば中医学に解決策を求めるのも当然のことであると思います。
また東洞の「万病一毒説」は余り良い考えではないと自分も考えております。それは「毒を取るために薬を使う」という基本的な考えが好きではないからです。
すなわち病気を敵視し体から取り除くことを根本哲学として成り立っていることに違和感を感じるのです。
可笑しい事に、これは今の医学の根本哲学と同じです。
しかしながら「病気が悪である」という証拠はありません。自分が今まで多くの患者さん方を診て感じることは次のことです。「病気は、体の要求によって生まれ、常にその必然性を持っている。病人を救うには、まず始めに病気の必然性を知り、次にその必然性を消すことで病気を治療することが出来る」ということです。
次に「医学領域における「科学」としての中医学」について拝見しました。これについても自分の意見を述べさせていただきます。
現代医学の特徴は物質文明の進歩によって精密機械が作られるようになり、より微小なもの(ミクロ)を観察することができるようになったことで進歩してることだと思います。
遺伝子治療や再生医療などは、このことを明瞭に物語っております。
しかしながらミクロである遺伝子をコントロールすることでマクロである臓器や臓器間の相互運動など(構造)をコントロール出来るという証拠はどこにもありません。
人間が進化する過程を思い浮かべますと面白い事実が分かります。進化の過程で環境の変化を最初に感じ取る場所は臓器です。
次に、その臓器で感じ取った変化を遺伝子の変化に変えていくと考えるのが自然な考えです。
つまりマクロがミクロをコントロールしているという事実です。
以上のことを考え…天体運動を思い浮かべてみます。地球の自転や公転を調べようとするときに、そのミクロ的な運動である雲の動きや川の流れを解析するでしょうか?
そんなことをすれば…笑われるのがおちです。マクロはマクロとして認識して、マクロの独立した運動を理解する以外ないからです。
しかしながら…医学という分野では、その笑い事が当然の様に行われています。とても可笑しなことです。
このマクロの運動の把握には簡単な理論構成である「傷寒論」が役に立つのではないかと思われてなりません。
別の言葉では現代医学の研究対象をミクロからマクロに変える力があるのが「傷寒論」だと自分なりに感じております。
また、ミクロとマクロを結合できた時に西洋医学と東洋医学が一つの医学となるとも思います。
最後に、このようなことをお話できることに感謝いたします。今日は病院が忙しく暇な時間が無かったために病院で先生の本を読むことができませんでした、明日は読めれば良いなぁと思っています。
自分は漢方での臨床経験が少ないため…分からない点などを質問させていただくことがあるかもしれません。その時はご回答頂ければ幸いです。これからもよろしくお願いいたします。
ヒゲジジイのお返事メール: 極めて鋭いご指摘、拝読するや眠気がいっぺんに吹っ飛んでしまいました!
とても懇切丁寧な分析、どのような立場の方が読まれても説得力豊かで、皆さんが心から感服する的確ズバリなご指摘と存じます。
ただ一点だけ気になったことは、せっかくの先生の鋭い視点であるのに、研究対象を三陰三陽の傷寒論に限られるのは、あまりに勿体無いように思われてなりません。
熱病に対する傷寒論の論点はあまりにも脆弱すぎます。
傷寒論の急性熱病に対する脆弱さを嘆いて「温病条弁」が生まれた中医学の歴史的事実があります。
温病から生まれた「衛気営血弁証」や「三焦弁証」などについては、どうなのでしょうか。
ともあれ極めて明晰な論点には、心から感服申し上げた次第です。
お陰さまで素晴らしいブログの投稿ができます。
今後とも、折々のご批判やご指導、楽しみです。
お便り:関東地方の某内科医師
早速ご丁寧な文章の返信を頂き大変感謝しております。有難うございます。
一つ一つ論文を拝見させて頂き…自分なりの浅はかな考えながら、自分の考えをお話いたしたいと思います。
まず「中医漢方薬学」の提唱という論文を拝見して感じましたことは、ごく自然な考えで違和感を持ちませんでした。
日本漢方では一つの処方があって、それには「証」と言われる症状のパターンを作り出します。しかしながら、この「証」だけの判断では処方の見分け方が至極難しく処方の判別が出来ないのが現実であるのは言うまでもありません。
ここで最初に考えられるのが処方を作る薬草の性格に注目することが解決策の一つだということです。漢方薬は薬草により作られており、薬草の性格が分かれば処方の性質も掴むことが出来るのではないかという点です。おそらく、その為に東洞が「薬徴」を著したのではないかと思います。
でも東洞の「薬徴」では不十分さを隠し切れないことも事実です。それに反して中医学は丁寧な薬草の性格の説明があり…一般的な医学教育を受けた方ならば中医学に解決策を求めるのも当然のことであると思います。
また東洞の「万病一毒説」は余り良い考えではないと自分も考えております。それは「毒を取るために薬を使う」という基本的な考えが好きではないからです。
すなわち病気を敵視し体から取り除くことを根本哲学として成り立っていることに違和感を感じるのです。
可笑しい事に、これは今の医学の根本哲学と同じです。
しかしながら「病気が悪である」という証拠はありません。自分が今まで多くの患者さん方を診て感じることは次のことです。「病気は、体の要求によって生まれ、常にその必然性を持っている。病人を救うには、まず始めに病気の必然性を知り、次にその必然性を消すことで病気を治療することが出来る」ということです。
次に「医学領域における「科学」としての中医学」について拝見しました。これについても自分の意見を述べさせていただきます。
現代医学の特徴は物質文明の進歩によって精密機械が作られるようになり、より微小なもの(ミクロ)を観察することができるようになったことで進歩してることだと思います。
遺伝子治療や再生医療などは、このことを明瞭に物語っております。
しかしながらミクロである遺伝子をコントロールすることでマクロである臓器や臓器間の相互運動など(構造)をコントロール出来るという証拠はどこにもありません。
人間が進化する過程を思い浮かべますと面白い事実が分かります。進化の過程で環境の変化を最初に感じ取る場所は臓器です。
次に、その臓器で感じ取った変化を遺伝子の変化に変えていくと考えるのが自然な考えです。
つまりマクロがミクロをコントロールしているという事実です。
以上のことを考え…天体運動を思い浮かべてみます。地球の自転や公転を調べようとするときに、そのミクロ的な運動である雲の動きや川の流れを解析するでしょうか?
そんなことをすれば…笑われるのがおちです。マクロはマクロとして認識して、マクロの独立した運動を理解する以外ないからです。
しかしながら…医学という分野では、その笑い事が当然の様に行われています。とても可笑しなことです。
このマクロの運動の把握には簡単な理論構成である「傷寒論」が役に立つのではないかと思われてなりません。
別の言葉では現代医学の研究対象をミクロからマクロに変える力があるのが「傷寒論」だと自分なりに感じております。
また、ミクロとマクロを結合できた時に西洋医学と東洋医学が一つの医学となるとも思います。
最後に、このようなことをお話できることに感謝いたします。今日は病院が忙しく暇な時間が無かったために病院で先生の本を読むことができませんでした、明日は読めれば良いなぁと思っています。
自分は漢方での臨床経験が少ないため…分からない点などを質問させていただくことがあるかもしれません。その時はご回答頂ければ幸いです。これからもよろしくお願いいたします。
ヒゲジジイのお返事メール: 極めて鋭いご指摘、拝読するや眠気がいっぺんに吹っ飛んでしまいました!
とても懇切丁寧な分析、どのような立場の方が読まれても説得力豊かで、皆さんが心から感服する的確ズバリなご指摘と存じます。
ただ一点だけ気になったことは、せっかくの先生の鋭い視点であるのに、研究対象を三陰三陽の傷寒論に限られるのは、あまりに勿体無いように思われてなりません。
熱病に対する傷寒論の論点はあまりにも脆弱すぎます。
傷寒論の急性熱病に対する脆弱さを嘆いて「温病条弁」が生まれた中医学の歴史的事実があります。
温病から生まれた「衛気営血弁証」や「三焦弁証」などについては、どうなのでしょうか。
ともあれ極めて明晰な論点には、心から感服申し上げた次第です。
お陰さまで素晴らしいブログの投稿ができます。
今後とも、折々のご批判やご指導、楽しみです。
posted by ヒゲジジイ at 00:07| 山口 ☁| 中医漢方薬学問答
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