2007年07月28日

あくびの頻発に対する漢方薬

おたより:東海地方の内科医師

 いつもお世話になっております。先日ご相談した方(脳梗塞)ですが、担当医にお会いして病状を伺いましたところ、ガン(胆管がん)の腫瘍塞栓である可能性が濃厚であるとのことでした。
 脳にび慢性に転移を示唆する所見を認めることからかなり厳しい状況にあるようです。

 最近受診なさっているかたで、30台前半の女性ですが、職場で受付をしています。普段から睡眠は良好ですが、午前中の仕事開始当初から‘あくび‘の連発で困っているそうです。
 よく聞いてみると、かなり若いころからあくびが常時あったそうです。最近、仕事の性質から支障を感じているとのことです。

 身長は1??位、体重は普通、舌は淡紅で、脈はやや弦で、腹直筋緊張あり、臍上悸を認めます。
 補中益気湯と柴胡桂枝乾姜湯で経過観察していましたが、今ひとつインパクトがない、とのことです。
 西洋医学的にはあまり治療の対象とはならないかもしれませんが、ご本人にとってはおそらく重大な事態だと想像しています。

 示唆に富む中医漢方薬学のなかにアドバイスがあればと思いメールしました。
 ご助言をお願いできれば幸いです。


ヒゲジジイのお返事メール:今年になって、当方では若い年齢層40〜50歳前後の胆管がんや膵臓がん、食道がん、あるいはスキルス胃癌などで転移のある人たちが、気丈にも御本人みずからの意志で、不屈の精神を持して直接やって来られています。
 胆管がんや膵臓がんあるいは肝臓がんには、通える段階で牛黄製剤などを中心にした漢方薬(医薬品)の配合を中心にすれば意外にクオリティー・オブ・ライフの向上に多大な貢献が出来ることが多いものです。
 保険適応外の漢方薬類ばかりが中心になり、どうしても高額な出費を強いられる難点がありますが、牛黄製剤などは脳梗塞にも有益ですので、あるいはという気がしないでもありませんが、病状が一定レベルを超えてしまえば、一時的な効果に終わることもあります。


 本題の「あくび」ですが、思い当たるのが先生もしばしば?使用される甘麦大棗湯です。本来は、
 7月10日のブログ
小麦と棗(ナツメ)、甘草の三味からなるお菓子のような甘麦大棗湯は・・・ で書く予定が、面倒になって中断したままになっていました。

 甘麦大棗湯の日本漢方的な口訣では、涙もろく生あくびが頻発するような男女にしばしば奏効する面白い処方です。舌に苔が少なければ可能性はあると思いますが如何でしょうか?
 配合中の甘草のむくみやすさを防止する目的からも、もしもエヘン虫など半夏厚朴湯証があれば、これと合方する方法もあり得ると思います。

 最近の甘麦大棗湯単方での著効果例として、唾液が飲み込めなくなって、常時、痰壺ならぬ唾液ボトルを下げて、常時唾液を吐き続ける中年女性。
 自費の漢方専門薬局を渡り歩いて当方が三軒目でしたが、甘麦大棗湯単方5日間でさしもの奇病がピタリと止まり、10日分服用して自己判断で廃薬。5日後に再発気味となりそれに懲りて現在常用中です。

 さらには、泣きべそや生あくびを目標に、パニックやストレス性疾患のみならず咽喉などの粘膜疾患など様々な領域に応用しており、現在、当方で甘麦大棗湯を実験?されている人達がたくさんおられますが、咽喉が塞がって唾液が飲みにくい人にも応用したところ、咽喉が広がって悲観的な人生観が明るく開けたなど、面白い報告をされるかたもおられました。

 はなしは逸れましたが、甘麦大棗湯は、泣きべそで生あくびが頻発する人の様々な症状に有効な場合が多いようですので、もしもその女性がとても涙もろい性格の方でしたら、適応する可能性が高いように思います。
 この処方が適応すると時に、驚くべき疲労回復効果が得られます。

posted by ヒゲジジイ at 00:10| 山口 ☀| 中医漢方薬学問答 | 更新情報をチェックする