2007年07月07日

乳癌患者さんに対する漢方薬の考え方(東海地方の女性薬剤師のおたより)

 先日頂いていた東海地方の女性薬剤師さんからの貴重なおたより。

 お返事メールをお送りした後にブログに掲載させて頂こうと思いつつ、そのままになっていたところ、思いがけず昨日直接お電話を頂いた。
 土曜日に直接、村田漢方堂薬局に伺って宜しいか、との丁重なお問合せであったが、直接会ってますます幻滅されるのは御免だから、無遠慮にも即座にお断りした(笑)

 そのかわりに例によって余計なことを一言(ひとこと)フタコト三言(みこと)捲くし立てててしまった。これが長州人のもっとも悪い欠点である。
 返信メールをお送りした後にはブログに掲載させて頂くということでご快諾を得たが、すでにこうしてお電話でお話したのだから、ブログに掲載する方が先ではないかと考え直した。

 こういう即興的な変更で、周りをしばしば困惑させるのがヒゲジジイの身勝手なところである(笑)
 人には厳しく自分には甘い、それが人間の共通した性(さが)というものであろう(呵呵大笑!)
 前置きが長くなったが、参考価値の高い東海地方の女性薬剤師さんの乳癌患者さんに対する漢方薬の考え方である。


 村田恭介先生

おはようございます♪
 お便りをいただいていたにもかかわらず、出張でお返事できなかったご無礼をどうぞお許しください。
 梅雨に入ってから、外湿が高く、今まで調子がよかったにもかかわらず、腹水、胸水が溜まる方が増えています。

 先生からご教授いただいた、五苓散+補中益気湯をスプーン1杯からでも摂っていただく方法を行ってゆこうと思っています。
 ガン末期は、ご家族に対して言葉ひとつからとても気を遣う上、いろいろな方がおられるので、私も人を選んでいます。

 先生がおっしゃるように、補気健中湯がエキス剤にないのが、本当に残念です。
 これを必要としている方は大勢おられると思いますのに・・・。

 また、アトピー性皮膚炎の手の水疱に関する、猪苓湯の使い方・・・とても勉強になりました。
 猪苓、茯苓、沢潟で、利水をすると同時に、滑石で清邪熱、阿膠で復陰を果たすこと。

 猪苓湯を用いたことがなかったので、これも目から鱗でした。
 また、茵蔯蒿湯、六味丸、玉屏風散、大黄、イオン化カルシウムの微妙な配合は、本当に匙加減ですね。
 私も、トライしてゆきたいと考えています。

 お話はまた変わりますが、乳ガンのことについても、非常に興味深く勉強させていただきました。
 先生がおっしゃるように、乳ガンの方には、肝欝がみられますね。
 そしてまた、私の経験では、他のガンに比べ、気滞胆欝、痰湿などがあり、竹茹温胆湯を、加味逍遥散と併せる例が多々あります。

 経絡的にみても、足少陽胆経の臨泣、帯脈に強いシコリがあり、手少陽三焦経の外関を押さえると殆どの方が痛みで手を引っ込められます。
 やはり少陽のお薬と、三焦経の痰湿を通すものが必要で、特に胆経と三焦経の共通の引経薬である柴胡、青皮ははずせないと思います。
食事を聞いてみると、夜遅い食事、卵や酪農製品、動物性脂肪の摂りすぎの方が多く、痰湿を溜める上、ストレスが入りやすい性格傾向やライフスタイルがあります。

 乳ガンでは、抗ガン剤等を受けておられるかどうか・・・で勿論処方が大きく変わってきますが、私はむしろ、転移、再発を防ぐことに力を入れています。
 特に乳ガンは督脈上に骨転移しやすく、せっかく乳ガンそのものは落ち着いたのに、首に転移して、首の骨が砕けて動けなくなった・・・では目もあてられません。
 督脈を補陽する、肉桂、鹿茸、兎絲子、肉蓯蓉(にくじゅよう)等の薬味も状態に応じてプラスし、大椎をよく温めてもらっています。

追伸
 これだけの質の高いブログを毎日継続されるご苦労は、並大抵ではないと思います。
 日常のご相談がお忙しい中、どんな質問にも丁寧にお答えくださる先生を尊敬しております。
 どうか、嫌気がさしたときは、ちょっと足をのばされて、まつ子先生とこちらへご逃亡ください。(笑♪)
 喜んでご案内申し上げます。
                 かしこ



【編集後記】 補気建中湯を補中益気湯合五苓散で代用することは、方意の上からは共通性があるが、臨床の現実において、とりわけ超末期状態においてはすべて同様の効果が発揮できるとは限らないので過信は禁物である。
 もちろん、補気建中湯とて絶対に効果を発揮するというわけではない。