2007年07月10日

小麦とナツメ、甘草の三味からなるお菓子のような甘麦大棗湯は・・・

 ストレス症候群に対して、四逆散系列の方剤に次いでシバシバ使用する方剤は意外なことに甘麦大棗湯のようで、昨今は以前あきれるほど使用していた柴胡桂枝湯の使用頻度が随分以前から激減しているように思う。
 加味逍遙散の如きはホンの数人程度である。半夏厚朴湯証もそれほど多い訳ではない。柴胡加竜骨牡蠣湯は比較的多いかもしれない。

 といってもこれは村田漢方堂薬局における話であるが、その甘麦大棗湯証の特徴的な見分け方は・・・続きは?

2007年07月08日

漢方薬による真のダイエット効果とは・・・

 昨今、気が付いてみたら茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)や茵蔯五苓散を常用されている人たちのウエストが明らかに凹んできたり、身体全体がスマートに締まってきたり、驚くべき目的外のオマケのダイエット効果が続出している。

 その共通成分はどうやら茵蔯蒿(インチンコウ)であるらしい。肝胆の湿熱が蔓延している日本の風土であるから、村田漢方堂薬局では茵陳蒿湯を最も繁用しているが、必要に迫られて常用せざるを得ない人のなかには、明らかなダイエット効果の附録に感激される人ばかりでなく些(いささ)か戸惑っている人さえ出現する始末。

 あまりにその人数が多過ぎるので、一々枚挙するのも面倒だが、代表的なケースで、昨年来、重度の蕁麻疹で、皮膚科の治療や内科治療に失敗して、医療用漢方のツムラ五苓散によって却って爆発的に悪化する破目に陥った中年男性に、茵蔯蒿湯とイオン化カルシウムによって治療兼予防で、蕁麻疹が出なくなってもアルコールを止めたくない一心で常用していたところ、服用十ヶ月経つ頃には、85センチを上回っていた胴回りが80cmに萎んで、ズボンがぷかぷかになって嫉妬深い?同僚からの揶揄に困惑気味。
 
 胆石症発作としか思えない急性腹症的疼痛発作を繰り返していた人に、頓服として牛黄製剤を併用しながら、大柴胡湯合茵蔯蒿湯の併用により、僅か数ヶ月の連用によって疼痛発作の完全消失に併行して肥満体の方も見事に完全解消。(もともと時に応じて銀翹散製剤や体質改善三点セットと猪苓湯や六味丸、あるいは生薬製剤二号方や適量の黄連解毒湯・板藍根エキスや白花蛇舌草などは定番で使用していた。)
 かくしてまったく標準的な体型になってしまった。(病院検査を厳命しても頑として聞き入れないうちに完全に病状が消失。)
 この人の場合、単なる通りすがりの顔見知り程度の人からも驚かれ、どうやってダイエットされたか教えて欲しいと懇願されることが毎日のように続いているウソのような本当の話(笑)

 緑内障で眼圧が病院治療だけでは正常化しないために弁証論治によって茵蔯五苓散に猪苓湯および少量の四逆散の併用で、眼圧が正常化するのに併行して次第に体重が減り始め、半年以上の連用によってやや太り気味だった体型が、現在では5Kg減量してむしろやや細めの女性へと健康的に若返るという大きなおまけがついた例など、まだまだ挙げれば際限がない。

 共通項は茵蔯蒿湯のようであるが、脂肪過多症専門の漢方薬「扁鵲(へんせき)」と併用すれば、さらにダイエット効果が増すに違いない。
posted by ヒゲジジイ at 00:44| 山口 ☁| ダイエットや肥満症 | 更新情報をチェックする

2007年07月07日

乳癌患者さんに対する漢方薬の考え方(東海地方の女性薬剤師のおたより)

 先日頂いていた東海地方の女性薬剤師さんからの貴重なおたより。

 お返事メールをお送りした後にブログに掲載させて頂こうと思いつつ、そのままになっていたところ、思いがけず昨日直接お電話を頂いた。
 土曜日に直接、村田漢方堂薬局に伺って宜しいか、との丁重なお問合せであったが、直接会ってますます幻滅されるのは御免だから、無遠慮にも即座にお断りした(笑)

 そのかわりに例によって余計なことを一言(ひとこと)フタコト三言(みこと)捲くし立てててしまった。これが長州人のもっとも悪い欠点である。
 返信メールをお送りした後にはブログに掲載させて頂くということでご快諾を得たが、すでにこうしてお電話でお話したのだから、ブログに掲載する方が先ではないかと考え直した。

 こういう即興的な変更で、周りをしばしば困惑させるのがヒゲジジイの身勝手なところである(笑)
 人には厳しく自分には甘い、それが人間の共通した性(さが)というものであろう(呵呵大笑!)
 前置きが長くなったが、参考価値の高い東海地方の女性薬剤師さんの乳癌患者さんに対する漢方薬の考え方である。


 村田恭介先生

おはようございます♪
 お便りをいただいていたにもかかわらず、出張でお返事できなかったご無礼をどうぞお許しください。
 梅雨に入ってから、外湿が高く、今まで調子がよかったにもかかわらず、腹水、胸水が溜まる方が増えています。

 先生からご教授いただいた、五苓散+補中益気湯をスプーン1杯からでも摂っていただく方法を行ってゆこうと思っています。
 ガン末期は、ご家族に対して言葉ひとつからとても気を遣う上、いろいろな方がおられるので、私も人を選んでいます。

 先生がおっしゃるように、補気健中湯がエキス剤にないのが、本当に残念です。
 これを必要としている方は大勢おられると思いますのに・・・。

 また、アトピー性皮膚炎の手の水疱に関する、猪苓湯の使い方・・・とても勉強になりました。
 猪苓、茯苓、沢潟で、利水をすると同時に、滑石で清邪熱、阿膠で復陰を果たすこと。

 猪苓湯を用いたことがなかったので、これも目から鱗でした。
 また、茵蔯蒿湯、六味丸、玉屏風散、大黄、イオン化カルシウムの微妙な配合は、本当に匙加減ですね。
 私も、トライしてゆきたいと考えています。

 お話はまた変わりますが、乳ガンのことについても、非常に興味深く勉強させていただきました。
 先生がおっしゃるように、乳ガンの方には、肝欝がみられますね。
 そしてまた、私の経験では、他のガンに比べ、気滞胆欝、痰湿などがあり、竹茹温胆湯を、加味逍遥散と併せる例が多々あります。

 経絡的にみても、足少陽胆経の臨泣、帯脈に強いシコリがあり、手少陽三焦経の外関を押さえると殆どの方が痛みで手を引っ込められます。
 やはり少陽のお薬と、三焦経の痰湿を通すものが必要で、特に胆経と三焦経の共通の引経薬である柴胡、青皮ははずせないと思います。
食事を聞いてみると、夜遅い食事、卵や酪農製品、動物性脂肪の摂りすぎの方が多く、痰湿を溜める上、ストレスが入りやすい性格傾向やライフスタイルがあります。

 乳ガンでは、抗ガン剤等を受けておられるかどうか・・・で勿論処方が大きく変わってきますが、私はむしろ、転移、再発を防ぐことに力を入れています。
 特に乳ガンは督脈上に骨転移しやすく、せっかく乳ガンそのものは落ち着いたのに、首に転移して、首の骨が砕けて動けなくなった・・・では目もあてられません。
 督脈を補陽する、肉桂、鹿茸、兎絲子、肉蓯蓉(にくじゅよう)等の薬味も状態に応じてプラスし、大椎をよく温めてもらっています。

追伸
 これだけの質の高いブログを毎日継続されるご苦労は、並大抵ではないと思います。
 日常のご相談がお忙しい中、どんな質問にも丁寧にお答えくださる先生を尊敬しております。
 どうか、嫌気がさしたときは、ちょっと足をのばされて、まつ子先生とこちらへご逃亡ください。(笑♪)
 喜んでご案内申し上げます。
                 かしこ



【編集後記】 補気建中湯を補中益気湯合五苓散で代用することは、方意の上からは共通性があるが、臨床の現実において、とりわけ超末期状態においてはすべて同様の効果が発揮できるとは限らないので過信は禁物である。
 もちろん、補気建中湯とて絶対に効果を発揮するというわけではない。

2007年07月06日

ご高齢者の常連さんのお話

 昨日、改装後の薬局の入り口の扉が開きにくいと地団駄踏まれながら、満で90歳になったばかりの御婦人が達者な足取りで漢方薬の補充に来られた。
 村田漢方堂薬局では珍しく温補剤主体の組み合わせである。

 海馬補腎丸・大建中湯製剤・独活寄生湯製剤。

 20年前は、若い頃からとは言え、ますますやせ細って元気をなくし、風前の灯火といった風情であったが、矍鑠(かくしゃく)とはいえないまでも、杖もなしに達者で歩いて来られる。

 一方、若い頃から、乳癌を初め様々な癌の恐怖に苛まれた御婦人が二十五年以上の漢方のおつきあいで、ここ十年以上はまったく問題もなく、ここ数年は釣藤散製剤・地竜エキス顆粒・半夏白朮天麻湯・イオン化カルシウムで健康を維持しておられた90歳前のご婦人が、数ヶ月前から電話での漢方薬の補充依頼の話の内容に些か首を傾げるものが混じっていた。
 以来、ここ二ヶ月、定期便で続いた二十五年以上の漢方薬の補充が途絶えている。
 今後は、ご高齢の常連さんは90歳前後の関門には注意が必要となりそうだ。

 少なくとも中年から漢方薬を常用され始めて数十年になる人達は、今後90歳前後が大きな関門とみてよいかもしれない。
 命の問題よりもボケのほうの問題である。それほどご高齢になっても発ガンすることもなくボケることもなく、元気で長寿を維持されている人が多いのである。

 雨が続いて久しぶりに暇な午前中、このブログを書き終えたところで、85歳を超えた一人暮らしの常連さんが、ボケに関するテレビ番組を見て恐ろしくなったから漢方薬がうっかり途切れないように余分に持っておきたいとて、早めの追加補充の注文があった。
 この方の場合は、最も高濃度の牛黄製剤や麝香製剤を主体に様々な弁証論治に適合した各種方剤を二十五年以上連用されておられ、ここに記載すると驚愕されるので、省略する(笑)
posted by ヒゲジジイ at 13:14| 山口 ☔| 近況報告 | 更新情報をチェックする

2007年07月05日

子供さんのアトピーを漢方薬で治したいための母親の頑張り

 毎週通って来られて約一ヶ月、一定の効果を得たところで、子供が私も早く飲みたいな〜〜〜とせがまれるのですが・・・と恐る恐る訊ねられる。

そうだ、こんなけしからん(笑)ことを書いている村田漢方堂薬局のアトピー漢方薬専門サイトがあった!
◎成人の男女を専門としております。
 子供さん・小児の方は様々な事情から恐縮ながら御相談に乗れません。悪しからず御了承下さいませ。(但し、ご両親のどちらかが当方の漢方薬の利用経験者の場合はこの限りではありません。)
 実にお母さんの涙ぐましい努力である。次第に好転していく母親の姿を見て、早く漢方薬を飲んでアトピーを治したいというお子さん。母親が一ヶ月以上、村田漢方堂薬局の漢方を経験しているから、もうそろそろ子供を受け入れてくれてもよいのではないか、との遠慮深い依頼なのである。

 もちろん二つ返事で快諾した。
posted by ヒゲジジイ at 01:42| 山口 ☁| アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする

2007年07月04日

疲労が100倍になるお邪魔虫や無礼者の漢方相談

 真剣・真面目で村田漢方堂薬局の漢方にしばらく賭けるつもりで来られた突然の訪問者ならほどほど歓迎(これが仕事だから)ではあるが、同じ真剣・真面目でも甚だ迷惑な訪問者というものがある。
 関東からの先客(またも関東!)の最後の日だから、今後のメール相談の方法などアドバイスしている途中に来られたストレンジャー。

 応対に出た女性薬剤師に「御相談があるのですが・・・」と来れば、当然、漢方薬を求めて来られた遠来の御相談者と思い込むのが当然。ところが、

2007年04月03日 薬剤師が漢方薬・中医学を学んでその知識を活かせる道

 上記のブログで取り上げた内容に近い話で、相談というのは「将来、漢方薬局をやりたいので御相談がある」というのだった。

 同じ漢方相談でもこちらにとってはこんな仕事の真っ最中に全然有難くも面白くもない、短い人生の貴重な時間の一部を強引にもぎ取られるような不快を禁じ得ない。

 仕事中にこのような相談こそ迷惑な話で、これがまだ若い美人の女性なら多少はガマンして少しは愛想笑いの一つもしようが、先週から遠来の新しい人の漢方相談が連続している最中、どうして受付嬢はしっかりとお断りしてご帰宅を願わなかったのかと恨めしい。

 よりによってこのトウヘンボク爺のところによくぞ手前勝手な訪問が出来たものだと思うと同時に、これが現代のマナーを心得ない知識人予備軍の典型であろうか? その証拠に・・・
 今後このブログに訪れたら、ウェブランキングバナーのクリックを忘れないようにとの当然のマナーをほのめかしたところ、どうしようもなく怪訝な顔をするので、それがマナーというものだろう、手前勝手に人から得るものだけ得たらそれで良いというのはいかにもマナー違反だ、ギブ・アンド・テイクだよ、っと言ってもあまりピント来てない風情。
 これじゃ〜〜^貴君は接客業に向かないかもよっ(ユーモアもまったく通じないっ!)

 そうだ、マナー違反と言えば、先日、何年も前に当方で合わせたものがピッタリ合って調子良かったから、ネットで探して安売りのお誘い販売サイトから長年購入していたんだけど、今頃あまり威力がなくなったようなのでもっと良いのがあったら、またピントを合わせて推薦して欲しいという、信じられないほど虫のいい要求である。

 ア〜タ〜〜〜ネ^^、その間の経過が追えてないのだから、そうそう世の中、甘くはオマヘンデ〜〜〜っ、
 そのお誘い販売サイトで相談して下さいね〜〜〜っと、態よくお断りしたのは当然のプライドである。


 今ではそのお誘い販売サイトよりも悉く安価な漢方のスパー店に成り下がっていることを知らないのだからオメデタイことである・・・呵呵!

2007年07月02日

末期癌における腹水の問題(補気建中湯)

同業の女性薬剤師(笑♪)からのおたより: 6月28日のブログ 昨日の続き:滲出液が多いアトピーに対する漢方薬の配合中に六味丸が必要となるのはなぜか? の続き。

 先生からメ〜ルをいただいて、本当に感激しています。
 私のような若輩者が、ご意見なんてとんでもないことですが、教えていただくばかりでは失礼で、せめて自分が思っていることくらいは、お伝えせねば・・・と勇気を出してお便りしました。
 失礼をどうぞお許し下さい。
 六味丸のこと、なるほどと、とても勉強になりました。
 私ももっと勉強して、早く先生のように、自由自在に漢方薬を使えるようになりたいです。

 実は、先生には、何とかして御礼を申し上げる機会がないか・・・と思っていました。

 といいますのは、昨年の今頃、肝臓癌の末期で、腹水が溜まり、今までの方法でなかなかうまくゆかず、どうしたものか・・・という患者さんを持っていました。
 何とか良い方法がないものか・・・と、腹水&中医学を検索していて、ゆきあたったのが先生のサイトで、補気健中湯のことが書かれていました。
 そのとき、目から鱗のような感じがしました。
 度重なる抗ガン剤によって、どんどんと肺脾腎が低下している患者さんでしたので、それを助けるものと、ガンの勢いを清熱するものとを微調整しながら併用していたのですが、想像以上に脾が弱っておられたのです。

 私は、補気健中湯の名前すら知りませんでしたし、手元にもないので、五苓散と補中益気湯を何とかして飲んでいただこうと考えました。
 ところが、すでに食が細り、薬すら飲めない・・・と言われるのです。
 もはやこれまでか・・・と落胆しました。

 しかし、以前、鍼灸験方の鍼灸補中益気方を読んだことを思い出し、薬が飲めないのなら、ツボを刺激してもらえばいい・・・と考えました。
 すなわち、黄耆、党参、升麻、柴胡にあたる百会温灸
沢潟、猪苓に相当する気海に温灸し、列厥に円皮針を置く
桂枝にあたる、大椎の温灸
そして、茯苓と白朮にあたる、陰陵泉と足三里に円皮針を置いていただくよう、ご家族に根気よく説明しました。

 私は、残念ながら鍼灸師ではないので、鍼はできませんが、ツボのアドバイスくらいならできると思って・・・。
その結果、ご家族の懸命なお手当てのおかげで、少しずつラクになり、水が抜け始め、再び食事、薬がとれるようになられたのです。
そして、腹水の危機が免れ、現在も元気でおられます。

 このとき、先生のサイトに出会えなかったら、おそらくこの方は亡くなられていたと思います。
 本当に、私は先生には感謝の気持ちでいっぱいです。

 このときから、先生のファンどころか、弟子にしていただきたいと真剣に考えましたが、先生のご性格からすると、そんな煩わしいことは、まっぴらだと思われるに決まっているなぁ・・・。
 と逸る心を抑え、自分で勝手に、ヒゲセン(ヒゲ先生のこと)師匠と呼ばせていただきながら、毎朝先生のブログで、勉強させていただいている次第です。

 最近は、お客様への断り方も、やや先生の口調に似つつあります。(笑)

 お忙しいところ、長々と本当にごめんなさい。
 いつかお顔をみて御礼を申し上げたいです。
 これからもどうぞよろしくお願いいたします。
 先生のファンは全国にたくさんいると思います。
 どうか、お体無理なさらず、大切になさってくださいね。


ヒゲ薬剤師のお返事メール:ご丁寧なメールを賜り、ありがとうございました。(でも、ちょっとお世辞が過ぎますよ・・・笑)
 補気建中湯の応用のお話、大変興味深く拝見しました。鍼灸関係には暗いので、素晴らしい応用力にはまったく驚いてしまいました!

 実際には過去の経験では、超末期状態の腹水や胸水が合併している状態で、激しい嘔吐を繰り返して何も受け付けない状態でも、スプーン一杯ずつを飲める範囲で服用してもらうことで、嘔吐が止まり腹水も次第に解消し、トントン拍子に回復して、危篤状態だったはずが一ヶ月もしないうちに退院して自宅療養へと漕ぎ着けた人も稀ではありませんでした。
 起死回生の妙薬とは補気建中湯のことだろうと思うのですが、癌や悪性腫瘍となると、一般的な風潮としてブームにのって薬事法に抵触しかねない健康食品の宣伝に影響されて、昨今は医薬品である漢方薬を低く見る傾向には着いて行けなくなっています。

 どうしようもない末期におよんで、御家族の求めるのがアガリクスであったり冬虫夏草の類であったり、若い頃はそれを説得してでも補気建中湯などの適切な漢方処方を出してシバシバ効果を発揮したものです。
 しかしながら、月刊「和漢薬」誌にも一部書いことがあるのですが、超末期状態が驚くほど回復したために、その後にもろもろの問題が派生した人間社会のどす黒い部分を見かねて、超末期での相談は悉く受け付けないように努力しています。

 やはり一二年も通い詰めたお互いの気心が知れるくらいになったご家族でなければ、突然超末期でやって来られての御相談というのは、昨今はまったく苦手です。その点では、大いに堕落したヒゲジジイではあります

 末期ではなくともここ数年の癌患者さんの漢方相談では、かなり正統な中医学的弁証論治にもとずいた中医処方や漢方処方を主体に組み合わせたものをお出しするのですが、巷で宣伝される健康食品類が中心ではないことにひどく落胆される顔を拝見することが増えています。ネットの影響恐るべし、です。

 ともあれ、百発百中とはいかないまでも、かなり高確率で奏効する補気建中湯をどこかの製薬メーカーがエキス化して広く医療界で使用してほしいと思うのですが、採算を計算すると、どこの会社も二の足を踏むようで、残念この上ない話です。
 あのような超末期にも偉効を奏する可能性のある漢方処方こそ、エキス製剤にして市販されるべきだと思うのです。

 昨今、ブログを続けるのが断続的に嫌気が差すことが増えています。先生とのこの往復メールをブログ継続の道具とさせて頂くには恐縮ですが、その点、御了承下さいませ。
(ご面倒な毎朝の人気投票バナーのクリック、心から感謝しています。今、ブログ継続の唯一の楽しみが、これだけです・・・笑)。


追記:6月27日のブログ アトピー性皮膚炎に合併する手の水疱 は、猪苓湯製剤の濃度を1.5倍に上げることで手の水疱は明らかに減りつつある。
 配合処方は、猪苓湯・茵蔯蒿湯・六味丸・玉屏風散エキス製剤と大黄、微量のイオン化カルシウム。

 また各種癌転移による腹水の問題については、ブログ 漢方専門薬剤師による漢方薬方剤漫遊記 中の補気健中湯 にも書いているように、超末期ではない限りは弁証論治によって分消湯製剤や補中益気湯に五苓散あるいは茵蔯蒿湯などの有機的な活用によって解消することも多い。
 お便りを頂いた補気健中湯 をヒントに補中益気湯合五苓散を応用された鍼灸のツボの効果も参考価値が高いはずである。

追記のまた追記(笑 ⇒ 2010年頃に念願かなって、補気建中湯のエキス製剤が小太郎漢方さんから発売されたっ!!!

2007年07月01日

抗癌剤治療中の食欲不振に対する漢方薬

性別 : 男性
年齢 : 50歳〜59歳
簡単なご住所 : 北海道
お問い合わせ内容 : 突然のメールで大変恐縮ですが、00歳独身の兄の病状に関して質問させて頂いてよろしいでしょうか。
 06年6月大腸癌の手術を受け(肝臓、肺転移)その後私達兄弟の反対をよそに抗癌剤治療を受け始め半年以上たち2~3ヶ月程前より副作用と思われる症状が、現れ出し体調が悪化、主治医より最近ステロイド剤投与をしている事を聞き投与中断をお願いした途端に食物も全く摂れない位、体調悪化、致し方なくステロイド剤投与再開、何とか一口二口食べられる状態、この様な兄のステロイド剤依存の体を何とか漢方で改善し食物が摂れる体にもどす事出来ないかと思い質問させて頂きました。
 何卒ご回答の程伏して御願い申し上げます。

お返事メール:抗癌剤治療をされている場合の漢方薬は、医療用漢方の世界では、(41)ツムラ補中益気湯や(48)ツムラ十全大補湯を投与するのが一般常識のようになっているようです。西洋医学病棟において漢方薬を補助的に使用する観点で言えば、決して間違いではなく、中医学的な扶正祛邪の観点から言えば、抗癌剤は祛邪薬と考えれば、扶正(体力の扶助)薬としての補中益気湯や十全大補湯が有効に作用する場合があるようです。

 とりわけ抗癌剤による吐き気や食欲不振を改善する為(43)ツムラ六君子湯や(14)ツムラ半夏瀉心湯を積極的使用される医師も増えています!
 ですから可能性としては主治医に依頼して、いずれかの(43)や(14)あるいはもっと状況に応じた真に適切な方剤を投与してもらうことを先ず考えられては如何でしょうか?

 これらのことも含めて、昨今では病院のお医者さんの中には医療用漢方を積極的に用いられる方も増えていますので、お近くでそのような医師を探してみられては如何でしょうか。

 さらにもっと積極的なことを考えれば、主治医の許可を得て、地元の漢方専門薬局にご本人を直接連れて行かれてピントの合った漢方薬を求めることが考えれれます。保険では使用できない様々な漢方薬(医薬品)を求めることが出来るはずです。

折り返し頂いたメール: 早々の御返事有難く感謝申し上げます。
 何分にも本人、ステロイド剤を投与されなければ、生気も無く寝たきり状態に近く、本来であればそちらに赴き処方していただくのがベストだとは思うのですが此の度は、先生の此のアドバイスで何とかステロイド剤を減らすことが出来、食べ物が摂れる様になれば体力も回復し歩ける様にと願いつつ今後行動して参ります。
 誠に有難う御座いました。
 何度かメール交換させて頂くかも知れませんが今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。

ヒゲジジイのお返事メール:現在の病態からは遠方に出向くなんてとんでもない話です。
 遠方ばかり見ずに必ず地元近辺で直接様子を観察してもらえる医師に相談するのがもっともベストです。
 また、見ず知らずの体質や病状の方で、それも御本人ではない間接的なメール相談には大きな壁があり過ぎます。
 ネットの発達で遠方の情報が豊富に仕入れられるのは結構なことですが、往々にして地元近辺にこそ相応しい窓口があるのを見落としておられるに違いありません!
 是非、脚下照顧というコトワザを噛み締めてみて下さい。

折り返しのお返事:拝復 村田 恭介様
 御返事遅れて申し訳ありません。
 御言葉謹んで受けさせて頂きます
 当方、誠心誠意地元で良いご縁に出会う様頑張って参ります。
 此の度のご指導ご鞭撻本当に有難う御座いました。
                     敬具