2007年06月28日

昨日の続き:滲出液が多いアトピーに対する漢方薬の配合中に六味丸が必要となるのはなぜか?

性別 : 女性
年齢 : 40歳〜49歳
簡単なご住所 : 東海地方
具体的な御職業 : 同業(笑)の薬剤師
お問い合わせ内容 : 初めまして、実は先生の大ファンです。毎朝、先生のブログを見るのが、日課です。

 今日は宿題が出ていたので、恐る恐る挑戦しました。
 水疱が出ていると、どうしても祛湿剤や治風剤を使いたくなります。けれども、アトピーのような久病の患者さんで、ただでさえ肝腎不足の方に、これらの薬剤をしつこく使うと、乾燥が激しくなり、また掻きむしる・・・の繰り返しを起こしてしまいます。そこで、六味丸で滋補肝腎しつつ、利水清熱すると良いのではないでしょうか?

 また、ダラダラと汗を吹きだしてくるような方では、玉屏風散で衛表を強めて、邪気の侵入を防ぐ、陰液の漏れを防ぐとともに、肝腎陰虚になってしまっているので、六味丸を使うととても良いのでは・・・と思います。

 私は、水疱が出るということは、まだそこに炎症があり、瘀血(おけつ)があると考えています。そこでこのようなときに、白花蛇舌草、我朮、三稜、大青葉、スイカズラ・・・などもよく使います。このとき、黄精、玉竹、冬虫夏草、霊芝、田七なども一緒に補っています。

 乾癬で、ステロイドとチガソンを半年以上内服されていた方で、来られたときは、手足の裏に水疱がびっしりで、それが潰れて血が出て、杖をついて来られたのですが、水疱、乾燥、落屑、発疹の繰り返しが、2ヶ月半ほどでなくなりました。
 今は別人のように、普通のお肌で3年目を迎え、とても喜んでいますが、この時は毎週の調整に四苦八苦でした。
 外用は、紫雲膏の他に、モクタールを、プロペトとプラスチベースで薄めたものも使いました。

追伸: 一日1回クリックしています。機械オンチなので、よくわからないのですが、エンターを押して、画面が変わりますが、それで大丈夫ですか?


ヒゲジジイのお返事メール:大ファンなんて滅相もないことです。
 先生ご自身こそベテラン・名人の域に達しておられるように伺っています。一昨年頃、先生のサイトを訪問する機会があり、女性ながら凄い先生もおられるのだな〜〜〜と恐れをなしたことを覚えています(笑)
 また、このたびは貴重な御意見、ありがとうございます。

 ところで「宿題」の趣旨は、手の水疱の問題よりも、アトピー性皮膚炎患者さんにおいて濃汁が多量に流れる人や、全身から滲出液が多量に流れるタイプに、どうして六味丸が必須だったのだろうか?という問題を掲げたものです。

 しかしながら、水疱に関するご提案を種々賜り、興味深く拝読させて頂きました。
 やや気になる点は冬虫夏草など中医学ではれっきとした中草薬であるとはいえ、些か高価なものや煎じ薬でしか使用できない薬味類を多用?される方法論です。
 小生の拙い経験からは、殆んどのアトピー性皮膚炎は、煎じ薬や特殊な品を用いずとも、通常の方剤類の組み合わせで充分に解決できる疾患だと思っています。

 但し、かなり敏感でデリケートなアレルギー性疾患ですので、当方では祛風剤は銀翹散系列の方剤以外はほとんど使用せず、温清飲や消風散あるいは白虎加人参湯などは絶対に使用しません。(但し、温清飲加味方を用いて数十年来の乾癬患者さんに、顔以外の全身がゴワゴワの分厚いウロコ状になった超重症者に用いて8ヶ月で根治させた経験をもっています。8ヵ月で廃薬後もその後十数年以上、まったく再発なしという経験をどこかのブログにも書いた記憶があります。

 ところで、アトピー性皮膚炎自体が、ここ数十年の間に爆発的に増えた疾患であり、漢方薬による治療の歴史もそれほど長い訳ではありませんので、まだまだなかなかパターン化できない部分があるように思います。それだけ個体差が大きいように思います。

 また、個人的にいえば、中医学を齧りかけた当初は、日本漢方ではあまり用いられない中草薬類を好んで用いていたものですが、むしろしばらくして中医学で学んだ最大のことは、中草薬それぞれの薬性・薬能を深く知れば知るほど、それぞれの薬味の効能を有機的に利用可能であるから、多くの場合、日本漢方ではあまり用いられない薬味まで使用する必要はなく、薬性や薬能の類似した薬味で充分に代用が効くということでした。(製剤の場合は銀翹散製剤などの例外はありますが・・・)

 中医学理論はフル活用するものの、アトピー性皮膚炎レベルではそれほど特殊な薬味は殆んど必要としないことを長年の経験から感じているところです。

 ところで「宿題」の解答は、ほかでもない激しい津液の損耗から派生する腎陰虚が問題です。腎は主水の臓であり、この主水の臓である腎陰の虧損によって体内の水分調節機能が破綻を来たしているため、六味丸を必ず併用しないことには茵蔯蒿湯や玉屏風散あるいは猪苓湯などだけでは体液の漏出をコントロールできないからです。
 現実に六味丸を加えない時と加えた時の驚くほどの違いが生じた実例が沢山ありますので、人気投票のクリック数次第で公表を考えておきます(笑)

posted by ヒゲジジイ at 00:39| 山口 | アトピー性皮膚炎や慢性湿疹など痒みを伴う皮膚病 | 更新情報をチェックする